2012年01月23日
世界の大学の主流は秋入学
~東大は世界大学ランキングで30位
こんにちは、井之上 喬です。
今年は1月21日が大寒。その前日は東京でも雪が降りました。大寒から2月4日の立春までは一年のうちで最も寒い時期とされていますので、健康管理には十分お気を付けください。
1月18日の読売、朝日、毎日の夕刊一面トップに、「東大、秋入学移行へ」の見出しが踊りました。
朝日新聞によると、これまで入学時期のあり方を検討してきた東京大学のワーキング・グループが、従来の4月入学を全廃し、海外で主流となっている秋入学への全面移行を求める素案を中間報告としてまとめたとするものでした。
秋入学への全面移行の必要性については、国際的な大学間の競争に対応し、学生の海外留学を促すことなどを理由に挙げています。
■11大学と協議組織、5年前後で移行
今後、東大ではこの素案に対する学内の意見を調整し、今年度中に最終報告をまとめ、学内での合意が得られれば経済界など関係先への説明と一定の告知期間を経て、早ければ5年後に導入したい意向を示しています。
また1月21日の日経新聞朝刊一面トップに、同紙が行った全国22大学の学長への秋入学に関するアンケート結果を発表。
それによると「回答した18校のうち9割近い16校が秋入学移行に前向きな姿勢を示した」としています。
また浜田純一学長は、東大単独ではなく他大学と足並みをそろえて実施する考えを明らかにするとともに、有力大学との協議組織や産業界と大学側との協議組織を設けることも明らかにしています。
大学間の協議組織は、東大のほかに京大、阪大、東北大などの国立大学(9校)に加え、早稲田、慶応の11校に参加の打診を行っているとしています。
秋入学になると学生は、4月の合格発表から半年間、入学を待たされることになります。この「ギャップターム」をどう過ごすかということや企業の新卒採用、各種の国家試験とのタイミングのずれなどさまざまな課題もあり、調整は難航しそうです。
東大の発表を受け平野博文文部科学相は20日の閣議後の記者会見で、「大学改革の大きな試金石になる。(学内での議論を)前向きに見守っていきたい」。
続けて、「世界の国の7、8割は大学の入学・卒業時期が秋で、日本だけが4月だとこれだけグローバルに時代が動いている中で支障がある。秋入学は一つの方向性だと思う」とコメント。秋入学は経団連などの経済団体トップからの賛同もあるようです。
■なぜ米・英の大学が優れているのか
東大の秋入学への全面移行の理由のひとつに国際的な大学間競争への対応を挙げていますが、このことについて興味深いデータがあります。
英国高等教育専門誌「Times Higher Education」は昨年10月、毎年恒例の世界大学ランキングを発表しています。8年連続でトップを飾っていたハーバード大学は2位となり、今回1位はカリフォルニア工科大学でした。日本の大学では、東京大学がアジア勢としてはトップにランクされているものの全体としては30位。
この世界大学ランキングの評価軸は、「学習環境(Teaching)」「研究成果(Research)」「引用数(Citations)」がそれぞれ30%、「イノベーション(Industry income)」が2.5%、「国際性(International outlook)」が7.5%となっています。
上位は、カリフォルニア工科大学やハーバード大学のほか、スタンフォード大学やケンブリッジ大学、オックスフォード大学など米・英の主要大学で占められています。
日本の大学は京都大学が52位、東京工業大学が108位、大阪大学が119位で東北大学が120位。私学では慶應義塾大学が301-350、早稲田大学は351-400の中にランク。
英語圏の大学へのスコアが高いのはいささか気になりますが、日本の大学の秋入学への移行は、こうした世界における日本の大学の実情を踏まえると避けて通れない問題のように思えます。
日本が一国だけで生きていけない以上、どのように国内外から有能で国際的な人材を養成・輩出するかは国の存亡に関わる問題。
早稲田大学の私の授業、「パブリック・リレーションズ論」を受講する学生も海外留学する際に戸惑うのは入学時期の違い。外国との秋入学を受身に捉えるのではなく前向きに捉え、その実現に努力することがいま求められているのではないかと考えています。
先日、長い親交のある友人からIESE(イエセ) Business Schoolのパンカジ・ゲマワット(Pankaj Ghemawat)教授が2月下旬に来日するという知らせを受けました。IESE は、スペイン発祥の世界トップ・クラスのビジネス・スクール。
IESE経営大学院については以前このブログでも紹介したことがありますが、バルセロナ、マドリード、ニューヨーク、ミュンヘン、サンパウロにキャンパスを展開し、グローバルでMBAやエグゼクティブMBAをはじめとする経営者育成プログラムを提供。
ゲマワット教授は最年少でハーバード大学の教授になった記録をもつビジネス戦略論の大家で、日本でも『コーラの味は国ごとに違うべきか』(2009、文芸春秋刊:原書名Redefining Global Strategy)の著者として知られています。
友人によると、ビジネス・スクールに留学する日本人の流れはここ5年の間で大きく変わり、かつて主流であったアメリカからヨーロッパにシフトしているようです。
面白いことに、IESEへの昨年の日本人留学者数、21名(10名は私費)は、欧米のビジネス・スクールの中で最大数になっています。
ゲマワット教授が来日中にお会いすることが出来れば、何故、非英語国のスペインから発祥したIESEへの人気が高まっているのか、またハーバード大学、カリフォルニア工科大学など米・英の大学が優れているとされる理由はどこにあるのか、どうして世界の人気がこれらの大学に集中しているのか、是非、尋ねてみたいと思います。
「日本の大学の秋入学」に対する私の考え方に多くの示唆が得られるのではないかと期待しています。
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井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)は2011年5月12日に地方自治体など公的機関向けに「ツイッターマニュアル」を無償で提供することを発表しました。ご興味のある公的機関の皆様は是非、お問い合わせください。詳しい情報はWebサイトでご覧になれます。
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日本パブリックリレーションズ研究所(JPRI)では、東日本大震災で風評被害の深刻な影響を受けた観光業界、とりわけ自治体観光局や観光関連団体に対し、「風評被害を避けるための情報発信方法」の無料相談を2011年5月25日より開始しました。詳しい情報はWebサイトでどうぞ。
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2012年01月16日
盛況だったラスベガスのCES 2012
~世界最大の家電見本市
こんにちは井之上 喬です。
このところ寒い日が続いていますが風邪などひいていないでしょうか?
私のブログでも恒例になりましたが、毎年、年初に米国ネバダ州ラスベガスで開催されているインターナショナル・コンシューマ・エレクトロニクス・ショー(International CES)。今年も現地時間の10日から13日まで現地で開催されました。
新聞やテレビでも報道されたので情報を入手された方も多いのではないでしょうか。
井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)は、このCESの開催母体である米国家電協会(CEA)に対して、日本市場向けのPRコンサルテーションや開催期間中の現地への日本からのメディアツアーの実施などを行っています。
今回も現地入りした井之上PRスタッフからの報告を織り交ぜながら、私たちに身近な民生機器の最新事情の一端を探ってみたいと思います。
■きらりと光る技術も
CES 2012については事前の日本のジャーナリストの皆さんとの話では、「今年の目玉はなんになるのでしょうね?」などのやり取りが多く聞かれ、事前のおおかたの予想は目玉に欠けるのでは、といった声もあがったほどです。
しかし、いざ幕を開けてみると世界各国から予想以上の来場者数で会場は混乱し期間中の来場者数は14万人以上になるのは確実。
CESでは開幕前日に多くのプレス・カンファレンスが行われるのですが、今年も1月9日に多くの会見が行われました。
今年は最近になくメディアやアナリストの数が多く、注目企業のカンファレンスには開会時間前から長蛇の列ができ、人気企業のサムスンのカンファレンスなどでは入場制限がとられたようです。
また、日本では考えられないことかもしれませんが、カンファレンスが同時開催されたり、ぎりぎりの移動時間で設定したりと過密スケジュールのためカンファレンスを中座して次のカンファレンスに広大な会場を移動する記者の方々も多く見られたようです。

今年の目玉はやはりというか予想通りスマートフォン、タブレットPC、スマートテレビ関連そしてエネルギー関連だったようです。
そして最近の世界規模での展示会の一般的な傾向ですが、日本企業の元気のなさと対照的に韓国、中国などの力強さがやはり顕著だったようです。
そんな日本企業の中で頑張っていたのが4月に平井一夫社長の就任を発表したソニー。
特にテレビ関連では年末に有機ELからの撤退が報道され、ハード技術からソフト関連に大きく舵取りがされることで今後、これまでのようなわくわくするような製品開発は望めないのかと考えていた中で、今回のCESで突然ともいえる感じで出展してきたのがCrystal LED Display。
ディスプレイ業界はこれまでも多くの技術が登場しては消えていった技術革新が激しい業界です。今秋のソニーのCrystal LED Displayは多くの記者の評価でも、非常に完成度が高く期待される、動画応答性がCRTのようだ、など今後に期待するコメントが多かったようです。まさにきらりと光る革新的な技術と言えるのではないでしょうか。
今年の年頭のこのブログでも触れましたが、いま日本を本気で変革しなければならないと強く感じています。そのための1つに技術革新も含まれます。
これまで日本企業は技術開発の面でも一番風呂に入ることをためらい、何度も悔しい思いをしてきた経験を持っています。少しの可能性にも賭けてみる、そのためのイノベーションを日本企業に期待したいところです。
■米国でも頑張っているキャラクターに感動
今回のソニーの例を見てもまだまだ日本企業は大きな可能性を持っていると確信しています。
もう一つ会場でうれしかったのは日本でも業界で人気のキャラクターが米国でも頑張っていたことだそうです。
それは村田製作所のムラタセイサク君。自転車と一体になった小型ロボットで、米国ではMurata Boy(写真)の名前で得意の細い坂道を自転車で登り、多くの来場者の注目を集めていたとのこと。

ホームページによると、ムラタセイサクくんのプロフィールは、身長 50cm、体重約5kgのてんびん座生まれ。
趣味はサイクリング、夢は世界一周、座右の銘は七転び八起き、だそうです。ムラタセイサク君をご存知の方は、笑いながら大きくうなずかれることでしょう。
日本生まれで世界に活躍するキャラクターの育成なども日本変革のきっかけをつくる大きな要素といえます。
世界的な不況の風が吹きかかる中、夢と希望を創り出す企業のCESへの意欲的な出展は、私たちに力を与えてくれます。
企業の形をつくりだすのにパブリック・リレーションズ(PR)の手法は有効です。
グローバル市場を求める日本企業がブランド力を高め、世界で成功することが出来るように今年は真剣に取り組んでいきたいと考えています。
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2011年11月14日
地球規模の課題、世界人口が70億人を突破
~食糧やエネルギーなど、このまま膨れるとどうなるのか?
寒さを感じるようになりました。皆さんお元気ですか、井之上喬です。
10月31日に「世界人口が70億人を超えた」と国連人口基金(UNFPA)から発表されました。これにともなって31日に生まれた赤ちゃん全員を「70億人目」と認定し、日本ではUNFPA日本事務所から認定証が発行されることになりました。全世界で21万人の新生児が認定されたと推計されます。
厚生労働省の「人口動態統計」によれば日本での2009年中の出生数は107万35人。実際の一日当たりの出生数は日によって大分異なるようですが、これを365で割って一日平均を算出すると2,931人となります。日本では約3,000の新生児が「70億人目」と認定されたことになります。
■今世紀末に世界人口は100億人を突破
世界人口は1950年代から急激に増加しています。UNFPAが発行している世界人口白書によると、世界の平均寿命は1950年代の48歳から現在は68歳に伸び、医療技術の進歩は乳児死亡率を出生1,000あたり133から三分の一の46に減少させたと報告しています。
1800年代初頭の世界人口は10億人でした。120年の時を経て1927年には20億人に達しています。世界人口が30億人に達したのは59年で、74年に40億人、87年には50億人、1999年には60億人を突破しました。
1804年から1927年まで世界人口が10億人増加するのに120年かかっていました。しかし、1987年以降は恐ろしいほど加速され、10分の1の12年ペースで10億人が増加しています。
これからは先進国を中心に少子化が進み、人口増加のペースは緩やかになるものの、UNFPAは今世紀末に世界人口は100億人に達すると推計しています(下図参照)。

また、世界人口白書では60歳以上の人口は現在の8億9,300万人(全体の13%)から、2050年には24億人(同26%)となり、世界的にも老齢化が進むとしています。
世界人口の急増は、医療・保健基盤の強化や飢餓・貧困からの救出など世界を健康で豊かな社会へと導くさまざまな努力の成果といえる半面、70億人を支える水や食糧、エネルギーを今後どのように確保し、分配するかといった地球規模の課題も浮上しています。
■課題解決先進国日本の役割
2021年にはインドの人口は14億人に達すると推計され、「一人っ子政策」を掲げる中国を抜いて人口世界一となる可能性があります。
インドでの今年度の国勢調査によると人口12億人のほぼ半数は24歳以下の若年層で構成されています。2021年には何とも若い世代で構成される世界一の人口大国が誕生しそうですね。
インドと対照的なのが人口の減少傾向と老齢化が進行する私たちの日本。有効な少子化対策が施されなければ長期的にみて日本の総人口は、2050年頃から1億人を割り込み、2100年には6,250万人程度になると推計されています(人口問題研究所データ)。
年齢別でみると2010年では65歳以上の高齢者が総人口に占める割合が23.0%でした。2050年になると35%を超えると推計されています(国立社会保障・人口問題研究所)。なんと2.8人に一人が65歳以上ということになります。
私のブログ(2011年6月6日)でも紹介したように、この地球では環境問題やエネルギー問題、人口問題、核拡散問題などさまざまな問題が噴出しており、これらの課題をどのように解決していくか人類の叡智が求められていると思います。
世界が抱える課題に対して日本は、課題解決先進国としてそのソリューションを提供しうる多くの経験を重ねてきています。
日本ほど急速な高齢化社会を迎えている国は世界にありません。国の人口の増減は国力、産業構造、ライフスタイルなど経済や産業、文化、そして日常生活などのあらゆる面に影響を及ぼします。この面でも日本は、世界の範となる高齢化社会モデルを打ち出すことができるのではないでしょうか。
地球上の人類の営みがどの程度の人口まで許容できるのか分かりませんが、人口増加が前提になっている、現在の経済成長モデルから人口減少社会でも人々が享受できる高齢化社会型の新しいモデル開発に取り組む意義は大きいはずです。
野田総理は先週末(11/11)、ハワイでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)を前にTPP交渉参加について「関係国との協議に入る」と微妙な表現ながらも参加方針を表明しています。
このTPP交渉参加についても、人口問題や50年後には確実に訪れる超・高齢化社会を見据えた視点からの議論があってもよいのではないかと思います。
私事になりますが10月から「国家公務員宿舎の削減のあり方についての検討会」(座長:藤田幸久財務副大臣)のメンバーにパブリック・リレーションズ(PR)の専門家として参画しています。
高齢化社会モデルづくりといった国家的プロジェクトのなかでも、私たちPR専門家の果たす役割は大きいと考えています。
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「中国最新メディア事情」セミナーのご案内
インターネットやツイッターの爆発的普及により、中国のメディアは大きな変貌の時を迎えています。私の会社(井之上パブリックリレーションズ)では、日々変化する中国経済とメディア事情に精通した日・中お二人のジャーナリスト、アジア通信社社長の徐静波氏と朝日新聞国際編集部次長の野嶋剛氏をお招きして「中国最新メディア事情」セミナーを企画いたしました。両氏の豊富な取材経験に基づいた最新の中国メディア情報と中国市場における日本企業のメディア・リレーションズに対するアドバイスは、現地での事業成功の大きなカギとなると考えております。ぜひこの機会にご参加ください。
■詳細・お申込み:http://www.inoue-pr.com/
■日時:2011年12月5日(月)14:00~17:00
■会場:丸ビルホール&コンファレンススクエア
8F Room 1 東京都千代田区丸の内2-4-1丸ビル
■参加費:6,000円(税込)
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2011年09月12日
「節電の夏」
~節約は日米共通の生活スタイル?
皆さんお元気ですか、井之上 喬です。
9月11日は、10年前に米国で同時多発テロが起きた日。そして今年3月11日の東日本大震災発生から6ヶ月目です。
政府は9日、東京電力と東北電力管内に発動していた電力使用制限令を全面的に解除しました。
記録的な猛暑が続いたこの夏の電力危機をなんとか回避できたのは、70余日にわたって企業や家庭が節電に努めたことによります。同時に大震災を起因に福島原発事故がもたらした電力危機は、生活スタイルのさまざまな面に影響を与えることになりました。
この電力使用制限令解除にタイミングを合わせるかのようにダイキン工業が、9月8日に「節電の夏を過ごして変わったもの、変わらなかったもの」について意識調査の結果をリリースしています。その発表から節電の夏を過ごした人々の意識や行動の変化を簡単に紹介します。
■84.3%と高い節電意識
先ずは「節電意識」についてですが、「今年に限らず、今後も意識して節電したい」の回答は84.3%と高い節電意識が認められました。
この数字から節電が一過性の緊急対策ではなく、日常的に意識すべきものとして定着しつつある傾向が伺えます。
「今夏の節電をきっかけに、夏の避暑対策に対する意識や考えが変わりましたか?」については、全体で41.8%の人が「変わった」と回答。
具体的には、エアコンでの避暑対策を見直し、昔ながらの打ち水やすだれ・よしず、対策グッズの活用など、避暑対策が多様化する傾向が見られました。性別で比較すると「変わった」と回答した男性の34.3%に対し、女性は49.4%と上回っています。
また、「今年の夏、実施したエアコンの節電対策は?」については、「使用を控える」(57.7%)、「扇風機と併用する」(53.4%)「使用時間を短くする」(41.8%)など、エアコンの稼動を減らす傾向が顕著に出ており、エリアでみても、東北・関東エリアはその他エリアよりも高くなっていました。
今年の夏も異常気温でしたが、電力危機にあっても節約精神を発揮し昔ながらの避暑法を取り入れ、工夫しながら自然を生かすなど、何か奇妙な充実感があったように思います。
この調査は、インターネットによるアンケート調査で2011年9月3日と4日の両日、全国20~70歳代の男女624名を対象に実施。詳細を知りたい方は以下のURLにアクセスしてみてください。
http://prw.kyodonews.jp/prwfile/release/M000081/201109089037/_prw_fl1_2501Boif.pdf
■大きな問題を解決する小さな発想
米国はあの9・11に続き、アフガン紛争、イラク戦争とテロ掃討を大儀名分に超大な財政支出を行うなかで2008年、大型の金融危機リーマン・ショックに襲われました。
リーマン・ショック以降、消費の冷え込んだ米国で消費者の新たな消費トレンドを解説したマーケティング本、『スペンド・シフト』については8月1日号のこのブログでも紹介していますが、そこで見えるのは日米で共通する節約意識の高まりです。
『スペンド・シフト』では、強力なダブルパンチを受けて夢から醒めた米国の消費者が、借金による消費やモノの過剰と決別して、節約と投資へと向かっていると述べられています。
また、『スペンド・シフト』が伝えようとしている米国の変化について「大きな問題を解決するには小さな発想が求められる」といったキーワードがあります。
つまりこれは、米国の都市(デトロイトなど)の衰退や金融危機、信頼の喪失といった大きな問題の多くは、小さな問題の集まりとして眺めることによって対処への道筋が開けるはずだという考え方によるものです。
この考え方は、例えば地元で買い物することでその利益が還元され、地域の活性化に繋がる。個々の消費者が借金を押さえて倹約に努める姿勢が健全な金融システムを取り戻す道筋となるといったもの。
テロと金融破綻が混乱(カオティクス)を招いた米国と、失われた20年と自然災害により混乱を生じた日本とではその要因は異にするものの、それぞれの経済や社会生活を立ち直らせていくためには、節電とか節約といった小さな発想の積み重ねが大事であることを感じ取ることができます。
こうした小さな発想の積み重ねから生まれる新たな生活スタイルや価値観を広く社会で共有化させていくことも、私たちパブリック・リレーションズ(PR)に携わるものの使命のひとつではないでしょうか。
そして私たちには、リーマン・ショック後の金融問題や福島原発問題、そして世界中を襲っている異常気象など、人類が投げかけられているさまざまな課題をしっかり見据えて行動することがいま問われていると思うのです。
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2011年09月05日
野田内閣誕生
~国際社会の目と代表選挙の在り方
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
民主党の野田新政権が誕生しました。排除から融和へ大きく舵取りを行った野田内閣は9月2日に発足。
結党の精神に戻り、決戦投票では党内融和をはかり出直すことを同僚議員に訴えたことが奏功し今回の選出となりました。
これに先立つ8月29日、過去最多の5人の議員(前原・馬淵・海江田・野田・鹿野各氏)により争われた民主党代表選挙は、最終的に海江田、野田両氏による決戦投票の結果、野田佳彦氏が新党首に選出され、30日に国会で菅首相に代わり第95代新首相に指名されました。
民主党が政権を担当して3人目の代表で首相となったわけですが、政党支持率調査でも予想外の60%前後を示し、ダッチロールを続けていた民主党が、さまざまな学習をした結果その効果が現れてきたものと考えられます。
■国際社会で失う信頼
9月1日の朝日新聞朝刊では、「毎年違う首脳が演説・・・日本だけ」とする見出しで日本の首相の頻繁な交代について報じています。
国連総会の首相演説では、193の加盟国でほとんどの国が毎年秋の国連総会の一般討論で演説する中、国家元首や政府首脳が3年続けて演説した国が約40カ国あったものの顔ぶれが変わったのは日本だけとし、「肩書きは同じなのに演説する人物が毎年異なる国はなかった」としています。
先日ホワイトハウスの報道担当者が、記者から日本の新首相の名前を聞かれて答えられず苦笑いをしていたテレビ映像を見ましたが、実に恥ずかしい思いをしました。
それにしても日本の政権の短命度は際立っています。1987年11月の竹下内閣から2011年9月の野田内閣までの約24年間に実に18名の首相が就任しています。
この間の米国大統領は、レーガン大統領に始まって現在のオバマ大統領で5名。これでは日本が官僚統治国といわれても仕方のないこと。
しかし日本の首相交代が日替わり弁当のように短いのはこの20数年に限ったことではありません。
ちなみに95代の野田首相に至るまでに、1885年の首相誕生から約125年の間で95人の首相が就任(再任含む)。その平均任期は一人1.3年でしかありません。
同じ時期の米国では、1885年のクリーブランド大統領から現在のオバマ大統領まで23名。つまり1代当たりの在任期間が米国は日本の4倍強ということになります。
日本が議会制民主主義のお手本にしている英国でも、首相就任は同じ時期に31名。日本の3倍の在任期間です。まずこの違いを正すことで、官僚主導から真の政治主導のためのインフラストラクチャーを整えることが可能になるものと考えます。
また日本の外交がうまくいかない大きな理由も、交渉相手となる日本の外務大臣の交代頻度の多さから来ているといえます。2009年1月に国務長官に就任したヒラリー・クリントンのカウンターパートとなる日本の外相は、最初の自民党麻生政権下の中曽根弘文外相にはじまり、すでに5名(臨時代理除く、岡田克也、前原誠司、松本剛明、玄葉光一郎氏)を数えています。これでうまくいくはずはありません。
■政権与党の代表選挙の在り方
1998年に結党した現在の民主党の代表選挙は、2年に1回、西暦の奇数年の9月末日の任期満了に伴って行われていますが、任期途中の辞任などもあり今回の野田代表は9代目になります。
民主党代表の任期は、任期途中で代表が代わった場合には、新代表は前任者の残任期間を引き継ぐ仕組みとなっているようです。野田代表(総理)の場合、菅首相の退任に伴うもので、代表の任期は来年9月まで。
何事もなければ次の代表選挙の2013年の9月末までの2年間、任期が与えられることになります。
しかし野党時代ならいざ知らず、また諸外国と比べてもあまりにも短い代表任期に対する見直しの声も民主党内にあるようです。政権与党となった民主党では、事実上の総理を選ぶ、「政権与党の代表選」のあり方を考える検討委員会がスタートし、現在議論されています。
日本の政党の代表選挙は少なくとも4年に一回が妥当ではないでしょうか?国民は在任中に政局に走らず、じっくり仕事に取り組んでもらいたいと思っているはずです。
ちなみに自民党の場合、当初は総裁任期を2年と定めスタートしましたが、紆余曲折の後、2002年には任期3年とし現在に至っています。
その自民党にしても、1955年の結党以来正式に総裁が選出された1956年から2009年の谷垣禎一総裁選出までの約54年間で実に24名の総裁が代わっています。
ご存知のように、米国では民主党や共和党などの政党には代表選ともいえる大統領候補選挙が4年に1回。英国、ドイツなどもおおむね4年―5年に1回です。
日本では党の代表や総裁がこれだけ代われば首相も代わらざるを得なくなるわけで、いったいなぜこのような制度がこれまで放置されていたのでしょうか?
日本の政治制度改革と政治風土の変革は喫緊の課題といえます。これらの改革に取り組み、国民や他のステークホルダーの理解を得て速やかで無駄のない行動をとるためには、パブリック・リレーションズ(PR)の力が必要とされます。
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2011年08月29日
ジョブズ氏CEO辞任に感じる大転換期
~リーダーに求められるストーリーテリング力
こんにちは井之上 喬です。
残暑が厳しいですが、今週から多くの学校で秋学期が始まります。
夏の思い出を胸に飛躍の秋になると良いですね。
先週もさまざまな動きが国内外でありました。リビアでのカダフィ政権の崩壊、ムーディーズが日本国債格下げ、島田伸助の芸能界引退、民主党代表選挙への立候補の動きなどなど。
そのなかで衝撃的だったのは米国時間8月24日、アップルのスティーブ・ジョブズCEOの辞任発表でした。
今年1月から病気療養に専念。彼の病状からいつかはこの日が来ると思っていましたが心配されます。
■パソコン時代の終焉
くしくも今年は1981年8月にIBMが「IBM-PC」を発売し、パソコン時代が幕を開けてからちょうど30年の節目を迎えました。
日本経済新聞社も大型特集企画「パソコン30年 先駆者たちの証言」を8月9日の日経産業新聞紙面から連載していました。初回の見出しは『「ジョブズの予言」超す進化』でした。
どういうことかと記事に目を通すと、「・・・実はジョブズは10年前、記者とのインタビューで台頭し始めた高機能携帯電話の将来に疑問を呈し、「パソコンは情報端末の主役であり続ける」と語った。」と“予言”を紹介。
しかし、2011年6月の新しいクラウドサービス「iCloud」の発表では「パソコンはまもなくデジタルライフの主役ではなくなる」とパソコン時代の終焉を宣言したとしています。
このところヒューレット・パッカードがパソコン事業の売却を検討しているとの報道や、ハイテク調査会社IDC社による、2011年第2四半期の世界パソコン市場での中国の出荷台数が米国(1770万台)を抜き去り初めて世界トップ(1850万台)に躍り出たニュースなど、パソコンを取り巻く環境の激変には目を見張るものがあります。
パソコン業界は地政学的にみても、またスマートフォン(高機能携帯電話)の台頭によるプラットフォームの変化などからも、いま未曽有の転換期にあるといえます。
デスクトップPCの機能が、今まさに手のひらのiPhoneやスマートフォン、タブレットPCで実現できるようになりました。
わずか30年ですが劇的なパソコンの進化の中で、ジョブズ氏はアップルを株式時価総額で世界一のIT企業に育てあげたカリスマ経営者。ジョブズ氏の後任には、順当にCOOとしてジョブズ氏を支えてきたティム・クック氏が昇格しました。
アップル社が井之上PRのクライアントだった1984年の1月24日、世界同時発表のために東京で最初に「Macintosh」の発表を行いました。当時IT業界の記録となった200人近い報道陣が出席するなかで、熱気あふれる記者会見を開催したことが昨日のように思い出されます。
■新しいリーダーに求められる資質とは
S・ジョブズ氏とは80年代の初頭にシリコンバレー、クパティーノのアップル本社で会ったことがあります。当時日本進出に注力していたパソコン黎明期のエキサイティングな空気を共有させてもらいました。
彼とは詳しい仕事の話はしませんでしたが、そのときの印象は「とんがったカリスマ青年」といった感じ。
アップルIIにしてもマッキントッシュの前に発表(1983年)したマウス型の「Lisa」にしても、その開発理念や発表時のユニークなプレゼンテーションスタイルなど、彼から発せられるメッセージにはいつも心躍らされる説得力がありました。
以来、カリスマ性とともにストーリーテリングができる経営者の一人として、私は彼のプレゼンテーションには常に注目してきました。
経営トップが自ら語るストーリーテリングはパブリック・リレーションズ(PR)によって磨かれます。なぜならストーリーは、リレーションシップ・マネジメントが理解できないと語れないからです。
パソコンに代表されるIT業界だけではなく、すべての産業でグローバル競争が激しくなっています。日本企業にとっても規模の大小を問わずグローバル化は待ったなしの状況です。
新たな経営モデルを模索しながら、時代の流れを敏感に読み取る経営体制、これまで以上にスピードと決断力が経営トップに求められています。
いままさに経営トップによる、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーに対する新しい企業像や企業ビジョン、そして自らの思いをアピールするためのストーリーテリング能力がリーダーの条件として求められているのです。
8月29日の午後には新しい民主党の代表が決まります。世界に向けしっかりとストーリーテリングができる日本のリーダーの登場を切望しています。
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2011年07月25日
デジタル全盛時代だからこそアナログにも目を
向けよう ~紙媒体の衰退とアナログTV終了に思う
皆さんこんにちは井之上 喬です。
今回のブログでは、最近のアナログ時代からデジタル時代への移行を象徴する2つの出来事を取り上げてみたいと思います。
■あの『ぴあ』もすべて休刊に
1つ目は7月21日に休刊した『ぴあ首都圏版』のことです。1972年7月の創刊から39年間、映画や演劇、音楽、芸術、スポーツなどの開催情報やチケット情報を提供してきました。
私も『ぴあ』を携えていろいろなイベント情報を入手したものです。首都圏版は1980年代に50万部を超す発行部数を誇っていましたが、インターネットの普及で最近は約6万部に落ち込んでいたようです。
首都圏版の休刊で全国すべての『ぴあ』が終了、今後はインターネットでの情報配信が事業の中心になるようです。
ぴあの休刊に関連し、タウン誌の研究で知られる東京経済大学名誉教授の田村紀雄氏が、毎日新聞の7月21日夕刊で、ぴあが出版界にもたらした2つの革新について触れています。
1つは「伝統的な流通を通さない直販方式」、これはその後のタウン誌のお手本になりました。
2つ目は「情報を分類して提供するディレクトリー化」です。このことによりぴあは、事件でもない生活情報を一覧にして提供、この手法は今や他のメディアでも定番になっています。
しかしミニコミ誌からメジャーな雑誌に成長したぴあも、インターネット時代の大きな流れの中で“紙”媒体からの撤退を余儀なくされました。
紙媒体の窮状は以前から指摘されており、出版や新聞業界が構造不況業種とのレッテルを貼られて久しくあります。
紙媒体は、新聞や雑誌が丸ごと手にできることで全体が無駄な時間をかけることなく簡単に把握できる利点があり、無くなることはないと思うものの、一方で最近のスマートフォンやタブレットPCの普及が新聞のデジタル版や電子出版の動きを加速させているのも事実です。
インクの匂いがする紙媒体、個人的にはとても愛着がありこれからも手放せないと思います。
■テレビもデジタル時代に突入
もう1つのアナログからデジタルへの移行は、地上アナログ番組放送の終了時刻が7月24日正午をもって、大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県を除き、デジタル化へ移行したテレビ放送です。
テレビのデジタル化は高画質の映像配信を可能にしたり視聴者が参加できる双方向サービスを可能にするほか、電波の有効利用にも貢献すると期待されています。
デジタル化により、ハイビジョンからスーパー・ハイビジョンへの高画質化の流れがさらに加速するとともに、テレビのインターネット端末としての役割も注目されており、ホーム・ネットワークの主役の座がテレビにとって替わる日もそんなに遠くはないでしょう。
紙媒体から電子媒体へ、アナログ・テレビからデジタル・テレビへ、このような流れはデジタル全盛時代を象徴する大きな動きですが、忘れてならないのはそれを支えているのはアナログだということです。
何を言っているのかと不思議に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、高度にデジタル化されたテレビにしても、現実のアナログの情報を取り込んでデジタル処理をして、最終的には人間の目に見えるアナログに戻し情報を配信するといった仕組みになっているのです。
こうしたシステムには高度なデジタル処理を行うデジタル半導体とともに、アナログ技術として入力部でのアナログ・デジタル変換、出力部でのデジタル・アナログ変換といった役割を果たす高度なアナログ半導体が必要とされています。
しかし、このアナログ半導体をリードしているのはTI、アナログデバイセズ、リニアテクノロジー、マキシム、インターシルなどほとんどが海外のメーカーという現実をご存知でしょうか。
以前は日本の半導体メーカーもアナログ技術者を多く抱え世界をリードしていましたが、デジタル時代の到来とともに各社右へならえと技術者をアナログからデジタルにシフト、アナログ技術の開発がおろそかになり現在のような状況になったようです。
今後、ますますデジタル化が進展する一方で高度なアナログ技術の重要性が増すという事実にも目を向けたいと思います。
媒体がデジタル化されても、伝えたいもともとの情報はアナログです。時代の流れとともに、伝えたい情報をいかにその時代の主流の媒体に合わせて発信するかが重要になってきます。
ここで大きな役割を果たせるのがパブリック・リレーションズ(PR)。伝えたい情報を、いかにさまざまな媒体をコミュニケーション・チャンネルとして駆使し、最終のターゲットやステークホルダーに正しく伝えるか。ますます私たちの果たす役割は大きいと肝に銘じたいと思います。
ところで某国の総理大臣にも、バランスの良いアナログ/デジタル変換技術が備わっていれば、国民との双方性コミュニケーションもずーっとスムーズになるのかもしれませんね。
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2011年07月11日
七夕の日に思ったこと
~坂本九とスペースシャトルからのメッセージ
こんにちは、井之上 喬です。
東日本大震災から今日でちょうど4カ月が経ちました。
雪の映像が流れた被災地も今は夏、時間は確実に流れていますが、政治の不能と福島原発事故の影響で復興には長い時間が必要とされています。被災された皆さん、特にお年寄りやお子さんは健康維持にくれぐれも留意していただきたいと思います。
さて7月7日は七夕(たなばた)。中国の故事にある織姫と彦星が「天の川」で1年に一度会える日とされています。東京の多くの商店街や駅頭、ホテルのロビーなどには、さまざまな願いを込めた短冊や七夕飾りで彩られた笹が飾られていました。大震災からの、1日も早い復興を願う多くの人たちの短冊も全国で飾られたことでしょう。
七夕といえば有名なのが仙台七夕。仙台商人の心意気を示す豪華な笹飾りで毎年多くの観光客を誘致しています。今年は開催が危ぶまれましたが、8月6日から8日まで「復興と鎮魂」をテーマに開催され、175万人の人出を予想しているとのこと。
暑い夏、いつもの季節より夜更かしをして星空に目を向ける方も多いのではないでしょうか。
■夜空に坂本九が甦った
東日本大震災後、テレビやラジオなどは被災地の報道を流し続けていましたが、そんな中で注目されたのが歌手坂本九の「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」でした。
私の世代には何とも懐かしい歌ですが、その優しさと詩にこめられた坂本九のメッセージにはこれまで多くの人が勇気付けられてきました。今回も震災後のラジオやテレビのCMソングとして流れるなど、改めて多くの日本人の共感を呼び起しました。
今年はその坂本九の生誕70周年、そして「上を向いて歩こう」(作詞:永六輔 作曲:中村八大)が発表されて50年の節目を迎えるそうです。
ご存知のようにこの歌は、日本国内で愛されただけではなく「SUKIYAKI」として世界70カ国で発売され、1963年6月には日本の曲として初めてビルボード第1位を記録、世界的な大ヒットになりいまでも世界中のアーティストに歌い続けられている名曲。
震災後の多くの反響にこたえ、EMIミュージックは7月13日に「上を向いて歩こう」発売50周年記念でCDシングルとミュージック・テープを発売するとのこと。このCDには、上を向いて歩こう、見上げてごらん夜の星をなど4曲が収録されるそうです。
また、7月16日公開のスタジオジブリの映画「コクリコ坂より」の挿入歌としても、上を向いて歩こうが使われるほか、坂本九関連のDVDや書籍の出版も予定されているようです。
1985年に起きた日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に巻き込まれていなければ、今でも70歳の現役歌手として心に染み入る、美しい歌声が聴けたかもしれないと思うと残念です。
■最後のスペースシャトル
最近の空や宇宙にまつわる話題として節目を迎えたのが、現地時間の7月8日に打ち上げられたスペースシャトル「アトランティス」。
今回の飛行を最後に宇宙開発のシンボルであったスペースシャトルは30年の歴史に幕を閉じることになります。
1981年4月12日にケネディ宇宙センターから打ち上げられたスペースシャトル第1号機「コロンビア」は、米国の宇宙開発の威信をかけた開発であり、奇しくもこの日は旧ソビエト連邦のガガーリンが史上初の有人宇宙飛行に成功してからちょうど20年目だったのだから面白いですね。
その後スペースシャトルは、宇宙開発の象徴として毛利衛さんをはじめ向井千秋さん、若田光一さん、土井隆雄さん、野口聡一さん、星出彰彦さん、そして山崎直子さんと7人の日本人を宇宙に導いたのは記憶に新しいところ。
しかし、1986年のチャレンジャー、2003年のコロンビアと2度の悲劇に見舞われ安全性とともに打ち上げ費用の高さ、そして老朽化により今回の飛行が最後になりました。
坂本九生誕70年、上を向いて歩こう発売50年、そしてスペースシャトルが30年。これからもさまざまな分野でその時代を創り出す人やモノは出現することでしょう。
パブリック・リレーションズ(PR)に携わるものとして、このような注目されるトピックや時代の潮目をタイムリーに見極め、それをいかに強いメッセージとして発信していくか、鋭い感性を常に磨きたいものです。
たまには帰宅途中に、遠い夜空を仰ぎ見るのはいかがでしょうか。新たな発見があるかも知れません。
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2011年06月27日
調査から聞こえる「被災者の声」
~震災経験で若者の意識に変化が
皆さんこんにちは、井之上 喬です。
6月24日の朝日新聞一面トップは、東日本大地震から3カ月経過したのを機に朝日新聞社と福島大学とが共同で行った東電福島第一原発事故よる避難住民への聞き取り調査結果を載せています。
「震災前に暮らした土地に戻りたい、でも戻れない…。多くの人たちがこんな思いを抱いている実態が浮き彫りになった。避難を強いる原因となった原発への視線も、極めて厳しい。」と報道されています。
「震災前に住んでいた地域に戻りたいですか」の質問に「戻りたい」「できれば戻りたい」と回答した人は79%。「戻りたくない」「あまり戻りたくない」が12%でした。
「原発利用の賛否」については避難住民の26%が「賛成」で「反対」が70%。
また、「これからの生活で不安に思っていること」については、「放射能の影響」が一番多く、次いで「収入」、「住まいのこと」、「自分や家族の病気」、そして「子どもの就学」が上位を占めました。
6月になって東日本大震災や福島原発事故に関する調査結果を報じる新聞紙面が目につきました。
今回のブログでは、いくつかの調査データを基に大震災の被災者や福島原発事故による避難住民の方々、そして海外からの声を拾ってみようと思います。
■日本政府を「信頼できる」がわずか14%
6月11、12両日に実施された朝日新聞の世論調査では、原子力発電の利用に「賛成」37%、「反対」42%という結果でした。男女別で見ると原発反対は、男性が34%、女性が50%で女性の反対意見が強く表れています。
前述の朝日新聞社と福島大学とで行った、避難住民を対象とした共同調査と比べ形式や対象が異なり単純比較できないものの、「原発利用の賛否」について賛成が11%マイナス、反対が28%プラスとその差が際立っています。事故に直接影響を被っている当事者と一般世論との乖離を感じます。
また、東海地震の想定震源域に位置し、菅首相の要請で全炉の運転を停止した中部電力の浜岡原発に対する静岡県民への世論調査では、浜岡原発の運転を再開せずにこのまま廃止することに「賛成」が50%を占め、「反対」の31%を上回りました(6/14朝日新聞朝刊)。
次は米国ボストンコンサルティンググループがインターネットを通じて米国、中国、香港、台湾、韓国の海外約2500人を対象に行った調査です。
訪日を控えている理由を複数回答で聞いたところ86%が「放射線物質の影響が心配」と答え、49%が「多くの人々が苦しんでいる中で日本に旅行するのは不謹慎」と回答。
また、訪日の安全性に関する情報源の評価を聞いたところ、日本政府を「信頼できる」と答えたのはわずか14%という情けない結果に終わっています(6/14日本経済新聞朝刊)。
折しも米国の人気歌手レディー・ガガさんが来日し、23日都内で記者会見。そのなかで震災後に外国からの観光客が激減していることに触れ「寄付を集め続けるだけでなく、日本は今や安全だと世界に知らせることも重要」(6/24朝日新聞朝刊)といったコメントを残しています。
信頼の薄いといわれる日本政府は、いまこそ世界に向けてパブリック・リレーションズ(PR)の視点から安全性を訴求する国家的キャンペーン戦略を構築し、その実行を通して国民や国際社会の信頼を取り戻していくべきではないでしょうか。
■新たな集団意識「4つのS」とは?
震災後に東京経済大学(東京都国分寺市)が実施した新入生調査結果が6月10日の日経産業新聞「市場トレンド」のコラム欄で紹介されています。
地震によって「人々の助け合いの大切さをより強く感じた」=92.2%、「生命の大切さをあらためて感じた」=89.0%「日本のあり方が変わると思う」=76.9%、「自分の生き方や価値観が変わると思う」=70.1%などの回答が見られました(複数回答)。
今後の行動については「もっとエネルギーの節約をしたい」=86.5%、「しっかりと学んで社会のために役立ちたい」=83.4%といった社会性や公共性を意識した回答も得られました。
この「市場トレンド」筆者の関沢英彦さん(博報堂生活総合研究所エグゼクティブフェロー・東京経済大学教授)は、「震災と原子力事故を経験した若者たちは「3.11世代」といった新しい集団意識を生み出していく。それは4つのSで表せる。」と述べています。
4つのSとは「シリアス(本気・まじめ)」、「セルフ(自分・自己)」、「シェア(分かち合い・助け合い)」、そして「セーブ(節約・省エネ)」のこと。
関沢さんは「消費の現場にも、こうした『4S意識』が影響を与えるのは間違いない。(中略)将来への『希望の設計』が感じられる商品が支持されるのである。」と結んでいます。
私たちパブリック・リレーションズ(PR)の実務家が、大学生や若年層をターゲットにしたPR戦略構築や実行プログラム、メッセージの作成の際に、またコンシューマ・リレーションズなどにおいて、この「4S意識」を考慮するのも良いかもしれません。
今回の大地震では、政府の対応をはじめマスメディアの報道のあり方、そして連絡・通信手段、水道・電気・ガスといったライフラインや原発問題、国際協力の体制づくりといった面で、PRの専門家が考えるべき課題や多くの教訓を残しています。
また、日本の原発のあり方を、改めて考えさせる出来事でした。このテーマについては別な機会にこのブログでお話したいと思います。
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2011年06月20日
連携カフェ:「私設・東日本大震災復興会議」開催
~急がれる原発被災地域児童の疎開
皆さんこんにちは井之上喬です。
東日本大震災から3ヶ月以上経つものの被災地はがれき処理、放射能対策などさまざまな問題を抱えています。民主党政権には菅直人首相の退陣時期に関して岡田克也幹事長との軋轢もみられるなど、震災復興に政府一丸の形が見えないのが極めて残念です。
政府は4月に、東日本大震災の復興ビジョンを策定する「復興構想会議」(議長・五百旗頭真防衛大学校長)を立ち上げましたが、先月「連携カフェ」が「私設・東日本大震災復興会議」を開催、私はそれに参加しました。
この連携カフェの代表は、小見野成一さんで産経新聞グループ在職中に立ち上げた組織で、私設復興会議はメンバーの佐野裕幸さんが企画担当し実現したもの。
会場は丸の内のビルの地下のカフェ・バー。 土曜日の昼に約20名が集まり開催されました(写真)。参加者は連携カフェのメンバーに加えて、NPO法人代表、弁護士、ビジネス・PRのコンサルタント、インキュベーター、元官僚、政治家の政策秘書、主婦、などさまざま。
■民間の知恵を生かす
連携カフェは、2008年にスタートした経済産業省の「創造的産学連携体制整備事業」を受託した、タマティエルオー株式会社の事業の一環として同年に始まったもの。
3年目となる2011年の連携カフェの概念は、オープン・イノベーションを創出する、連携交流の”場“作りや文理融合型及び老若男女混合型でアナロジー活かした連携、そして、独自の和風グローバル味を醸し出すビジネス・モデルの創造など。
「私設・東日本大震災復興会議」当日は、出席者の中から多くの提案がなされました。その中で印象に残ったものをいくつか紹介します。
あるメンバーは、阪神・淡路大震災の被害者の方々に東北の被災地に行ってもらい、話を聞いてあげたり思いを分かち合ったりする場を作る。
ある弁護士さんは、震災関係の法律相談を無償で行う。個別の案件については、成果報酬のみで着手金は無とする。同じようにPR会社(井之上PR)のコンサルタントは、公的機関向け無償危機管理コンサルティング(クライシス・コミュニケーション)や情報リテラシーの為のマニュアルの無償提供など。
携帯電話のコンテンツを制作する会社の人は、携帯用節電アプリケーションの開発提供や復興に役立つアプリケーション等の企画・開発を積極的に行う。
連携カフェのメンバーの一人は、多摩地域で新しい技術を持つ中小企業を被災地と連携して地域の復興の役に立てる。いろいろな発明・アイデアを支援に役立てる。
その中で、ある経営研究所の所長は、農林・漁業の6次産業化で食品加工・流通販売にも業務を拡大させ活性化を実現させ、新しい雇用を創出し若い人たちの地域離れを食い止めることが大切としています。これにより東北の企業から上場企業を創出することもできます。
また、すでに東日本で具体的な行動を起こしているメンバーも少なからずいました。NPO的な事業活動をしている人は、長期的に取り組むものと、今すぐにでもできる事案を仕分けし活動しているようです。
たとえば農業や漁業などの案件を、学生を含めたさまざまなチーム編成で進めています。農業分野では、処理の困難な火山灰を利用して単価も高く、収穫期も多いにんにく(復興にんにく)の栽培を実施。漁業分野では、東北の漁民たちが太平洋で活躍できる枠組みを国際的なプロジェクトとして推進。
林業分野では、ゴミの処理を予算の無駄使いに終わらせず、バイオマスなどの技術を使い代替エネルギーを目的とし利用することで、被災地との連携で行うと同時に日本の林業の再生を試みる。
また学生の就労を現実的なものにするために、NPOによる職業のバーチャル・カンパニーの働きかけを行っています。メディア対策では、中央メディアの情報がバラバラで現地が期待するように視聴者に届いていない。その対策として地方のメディア、コミュニティ放送局にお金をかけずハイビジョンで利用するプロジェクトを専門企業の協力を得て行っている。
元政治家の政策秘書は既に、東北の農産物を各都道府県のサービス産業に買ってもらうシステムを構築中。
産地直送に関わっている関係者からも農業関係の支援を提案。ネットでの収穫物販売促進をはじめとし、被災地での農業の打撃などから被災農家へ新農地の確保により代替農地を提案中。現在埼玉の奥武蔵など、多数の候補地を選び話を進めているようです。
企業のロジスティックスの専門家は、被災者は先の見えない事態に今一番ストレスを感じているはず。さまざまな手法はあるがまずそこから考えていく必要があるとし、失業率の高い震災地域での労働問題を解決するために市場を広げることが大切で、日本国内で事業展開している企業を、サプライチェーンを考慮しながら支援する必要があるとしています。
最後に、あるプロジェクト・マネジメントのコンサルタントは、震災復興への具体的なアクションの必要性を訴えていました。日本ではプロジェクトの効率化に対する関心が弱いとし、プロジェクト・マネジメントはリーダーシップやコミュニケーションの活性化に役立つとし、具体的に7月9日(土)10(日)に、「震災復興の創造的且つ迅速な実行に役立つプロジェクト・マネジメント(PM)入門セミナー」が実施されることになりました。
■原発被災地域の子供に国内留学を
私の提案は、被災地とりわけ原発被災地域の小学生児童(場合により中学生も)の国内留学でした。
戦時中の東京の学童疎開ではないですが、この事案は受け入れの自治体やNPOと調整し思い切って実行すべきことであると考えています。
最近の放射線測定数値は地域差や測定場所で異なり、住民の間に児童に対する放射能影響への不安が募るばかりです。政府は早急に対策を講じ、児童の県外移動を早急に検討する必要があります。
チェルノブイリ事故で多くの子供が甲状腺ガンにかかった事実を考えると、不透明な状況の中では早い時期に地域の子供たちを安全な地域に移動させるべきではないでしょうか?少なくとも今からその準備に取り掛かる必要があると考えます。危機管理下では、日ごろの準備が重要だからです。
幸い少子化の影響で、教室スペースに余裕がある学校の協力を得ることも可能でしょうし、廃校を利用して使うなど、受け入れ先の自治体と相談をすることで具体的な方法が見つかるはずです。
総務省統計局「日本の統計2007」では、福島県内の小学校は558校。そこに12万7千人の児童が学んでいます、この中で対象となる地域の児童の県外への移送を具体的に考えるべきです。
県外への移動には受け入れる自治体の協力と体勢作りが必要となりますが、今後の原発の回復状態にもよるものの、受け入れ先は日本海側の山形県やその隣の秋田県が現実的な感じがします。
いま全国的に少子化により学校の廃校が進んでいるようですが、山形県には20を超える市と郡に200近い廃校があり、その隣の秋田県には18の市と郡で400近い廃校があります。これらの廃校を有効活用し福島県内の対象地域児童を期間限定で集団疎開させたらどうでしょうか?
かって第二次大戦さなかの1944年6月、日本政府は「学童疎開促進要項」を閣議決定し、疎開区域の3年生以上の国民学校初等科の子どもたちを疎開させています。
疎開区域とは、当時の東京都の区部、横浜市、川崎市、名古屋市、大阪市、尼崎市、神戸市、そして北九州の門司、小倉、八幡など10数都市を指しており、大規模で展開していました。
今回の「疎開」の詳細は行政が決めることですが、子供を放射線被害から守るだけでなく、親元を離れ、さまざまな人との交わりで子供の自立心を強めることにも繋がるはずです。
大震災の後遺症は10年とも20年とも言われていますが、連携カフェ代表の小見野さんは、音楽活動を通して音楽の強さを実感してきた立場で、みんなで歌えるキャラバンの作成などをバンド仲間で呼び掛けながら支援に繋げていくことも大切と語っています。
この「私設・東日本大震災復興会議」の最後に、連携カフェのメンバーの一人の山名康裕(元「月刊エネルギー」編集長)さんが話しました。やらなければならないことは山ほどあるが、今までの日本に足りなかったのはプロジェクト・マネジメントの考え方。プロジェクト・マネジメントを早くそれぞれのものにすることが大切だと説いていました。
目標達成のために最短距離で行く手法であるパブリック・リレーションズ(PR)は、さまざまなパブリック(ターゲット)との関係構築活動です。それぞれのプロジェクトをマネージしていく上で欠かせない技法でもあります。被災地の復興支援に生かされることを願っています。
(写真は事務局からの提供)
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井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)は5月12日に地方自治体など公的機関向けに「ツイッターマニュアル」を無償で提供することを発表しました。ご興味のある公的機関の皆様は是非、お問い合わせください。詳しい情報はWebサイトでご覧になれます。
◇
日本パブリックリレーションズ研究所(JPRI)では、東日本大震災で風評被害の深刻な影響を受けた観光業界、とりわけ自治体観光局や観光関連団体に対し、「風評被害を避けるための情報発信方法」の無料相談を5月25日より開始しました。詳しい情報はWebサイトでどうぞ。
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2011年06月06日
The Japan Model(ジャパン・モデル)
~課題解決先進国として世界と未来に向けたソリューション
皆さんこんにちは、井之上 喬です。
東日本大震災から2カ月半が過ぎた6月1日、今回の原発事故調査のため来日していた国際原子力機関(IAEA)の調査団が報告書骨子をまとめ政府に提出しました。改善すべき点として自然災害の危険性の再検証や最新の情報に基づいた検証方法の見直しなどが挙げられています。
こうした改善点が指摘される中で、わが国の原子力発電所はいまや54基(現在稼動は18基)にも上り、日本の総エネルギーの約30%を賄っています。
特に近年、原発はCO2問題が急浮上してきたこともあり、世界中がその導入を考えはじめています。現在原発は世界に443基あり、(社)日本原子力産業協会(5月16日発表)によると建設中は75基、計画中は91基とまるで制御を失ったかのように増殖しつつあります。
福島原発事故はこうした中で起きました。最新の科学技術をもってしても自然の強大な脅威の前には制御不能なシステムでしかないことを思い知らされたのです。
だからこそ、福島原発事故の教訓は世界に正しく伝えなければなりません。また私たちは、世界の多くの国々や人々から受けた温かい支援や励まし、そして被災者の高い精神性や行動を称賛する世界の声に応えなければなりません。
今年最初の私のブログ(1月6日)では、「ジャパン・モデルを世界に提示する」というタイトルで次のような文章を寄せました。「(前略)そして日本人の謙虚さや優しさ、もてなしの心は世界でも高く評価されています。また世界唯一の被爆国であり、曲がりなりにも非核3原則を掲げどの国よりも平和を希求する国として、あるいは世界に先駆け高齢化社会を迎える国として、日本は国際社会の注目を浴びています。」
こうした日本独自の土壌や歴史が育んだ精神文化と他の追従を許さない優れたな科学技術との融合から生みだされる新たな戦略モデルこそ、私が提唱する「ジャパン・モデル」です。
■日本は課題解決先進国
マグニチュード9.0と世界でも最大級の規模をもって東日本を突如襲った地震。そして日本観測史上最大の遡上高38.9m(岩手県宮古市の重茂半島)を記録した大津波に加え、チェルノブイリと同様に「レベル7」と評価された第二次災害ともいうべき福島原発事故。
こうした未曾有の大惨事が、なぜ日本で起きたのか?非核保有国として原子力の平和利用しか考えていない日本になぜ?そのことを考えたときに何か目に見えない力が日本と日本人を通して、われわれ人類の未来に警告を発しているのではないかとの思いが、改めて「ジャパン・モデルを世界に提示する」ことを私に天啓のように促したのです。
今この地球では環境問題やエネルギー問題、人口問題、核拡散問題などさまざまな問題が噴出し、これらの課題をどのように解決していくか人類の叡智が求められています。
人類や国家の進化・発展の過程ではさまざまな問題が発生します。以前は世界一の石油産出国で輸出国でもあったアメリカが、いまや60%以上を輸入に頼り、途上国や新興国(中国やインド)では高度成長の陰で大気汚染や水質汚染などの公害問題が深刻な社会問題化しています。
前東京大学総長の小宮山宏さんによると、先進国に限らず多くの国々が、結果として日本のたどる道をトレースしており、同氏はその意味において日本を、「課題先進国」と位置づけ、課題先進国にはその課題を解決することが求められるとしています。
世界が抱える課題に対して日本は、課題解決先進国としてそのソリューションを提供しうる多くの経験を重ねてきています。このことが、筆者が考えるジャパン・モデル構築のベースとなっています。
■ジャパン・モデルを構築する事象
これまで日本が経済、政治、社会分野で経験した、あるいは今後経験するさまざまな出来事は、他の国々が好むと好まざるとにかかわらずこれから経験するであろう事象ともなります。
ジャパン・モデルは、下記のような事象をキーファクターとして構築され、国際社会での「経験の共有化」を目指すものです。国家規模のダメージを受けた際に、そのダメージから立ち直り、新しい国家づくりの指標となり得るものでありたいと願っています。
1)日本は世界唯一の原爆被爆国
広島、長崎の悲劇を世界が共有できているからこそ、戦後一度も核戦争は起きていない。
2)平和憲法
日本は220年に及ぶ鎖国の後に西欧文明を取りいれるために開国した。そして欧米の帝国主義モデルの後追いの結果、第二次大戦では近隣諸国を巻き込み不幸な結果をもたらした。この悲惨な体験があればこそ、日本は世界に類のない平和憲法をもつことができた。
3)大震災
世界でも数多くの震災が発生しているが、日本では関東大震災、阪神・淡路大震災、そして今回の東日本大震災と90年の間に3度もの大震災に見舞われている。日本では建築基準も強化してきたが、今回の東北日本大震災は地震、津波に原発事故が重なった最悪なもの。
4)原発・エネルギー問題
1970年代の2回にわたる石油ショックを経験し、エネルギーの大半を輸入に頼る日本は原子力に大きく舵を切り、いまや原子力は日本の総エネルギーの約30%を占めるまでとなった。今回の福島原発事故は、チェルノブイリと異なり、アクティブな原発4機が制御不能になりそれをどう復旧させるか、これまで世界が体験したことのないチャレンジを行っている。グリーン・エネルギーなどの代替エネルギー開発も含め、日本がこの不幸な出来事から立ち直るプロセスを世界に示すことは、生活・産業を支えるコア要素としてのエネルギー問題における課題解決となるものである。
5)高齢化問題
日本の人口は現在1億2千7百万人で現在全人口に対し65歳以上の人口比率は23%(世界平均は7.6%)を超え、2020年には29.2%(同9.3%)になると予測される。日本ほど急速な高齢化社会を迎えている国は世界にない。
6)環境問題と省エネ
いま世界の新興国が直面する公害問題では、日本が高度成長の過程にあった1960年代に表面化した問題をすでに克服している。されにエネルギーを輸入に頼ってきた日本は、厳しい省エネ化を進め、エネルギー効率は、ドイツの1.6倍、米国の2倍、中国の8.7倍と他国の追従を許さない(「エネルギー効率の国際比較」平成19年、経済産業省)。CO2問題にもいち早く取り組み、2020年までに1990年比で25%のCo2排出量削減を目標にしている。
7)日本のソフトパワー
この大震災を通して日本人の礼節や誠実さ、そして高い精神性が世界に紹介された。これらは島国日本が、時代を織りなすなかで培ってきた文化的資産でもある。グローバル化の中で、ややもすると地域で育まれた文化は破壊される危険性をもつが、日本は独自の文化を維持し今日に至っている。日本の優れたソフトパワーを世界に示していく。
これらの事象に対する日本および日本人の取り組みやソリューションを「ジャパン・モデル」として構築しパブリック・リレーションズ(PR)により、広く世界に提示していくことは、PR専門家である私の責務でもあると考えています。
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2011年05月23日
今年の夏休みは「東北」へ。
~「日本は安全」をもっとPRしよう
こんにちは井之上喬です。
東日本大震災発生から約2ヵ月が過ぎた5月12日、東京電力は福島第一原発1号機で、地震発生の翌日にメルトダウンの状態にあったことを初めて認めました。また復興の足音が少しずつ大きくなる一方で、事故収束のための工程表を改定するなど、先行きの見通しがはっきりしない状況に不安感が広がっています。
そんななか21日から2日間の日程で開かれた日中韓3か国の首脳会議を前に、中国の温家宝首相と韓国のイ・ミョンバク大統領が東日本大震災の被災地、宮城県を訪れ被災者を見舞うとともに震災からの復興に向け協力していく考えを示しました。
温家宝首相は、原発事故に伴い中国が実施している日本の農産物輸入制限を緩和することを表明。こうした被災地訪問のニュースが世界に流れ、「放射能で日本は怖い」といった風評被害が薄れ、経済交流や観光ツアー客の増大といったことが期待できそうです。
■縮小する消費
震災の影響はさまざまな分野に及んでいますが、こうした中で日本経済新聞社は4月時点の消費予測指数(CFI:2004年12月=100)を発表しています。
それによると4月は、前月8.5ポイント低下の75.8で、3ヵ月連続のマイナスとなりました。下げ幅も大幅で、東日本大震災を受けて先行きの経済環境に悲観的な見方をする消費者の考え方が反映されています。
特に悪化したのは(1)「勤め先の今後1年の利益見通し」では[これまで以下]という悲観的見方が13.6ポイント増え48.5%、(2)「旅行・レジャーへの支出意欲」は[控える]が6.3ポイント増の52.1%となり顕著な結果となっています。
日本政府観光局(JINTO)は5月19日に4月の訪日外国人数は前年同月比の62.5%減の29万5,800人であったと発表。
ここでも減少幅は、過去最大だった今年3月の50.3%減を更新しています。「東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故の影響で、全国で外国人観光客の予約キャンセルが相次いだことが背景にある」としています。
訪日外国人数が月間30万人を割り込むのはイラク戦争の発生やアジアで流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響を受けた2003年5月以来となるそうです。4月の実績を国・地域別にみると香港からが前年同月比の87%減少、韓国からが66%減少、台湾からが67%、そして中国からが49%減少と軒並み実績を大きく下回る結果となっています。
■例年と一味違う「仙台七夕まつり」
5月恒例の東京・浅草の三社祭は行事の一部を中止することで開催されましたが、震災の自粛ムードもあって全国で祭りやイベントの中止が相次いでいます。
こうした停滞ムードを吹き飛ばしたのが8月上旬に予定される東北三大祭りの開催。
この夏は電力不足対策、企業の夏休みの長期化を予測して、滞在型やボランティア活動を絡めるなどさまざまな旅行商品が紹介されています。
航空会社も8月のお盆シーズンにはこれまでにないような大幅割引を実施するようです。この夏休みに国内旅行を計画しているのなら、「東北」へ行ってみてはどうでしょうか。
オンライン・メディアの毎日jp(5/18)でこんな記事が紹介されています。「東日本大震災で避難所生活を続ける子どもたちを励ますため、宮城県名取市の携帯小説家、斉藤亜紀子さん(35)が、子ども用の浴衣を集めている」ことを紹介しています。
そして、「今年も例年通り8月6日から3日間、仙台市内である『仙台七夕まつり』に浴衣を着て参加してもらう取り組み。斉藤さんは『子どもたちに、浴衣を着てお祭りに行った思い出を残してあげたい』と話している」としています。
こうしたことも含め、今年の「仙台七夕まつり」は、例年とは一味違うお祭りになりそうです。
日本経済を活性化させるための成長戦略のひとつに観光立国が挙げられていますが、このまま自粛・停滞ムードが続くと、2020年までに2500万人の外国人観光客の目標達成が掛け声倒れになってしまう懸念があります。
22日に行われた日中韓首脳会談では首脳宣言として、3カ国が連携して日本への風評被害を軽減するための取り組みを行うことや日本への観光旅行促進などについて協力することなどが謳われました。
これからは政府と民間とが力をあわせて「日本の安全性」や「日本の復興」をもっとPRしていくことが不可欠となります。
日本が東日本大震災から立ち上がりつつある中で、こうした強いメッセージを世界へ効果的に発信していくのは、パブリック・リレーションズ(PR)が果たすべき役割。私たちPRパーソンの役割が今まさに問われています。
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2011年05月02日
オールジャパンで「サプライチェーン」の維持を
~如何に国内に工場をキープするか
こんにちは井之上 喬です。
ゴールデンウイーク、いかがお過ごしですか。
東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方にも桜前線が北上、満開の桜は1年に1回の素晴らしい季節を私たちにもたらしてくれます。
想像を絶する自然災害の一方で季節の移り変わりは、私たちに日本の自然の素晴らしさを印象づけてくれます。大変な状況ですが、大いに素晴らしい日本の四季をそれぞれの立場で満喫したいものです。
4月29日、大震災以来、一部で運転を見合わせていた東北新幹線が49日ぶりに、東京から新青森までの全線で運転を再開したようです。
■震災で浮き彫りにされたニッポンの存在感
大都市との交流をスピーディに担保する新幹線再開は、被災地復興の大きな力になるとともに、観光を中心とする地域振興にも拍車をかけています。
大震災の影響は産業界でも色濃く出ていますが、経済産業省が4月28日に発表した3月の鉱工業生産指数速報値(2005年を100とする、季節調整済み)は82.9。前月比で15.3%低下し、過去最大の落ち込みとなりました。
与謝野経済財政大臣はこの発表数値に対し、「衝撃的な数字」とし「部品などの生産拠点が震災の直撃を受け、全体の生産活動に大きな影響を与えた」と分析。
また、サプライチェーン(供給網)については「日本経済の死活問題」としたうえで、早期の回復に期待していると復旧に向け全力で取り組んでいる関係者にエールを送っています。
震災発生当初、ニュースでは被災地の経済規模は全体の7%程度と日本経済への影響はあまりないと予測されていましたが、全容が明るみになるにつれて深刻さが際立ってきました。
今回の大震災で日本企業のサプライチェーンが深刻なダメージを受けていることが浮き彫りにされたのです。しかも震災を受けた東北地方の部品・部材がないと世界の生産がストップしてしまう現実が露呈したのです。
サプライチェーンという言葉がこれほどマスコミに登場したことはなく、電機、自動車業界では部品供給の停止により世界的な減産に追い込まれています。
例えば急成長しているスマートフォン分野では、スマートフォンに使われているポリシリコン液晶に使われるITO膜で圧倒的な世界シェアを持っている宮城県栗原市の倉元製作所が被災し、需要が旺盛なスマートフォンの生産計画に支障が出ているようです。
また、半導体、ICの材料であるシリコンウエハーでも世界の25%を供給している福島県白河市の信越化学の白河工場が被害を受け、今後の半導体生産への影響が懸念されています。
■地震の少ない地域への工場移転
日本にある多くの工場は、雇用の維持と技術の海外流出を避けるために国内で付加価値性の高い製品をつくっています。
それだけに今回の大震災が引き金となった、これら工場の海外移転だけは何としても避けなければなりません。しかし自動車業界などでは、部品の安定供給を確保するために、工場の海外移転を促す動きもあり予断の許さない状況にあります。
企業や自治体はこのまま手をこまねいていることはできません。産業空洞化で疲弊している地方経済の再興と地震立国日本における工場設置を今後どのように考えるべきか、いま私たちに大きな課題が突き付けられています。
これらの問題解決のために国内の地震地図をプロットし、地震発生の少ない国内地域への移転も視野に入れる必要があるように思います。
地震が比較的少ない地域は、北海道や山陰、津波被害が少ないとされる中国地方や瀬戸内などが考えられるのではないでしょうか?
4月28日の日本経済新聞に「アジア経済圏に震災の試練」とする記事がありました。
日本の部品供給が止まればアジアの生産機能が低下し、アジアの成長に陰りが出れば日本の復旧も遅れる、「オールジャパン」でサプライチェーンの健全な維持のため休日返上で基幹部品の生産に取り組んでいる企業も多いとする同紙の報道は力強い限りです。
そんななかで応用物理学会や日本機械学会、日本化学会など34学会は4月27日、大震災に対する学会としての提言を取りまとめ、「日本は科学の歩みを止めない―学会は学生・若手とともに希望ある日本の未来を築く―」とする会長声明を発表しました。
被災した施設の復興だけでなく、研究者や学生のメンタルケアに力を注ぎ、科学技術立国日本のために最大限力を注ぐとし、国内外に可能な限り正確な情報を発信し、また各国の学会と協力していくとアピールしたのでした。
いま日本のものづくりの底力が全世界から注目されています。
世界に対する力強いメッセージの発信。パブリック・リレーションズ(PR)の果たす役割の重要性がいままさに問われています。
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2011年04月18日
マスメディアに見る東日本大震災報道
~早急な情報の一元化を
皆さんこんにちは、井之上 喬です。
東日本大震災から1カ月を過ぎた4月12日、原子力安全・保安院(保安院)と原子力安全委員会(安全委)は、共同で記者会見を催し、福島第一原発事故の深刻度を国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価で、最悪の「レベル7」と発表しました。
同日の各紙夕刊の1面では「福島原発事故最悪レベル7」、「チェルノブイリ級」といった大見出しが躍りました。
とりわけ新聞は、このチェルノブイリと同じ「レベル7」という数字にフォーカスするあまり、多数の死者を出したチェルノブイリと直接の放射能死亡者を出していない福島事故が同様のものであるような印象を与え、一瞬世界中を混乱に陥れました。
しかし読売新聞は翌日の夕刊(4/13)で、国際原子力機関(IAEA)のデニ・フロリ事務次長の12日(現地時間)の記者会見の談話を引用。「福島の事故とチェルノブイリ事故は規模などが全く違うと強調し、(中略)チェルノブイリ原発は稼働中だったが、福島第1原発は停止後で圧力容器の爆発も起きておらず、放射性物質の放出量が大きく異なると指摘した」と同事務次長の抑制のきいたコメントを掲載しています。
また読売はフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のパトリック・グルムロン人体防護局長の12日の記者会見も紹介。「福島の状況は深刻だが、被害の大きさはチェルノブイリ原発事故と比べてはるかに抑えられている」と暗に「レベル7」は高すぎることをほのめかし、日本政府とは異なった見方を示しています。
■混乱:4つの情報源で異なる見解
震災発生以来、発信する情報の混乱が外国人の国外脱出や風評被害などにより経済活動に深刻な事態を引き起こしています。
東日本大震災とりわけ福島原発に関する主要な情報源は、首相官邸をはじめ安全委(内閣府)、保安院(経済産業省)、そして東京電力の4つが挙げられます。
大震災直後から感じていたことですが、4つの異なった情報源から発信されることで、同じ事象に対して4者の説明が食い違ったり発表のタイミングのズレが生ずるなど、情報の混乱を広げる要因をつくっています。
ここでその混乱がどのようなものなのか幾つか紹介したいと思います。
前述の共同会見では、福島第一原発事故発生以降放出された放射性物質の量について、保安院は37万テラベクレル、安全委は63万テラベクレルと大きく異なった推定値を発表。
保安院のスポークスパーソン、西山英彦官房審議官は、第一原発の放出量は1割程度で「チェルノブイリとは相当異なる」とその違いを強調。それなら何故レベル7に引き上げたのか理解に苦しむところ。
この共同会見の発表を受けて政府の枝野幸男官房長官は、「チェルノブイリ原発事故と違って、直接的な健康への被害は出ていない」(4/12日本経済新聞夕刊)とコメント。
一方、同日行われた東京電力の記者会見では、「事故の様相が違うとはいえ、放射性物質の放出量という観点からすればチェルノブイリに匹敵する、あるいは超えるかもしれない」(4/13毎日新聞朝刊)といった政府や保安院とまったく異なる発言。
またTBSテレビが「サンデーモーニング」(4/3放送)で、情報の混乱ぶりを番組テーマに以下のように取り上げています。
入院中の清水社長に代わり東京電力のトップとして会見に臨んだ勝俣恒久会長は、「1号機から6号機まで一応の安定をみることができました」とコメント。
しかしその直後に行われた安全委の会見で代谷誠治委員は、「何が起きるか予断を許さない。そういう状況が続いていると思うのが普通」と東京電力の見解を真っ向から否定。
また、3月28日(月)の会見で枝野官房長官は、「一時溶融した燃料と接触した格納容器内の水が、何らかの経路で直接流出したものと推定される」と2号機の格納容器内で燃料が溶けている可能性を指摘。
するとその直後、東京電力の記者会見では「燃料が溶融して格納容器まで出ていったという可能性を推定させるような情報は、私どもは持ち合わせていない」。
ところが今度は安全委の斑目春樹委員長が「ペレット(固形燃料)も若干溶解したこともあり得たのではないかと判断している」と溶融の可能性を示唆。
今回の混乱は原子力行政の複雑さを反映したものと考えることもできますが、このTBSの番組が指摘しているように、日本は相変わらず断片的に異なった見方を持った生情報をばらばらに出し、全体的な説明がどこで行われているのかはっきりしない危機的な状況をつくりだしているといえます。
■情報の混乱は政府や自治体への不信を招く
4つの情報源が混乱の度を増していく中で、野村総合研究所から「震災に伴うメディア接触動向に関する調査」結果がニュースリリースとして3月29日に公表されています。
この調査によると震災関して重視する情報源は、1位がNHKのTV放送(80.5%)で、2位が民放のTV放送(56.9%)、3位はインターネットのポータルサイト(43.2%)で新聞情報は5位(36.3%)となりました。これは、何よりも映像効果と速報性が重視された結果でしょうか。
また、メディアへの信頼度の変化(「上がった」、「下がった」、「変わらない」、「わからない」から択一)については、信頼度が一番上がったのがNHK(28.8%)で、信頼度が一番低下したのは政府・自治体の情報(28.9%)と伝えています。
菅首相が「福島第一原発周辺は10年、20年住めない」と語ったとされる問題がその真偽も含めて波紋を広げています。
東日本大震災からの復興ビジョンを策定する「復興構想会議」が政府の肝いりで立ち上がったばかりなのに、政府による情報管理の甘さは政府・自治体情報に対する信頼度をますます低下させています。
私は、以前から東日本大震災の政府広報について情報源の統合化と、今回の震災のような国難に直面した際の内閣記者会(官邸クラブ)の制度改正が必要不可欠だと考えていました。
これまでのように枝野官房長官が単独でプレスに情報を提供し、プレスからの質問に答えるといった形態には当然限界があります。質疑応答などカバーすべき領域は多様で専門性も高く、個人で対応することには到底無理があるからです。
先日、私はニューヨーク・タイムスの記者から政府の情報発信体制のありかたについて取材を受けました。
混乱は外国メディアの間にも生じているようで、その記者は政府から発信される情報データでどれを信じていいのかわからないと、情報の混乱が深刻な問題になっていることを明かしてくれました。
今後の対応として、官邸を軸に東電や保安院、安全委からのスポークスパーソンに加えて、地震や原発の専門家、そして広範囲にわたって災害救援活動に従事する自衛隊、消防庁、警察庁の現場のトップなど、必要とする関係機関の人も同席させ官邸での会見に臨むといった形態が望ましいと思います。
この体制であれば、大抵の質問にその場で適切に答えられるし、情報の齟齬や発表のタイミングのズレは最低限防げます。
また記者会見は、官邸クラブのメンバーだけでなく一定のルールのもとに国内メディアや外国メディアの枠を広げ、同時通訳で行います。世界中で情報共有を行うことで、グローバルに蔓延しつつある風評被害を押さえることができるはずです。
現在の外人記者を対象にしたブリーフィングは、情報発信が2元化されることにもなり、通訳ミスなどの危険性をはらみ二重のリスクを背負いかねません。
この日本で起こった複合災害は世界が共通の問題として注目していることから、官邸での一元的な通訳付き記者会見の模様を世界中にネット配信することは海外世論に相当なインパクトを持つものと考えます。
今回のような緊急事態が発生した際には、情報源の一元化は不可欠です。パブリックリレーションズ(PR)における危機管理では、混乱を避けるための情報の一元化が大前提となっているからです。
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2011年04月11日
東日本ボランティア活動の心得
~「『ごみ』なんて一つもない。わたしにとってはすべて『かけがえのないもの』」
皆さんこんにちは井之上 喬です。
3月11日の東北大震災から今日でちょうど1カ月。甚大な被害を受けた被災地での死者は、9日の警視庁調べで12,915人、行方不明者は同14,921人にのぼっています。
また朝日新聞(4/10)によると避難生活を送っている人たちの数は、9日現在で少なくとも16.4万人。いまだ物資が十分に行き渡っていないところも広範にわたっています。
破壊された家など災害廃棄物も岩手、宮城、福島の3県だけで、2500万トンに達するといわれています。
この4月、学校もなく新学期に登校すらできない児童も多くいるといいます。連日のメディア報道で被災者の悲痛な声が伝えられ、ゴールデン・ウイークが身近にせまるなか、「なんとか助けたい」とボランティア活動を志願する人たちが増えています。
しかし、十分な知識や情報を持たず単独で現地に向かうことは救援を待つ被災者の方々の支援や復旧・復興を遅らせてしまいかねません。
今回はこうしたボランティア志願者が被災地で安全で有効な支援を行うためにどのような心構えで行うべきかについてお話したいと思います。
■被災地に入る前の「事前準備」
3月30日東京で、東日本大震災の被災者支援のための全国的なネットワーク「東日本大震災支援全国ネットワーク」(以下、全国ネットワーク)が結成されました。
この団体は、日本赤十字やNHK厚生文化事業団、ジャパンプラットフォームなどの全国的組織から地方のボランティア組織まで、約230のNPO/NGOで構成された最大規模の民間支援団体ネットワークです。
ボランティアが被災地に入り支援活動を行っても、その活動自体が被災地域に負担をかけてしまったり、自己管理が行き届かず活動中にケガをしたり、悲惨な状況にショックを受けて心に傷を負ってしまうことも珍しくありません。
このような事態を避けるため、この全国ネットワークでは、1日でも早く現地入りを希望するボランティアが安全に活動するための心得とガイドラインをホーム・ページ(HP)で紹介しています。
このガイドラインは、過去災害の教訓やすでに現地で活動するボランティアからの意見を反映し作成されています。
ガイドラインは、「被災地に行く前の事前準備」「被災地に着いてからの活動」「被災地から帰るとき」の3つのフェーズにわけられています。
まず「被災地に行く前の事前準備」では:
自分は被災地に迷惑をかけずに支援できるのか、 最低限のマナーを自己チェック。現地でのボランティアは、日頃慣れない重労働や、被災された人の悲しみや怒りなどの感情と向き合いながらの活動であることを承知しておかなければならないとしています。
そのための被災地情報を綿密に収集・確認することが大切になるとし、知りたいことは被災地の災害ボランティア・センターの手を煩わすことなく、直接電話を避けHP等でまず確認し、交通手段等をチェックすることを勧めています。
つまり、現地までの公共機関の運行状況やボランティア・バスなどの有無、自家用車で行く場合の被災地域までのガソリン等の燃料は自ら確保することとし、被災地での給油は差し控えるよう心がけたり、自分で駐車場の確保を行うことが肝要としています。
また食料・水などの流通状況やガスの復旧状況(自炊や風呂に入れるかなど)、宿泊施設提供の有無や近隣宿泊施設の営業状況(ホテルや民宿の利用も被災地支援のひとつなので積極的に検討する)などのチェックも求められます。
そして、活動予定期間の天候(持参する服装選択の参考に)や現地でのボランティア活動状況(持参備品や服装・装備選択の参考)など。
また災害現場でのボランティア活動は危険を伴いますが、全国ネットワークは被災地に迷惑をかけないためにも、必ず住まい近くの社会福祉協議会で災害特約付きのボランティア保険に事前加入することを勧めています。
地域で事前研修(オリエンテーション)が行われている場合は、必ず受講すること。被災地で安全に活動するために、災害ボランティアの心構え、活動地域の情報、活動内容、スケジュール、予算、活動上の注意すべきことや持ち物等について研修を行っている団体も紹介されています。
また、ガイドラインには初めに現地の状況をよく知る人からのアドバイスを得るよう記されています。
■被災地活動と休息のすすめ
次に「被災地に着いてからの活動」では、地域事情や被災者との接し方・配慮、カメラ撮影、惨事ストレス予防、実際の活動の仕方、注意点などを現地ボランティア・センターのスタッフや現地で先に活動している先輩ボランティアから話しを聞き、安全に活動する準備を整えてから活動を開始するようアドバイスしています。
災害現場での活動は本人の自覚以上に心と体に負担がかかります。最長でも2 週間を目処に、長期でボランティア活動に参加する場合は、概ね2週間に1度は帰郷し温泉宿でゆっくりするなど、リフレッシュが勧められています。
最後に「被災地から帰るとき」は、自分が持ち込んだゴミは必ず持ち帰るようにし、被災地域に負担をかけることは絶対に避けるように指導されています。
また活動現場から帰宅の途につく前に、1日の活動を仲間同士で振り返って話し合うなど、自分がどれだけ大変な活動に取り組んだのか、またどの程度疲れているのかを自覚できる時間を持つことの有意性を論じています。
全国ネットワークのHPの中に、写真と共にボランティアに向かう人のためのこんなメッセージが目に入りました。
「この景色、あなたはどう呼びますか?わたしは『被災地』とは呼びません。『故郷・わが町』と呼びます」
「あなたにとっては、『がれき』ですか?わたしにとっては『帰るべき我が家』なのです」
「『ごみ』なんて1つもない。わたしにとってはすべて『かけがえのないもの』」
これらの言葉から被災地の悲痛な叫びが聞こえてきます。被災地でのふとした一言が相手の心を温かくもすれば、傷つけることもあると訴えています。
また被害者の視点を常に持って行動をとることの重要性が伝わってきます。そして被災された方々に向き合うために必要な心構えとして、復旧や復興の主役は被災者であり、ボランティアはそれをサポートする存在であるということを肝に銘じなければならないとしています。
被災者と接する場合は、相手と同じ目の高さに自分の姿勢を合わせて、自然に接することが大切のようです。なぜならば被災された方々は、その地域で普通に暮らしていた私たちとなんら変わらない人達だからです。
震災後、CSRの一環として被災者支援を行う企業が増えています。CSRをカバーするパブリック・リレーションズ(PR)はリレーションシップ・マネジメント。さまざまな対象となる相手に対してそれぞれの視点を持って行動することが求められます。
被災者の方々が一日も早く困難な状況から解放されることを願うばかりです。
(※写真は2011年3月26日石巻・南三陸で撮られたもの)
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2011年04月04日
災害時のインターネット情報:その光と影
~サイバー犯罪者に対する自衛策
こんにちは井之上 喬です。
東日本大震災から早いもので20日以上が過ぎました。地震や津波の被害だけでなく、東京電力の福島原発事故の影響も重なり混沌とした状況が続いています。被災された皆さまに改めてお見舞い申し上げます。
そうしたなかでも季節は着実に春に向かっています。桜の開花とともに新年度がスタート。新入学生、新社会人が新しい人生の第1歩を踏み出しました。
今回の大震災から復興するには、5年、10年はかかることでしょう。それぞれの立場で地域の復旧とともに日本の抜本的な変革のために将来どのようにかかわっていくべきか、日本人全員がしっかりと見据えて行動するときといえます。
自粛ムードが蔓延していますが、過度な自粛は経済を弱体化し被災地支援をままならなくしかねません。1年に1度、この季節のために桜は花を開き日本人を楽しませてくれます。被災地に思いを馳せつつその美しさを今年も楽しみたいものです。
■災害に便乗したサイバー犯罪者
日々、大震災の報道が流れていますが、今回の災害報道では従来のテレビ、ラジオ、新聞に加えインターネット報道の重要さがクローズアップされています。
テレビや新聞などの従来型メディアにどちらかと言えば画一的な報道が多いのに対し、インターネットではさまざまな発信元からリアルタイム情報が世界規模で配信され、災害情報の収集や発信などで貢献しています。
私が経営する会社、井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)の多くの外資系クライアントも、原発事故による放射能の影響など特に関心の高い情報については、日本政府の発表よりも自国政府やIAEAなど国際原子力機関の発表をネットでリアルタイムに入手し、これらを基準に行動するケースも多くみられます。
インターネットが今回のような災害時に、人々の行動決定に大きな影響をおよぼす媒体になっていることを改めて知らされました。
その一方で、誤った情報による風評被害の拡大や詐欺メールのトラブルなど、影の部分にも注視しなければなりません。
インターネット・セキュリティ大手のマカフィーは、3月18日のMcAfee Labsブログで「東北地方太平洋沖地震に便乗するサイバー詐欺にご注意ください」と題する情報を配信。大震災に便乗した詐欺に警戒するよう呼びかけています。
それによると、サイバー犯罪者は情報を探しているインターネット・ユーザーをだますため、昨年のハイチ地震と同様に、今回の大震災でも情報や金銭を引き出すオンライン詐欺が数多くみられるとしています。
その中には地震発生からわずか2時間で開設された詐欺サイトなどが多数確認されたとしています。マカフィーによれば、赤十字など正規の救援団体からのメールを装い、被災者への寄付を依頼するメールが確認されており、メールにはクレジットカード情報の入力を求める偽のサイトへのリンクが記載されているとのこと。
マカフィーでは、一人でも多くのユーザーが詐欺を識別し、回避することができるように判明しているメールや検索結果、ソーシャルメディアなどの具体例を紹介するとともに、このような脅威から身を守るためのヒントを紹介しています。(詳しくはこちら)
■情報を見極める眼力を持つ
被災者や支援者から送られたように見える、金銭的な援助を求めるスパムメールには気をつけなければなりません。
YahooのCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の別所直哉さんも3月23日の日経産業新聞で、正確性や客観性が担保されていない情報も多いことを留意すべきとし、「公式情報」と「口コミ」をしっかり見極めることが必要だ、と指摘しています。
まさにその通りだと思います。彼はまた、情報を共有する際は公式の情報源をリンクすること、義援金サイトの利用は公式ページからアクセスすることが重要としています。
“なりすまし”によるフィッシング詐欺の手口は、有名企業や金融機関、団体などを装い、無差別にメールを送りつけ、相手のクレジットカード番号や銀行口座番号、暗証番号などを記入させるなど実に巧妙です。
フィッシング詐欺を防止するためには、SSL( Secure Socket Layer )がフォームに利用されているかなど、ウエッブサイトの安全性や真偽を見極めることが重要。
私もパブリック・リレーションズ(PR)に関わる一人として、情報の信頼性を見極める眼力がこれまで以上に求められていることを痛感しました。
前回もお話したように今回の震災では、携帯電話がつながりにくい時にインターネットやSkypeなどを使い情報収集や安否情報を得ていたようです。
またインターネットにアクセスする端末としてはこれまではパソコン、携帯電話などがありましたが、今回の震災ではスマートフォンやタブレットPCが大いにその威力を発揮しました。
便利なネット社会ですが、賢い利用者として情報の真偽を見極める目と情報機器を使いこなす能力を、一人ひとり持つことがますます大切になってきています。
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2011年03月21日
「東日本大地震」報道について
~楽観論と悲観論、そして真実は?
皆さんこんにちは、井之上 喬です。
3月11日に起きた東日本大震災はきょうで10日を迎えます。 震災後の被災状況が時間の経過とともに判明し、その被害の甚大さに改めて驚かされます。
頻発する余震、被災地における水、食糧、油などのライフライン機能の停止や福島第1原子力発電所の爆発事故をはじめ原油高騰、東証暴落、急激な円高、そして計画停電など被災地だけでなく日本全土を不安と混乱に巻き込んでいます。
明るいニュースは、原発への放水や電源復旧作業が自衛隊、東京消防庁、警視庁、電力会社などの方々による生命を賭した作業で少しずつ解決の方向へ向かっていることです。日本の将来はまさにこれらの方々にかかっています。
東日本大震災については、昼夜をわかずテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、そしてネットニュースやツイッターなどさまざまなメディアから大量の情報が流れ、外国メディアからも大きな関心がもたれています。
こうした情報の渦の中で、情報の精度や解釈の差、またそれぞれのメディアのスタンスの違いを強く感じることがあります。
■メディア報道の違い
例えば同じ事象に対してTVや全国新聞はそれぞれの媒体によって、また解説者やゲストの識者、専門家によって意見の異なりはあるものの押しなべて同じような論調ですが、新聞でも全国紙と夕刊紙では論調が大きく異なります。
日刊ゲンダイ(3月18日付)では、今回の震災における政府や電力会社の対応が不十分だとして、ある全国紙社会部記者の次のようなコメントを掲載しています。
「(前略)水蒸気爆発や再臨海、放射能漏れの可能性など多々あるはず。そろって『安心、安全』という姿勢は、まるで東電の広報マンです」としています。また全国紙が原発事故を正しく報道していないと批判しています。広告主の影響を受けづらいことも、夕刊紙がはっきり主張する背景にあるのでしょうか。
クライシス状態の場合に、事実を知らせることで結果的にパニックを煽るのか、或いは事実をおさえることでパニックが起きないようにするのか、その対応は簡単ではありません。
また視点の異なる外国メディアのとり上げ方は国内メディアとは違ってきますが、今回の報道ではその違いをはっきりわからせてくれました。それは福島発電所の事故評価についてです。
経済産業省原子力安全・保安院は、3月18日夕方の記者会見で、福島第1原子力発電所の事故が国際原子力事象評価尺度(INES:International Nuclear Event Scale)でレベル5、つまり「所外へのリスクを伴う事故」に相当する、という暫定評価を発表しました。それまでのレベル4を5に引き上げたわけですが、日本のメディアはこれを報道。
INESとは、原子力発電所の事故・故障の事象報告の標準化を行うため、国際原子力機関 (IAEA) と経済協力開発機構原子力機関 (OECD/NEA) が策定した尺度で、レベル0から7まで8段階。
ちなみに最も深刻なケースがレベル7で、史上最悪の原発事故、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(1986年)はレベル7とされています。レベル5は、原子炉が炉心溶融を起こし周辺に放射性物質が放出された米スリーマイルアイランド原発事故(1979年)と同レベル。
これに対し、原子力安全・保安院の発表に先立つ15日(現地時間)、BBCニュースは米国のシンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)が福島第1原発の事故について、前述のINESで深刻な状態である「レベル6に近づきつつあり、場合によってはレベル7に達する可能性がある」ことを報じ、保安院発表以前の仏原子力安全局発表数字とISIS発表の数字がほぼ同じであることを報じています。
これらのニュースにより、ニューヨークタイムスやワシントンポスト、ファイナンシャルタイムなど欧米のメディアがこの高い数字を一斉にとり上げることになります。
メディアによっては「放射能が福島から約7日間で米国にもとどくはず」と報道するネット・メディアもあらわれるなど全体的に原発事故に対して悲観的で厳しい報道がみられます。
■楽観論と悲観論
今回の政府の対策は一本化されておらず後手後手に回っている感があります。その理由として、指揮系統と情報が一元化されていないことが考えられますが、官邸からの発表を見ている限り「出来るだけ国民を心配させないように」との思いが強く伝わってきます。
保安院は18日夕方の記者会見で、福島第1原子力発電所の事故にともない政府が設定した半径30キロメートルの退避圏について「現在の屋内退避は政府としてリスクを考え余裕をみて設定している。」との楽観的な見解を示していました。
一方、ISISなど外国機関の発表により事態を深刻に受け止めた各国在日大使館は、在日自国民に対し、その保護のために被災地からの帰国支援や一時的な出国を検討するよう促しています。
その結果、半径80キロの外へ出るよう避難勧告する外国政府と、半径30キロメートルの退避圏で問題ないとする日本政府との対応の違いが浮き彫りにされています。
外国人にとっては、生活環境や言葉の問題などもあり、慎重にならざるをえないことについては、理解できるものの、この違いはどこからきているのか気になるところです。
前回の私のブログでも紹介したように、気象庁は東日本大地震の規模を災害発生時のマグニチュード8.8から最終的に9.0へと修正しましたが、日本がM8.8の発表をしていた時に、CNNはM8.9を主張し、「この数字はまだ上がるはず」と気象庁とは異なる独自の情報収集による発表を行っていました。
こうした外国メディアの確かな実態の捉え方の実例もあり、日本が行った「INESでの評価は、いくら暫定的なものであっても本当にレベル5なのだろうか?」という疑問がわいてきます。
これらの日本側の一連の言動は、当事者である政府、東電、関係機関そしてメディアをも巻き込んで、国民に心配させることなくまたパニックに陥れることなく配慮しているようにもみえます。しかしもしそうであれば答えは「NO」です。
インターネット時代を生きる現代においては、事実を明らかにし、将来起こりうる危機に備えることが重要となり、国民への情報開示と説明責任が求められます。
さもないとネット上であらゆる流言飛語が飛び交い、不確実な情報によって社会を混乱に陥れることになるからです。その意味において、楽観的な記事も悲観的な記事も共通すべきものは、正確な情報の開示であり透明性ということになります。
日本メディアも外国メディアも同じように扱ったのが、16日の天皇陛下による初の日本国民へのビデオ映像メッセージ。このメッセージは全世界に流れ、米国でも、ウオールストリートジャーナルやNYタイムズ、CBSニュースなどが紹介し多くの日系人を勇気づけたようです。
またAFP通信は15日、米ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授のコメントとして、今回の地震が日本の「ソフトパワー」にとって良い方向に働くと指摘していることを紹介。
その中で、計り知れない悲劇の中で日本が持つ極めて魅力的な面が、この悲しい出来事を通して明らかになり、それが日本のソフトパワーを促進するとしています。
続けて同教授は、このような災害に対して日本が「冷静に秩序正しく反応し、近代国家にふさわしい安定した、礼儀正しい社会であることを示している」と語っています。
今回の件で、TVニュースなどを通して海外の多くの友人やビジネス・パートナーから安否確認や励ましのためのメールをいただいています。
その中で、必ず書かれていることは、このような大災害のなかでも、お互いを信頼し、相手を思いやる日本人の誠実さとその精神に感動したと記されていることです。
日本人の忍耐強さや互いを思いやる精神などは長い間、この島の中で仲間と共に生き抜いてきた日本人の持つDNAなのかもしれません。
このような苦難の中でパブリック・リレーションズ(PR)の専門家にできることは山ほどあります。これからの日本をどのように作り上げていくのか、さまざまな人たちと共に考え行動することです。
日本はこれから、歴史上類を見ない先進国日本で起こった大災害の経験を世界に語り続けていかなければなりません。それが、この災害で亡くなっていった人たちに対する私たちの責任だからです。
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2011年03月14日
「東日本大地震」からの教訓
~地震国日本の原発のあり方は?
皆さんこんにちは、井之上 喬です。
11日の「東日本大地震」は、マグニチュード9.0と世界でも最大級の規模で東日本各地に大きな被害をもたらしました。被災された方々とその関係者に心よりお見舞い申しあげます。
まだまだ孤立して支援を待つひと、行方不明で安否の確認ができない多数の方々がいらっしゃいます。こうした人々が一刻も早く救済されることを祈るばかりです。
地震発生時に私は、四谷のオフィスでインド大手企業のふたりのビジネスマンとミーティングの真っ最中でした。その激しい未体験の揺れに戸惑う私たちでしたが、インドの方にとってはまさに驚天動地の出来事。私の勧めでテーブルの下に急ぎ潜りこむ様子に、その驚きぶりが表れていました。
13日になって気象庁は、地震波のデータを詳しく解析し、再計算した結果、東日本大地震の規模をそれまでのマグニチュード8.8から9.0へと修正しています。M9.0は世界の地震の観測史上4番目で、そのエネルギーは阪神大地震の1,000倍。
私は地震発生の夜から日本のTV番組とCNNの両方で地震の情報を得てきました。CNNは未曾有の日本の被災状況を終日放送していますが、当初日本がM8.8と発表していた数字に対し、CNNはM8.9に固執し、「この数字はまだ上がるはず」と独自の数字を主張。
気象庁の最終的な発表数字M9.0は国際的な地震学者による協議で決定されたのでしょうか興味深いものがあります。
■福島原発事故は天災か?
先月22日、ニュージーランドのクライスト・チャーチ市を中心にマグニチュード6.3の大地震が起こったばかり。こうした時期に発生した東日本大地震は、その桁外れの破壊力だけでなく止むことのない強い余震に原発事故も重なって、日本社会を大きな不安に陥れています。
東日本大地震では「大津波」が、犠牲者や被害を拡大しました。
今回の大地震は、政府の対応をはじめマスメディアの報道、連絡・通信手段、水道・電気・ガスといったライフライン、原発問題、国際協力体制といった面で、パブリック・リレーションズ(PR)の専門家が考えるべき課題や多くの教訓を残しています。
私にとっては、事故が発生すれば人災となる「原発問題」が一番の懸案事項になりました。
13日の朝日新聞(朝刊)は、「福島原発で爆発 周辺で90人被爆か」という大見出しと一緒に爆発音とともに白煙をあげる福島第一原発1号機と鉄骨がむき出しになった1号機の建屋の写真を掲載しています。
この1号機爆発の発表は、事故発生後5時間してようやく公式記者会見を行うなど対応が後手になっているといわざるを得ません。危機管理の要諦は早い段階での事実の公表です。
「地震」や「津波」は天災といえますが、「原発事故」の場合も天災なのでしょうか?
CNNの福島原発事故に関する報道では、「原発事故は人災」としています。なぜならば原発はあらゆる問題を想定して建設することでその存在が認められる施設だからです。
■注目を浴びる「高温ガス炉」
現在、世界全体で約440基の商用の原子力発電所があるといわれています。日本には17ヵ所55基あって、現在は37基が運転中です。日本の原発は、福島第一原発と同じ「軽水炉型」が全てといっても過言ではありません。
それにしても、福島原発の緊急炉心冷却システムはどうして、動かなくなったのでしょうか?軽水炉の弱点は、運転を止めた時に炉心を冷却しなければならないこと。
軽水炉は大型化しやすく、経済効率の良い原発ということで現在世界中で使用されています。
一方、同じ原発でも「高温ガス炉」があります。
大型化は難しいもいのの「高温ガス炉」は中型で使い勝手の良い原発といわれています。
安全性がより高く、事故があった時に運転を止めても自然冷却が可能で、そのまま放置するだけで停止する構造になっています。
大量の冷却水を使用する軽水炉とは一線を画す原発で、最近では途上国への原子炉としてまた日本で水素生産ができる原子炉として、急速に脚光を浴びています。
今回の大地震は日本の原発のあり方を、改めて考えさせる出来事でした。このテーマについては別な機会にこのブログでお話したいと思います。
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<地震に関する情報源>
YSコンサルタント社長の岡田基良さんが地震に関する主要な情報源をまとめて送ってくれました。岡田さんのご好意もあり、皆さんと共有させていただきます。
◇人を探す、安否情報を登録する
・災害用ブロードバンド伝言板(web171) | NTT東日本
http://mshn.jp/r/?id=03ko314929
・Google Person Finder: 2011 日本地震
http://mshn.jp/r/?id=03ko414929
◇地震速報
・Yahoo!天気情報
http://mshn.jp/r/?id=03ko514929
・ウェザーニュース
http://mshn.jp/r/?id=03ko614929
◇災害マップと防災情報
http://mshn.jp/r/?id=03ko714929
◇災害伝言板
・NTT docomo
http://mshn.jp/r/?id=03ko814929
・ソフトバンク
http://mshn.jp/r/?id=03ko914929
・au
http://mshn.jp/r/?id=03koa14929
◇USTREAM
・NHK
http://mshn.jp/r/?id=03kob14929
・TBS
http://mshn.jp/r/?id=03koc14929
・TV朝日
http://www.ustream.tv/channel/annnews
◇災害時に役立つiPhoneアプリ
http://mshn.jp/r/?id=03kod14929
福島沖15キロの海上で漂流者を自衛隊イージス艦が発見し、救助したという奇跡的なニュースが先ほどTVで流れました。一人でよく頑張ったなと嬉しくなりました。
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2011年02月21日
ロシアとの領土問題をどう捉えるか?
~平和条約なければいまだ「敵国」
こんにちは井之上 喬です。
前原外相がロシアを訪問しました。11日のラブロフ外相との会談は予定の倍近い時間で行われたものの話し合いは平行線に終わったようです。
翌12日の日本の主要紙の朝刊一面には、「『北方領』日露譲らず」(読売)、「暴言発言を批判:ロシア外相日ロ会談で」(朝日)、同じ朝日国際面には『日ロ険悪 厳冬期』と北方領土問題が暗礁に乗り上げていることを報じています。
今回の一連のロシアとの問題は、メドベージェフ大統領の北方領土訪問に端を発したとされていますが、はたしてそうでしょうか?
一方、政府は今回の外相のロシア訪問にあたり、どのような戦略で臨んだのでしょうか?報道を通してみる限り、残念ながら明確に日本の意思が入った交渉が行われているようには思えません。
■何故ロシアは強気になったのか?
北方領土は、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の4島。北方領土返還については、1980年代終わりのソ連ゴルバチョフ政権下の民主化の流れの中で具体的な問題として浮上してきました。
当時日本は強力な経済力を背景に交渉を行ってきましたが、ソ連崩壊後、領土問題を引き継ぐことになったロシアとの交渉においても、両国間で戦後の象徴として締結されるべき「平和条約」は未だに棚上げの状態。経済主導の交流は維持されてはいるものの、島の返還問題は未解決のまま今日に至っています。
交渉の争点として両国の主張は異なり、大きく日本は4島一括返還を要求し、ロシアは歯舞、色丹の2島返還を主張。
今に至った経緯をみると、これまでの日本の主張には明確な戦略がなく、相手に対し4島一括返還を主張することに終始し、双方平行線のままずるずると20年の無為な歳月が経っている感すらします。
しかし、何故ロシアは強硬姿勢に転じたのでしょうか?見逃してならないのはこの10年間のロシア政治の世代交代と経済環境の変化です。
政治面では、ロシアの初代大統領(1991-2000)エリツインを引き継いだプーチン大統領が就任したのは2000年。その後2008年にメドベージェフ大統領が就任しています。
つまり世代交代により、ロシアにも新人類的な対応がみられるようになったということもできます。
■いまや世界一の石油生産国
経済環境の変化では、その最大の要因は地球温暖化でツンドラの永久凍土が融けだし、それによりシベリアでの油田発掘が容易になったこと。これによりロシア経済が著しい成長をみせたことです。
BP「Statistical Review of World Energy 2010」によると、ロシアの世界に占める石油生産量の割合は2000年の9%から2009年には13%と跳ね上がり、過去9年間の生産量は実に50%を上回っています。
2009年にはサウジアラビアを抜き、生産量(4億9千4百万トン)で世界最大の産油国になっています。
加えて、シベリア開発に必要な経済協力の交渉相手の選択支が日本以外にも広がったこと。目覚ましい経済成長を遂げる韓国や中国が有力なパートナーとして浮上するなど、東アジア周辺国の状勢の変化がみられることです。
こうしてみると日本はこの20年、絶好な交渉のタイミングにありながら、北方領土で4島一括返還を目指すのか、或いは2島返還で行くのか、交渉過程で相手の変化を見極めることを怠たり、戦略的な目的設定を曖昧にしたまま今日に至ったものと断定することができます。
ソ連崩壊後のロシア共和国は、1991年からの20年間でエリチン、プーチン、メドベージェフの3人の大統領が国家運営を行っているのに対し、日本は宮沢首相を皮切りに現在の菅首相まで実に13人の首相が交代するありさまです。
この失われた20年は、自虐的にいうならば、まさに「漫画的」。
日本は国内の政治抗争に明け暮れた結果、経済や外交に空白をつくり、いまそのツケがボディブローのように効いてきています。
北方領土問題を考えるときに、故末次一郎さん(1922-2001)との会話を思い出します。
末次さんは真の民族主義者。1972年の沖縄返還の陰の立役者といわれ、当時人生最後の仕上げとして北方領土返還運動を起こし、領土問題では歴代首相の指南役もつとめた方です。
1990年頃、当時ソ連との関わりを持っていた関係で、親しくさせていただいていた私は末次さんから初めて、「日ソ平和条約が締結されていない日ソ関係はいまだ交戦状態にある」という言葉を聞いたとき強い衝撃を受けました。
末次さんは口癖のように、ソ連は1941年の日ソ中立条約を一方的に破り、終戦直前に対日参戦し、北方領土占拠は無論のこと、70万人を超えるシベリアへの強制収容所への連行、そして6万人とも10万人ともいわれる抑留者を凍死、餓死、病死させた国であることを忘れてはならない、と話をしておられました。
その意味でソ連はいまだ日本にとって許し難い「敵国」であると私に熱く語りかけてくれました。志半ばで倒れた末次さんの思いが伝わってきます。
北方領土問題の解決には、双方による粘り強い信頼関係作りが必要となることは疑う余地もありませんが、世代交代が進む中でこの問題の解決には、まず両国の歴史認識から再スタートするのも有効な方法かもしれません。
こうした問題は、パブリック・リレーションズ(PR)抜きに考えることはできません。
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2011年02月07日
美味しいコメ食べてますか?
~農業は新たな輸出産業になれるか
こんにちは井之上 喬です。
節分も過ぎ暦の上ではすでに春ですが、まだまだ寒い日が続きそうです。
体調には気を付けて頑張りましょう。
日本では西高東低の強い冬型が長く続き、太平洋側ではカラカラ天気が続く一方で、日本海側は大雪で電車や車が閉じ込められるなどの影響が出ています。また、霧島連山の新燃岳では50数年ぶりの噴火で周辺住民が避難、海外でも豪州では大型サイクロン「ヤシ」の来襲や米国東海岸での大雪など、世界規模で天候不順や自然災害が多発しています。
被害にあわれた方々に心よりお見舞いを申し上げます。
新聞報道によれば、こうした世界的な異常気象や中国をはじめとする新興国での消費拡大などの要因により、世界の食料価格指数は過去最高を記録したとのことです。
■食糧問題が急浮上
このデータは国連食糧農業機関(FAO)がまとめているもので、穀物、食肉、砂糖、乳製品、油糧種子の国際取引価格からFAOが、2002年から2004年水準を100ポイントにし毎月算定しています。
これまでの最高値は食糧危機が叫ばれた2008年6月だったそうですが、2011年1月には230.7ポイントとなり過去最高値を更新。
最近は7カ月連続で前月を上回り、この半年では実に37%以上の上昇。国際的にも大きな問題になっています。
食糧問題といえば2月初めに農林水産省は商業用のコメの輸出数量の推移をまとめて発表しました。
それによると2010年の輸出数量は1898トンで前年比45%の増加、輸出金額は前年比27%増の約6億9000万円とのこと。
国別では香港が654トン(前年比45%増)、シンガポールが334トン(同36%増)続いて台湾が271トン(同19%減)、豪州125トン(同247%)そして中国が96トン(同220%増)。
中でも中国向けの数字はまだ低いが、2009年の3倍以上になっており、今後さらに拡大が期待されています。政府も輸出支援のために中国輸出向けの精米工場整備に対し補助をするなど、コメ輸出拡大の支援策をさらに拡充する方針のようです。
そういえば日本のコメの販売拡大に呼応するように、秋葉原などでは電気炊飯器の販売も好調だと聞いたことがあります。割高だが安心して食べられ、かつ美味しい日本のコメが中国でも認められてきたということでしょうか。
しかし2010年度の主食用コメの生産量は約824万トン。輸出量は過去最高になったとはいえまだまだわずか。日本国内のコメ市場は少子高齢化や食生活の変化などから市場規模は縮小傾向にあり、輸出に活路を見出したいコメ生産者が増えているようです。
■日本の農業を新しい「産業」に
世界的な食糧不足に陥れば、日本は自前で食糧を生産しなければならなくなります。食糧安保が叫ばれるのもこうした背景があってのこと。
日本は食糧自給率が40%(この数字はカロリーベース。生産高ベースで見ればもっと高く他国に見劣りはしないといわれているがここでは論議しない)と低く、自給率や生産性の向上が叫ばれています。
しかし日本の農業は高齢化が進み、農業従事者の平均年齢は66歳を超え、後継者問題や年間6万~8万人で推移する新規就農者数が改善することなくこのまま続けば、美しい農村が原野にかわるのも時間の問題。
食糧をめぐる問題としては、最近急浮上しているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)やEUFTA(日欧自由貿易協定)への参加の是非が国会でも大きな争点になっています。
日本がTPPなどに参加すればあらゆる分野での輸入規制が撤廃されます。これに対して農業関係団体などは、海外から安い農産物が大量に輸入され日本農業への深刻な影響が懸念されるとして日本の参加に強く反対。
コメを代表とする農業が、手厚い国の保護のもとでガラパゴス化してしまうのか、ITや自動車産業のように、国を代表する「産業」として新たな世界展開に一歩踏み出すのか、日本はいままさに大きな岐路に立っているといえます。
日本には、数多くの品種改良された米をはじめ、リンゴやナシ、ミカンなどの果物や水耕栽培による無農薬野菜など、世界の食卓が欲しがる食材がたくさんあります。価格で競わず付加価値をつけ、ブランド化することで輸出のチャンスが無限にあるはずです。
農業の産業化を実現させるためには、農家が蓄積してきた作物づくりのノウハウと、産業界のもつITを駆使した生産技術を融合させることが鍵となるでしょう。
日本の優れた英知や技術を、これまでは考えられなかった分野で生かし新たなビジネスを創出する、こうした動きを国が支援することはできないものでしょうか。
日本はPTTをむしろ好機と捉え、農業分野に若者を中心とした新規就農を促し、ベンチャー企業を多く呼び込む政策とその実現が求められています。農家が消滅する前に新しい発想でスピード感を持って取り組むことが急がれているのです。
すべてのビジネスにいえることだと思いますが、何か新たなことに取り組もうとするときに、重要なポイントとして物事の流れや先を読むインテリジェンス、きめ細やかなマーケティング力、それを実行に移すための戦略、そして私の持論でもある、双方向環境の中で必要な時には自らの修正を恐れず、倫理観を意識した取り組みが必要であると思います。
つまりリレーションシップ・マネジメントである、パブリック・リレーションズ(PR)がうまく取り込められていなければなりません。
先日テレビ番組で酒造りのためのコメの収穫時期について、最新のGSPシステムを駆使して最適な時期を決定する事例を知りました。
GDPで中国に後塵を拝し世界第3位になった今こそ、既成概念にとらわれることなく新たな発想で、これからの時代の繁栄のために、力強い一歩を踏み出すことが強く求められているのです。
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2010年12月20日
今こそ、思い切った教育改革を
~アジア勢との比較で下位に沈む日本
こんにちは、井之上 喬です。
寒さが一段と厳しくなってきましたが、皆さんいかがお過ごしですか。
経済協力開発機構(OECD)が12月上旬に世界65の国・地域の15歳男女約47万人を対象に実施した国際学力調査(略称:PISA)の結果を世界同時発表しています。
この学力テストは文章を理解し、利用する力をみる「読解力」、「数学的応用力」、「科学的応用力」の3科目で構成されています。知識の有無よりも、知識をいかに活用するかという能力を調査するのが目的。初めて実施されたのが2000年で、それ以降、3年ごとに実施され今回が4回目となりました。
■なんと初参加の上海が「三冠王」に
今回の調査は、日本では無作為に抽出された約6000人がテストに回答しています。上海のほかシンガポール、ドバイなど8カ国・地域が新たに参加しましたが、中国、インドは「言語が多様なことなどから全国一斉テストの実施は難しい」との理由でOECDの参加要請を断っています。
日本は2003年、そして前回2006年といずれも順位を下げ、学力低下が社会的な問題としてメディアに取り上げられたことを憶えている方も多いのではないかと思います。今回「読解力」が前回(2006年)15位から8位に上がりましたが、「数学的応用力」は9位(前回10位)、「科学的応用力」は5位(前回6位)とほぼ横ばい。
この発表を受け、高木文部科学相は「読解力を中心に我が国の生徒の学力は改善傾向にある」(2010年12月8日読売新聞)とコメントしています。今回の結果をみると日本の順位が回復し、教育界の努力が実った感じもしますが、日本はアジア勢との比較で下位に沈み、学力格差は解消しておらず、引き続き真摯な対策が求められます。
■韓国の国際教育都市、チェジュに英国名門校が開校
「白熱教室で話題のハーバード大学でも、昨年の留学生666人のうち日本人はたったの5人だった。韓国42人、中国36人、シンガポール22人、インド20人に比べると大きく水をあけられている。米国への留学生自体、昨年の日本は3万人足らずで、約10万人のインド・中国、約7万人の韓国の後塵を拝している。」と報じているのは週刊ポスト(2010年11月5日号)。
日本からの海外留学生は、2001年の13万人をピークに年々減少傾向にあり、昨年は10万人を割り込んでいます。特に同年に起きた9/11の影響でしょうか、米国への留学生の減少が顕著のようです。
このように日本人の海外留学生の減少傾向や国際学力調査での低迷振りが報道されるなか、韓国ではグローバル化に対応した革新的な取り組みがなされています。
その切り札が、済州(チェジュ)国際教育都市プロジェクト。韓国政府の中核プロジェクトの一つとして位置づけられ、国土海洋部傘下の済州国際自由都市開発センターにより開発が進められています。
韓国政府は、済州島(チェジュ島)を「英語特区」にし、欧米の有名校の誘致を積極的に働き掛けています。ここでの授業は英語で行われ、都市内の公用語も英語。
人口約55万人のチェジュ。韓国の「済州特別自治道」として経済特区にもなっていますが、政府はこの教育プロジェクトに巨額の投資を行うだけでなく、新しい法律の制定や規制の緩和・撤廃により、進出する学校が最高レベルの国際教育を実施できるようさまざまな支援を行っていると聞きます。
そんな中で先日、2011年秋にチェジュに初めて海外キャンパスを開校する、英国の名門私立学校North London Collegiate School(NLCS)の一行が、日本での学校説明会のために来日しました。
NLCS UKは、英国で160年にわたり卓越した教育を提供している名門校として知られており、オックスフォードとケンブリッジへの進学率は40%前後で、英国内の名門国際バカロレア(IB)スクールの中でもたびたび首位を獲得しています。
たまたま、NLCSチェジュの来日プログラムを支援したのが私の経営する会社(株式会社井之上パブリックリレーションズ)でした。その戦略性と実行力における彼我の差の違いを間近に見て大きなショックを受けました。
このプロジェクトに限らず、FTA(自由貿易協定)における米国、EUを始めとするさまざまな国や地域との締結やサムソン、現代自動車など韓国企業のグローバルな展開をみていると、その戦略性とパワーには目を見張るものがあります。このエネルギーは一体どこから来るのでしょうか?
私は、韓国の徴兵制にその秘密があるのではないかと最近考えるようになりました。兵役に服する間、すべての若者が戦略的思考とスピード感を養う教育を受けているのではないでしょうか。ちょうど、NHKで「坂の上の雲」が放送されていますが、明治時代、ひとつの目的に向かって進む日本の姿を見る思いすらします。
ちなみに、この9月に経済協力開発機構(OECD)から「教育機関への公的支出の国内総生産費(GDP)比」に関する調査結果が発表されています。2007年の幼稚園から大学までの調査では、日本はわずか3.3%。比較可能な主要28カ国中で最下位です。
いま国際教育への抜本的対策が日本に迫られていますが、政府の強い指導力とスピードを伴った実行力こそが求められています。
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2010年11月29日
「売れ過ぎてすみません」
~販売予測が大幅に外れた理由は
こんにちは、井之上 喬です。
「売れ過ぎてすみません」。これは、11月26日の日経MJ(日経流通新聞)の1面トップの見出しです。
紙面では、販売好調なため供給が追いつかず、販売休止や出荷調整に追い込まれた3つのヒット商品を大きく紹介しています。久々に読者を元気にする内容の記事で溢れていました。
■予想がはずれたヒット商品
1つ目の商品は、日清食品が8月16日に近畿地区限定で発売した「日清カップヌードルごはん」(カップヌードル味とシーフード味の2種)。
出荷数量が当初目標の約2倍となり発売から5日目には販売休止を発表。9月27日にはカップヌードル味のみを販売再開しました。
2つ目はライオンが1月20日に発売した衣料用液体洗剤「トップナノックス」。
従来の液体洗剤の2分の1の量でナノ(10億分の1)メートルレベルまでの汚れを落とすという商品。注文は想定を上回り、エリア特性や販売実績を基に出荷調整したものの一部で欠品もでる人気。
3つ目の商品は、三洋電機が11月11日に発売した「GOPAN(ゴパン)」で米粒をペーストにしてパンを作る世界初のホームベーカリー。
7月に10月からの発売を発表したところ、注文が殺到したため11月に発売を延期。それでも注文数はうなぎ登りで予約受付の一時中止を決めたといいます。
これら3つの商品以外にも「販売休止・発売延期や店頭で品薄になった主な商品」のリストでは次のような商品を紹介しています。
桃屋の調味料「辛らそうで辛くない少し辛いラー油」(発売:09年8月)、永谷園の即席みそ汁「1杯でしじみ70個分のちから」(同09年9月)、ロッテのアイスクリーム「ザクリッチ」(同10年3月)、キャドバリー・ジャパンのガム「ストライド」(同10年5月)、サントリーのビール風味飲料「オールフリー」(同10年8月)、エステーの防虫剤「かおりムシューダ」(同10年8月)。
■ソーシャル・メディアの影響力
普段は、なぜ売れないのか、どうしたら売れるようになるのかと頭を悩ます開発、マーケティング担当者。
日経MJの記事からは、販売予測がものの見事に外れ、大売れしたことに対して各社の担当者が真剣に反省し、その要因について語っている様子はいつもと違い、読んでいて楽しくなります。
「カップヌードルのブランド力が消費者を引き付けた。」(日清食品)、「CM内容も、におい汚れまで落とすナノ洗浄を強調する科学的なものにした。」(ライオン)、「商品の独自性に加えプロモーションの効果が大きかった。」(三洋電機)と、それぞれの担当者はその勝因を分析しています。
そして3つの商品の好調な売れ行きに共通して関係しているのがインターネットやソーシャル・メディアの影響力です。
「エリア限定の希少性もありネット・オークションにも登場。」(日清食品)、「消費者に現品を試してもらい、ブログに載せてもらった。」(ライオン)、「ブログやツイッターでも大きな話題となった。こうした消費者の反応に接したバイヤーが売れると確信し、思った以上の発注につながった。」(三洋電機)という分析のなかに、その影響力を計ることができます。
最近、私の経営する会社(株式会社井之上パブリックリレーションズ)の社員からこんな話を聞きました。
先月、米国パブリック・リレーションズ協会(PRSA)の総会に出席した彼の友人が、「アメリカのPR会社は『プレス・リリースのマルチメディア化』を推進していて、YouTubeやtwitterなどのメソーシャル・ディアを複合的に活用している姿勢には目を見張るものがあった」といった趣旨のことです。
日本においてもメソーシャル・メディアは、特に、BtoCのマーケティングPRにおいて大きな影響力をもつようになりました。
ソーシャル・メディアをパブリック・リレーションズ(PR)の新たなコミュニケーション・ツールとしてもっと研究を深め、PR戦略の構築に活用していくことが、今後、ますます重要となってきます。
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2010年11月22日
子供が見なくなった“週刊こどもニュース”
~わかりやすく伝えることの難しさ
こんにちは井之上 喬です。
11月22日は二十四節気の1つ小雪(しょうせつ)。「わずかながら雪が降り始めるころ」を意味しますが、これから師走を迎え寒さも日に日に増してきそうです。
この時期は新年度に向けての予算策定のころでもあります。テレビ局でも視聴率や製作費などを勘案し、年内で終了する番組も多いようです。
■16年の長寿番組が打ち切り
その中の一つにNHK総合テレビで日曜日朝8時5分から放送している「週刊こどもニュース」があります。11月17日、NHKはこの番組を12月19日の放送をもって終了すると発表しました。
週刊こどもニュースは1994年(平成6年)4月に放送を開始。16年以上続いてきた長寿番組。
小学校高学年から中学生を主な対象に、1週間に起きた時事ニュースをお父さん、お母さんと子ども3人の家族が、さまざまなニュース現場の取材も含めわかりやすく解説する番組で、初代のお父さん役は現在ジャーナリストとして、また時事解説で数々の著作を出版し活躍している池上 彰さん。
番組の中には「世の中まとめて1週間」や「今週のハテナ?」などのコーナーがあり、さまざまな図表や模型を使った解説は子供だけでなく大人にも非常にわかりやすく説明されています。ある意味でニュース解説のお手本的な番組、と評価する業界関係者も多いようです。
番組終了の理由としてNHKは、「こどもニュースと言いながら、実際の視聴率は高齢者が圧倒的に多い」と発表しています。
しかし業界では、それまでの土曜日の夕方6時過ぎからの放送時間を今年から日曜日朝8時台に移動したことで、テレビ朝日系列で子供に人気の「仮面ライダー」に視聴率を奪われていたのではないか、というのが理由とされています。加えて、丁寧な番組作りによる制作時間や製作費の増加なども中止の理由とする見方も多いようです。
後継番組としては、2011年1月15日(土曜日)から家族で見られる新しいニュース解説番組「ニュース深読み」をスタートさせるそうです。誰にでもわかりやすく、のコンセプトは継続してもらいものです。
■PR会社、腕の見せどころ
パブリック・リレーションズ(PR)においても、B2CであれB2Bであれ最終的なターゲットに、PR会社としての多様な視点と客観性を持った説明をし、そのための簡潔明瞭な資料の作成は重要といえます。
特に外資系のIT関係企業の場合はきめ細かな配慮が必要となります。具体的には、まず英語などから日本語への翻訳などの品質管理の問題です。
多用される専門用語の扱いや文章の長さなど、日本のメディアを通し最終ターゲットに的確にメッセージを伝えるためのさまざまな難題が待ち受けています。
そこで腕の見せどころとなるのがPR会社です。
私が経営する井之上PR(www.inoue-pr.com)は、専門用語が頻繁に使われる、半導体、ソフトウェア、ITサービスなど多くの外資系ハイテク関連のクライアントの日本市場向けのPRサポートも多く手掛けています。
プレス・リリースや記者向けの資料などを作成する場合はいかにわかりやすく、コンパクトに情報を入れ込むかに傾注しています。
スタッフにはメディア経験者もおり、記者が情報を目にしたとき、それらをどのように受けとり感じるかを、多くの経験によって的確に捉えアドバイスしています。
また、クライアント企業のスポークス・パーソンに対しては、記者との基本的な対応と訴えたいメッセージを有効に発信する、インタビューのシミュレーションを含めたメディア・トレーニング実施プログラムも提供しています。
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2010年10月21日
習 近平氏 中央軍事委員会副主席に選出
~その知られざる素顔
皆さんこんにちは、井之上喬です。
10月18日、北京で開催されていた中国共産党の第17期中央委員会第5回全体会議(5中全会)で、習近平国家副主席が軍の最高指導機関である中央軍事委員会の副主席に選出されました。
これにより胡錦濤国家主席の後継者となることが内定。軍の人事権を握るこのポストは最高指導者になるための前提条件となるもので、今回の就任により、党(共産党政治局常務委員)、国家、軍の要職を得たことになります。
習近平氏についてはほとんど知られていません.
今回は私の経営する会社、井之上PRの中国ビジネス( 「日本新聞網」www.ribenxinwen.com )パートナーであるアジア通信社徐静波社長から情報の提供を受け、その知られざる素顔に迫りたいと思います。
■青春時代は貧しい農村で過ごした
習近平氏は1953年6月北京に生まれました。原籍は陜西省富平県。習氏の家は代々名声があり、父親の習仲勲は中央政治局委員や周恩来総理のもとで副首相を務めた人。

習近平氏は高級幹部の子弟である「太子党」の代表的な人物といわれていますが、普段の彼は「庶民の心」を持ち合わせているといわれています。それは、彼が7年間にわたって農村で苦しい生活を経験したことと関係があるようです。
習氏が「文化大革命」の嵐の中の15才の時、父は免職・監禁され、習氏自身も中国西部の最貧困地区である陝西省延安市延川県梁家河村の農村で肉体労働に従事することになります。
青春時代の7年間をこの貧しい農村で過ごした習近平氏の言葉には、「私の故郷は梁家河村だ」と彼を育てた苦しい農村生活時代への思いが込められています。

1974年に共産党に入党、生産大隊の党支部書記を務めます。そして1975年、推薦され北京に戻り清華大学へ入学。

1979年、清華大学工程化学学部を卒業後、中央軍事委員会に配属。そして当時の中国共産党中央政治局委員で国務院副総理、中央軍事委員事務局長であった耿飢の秘書官を務めることになります。

同期生の多くは、現在、中国の各軍区の司令官になっています。計4年間の軍人(制服組ではない)経験を持つ習氏は、現在の中国の中堅指導者の中で唯一の軍人出身者とされています。
■地方を知り尽くした男
1982年、習近平氏は積極的に中南海から農村への移動を希望し、初期には、中国共産党河北省正定県委員会副書記、書記を歴任。32歳のときにアモイ市副市長を務めます。
1986年、アモイ市の副市長であった習近平氏は友人の紹介で8才年下の彭麗媛と出会います。

そして1年半後の88年8月に結婚。ちなみに彭麗媛夫人は現在、人民解放軍総政治部歌舞団団長で昨年11月に来日。女性兵士では最高地位の少将でもあるひと。

その後、福建省にて、寧徳地委員会書記、福州市委員会書記、福建省委員会副書記、福建省長などの要職につき、同省で20年近い年月を過ごします。
また1998年から2002年には、清華大学人文社会学院に在職大学院生として学び、マルクス主義理論と思想政治教育を専攻。博士号を取得します。
2002年11月、49歳の習近平氏は張徳江(現職副総理)に代わり浙江省委員会書記に抜擢。
彼の在任期間、浙江省を3年連続、GDP伸長率全国一にしたことで、その存在が一躍注目されるに至りました。日本企業との関わりもあったようで、日本にはいい印象を持っているようです。この時期浙江省の国有企業を全国で初めて民営化させるなどその手腕は高く評価されているようです。
2007年3月、元上海市委員会書記陳良宇の汚職事件が発生。中国共産党中央はクリーンなイメージを持つ習近平氏を上海市委員会書記に任命します。上海での半年あまりの間、習氏は民生の理念に注意を払い、民生問題解決の方法を模索し、上海市民から高い評価を得たとされています。
このように自らの希望で地方で働いた習近平氏は、河北省(農村)、福建省(対台湾)、浙江省(経済第一省)、上海市(国際金融センター)でその役職を果たします。
25年間に及ぶ、習近平氏の副県長(副町長)で始まったその経歴は、地方を知り尽くした国家リーダーとしての将来が期待されています。
最後に、前述の徐静波さんが習近平氏の福建省長時代のあるエピソードを明かしてくれました。
それは青春時代、延安市延川県梁家河村で不遇な習氏を我が家に受け入れ、同じ屋根の下で生活を共にし、兄弟のように親切にしてくれた男性が、重い足の病気にかかった時の話です。
病気を患っていることを手紙で知り心を痛めた習近平氏は、さっそく鉄道切符を送り、その男性と奥さんを福建省まで呼び寄せ、1カ月半にわたって病気治療に専念させたといいます。
そして最後の2週間は病院から移し2人を自宅に住まわせ、彭麗媛夫人が毎日台所で食事の世話をしたそうです。帰りには生活の足しのためにと数万元の現金を手渡したとされています。
誠実で思いやりのある彼の人柄をはかり知ることができます。
内外でさまざまな問題を抱える中国にあって、習近平氏の手腕に期待が寄せられています。
(写真提供はアジア通信社)
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2010年10月14日
ノーベル賞の光と影
~政府は若年研究者育成に積極的取組みを
こんにちは井之上 喬です。
先週は明るいニュースが流れました。ノーベル化学賞を2人の日本人が受賞しました。
北海道大学の鈴木 章名誉教授と米国パデュー大学の根岸英一特別教授。これで日本のノーベル賞受賞者は18人となります。
受賞の理由は「パラジウム触媒を活用する有機合成におけるクロスカップリング反応」だそうです。反応しにくい炭素原子同士をレアメタルのパラジウム触媒で結合する技術を確立。
その応用は、エレクトロニクスでは液晶テレビ、また製薬業界では高血圧症や糖尿病性腎症の治療薬などで行われていて、幅広い分野で不可欠で画期的な手法として高い評価を得ているそうです。
■日本の若手研究者は外へ出よ
各紙にお二人のインタビュー記事が掲載されていますが、10月8日の日本経済新聞のインタビュー記事で印象に残ったところをご紹介しましょう。
鈴木氏は「後進を指導するとき、重箱の隅をつつく研究はするなと強調している。先人の研究をヒントにしてもいいが、まねはいけない。自分で考えることが大切だ」と、また根岸氏は「日本は化学だけでなく電気や自動車など、理学、理工学を基礎とした産業はまだ世界の一流国だ。」
「だがこのままではいけない。私の研究室でも中国人の学生は意欲的で優秀だ。日本の若手研究者には外国に出て、日本がどういう国か見て欲しい。中から見ただけで自分たちを判断すると研究も甘くなり生産性も落ちる。外に出て苦労、苦難を体験するのも必要だ」と語っています。
これらのメッセージからは、研究者は競争の激しい海外に積極的に出て、独創的な技術を磨き、日本や世界の発展に貢献しなければならないという強い願望が感じられます。
しかしその一方で、同じ日本経済新聞8日付けの社会面には「海外研究派遣 ピークの半分に」とする見出で、日本から海外へ飛躍する日本人研究者の減少を驚きの数字で報じています。
これは文部科学省が、日本の国公私立大学や公的研究機関に所属する研究者を対象に調査・発表したもの。海外に1カ月以上滞在する研究者は2009年度で3739人、実にピークだった2000年度の7674人から半減。また1年以上の滞在となるとわずか373人と全体(2000年度)の4.9%に過ぎず、「内向き志向」が強くなったと懸念しています。
先日TV番組で、ある東大名誉教授が今回の受賞について、「この分野は研究者が多く、日本の他の研究者も受賞者と同等なレベルにあった…」とコメントしていました。
自らの研究成果を多くの人に理解してもらうために、積極的に世界に英語で発信するなど、パブリック・リレーションズ(PR)的な手法を身につけることの重要性を感じます。
■教育機関の公的支出、日本は最下位
この9月に経済協力開発機構(OECD)が教育機関への公的支出の国内総生産費(GDP)比に関する調査結果を発表しました。
2007年の幼稚園から大学までの調査では、日本はわずか3.3%。比較可能な主要28カ国中で最下位。
一方で教育費の私費負担割合では日本は33.3%と各国平均の17.4%の約2倍と高い数字を示しています。つまり公的支出の不足を、各家庭が埋め合わせている格好になっています。よく言われていることですが、所得格差が教育格差を生む傾向をデータがはっきり示しています。
民主党政権になってからは、高校の授業料実質無償化や教員増などの政策が実施されており、公的支出は今後増加していくものと考えられていますが、教育に対する日本の取組みはお寒い限りです。
先週、幕張メッセで開催されたコンシューマー・エレクトロニクスの展示会「CEATEC」でのパネルディスカッションでも、こんな発言がパネリストからありました。
「ゆとり教育時代のエンジニアと一生に仕事をする機会が増えてきました。一言で言って円周率3で勉強してきたエンジニアに不安を抱いています。会社でも学校でも、世代を超えて一丸となって新しい教育体制の確立に取組まないと日本は世界に取り残されてしまいます!」。
全く同感です。中国やインドなど巨大な新興国が台頭する中、今こそ崩壊した日本の教育の復興に取り組み、個が強い、人間力のある人材の養成が求められています。
政府の強い指導力が望まれるところです。
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2010年09月16日
菅氏が民主党代表に再選
~求められる強力なリーダーシップ
こんにちは井之上 喬です。
9月14日、民主党代表選挙が臨時党大会で行われ、菅直人首相が小沢一郎前幹事長を大差で破り、再選されました。9月1日に告示された、2人の激しい戦いは最終的に菅氏が制しました。
国会議員など3つのグループによる、ポイント制で行われた投票結果は、国会議員が菅氏、小沢氏それぞれ412(206票)、400(200票)、同じく地方議員は、菅氏60(1360票)、小沢氏40(927票)また、党員・サポーターでは、菅氏249、小沢氏51となり、合計は菅氏が721ポイントに対し小沢氏は491ポイントと数字の上では菅氏の圧勝に終わりました。
しかしよく分析すると、党員・サポーター票については「総取り制」のために、ポイント差では菅氏が小沢氏の約5倍であったのに対し、得票差では1.5倍(約6対4)。全体の得票数でも、「政治とカネ」の逆風の中で6対4と小沢氏が善戦していたことが判ります。
■「日替わり弁当」のリーダー交代
民主党代表選は98年4月の結党以来、今回の菅氏再選までの12年5カ月の間で、7回行われたことになります。
国政選挙の敗北やスキャンダルに巻き込まれたり、また任期途中に代表が辞任するなどその変遷のさまをみていると、民主党と自民党には共通点がみられます。
日本を変えるにはまず、日本の政治風土を変えることが必定といえます。
それにしても、日本の首相はなぜ日替わり弁当のようにころころ変わるのでしょうか。
新代表が選出される前の9月12日の朝日新聞(朝刊)には、次のような見出しで欧米の有識者が日本の首相交代の頻度の異常さを憂慮していることを報じています。
「短命政権 世界も憂慮:日本の指導者交代にめまい 首相の権限弱い」とするヘッドラインで、「経済大国日本の機能不全は、世界にとっても好ましい事態ではないとの思いが広がっている」としています。
そして、日本研究の大家とされるオックスフォード大学のアーサー・ストックウイン名誉教授の、「昨年の政権交代は日本の民主主義にとって非常によい転機だった。私個人としては2人のどちらが勝てば良いとはいえない。問題は選挙後に握手できるかどうかだ」とそのコメントを紹介し、選挙後に菅、小沢両陣営が分裂することなく挙党態勢で、国政にあたるべきことを論じています。
■緊急経済対策を
さっそく菅氏勝利のニュースを受け、東京外国為替市場では円が急騰。NY市場では一時、1995年5月末以来の1ドル82円台に突入しました。
新政権にとって最優先課題は、円高、株安など日本経済を弱体化させている環境を早急に変える緊急経済対策。
成長戦略を策定し、その実行に弾みをつけることは言うまでもありませんが、「雇用の確保」のためにも日本企業の競争力強化のための政・官・民が一体となった対応が強く求められています。
とくに、日本の産業を支えている中小企業への金融支援などは待ったなし。お金は、人間の体でいえば血液。しかしながら日銀がいくら通貨量を増やしても、経済環境が劣悪な中で、これら中小企業へ資金が回らなければ企業生命に支障をきたすことは明白です。
企業生命を維持するための思い切った方策を早急に講じるなど、政治の強いリーダーシップが期待されています。
今回の民主党代表選で感じたことは、個人や組織体にとって、イメージがいかに重要であるかということです。
小沢氏の敗因は、長年にわたって醸成されてきた「小沢一郎」のブランドが、「政治とカネ」、「密室を好む古い体質」、「剛腕」などのマイナス・イメージにあったといえます。
多くの国民は、連日報道されるニュースでその人を理解しようとします。メディアを意識し過ぎポピュリズムに走ることは避けなければなりませんが、自分のイメージはメディアを通して形成されていることを自覚することもリーダーにとっては大切なことといえます。
パブリック・リレーションズ(PR)はそのソリューションを提供することができるのです。
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2010年08月30日
民主党代表選挙
~ノブレス・オブリージュの精神で
こんにちは井之上 喬です。
小沢一郎前民主党幹事長が8月26日、民主党代表選挙への出馬を表明しました。9月14日に予定されている投票に向けて民主党はあわただしい動きをみせています。
急激な円高・株安、経済不安など、日本はさまざまな問題を抱えています。そんな中、多くの国民が3ヶ月前に「政治とカネ」や「普天間基地問題」などで責任をとって辞任した、小沢氏の出馬に強い戸惑いを見せています。
■党を二分する戦い
小沢氏の立候補の理由は、マニフェストが不履行状態にあることと、円高への政府の対応や緊急的な経済対策がうまくとられていないからとされています。
共同通信の直近の調査(8/27-28実施)によると、民主党の代表になってほしい候補者で菅氏69.9%、小沢氏が15.6%と菅氏が大きくリード。政治とカネの問題を抱える小沢氏への世論の厳しい目が感じられます。
今回の代表選の最大の争点は、菅首相の「衆議院議員選挙で掲げたマニフェストを現実に即して柔軟に修正していきたい」とする考えと、「マニフェストは国民との契約、全てを実行すべき」とする小沢前幹事長の主張がどのように受け入れられるかです。
確かに一般的に選挙で掲げるマニフェストは有権者との間の契約書のようなもの。選挙後にそのマニフェストを簡単に破ることは、国民への詐欺といわれても致し方ないところもあります。
選挙後のひと波乱も予想されています。とりわけ小沢グループが敗北すれば、自民党の一部グループと新党を結成し、政界再編が起きるのではないかと取り沙汰されてるからです。小沢氏は党の分裂覚悟で戦おうとしているのでしょうか。
■ノブレス・オブリージュの精神
民主党の代表選挙では双方の厳しい応酬が予想されますが、その結果党が崩壊したり解体されることがあってはなりません。
今回の代表選は、2008年に行われた米大統領選の前哨戦である民主党大統領候補指名獲得を争う予備選を想起させます。
オバマ氏とヒラリー・クリントン氏との激烈な争いはメディアを通じて全世界に流れました。
しかし、日本の代表選挙と比べものにならないほどの誹謗合戦があったにもかかわらず、選挙でオバマ氏が勝利すると個人の遺恨を乗り越えて、ヒラリーは党の一員としてオバマへの全面サポートを表明したのです。
日本の代表選挙でも、どんなに激しい戦いをしても、だれが当選しても、敗者には、ひとたび選出された代表と新政権をサポートする姿勢が強く求められます。民主主義国家では主役は政治家ではなく国民であるからです。
国民の幸せや国民の利益は、個人的な感情に優先させなければなりません。
まさに、「ノブレス・オブリージュ」(高貴な身分に生まれたものとして自覚すべき責務=選ばれた人の責務)の精神が求められているのです。
いま重要なことは、日常の国民生活や経済活動に支障が出ないように具体的な政策を実施すること。今の日本にはこれらが政局によって停滞することは許されません。
考えてみると、1982年11月の中曽根政権誕生から現在まで、実に日本の首相が17人、この1年だけでも2人の首相が変わっています。企業で社長がこれほど交代したら、とっくに倒産。この構造を放置し続ける体力は今の日本にはありません。
代表選挙では、国民のために正々堂々と戦ってもらいたいものです。
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2010年08月16日
終戦記念日に思う
~戦争には終わりはない
こんにちは、井之上 喬です。
私は毎年夏のこの時期に、亡き母のふるさと愛媛県弓削島を訪ねます。真っ青な空に、光り輝く太陽、エメラルド色の海。そんな弓削島で今年も8月15日の終戦記念日を迎えています。
米軍による、日本全土を襲った大空襲や広島・長崎の原爆、そして圧倒的な敵の物量の前になすすべもない日本軍。敗走する日本軍が降伏のチャンスを見誤る中、「生きて、虜囚の辱めを受けるな」とする過酷な戦陣訓は、丸腰状態の「万歳攻撃」により多くの若者の命を奪いました。
■遅すぎる国家賠償
戦後65年経ったいま、新たに民間人被害者による国家賠償請求の動きが出てきています。
8月15日付けの朝日新聞は、大戦末期の空襲の被害者(本人および遺族)で構成された、初の全国組織である「全国空襲被害者連絡協議会」(全空襲連)が14日に結成されたことを報じています。
同紙はまた、これまで、旧軍人・軍属とその遺族には国家補償理念に基づいて総額約50兆円の恩給や年金が支給されてきたが、民間人の空襲被害者については、これまでの訴訟などで戦争で受けた損害を国民は等しく受忍しなければならないと援護措置が講じられるべきことを論じています。
そして同紙は、世界大戦で同じように被害を受けた欧州各国が被害者保障制度を整備していることにもふれ、被害を我慢させる、差別的な日本の戦後保障政策は真の民主主義国家とはいえないとしています。
しかしこれら戦争犠牲者に対する賠償は、完全に賠償し得るものではありません。
■憎しみの連鎖
戦争によるあらゆる犠牲者に終戦はあるのでしょうか?
南方のジャングルで凄惨な体験をし、シベリアの強制収用所から生還した兵士。また、太平洋戦争に巻き込まれ、2000万人が犠牲になったといわれるアジアの国々の人たち。この人たちの心の傷は癒えているのでしょうか?
そして、戦争の悲惨さを終戦記念日のたびに見聞きする私たちにも終戦があるのでしょうか?戦争は、誰もが傷つく非人間的な行為。
戦争体験が、風化しないように、メディアは毎年さまざまな報道をしています。私たちすべての日本人には、戦争の、そして原爆の悲惨さを後世に伝え、2度とおろかな失敗を繰り返さないために「戦争」と戦い、いかなる「戦争」をも排除しなければなりません。
パブリック・リレーションズ(PR)の実務家として、この問題が過去の日本の問題としてだけではなく、現在の世界が抱える問題や社会の問題、組織体の問題、そして個人の問題として捉えていくべきだと強く感じています。
日本が真のコミュニケーションを通して、自らの意思や望みを相手に伝え、互いに修正し合い、相互理解により成熟した国家になることを希望してやみません。また、そう実現できることを信じたいと思います。
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2010年08月09日
65年目の広島、長崎
~核戦争の恐怖を訴えることのできる唯一の国
こんにちは井之上 喬です。
早いもので8月、葉月です。
Wikipediaによると、葉月の由来は諸説あるようで、木の葉が紅葉して落ちる月「葉落ち月」「葉月」であるという説から、稲の穂が張る「穂張り月(ほはりづき)」という説や、雁が初めて来る「初来月(はつきづき)」とする説。そして南方からの台風が多く来る「南風月(はえづき)」といった説など諸説があるようです。
季節の移り変わりは日本の自然の美しさの源泉、そして日本文化の基礎ですから先人の感性に触れる機会はなくしたくないものです。
■国連事務総長、米国駐日大使などが初参加
毎年のことですが盛夏の8月に思い起こすのは戦争と平和のことです。
6日には広島に、そして9日には長崎に原子爆弾が投下された原爆の日を迎えます。
被爆後65年を迎えた今年は、広島での平和祈念式典には初めて国連の潘事務総長、原爆投下国の米国のルース駐日大使。また核を保有する英国のフィッツトン駐日臨時大使、フランスのプノー駐日臨時大使が参列しました。
本日9日に行われた長崎での式典にも、初参加となる英・仏・イスラエルの代表を含め32カ国が出席しました。
この背景には、米国オバマ大統領が昨年4月にプラハで掲げた「核なき世界」の実現に向けた世界各国の機運が高まっていると見ることもできます。
広島で潘国連事務総長は、「核兵器が存在する限り、私たちは核の影におびえて暮らすことになる。核兵器のない世界という夢を実現しましょう」と世界に呼び掛けました。
しかし、現実に目を向けると地球上には現在2万発を超える核兵器が存在するといわれており、今回の広島の平和記念式典への米国駐日大使の参列に対して、米国内で謝罪は無用との批判もあるようです。
広島、長崎に原爆を投下したことで第2次世界大戦の終戦を早め、多くの命を救えた、とする考えが米国内に根強い歴史観として存在しているのも事実です。
パブリック・リレーションズ(PR)先進国の米国のこと、悪魔の爆弾といわれる原爆で多くの無辜(むこ)の市民をも巻き添えにした良心の呵責から、その正当性をPR技法を使い徹底して国民や国際社会に訴えたとしても不思議ではありません。
一方、この核なき世界を目指す国際的な機運の高まりは、唯一の被爆国である日本にとって主導的役割を果たす絶好の機会でもあります。
日本政府は今こそ菅首相を筆頭に、核なき世界の実現に向け主導的役割を担う時だと思います。そのためにはパブリック・リレーションズ手法を駆使し、いま核の傘にある日本が今後どのように国際社会に訴えていくのか、その戦略が求められています。
■日本政府は世界平和の動きに敏感な対応を
広島原爆の日の前日である8月5日の日本経済新聞朝刊に「クラスター弾の全廃をめざせ」という社説がありました。
核兵器のような非人道的な大量破壊兵器とされる、クラスター爆弾の使用や製造を禁止する国際条約に108カ国が署名し、日本を含む38カ国が締結し条約が発効したとする内容でした。
社説によると今回の禁止条約は、クラスター爆弾廃絶を求めるNGO、ノルウェー政府や有志国が中心となり3年半で発効にこぎつけたとのこと。
その意義は大きいと思いますが、禁止条約には米国、ロシア、中国、イスラエル、インドなどが未加盟で、非加盟国のクラスター爆弾の保有数は世界全体の80%から90%に上るとの見方も出ているようです。
11月には第1回の締結国会議が開催予定。日本政府は米国やロシアなどに早期の条約締結を求めるべきである、と社説は訴えています。
終戦から65年、平和ボケといわれ続けるニッポン。戦争のない世界を実現するために国民一人ひとりが考え、それぞれの立場で実行することが必要だと思います。
パブリック・リレーションズはこうした動きを加速させることができます。
いつの時代も戦争は、規模の大小を問わず、子供や女性、お年寄りなど弱者をも巻き込み多くの犠牲を伴います。
私は小学校2年(昭和27年)ごろ、広島の爆心地に近いところに1年ほど住んでいました。クラスの友達にケロイド症の人が何人かいましたが、彼らはいまどうしているでしょうか。
暑い夏のこの貴重なひと時、原爆犠牲者に思いをはせ平和について改めて考えてみたいと思いました。
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2010年07月15日
参議院選挙、民主党大敗
~唐突な消費税提起が要因
こんにちは井之上 喬です。
昨年の政権交代後初の本格的な国政選挙となった第22回参院選は、皆さんが既にご存知の通り民主が大敗し、参議院で与党は過半数を大きく割り込んでしまいました。獲得議席は、民主44、自民51、みんな10、公明9、共産3、社民2、たちあがれ1、改革1と121議席を分け合うなかで、戦い済んでみれば自民とみんなの躍進がひと際目立つ結果となりました。
選挙戦では、9カ月にわたる民主党政権への評価や消費税率引き上げの是非などが争点となりました。政治と金、消費税、普天間問題など民主党を取り巻く環境は厳しいものがあったものの、改選前の54議席を大きく下回った惨敗振りに同党内で早くも執行部責任を問う声が浮上しています。
■がたがたの民主党戦略
今回の民主党の敗因はひとえに、鳩山政権から菅政権への移行過程での党内のごたごたから始まっていると見ることができます。その最たるものが菅首相に始まった国民への10%の消費税提起です。
この問題にはメディアが反応し、消費税10%是認の自民党をはじめ他の野党も一斉に反対姿勢を見せるようになりました。
そして小沢前幹事長も反応、「昨年公約したマニフェストを守るべき」とした同氏の執行部批判が内部混乱を拡大し、メディア報道も併せ有権者には戸惑いを与えました。
つまり選挙戦略がちぐはぐで統合性に欠け、この段階で、民主党の過半数獲得の望みは絶たれたといえます。
大半の選挙結果が判明した12日未明に菅首相は記者会見し、自身の続投表明とともに「私が消費税に触れたことが、やや唐突に伝わった。十分な説明ができていなかった点は反省している」と述べています。
私たちパブリックリレーションズ(PR)の言葉でいうならば、民主党はインターナル・リレーションズ(企業ではエンプロイー・リレーションズともいいます)が欠落していたことが大きな要因であると思います。
企業に例えるならば、社長が極めて重要な経営戦略や事業戦略を役員、幹部社員に十分説明することなく定例記者会見で唐突に発表し、それが報道されて株価が暴落するばかりか、社員や取引き先まで混乱に巻き込むという結果になったといったことでしょうか。
それにしても、もう1人の当事者である小沢前幹事長は今回の選挙をどのように総括し、今後自身の党内におけるポジショニングや9月の党大会に向け、どのような戦略を練っているのでしょうか、気になるところです。
■1票の格差が5倍超え
気になるといえば、1票の格差を報じた東京新聞(7/7夕刊)の記事。2007年の参院選の際に選挙区間の1票の格差(前回は最大格差4.86倍)について最高裁が「大きな不平等」と指摘にもかかわらず、是正されるどころかかえって格差が広がる結果となっています。
東京新聞(7/7夕刊)は、「鳥取県民を1票とすれば、神奈川県民は0.19票(筆者注:すなわち5.01倍の格差)。こんな選挙が正当といえますか」と“一人一票実現国民会議”の関係者の訴えを載せています。
議員1人当たりの有権者数は鳥取県(改選数1)の約48万8,000人に対し神奈川県は約244万3,000人で5.01倍。以下大阪府、兵庫県、北海道、東京都の順で鳥取県との格差が広がります。
仮に有権者1,064万2,000人を抱える東京都を鳥取県換算すると、なんと21.8人の議席が必要となります。
今回の選挙では、国会議員をひとりも持たない不利な状態からスタートした新党があります。そのひとつが改革派の首長連合、「日本創新党」です。
党首の山田宏前杉並区長をはじめ中田宏前横浜市長や斉藤弘前山形県知事らは地方行政で財政建直しの実績をもち、いずれも若くて実行力に富む候補者でしたが、選挙期間中のメディアとりわけTVの報道規制もあり、結果的に当選者を出すことはできませんでした。
もし1票の格差が是正され、東京都の定員が増えていれば、東京選挙区から出馬した山田候補は当選していた可能性もあります。
菅首相がインターナル・リレーションズにもっと気を使っていたら、1票の格差が是正されていたら、またネット選挙が本格的に解禁されていたらなどなど、いつも以上にさまざまなことを感じさせられた選挙戦でもありました。
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2010年07月05日
2020年、驚異のスーパーハイビジョン登場
~日本経済復活の新兵器となるか
こんにちは井之上 喬です。
サッカーのワールドカップ、日本代表、ほんとうにがんばりましたね。
毎試合テレビ(TV)にかじりつき、寝不足の皆さんも多かったのではないでしょうか。この家庭用テレビもあと10年するとドラスティックに変わります。
■TV、それはイ、ロ、ハの「イ」から始まった
私たちの生活の一部になっているテレビ。TVはさまざまな情報機器とのヒューマン・インターフェースとして近年ますます進化しています。3D対応のフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)が今春発売されたのは記憶に新しいところです。
日本でのテレビのルーツは、1926年12月にさかのぼるそうです。「日本のテレビの父」といわれる高柳健次郎さんが、試行錯誤の結果、電子式のブラウン管(CRT)にイ、ロ、ハのイの文字をはっきりと映し出すことに成功しました。
それから80年以上が経ち、街頭テレビに人々が殺到した時代から家庭には複数台のテレビが当たり前の今日、CRTは液晶やプラズマなどのFPDに置き換わり、1年後の2011年7月24日にはアナログ放送が終了し、地上デジタル放送に切り替わります。
これまで日本のテレビを取り巻く技術、ビジネスは長年にわたって日本経済を牽引し、家電大国ニッポンの象徴になってきました。
しかし、FPDや3Dテレビの時代になって日本のお家芸であったはずのテレビに大きな変化が訪れています。
大型の家電量販店のテレビコーナーには日本メーカーに加え、韓国のサムスン、LGなどのブランドが登場してきました。この傾向は米国などではさらに顕著になっており、さらに世界的な競争が激化すると考えられます。
多くの日本人にとって、家電の凋落は日本経済の凋落と結び付けられるほど「家電大国日本」への思い入れは強いはずです。
しかし現実は、韓国サムスン一社に日本の大手電機メーカー複数でも太刀打ちできない状況にあります。
■R&DはNHK技研
そんな中、日本のお家芸を守る技術として、NHKが研究・開発を進めている「スーパーハイビジョン(超高精細映像システム)」に遭遇しました。
5月末、NHK技術研究所は、スーパーハイビジョン・シアターを一般公開。その映像と音響の素晴らしさを紹介。
スーパーハイビジョンは、映像は現在のハイビジョンの16倍の高精度を誇り、走査線の数は4320本で3300万画素。
さらに22.2マルチチャンネル音響によるスーパーハイビジョン・システムは、映画館のような迫力を間近に体験できるとともに、その場にまさに居合わせるような臨場感は強烈で大きなビジネスの可能性を持っています。
NHKは、10年後の2020年に21GHz帯衛星を使ってフルスペックのスーパーハイビジョン試験放送を予定。
そのために家庭用の100インチクラスFPDの開発、将来的には100~150インチ程度のシート型ディスプレイの開発も目指しています。これにより莫大な市場が生まれるはずです。
スーパーハイビジョンは、驚異的な臨場感と迫力を家庭で楽しめるまさに夢のテレビ。ニッポン技術陣の面目躍如、その奮闘で日本経済をよみがえらせてほしいものです。
そしてスーパーハイビジョンの登場はパブリック・リレーションズ(PR)の手法にどう影響を与えるのかも気になるところです。
10年後、我が家に大型化した、スーパーハイビジョン対応システムをどのようにして搬入しレイアウトすればよいのか、いまから嬉しい悩み事ができてしまいました(笑)
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2010年06月28日
2010参議院選挙、突入!
~急がれる国家のリストラ
こんにちは井之上 喬です。
7月11日の投開票に向けて、2010参議院選挙がスタートしました。
菅政権初めての国政選挙の結果が大いに注目されます。
発足間もない政権に国民はどのような審判を下すのでしょうか?
参院選の主な政党のマニフェスト(政権公約)からキーワードを拾ってみると、消費税の税率アップ、法人税の引き下げ、普天間問題、経済対策、社会保障の充実などが挙げられています。
■各党のメッセージに注目
ところで定着した感のあるマニフェストではありますが、子育て、国会議員定数や公務員の人件費削減、企業団体献金禁止などでマニフェストの実効性に疑問符がつき、今回の参院選挙では自民党は公約、みんなの党はアジェンダと言っています。
せっかく有権者との間で交わすマニュフェストの精神が歪められるのは好ましいことではありません。
政権公約の名称はともかく、どの党にも国民は実行可能な内容を期待しています。
公示直前の週末、会社近くの区民センターで学生主体のNPOが主催する参院選東京選挙区立候補予定者による公開討論会に足を運んでみました。
ワールド・サッカーの対オランダ選が行われた日であるにもかかわらず、会場には大学生を中心に予想以上の聴衆が集まっていました。正直、「日本の若者もまだ捨てたものではない」と感じ入りました。
壇上には民主党、自由民主党など各党から9名の候補者が並び、今の日本をどう思うか、2020年に向け何をしたいか、など討論が繰り広げられていました。候補者の顔ぶれを見て感じたのは、小政党が多いということです。
国民新党、新党改革、たちあがれ日本、日本創新党などの話しから、民主党、自民党の大政党では拾いきれない国民の声に耳を傾けようとする意識が強く感じられました。
選挙におけるパブリック・リレーションズ(PR)で重要なのはメッセージング。
最終ターゲットにどのようなルートで、何を伝えたいのか、特に選挙の場合は有権者にいかに好印象を持ってもらえるかが重要になってきます。
マニフェストで何を訴えるのか?自分たちの特徴を如何にわかりやすく伝えるか、各党ともさまざまな工夫を凝らしています。
小政党の中でちょっと印象に残っているのが日本創新党です。
前杉並区長の山田 宏氏を党首に今回の参院選には、前横浜市長の中田 宏氏、前山形県知事のさいとう弘氏などが自治体での財政再建の実績をひっさげ、全国の革新首長連合をバックに立候補しています。
■次世代の子供にツケをまわさない
日本創新党のキー・メッセージでは、今のままでは日本はあと数年しか持たないとし、これまでの政治の仕組みを抜本的に変え、「子どもにツケをまわさない!」とアピールしています。
そのメッセージはシンプルです。「消費税アップを論ずる前に、まず国会議員の給料削減を行うべき」とし、民間が血のにじむようなリストラを幾度となく行っているのに、「国会議員は自らの身を切ってもいない」と厳しく糾弾しています。
また二重行政、三重行政を排除し、よりシンプルな行政を実現し、もっと知恵を使い、民の力を取り込み、小さな政府による政治を主張しています。
たしかにこのままの赤字たれ流し政策は、我々の子どもたち、孫たちにもツケをまわすことになってしまいます。
少子高齢化の加速で、2050年の日本の人口も現在の約1億2千7百万人から1億人を切ると予測されています。
働き手が少なくなる中で、国民、特に若者への負担増は、将来日本の活力を奪い、国家を崩壊させます。
衆議院と異なり解散選挙がないことで議員が、6年間の任期を国民や世界のために、じっくり考え、行動できる参議院。
「良識の府」の選挙で、これからの日本をきちっと描き、力を発揮してくれる政治家を選びたいものです。
がんばれニッポン!
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2010年06月07日
菅新政権誕生で期待される骨太の成長戦略
こんにちは、井之上 喬です。
鳩山内閣が6月4日に総辞職し、同日新首相に菅直人氏が指名されました。
鳩山首相の在任262日は現行法制下では5番目の短命で、祖父の鳩山一郎氏の745日に届きませんでした。
「政権交代」の錦の御旗のもと圧倒的な数の優位性を持ってスタートした民主党政権でしたが、政治とカネの問題や沖縄問題などで迷走し、国民の期待と信頼を裏切る結果になってしまいました。
後継の菅新首相には、国民、そして海外の信頼回復に待ったなしで取り組んでもらいたいものです。
産業界も今、新興国の台頭や世代交代などで大きな転換期を迎えています。
民主党政権が具体的な成長戦略を描けないまま、日本企業は激化する世界規模の競争の中でもがき苦しんでいるような感じがします。
■「産業構造ビジョン2010」
6月1日に経済産業省は、日本の産業競争力強化に向けた「産業構造ビジョン2010」案を公表しました。政府が月内にまとめる予定の『新成長戦略』の骨格になります。
それによると、日本経済を再び成長軌道に乗せるため、原子力発電所や鉄道などのインフラ輸出、次世代自動車など環境・エネルギー産業、医療・介護・健康・子育てサービス、ファッションやコンテンツなどの文化産業、そしてロボットや宇宙などの先端分野の戦略5分野での市場創出を謳っています。
この5分野により、新たに2020年までに149兆円の市場創出と、約258万人の雇用の確保を目指しているとしています。
その目標達成のために、企業の買収・合併を容易にする会社法の見直しや法人税の引き下げなど、制度改正の必要性も盛り込まれています。
最近の日本企業の業績を見てみると、リーマン・ショックからの立ち直りの兆しを見せてはいるものの、欧米そして韓国企業などに比べると回復カーブの角度は鈍いですね。
特にハイテク関連では、海外企業が連続して過去最高の四半期ベースの業績発表を行っているのに対し、日本企業には、円高や価格競争に巻きこまれ苦戦する様相がみられます。
好業績をあげている、ある外資系ハイテク企業の経営陣にその理由を尋ねると、「他社との差別化製品をいち早く市場投入できたこと、中国やインドなどの新興国での販売が好調だったこと」を挙げていました。
まさに日本企業が苦戦している原因はこのあたりにあると思いませんか。製品開発で後手に回り、避けては通れない新興国での販売ではライバルに後れを取っている、これでは業績回復も鈍いはずです。
「リスクを取らない」、「スピード決裁ができない」企業側の問題もさることながら、日本の産業がもがき苦しんでいる今こそ、一刻も早く、明確で統合的な国家支援政策を打ち出すことが新政権には期待されています。
■半減した、働く若者。
菅首相が誕生した6月4日の日本経済新聞朝刊にちょっとショックな記事が掲載されていました。
見出しは「働く若者 10年間で200万人減」という記事でした。ご覧になった方も多いかと思いますが、15歳から24歳の若者のうち、職に就いている人が2009年は約515万人で10年前に比べ約200万人減少したとのこと。
何と高度成長期に比べるとほぼ半減だそうで、この数字には正直驚きました。その一方でフリーターの数は6年ぶりに増加したとのことです。
働く若者が減った理由としては、少子化、高学歴化とともに雇用回復の遅れを挙げています。
そして、働く若者が減り続ければ社会から活力が失われ、日本経済にボディブローのように影響してくると警告しています。
まさにこの記事の通り。若者が生き生きと働けない国に成長などありえません。
日本はいまでも、世界に誇れる優れた技術、文化、人材などを持っていると確信しています。ただ、これらが国内で活かせないとなれば、世界に、グローバル市場に足を踏み入れ参入しなければなりません。
そのためには新しい発想とスピードを伴った行動が必要になってきます。勝負はこの3年から5年。まさにパブリック・リレーションズ(PR)の出番です。
今こそ国を挙げて「新生ニッポン」について考える時ではないでしょうか。
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2010年05月17日
加熱する国際原発商戦、日本の勝機は?
~急浮上する「高温ガス炉」その2
皆さんこんにちは、井之上喬です。
先週は、原子力発電の国際商戦で苦戦する日本企業の話をしましたが、このところ原子力発電の中で、「軽水炉」型に対してもう一つのタイプで、安全性がより高い「高温ガス炉」が急速に脚光を浴びています。今回はその高温ガス炉について話します。
■日経記事でベールを脱いだ「高温ガス炉」
日本の高温ガス炉の研究は、独立行政法人日本原子力開発機構によって行われています。先週もご紹介した日本経済新聞(5月2日付け)の記事には、同機構が研究レベルで2004年に世界に先駆けて水素製造に必要な温度である摂氏950度を達成したことが報じられ、新興・途上国などの海外輸出を想定した場合、高温ガス炉を使った小型で安全な原子力発電が有効とされると記されていました。
高温ガス炉の存在については、日経新聞が取り上げるまではほとんどの日本メディアに知られていませんでした。業界でも一部の専門家の間でしか知られていないことです。
なぜこれほど歴史的な偉業を成し遂げた研究が、広く知らされなかったのか不思議でなりません(ちなみに950度達成している他国の高温ガス炉はいまだにありません)。
実用的な原子力発電は大きく2つに分けることができます。一つは従来から使われている「軽水炉」、もうひとつは「高温ガス炉」です。
これ以外に先日14年ぶりに再開した「高速増殖炉」(「もんじゅ」)がありますが、核燃料が再生産される高速増殖炉の実用化にはまだ40年ほどかかるために、ここでは触れません。
関係者の話を総合すると、日本の原子力政策では、軽水炉で「電気エネルギー」、高温ガス炉では将来の水素製造を目的にした「熱エネルギー」をつくりだすこととし、それぞれの役割りが固定化されていたようです。
その結果、水素社会(熱エネルギー)の実現には30-40年もかかるとし、2004年に950度達成後も積極的な水素開発に力を入れてこなかったとしています。
■途上国型でテロ攻撃に強い
しかし近年、途上国の急速な電力需要に応えるために、実用化までに時間がかかる熱エネルギー(水素)開発と並行して、小型発電施設としての高温ガス炉の役割がクローズアップされてきました。
ここで、上述の2つの原子炉の違いについて少しお話します。私は専門家ではありませんが、これまで得た知識では、高温ガス炉は、炉心構成、原子炉構造等の特性から、軽水炉などの他の形式の原子炉に比べて、「高安全性」、「高熱効率」、そして「高経済性」という3つの特徴を有しています。
加えて、軽水炉と比べ、小型化された原子炉をもつ高温ガス炉は、送電線などのインフラ設備のない途上国用に最適だとされています。いわゆる地産地消型原子炉といえるわけです。
まとめると、日本は世界をリードする国産の高温ガス炉技術を有しており、急増する世界のエネルギー需要問題を解決し、2020年までに日本が目標とする、25%炭酸ガスの排出量削減を実現するばかりでなく、新興国、発展途上国への戦略的技術支援を行うことが可能となります。
高温ガス炉は小型でも高い経済性を有するゆえ、分散エネルギー源として、燃料電池用の水素供給やコンビナートにおける大口自家発電所用など様々なニーズに応えることが可能となります。
そして高温ガス炉の技術では日本が世界の最先端をリードでき、CO2問題の解決策として最も有望なソリューションを持つ日本にとって大きなビジネス・チャンスであることに疑いの余地はありません。
途上国向けの原発輸出には、先進国ではこれまで真剣に考えてこなかった、セキュリティ問題にも留意しなければなりません。
高温ガス炉の他の利点は、地下に埋め込むことにより、施設をテロ集団のミサイル攻撃から守ることができる点です。これ以外にも高温ガス炉は多くの利点を有しています。
20世紀は石油争奪の世紀といわれるほど、エネルギー問題はいかなる国家にとっても最重要課題です。
これまで高温ガス炉は、国内利用として熱エネルギーを取り出す目的で考えられていましたが、世界的な急速な電力需要に応えるために発電施設としての役割が期待されているのです。
こうしたプロジェクトを社会の理解を深めつつ行う上においても、リレーションシップ・マネジメントであるパブリック・リレーションズ(PR)なしに推進することは困難といえます。
今後も、水が原料の水素製造を可能にする高温ガス炉について取り上げていきたいと思います。
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2010年05月10日
加熱する国際原発商戦、日本の勝機は?
~急浮上する「高温ガス炉」その1
こんにちは、井之上喬です。
5月の連休中に、仙谷由人国家戦略担当相と前原誠司国土交通相はベトナムを訪問し、同国初の原子力発電所建設事業を日本企業に受注させるよう働きかけました。
「政官民が一体となって取り組もうという意識が今の日本には欠けている」と世論が高まる中で、民主党政権下、日本政府主導の相手国政府との交渉が展開されたことになります。
昨年12月のアラブ首長国連邦(UAE)の原発建設の国際入札では、後発の韓国が李明博大統領によるトップ・セールスで総額約3兆6千億円のプロジェクトを落札。
続くベトナムでの原発建設の競争入札(4基のうちの2基)にも、ロシアがほぼ受注を決めるなど、高度技術を有する日本勢は敗退を喫していました。
今回の仙谷国家戦略相のベトナム訪問で、日本政府の政策転換が見えてきます。また米国(ワシントンDC)やベトナムにこれら日本の担当大臣がトップ・セールスに出向いた記事は主要メディアが連日ニュースで取り上げ、多くのオーディエンスは勇気づけられたはずです。
そんな中で、今なぜ原子力発電が注目されているのでしょうか?
それは原子力発電が地球温暖化の大きな原因とされている二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないからです。
風力発電や太陽光発電、そして水素などのクリーン・エネルギーは、工業用電力など安定した大量消費の電力源として、その実用化にはまだ数十年の年月を要するとされています。それ故、つなぎ的な利用法として、軽水炉型の原子力発電が重視されているのです。
CO2の追い風を受け、1979年のスリーマイル島原発事故から新設が途絶えていたアメリカでさえ、オバマ大統領主導のもとで新たな原発建設に乗り出しています。
日米欧だけでなく原発建設の流れは中国、インドなどの新興国や途上国でも大きなうねりとなって表れています。
国際原子力機関(IAEA)によると、世界の原発は軽水炉型で、現在の約430基から、2030年には530基から800基に増加すると予想。
この背景には新興国での新設に加え、日本を含む先進国での建て替え需要が見込まれていることがあります。
そんな市場拡大を当て込んでか、世界規模で原発商戦が激しさを増しています。
原発を巡っては米国のGEや東芝、三菱重工、日立製作所、仏アルバなど世界の重電大手を中心に、各国が国家の威信をかけて受注合戦を展開しており国際原発商戦は今後もヒートアップするばかりです。
その象徴ともいえるのがあのマイクロソフト創業者、ビル・ゲイツ会長です。東芝と組み次世代原子炉を開発するというニュースは大きな衝撃を持って迎えられました。
5月2日付けの日本経済新聞(朝刊)の日曜版「サンデー・サイエンス」には、次世代原子炉にビル・ゲイツ(Terra Power社)/東芝の共同プロジェクトとともに日本の「高温ガス炉」が紹介されていました。
現在、実用化されている原子力発電は軽水炉型ですが、次世代原子炉開発で急速にクローズアップされてきたのが、「高温ガス炉」。
2004年に日本の研究炉で、世界に先駆け、水素製造に必要な温度である950度を実現した高温ガス炉が次世代原発の切り札として期待されているのです。(次号に続く)
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2010年05月05日
「上海万博」開幕に思うこと ~変化する重層社会中国でどのようにターゲットを捕捉するのか?
こんにちは、井之上喬です。
5月1日に「上海万博」が開幕しました。2008年の北京オリンピックに続く巨大プロジェクト。
246の国・国家機関が参加し、来場者目標は7,000万人(1970年開催の大阪万博は6,400万人)と史上最大規模の万博となる見通し。
国家威信をかけたこの一大イベントは中国政府にとって、1978年に鄧小平により始まった改革開放政策が約30年で結実したことを世界に示す絶好のチャンスです。
約30年前、日本に学ぶことから始まった中国の改革は、鄧小平に始まり、その後、胡耀邦、趙紫陽、江沢民、そして胡錦濤の5人の歴代の指導者によって行われてきました。
しかし日本のメディアは、連日にぎわうこの上海万博を途上国初のイベントとして報道していますが、そのうたい文句には違和感があります。
現在の中国に、共産党一党支配体制による特異な資本主義を見ることができます。今回の上海万博や東京モーター・ショーの19倍のスケールの「北京国際自動車ショー」、そして飛ぶように売れる高級車や豪華マンションなど。
フォーブス誌の保有資産10億ドル以上の「2010年世界の富豪ランキング」では、中国からは日本の22人の3倍近い64人(米国についで2位)がリストアップ。
北京や上海、深圳、広州、天津、大連、そして先週このブログで紹介した蘇州などの主要都市を見る限り、もはや中国が途上国とはいいがたいものがあります。
今や中国は、日本や世界経済に甚大な影響力を持つ国家に成長しました。
しかし中国の特徴は、55の民族が入り乱れながら歴史が形成されてきた重層社会にあるといえます。
広大な領土を持つ多民族国家中国は、極度の地域格差がゆえに、ビジネスでかかわる日本企業はこの重層社会の国で、どのようにターゲットを絞り込み捕捉し続けられるか頭を悩ませています。
マーケティング戦略上、顧客のセグメントや市場動向の把握は当たり前のことですが、中国社会のさまざまな格差やその変化度合は、そのスケールやスピードにおいてこれまで世界のどの国にも見られなかった凄まじいものです。
中国進出企業には、これらの変化を常にアップデートし、目標設定の確認を行う必要がありそうです。
そのためには、刻々変わる市場を正確に捉えるための調査は欠かせません。
そこでは、パブリック・リレーションズ(PR)による戦略構築とターゲットへのメッセージ発信が求められます。
そしてターゲット(市場やさまざまなステーク・ホルダー)からのフィードバックでその変化を捉え、戦略の見直しと修正が繰り返し行われることも求められるでしょう。
上海万博の会期は半年間。さまざまな交流を通して、中国の人びとが世界に目を向け、世界がまた中国を知るきっかけになれば素晴らしいことだと思います。
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2010年04月28日
驚異的な中国の成長 ~巨大なブラックホール
こんにちは、井之上喬です。
先日、中国へ出張しました。昨年9月に北京訪問して以来、半年ぶりの訪問でした。
北京、石家荘(北京から南へ300km)、上海、蘇州(上海から西へ80km)と4都市を回りました。
今回の訪問はまさに驚きの連続でした。
北京、上海以外の地方都市訪問はこれ迄あまりありませんでしたが、石家荘も蘇州も見事に開発されていました。
とくに蘇州(江蘇省)の発展には、思わずうなり声をあげるほど。
中国は人口もさることながら、広大な土地や都市部で立ち並ぶ高層ビル群、幹線道路の広さなど、エネルギッシュでそのスケールの大きさには本当に驚かされますね。
紀元前6世紀に呉の国の都が置かれた古都、蘇州へは上海から車で行きましたが、電車もあり、36分で行く新幹線もあるそうです。人口約600万人の蘇州市の中心部には大都市には珍しく湖(金鶏湖)があり、そこを目指して約1時間のドライブ。
目的地に着く間に目に入る光景は雄大ですが、途中途中に小都市があります。高層マンションが立ち並び、昔の中国のイメージからはかけ離れた光景。高速道路も、広い車線で車のナンバープレートはブルー。
大型車が少ないことを除けばほとんどアメリカのハイウエイを走っているような錯覚にとらわれます。
蘇州中心部に入る途中に、産業団地を通過しますが、区画整理がよくできていて、シリコンバレーを彷彿させるような低層の建築物が配置されています。
湖のそばの街並みにも驚かされました。シンガポール政府の投資も入っていると見え、ともかく全てが綺麗なのです。オレンジ色の屋根の大きな別荘が並び、湖の周辺は高層ビル群。ここが中国だとは想像もできないほどです。
見ていると、おそらくプロのランドスケープ・デザイナーが設計したと思われるしっかりした街づくりを行っています。
日本で新しい地域開発を行った場所を見ても、建物だけしっかりしていても全体の調和を考えたデザインが行われた場所にお目にかかったことはありません。一党支配体制の国家だからできることなのでしょうか、情けなささえ感じます。
高速道路を走っていたときに、同行してくれた現地の人のお姉さんが「高速道路に投資をしている」ことを聞きました。
中国では、高速道路や水道などのインフラ系に何と民間企業(外国企業も含め)だけでなく、一般の住民も投資できるようです。このお姉さんの場合は毎年の投資利回りは10%だそうです。
日本の場合、かつての国鉄や道路公団のように、これまで「インフラ系は政府の仕事」として政府の資金で建設・運営されてきました。一時期「第3セクター方式」で官民共同プロジェクトがもてはやされましたが、建設まではなんとかできても、いつも運営でつまずき、無責任経営で大半のプロジェクトは成功しませんでした。
毎年利回りが10%ということは、当然事業そのものがうまくいっていなければ実現できない訳ですが、13億超の人口を抱える中国の物凄いエネルギーを感じます。
自信に充ち溢れる現地の人たちをみて、日本はやがてこの巨大なブラックホールに呑み込まれるのではないかと危機感を抱くのは私だけではないはず。
漂流する日本を立て直すのはこの10年が勝負。いやこの2‐3年かもしれません。
860兆円の赤字を抱える日本で最重要課題は経済再建。成長戦略の明確な方向性と具体的な処方箋を早急に作らなければなりません。もう時間はないのです。
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2010年04月22日
日本創新党が旗揚げ
こんにちは、井之上喬です。
4月18日都内で「日本創新党」の結成が発表されました。
新党は首長や地方議員が中心に構成され、党首には東京都杉並区長の山田宏氏、代表幹事には前横浜市長の中田宏氏、政策委員長には前山形県知事の斉藤弘氏が就任。
新党は、「国家の自立」、「地方の自立」、「国民の自立」を掲げ、財政再建、道州制などの政策を打ち出しています。
2人は夏の参議院選立候補の意思表明をまだしていませんが、山田氏と中田氏には共通点があります。2人とも松下政経塾出身で同塾では山田氏は中田氏の8年先輩。
同じ松下政経塾出身の前原誠司国交大臣も熱いエールを送っています。
中田氏は横浜市長在任中に市の6兆円を超える借金を1兆円削減、山田氏は杉並区の借金を900億円削減した実績を持っており、自治体での財政再建などの実績を活かし国の財政再建などの根本的な見直しを行いたいとしています。
結成発表の記者会見やTV出演での2人の話を聞いていると、多様な視点を持っているようにみえます。
発信力つまりPR力があり、明快で判り易く、政治家としての実績に裏打ちされた自信がうかがえます。
一方で、沖縄の普天間基地移転問題で迷走する鳩山政権には、現地の人や国民のフラストレーションが高まっています。
朝日新聞の17日、18日の電話による全国調査によると、内閣支持率が25%とこれまでで最低の数字で、1か月前の前回調査(3月13、14日)の32%からみると大幅な下落、不支持率も前回の47%から61%。
政党支持率では、民主党は23%(前回27%)、自民党14%(同15%)と下落。
一方、第3極として、早々と自民党から離党した渡辺喜美氏の「みんなの党」の支持率はじわりじわりとあがり、前回調査の6%から7%に上昇し第3位につけています。
離党劇が繰り返される自民党の政党支持率は相変わらず低迷。かくして無党派層が50%を超えるに至っています。
有権者の過半数を数える無党派層から、代わりの党を探し求める国民の叫び声が聞こえてきます。
日本で真のリーダーを求めるのは無理なのでしょうか?いやそうは思いません、必ずいるはずです。私たち国民はあきらめることなくリーダーの到来を待っているのです。
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2010年04月12日
開けてびっくりiPad(アイパッド)
~ビジネスのスタートラインにも立てなくなるのか日本メーカー
こんにちは、井之上喬です。皆さんいかがお過ごしですか?
週末に新宿御苑で時期遅れのお花見を楽しみました。
地面に散り落ちた桜の花びらが絨毯のように陽光に映え、幻想的な空間のなかで時間が経つもの忘れてしまうほどでした。
携帯電話の分野ではiPhone(アイフォーン)に代表されるスマートフォンが大流行し、パソコン(PC)の世界ではネットPC、タブレットPCに注目。モバイルのインターネット端末機器はものすごいスピードで進化を続けています。そんな中で米国時間の4月3日、アップル社が新しい端末機器「iPad(アイパッド)」を発売し世界中の注目を集めています。
■日本でも花開くか電子書籍分野
iPadは、日本でも4月末の販売が予定されていますが高さ約243mm、幅約190mm、厚さ約13mmで重量はWiFi+3Gモデルで730g。週刊誌よりひとまわり小さいB5判の雑誌に近い大きさで、9.7インチのLEDバックライトの液晶ディスプレイ画面で文字も読みやすいようです。
日本発売に先駆け、米国で購入したiPadを試したあるライターさんは、「慣れるのにちょっと時間がかかったが、すぐに時間を忘れていろいろな機能を試してみたくなった。日本発売が待ち遠しい」とiPadの虜になってしまった様子でした。
iPadではウェブ・ブラウザーやメール、写真、ビデオ、動画、音楽再生、ゲームなどに加え注目は何と言っても電子書籍。文字拡大の必要もない読みやすい大きさ、1画面の情報量も多く、電子書籍の分野に大きな影響を与えるのは必至のようです。
電子書籍の分野では、2007年に米アマゾン・ドット・コムが電子書籍端末「Kindle(キンドル)」を投入。2008年後半から米国の電子書籍市場は急拡大し、米国IDPF(The International Digital Publishing Forum)の調べでは、2009年第4四半期(10~12月)の電子書籍売上は5590万ドルで、前年同期の1680万ドルに比べ3.3倍の売り上げ増となっています。
この急成長の背景には、電子書籍端末の登場だけでなく米国や欧州の出版社がコンテンツの提供に積極的に取り組んでいることも見逃せません。日本でもiPadの上陸を前に3月24日に日本電子書籍出版社協会(電書協:一般社団法人)が設立されました。
電書協は2000年に設立された電子書籍販売サイトを運営してきた電子文庫出版社会(任意団体)が母体となっています。電書協はこの団体が行っていた電子文庫パブリの運営を引き継ぐとともに、電子書籍事業に関する課題の調査・研究を行っていくことにしており、代表理事には講談社の野間省伸副社長が就任。
メンバー企業には、角川書店、幻冬舎、講談社、光文社、集英社、小学館、新潮社、ダイヤモンド社、筑摩書房、東洋経済新報社、徳間書店、日経BP、日本放送出版協会、PHP研究所など出版社31社が参加。組織を拡大しています。
取次や書店といったこれまでの書籍流通構造への依存に加え、活字離れが進み市場規模が縮小している構造不況の出版業界にとって、電子書籍が神風となるか、それとも黒船襲来となるのかデジタル時代のコンテンツ・ビジネスの今後に大いに注目したいと思います。
■ブラック・ボックスは必要ない!
今回のiPad関連報道で一番驚いたのが、4月9日の日本経済新聞朝刊でした。見出しは「iPad部品 日本製影薄く」。米国のハイテク調査会社アイサプライ社のデーターが紹介されていました。
同社がiPadを分解して、そこに搭載されている電子部品のメーカーや価格などを分析した結果、何とほとんどが韓国や台湾メーカーの部品。日本メーカーの部品ではTDKの香港子会社アンプレックステクノロジー社製のバッテリーが唯一採用されているだけという衝撃的な記事でした。
これまでの我々の常識とされた、「最先端のコンシューマー電子機器には多くの日本製電子部品が搭載され、高機能化、高性能化に貢献している」といった考えは覆されました。半導体など日本企業が生産する最先端の電子部品が世界をリードし、貿易摩擦を生むほどの勢いがあった時代とは隔世の感があります。
日本は、ヒット商品も生み出せず、ヒット商品に搭載される部品も作れない、そんな国になってしまったのでしょうか。
最先端の電子機器分野では、これまでの「ブラック・ボックス的部品を採用し、他社に真似できないような製品を作る」時代から、「普通に調達できる部品をうまく組み合わせ低価格かつ高機能な製品を工夫する」時代に移行したようです。
このままでは、新しいビジネスのスタートラインにも立てない事態になりかねません。3月22日の井之上ブログでも書きましたが、ガラパゴス化はまだましなのかもしれません。韓国や中国のスピード経営は新しいビジネス・モデルを創りだし、これまで日本の製造業の常識であった“良いものを作れば売れる”時代は今や遠い昔話。
Made in Japanが見向きもされないような時代が来ないように、いま政府には強いリーダーシップが求められています。産官学が連携し、次々に新ビジネスを創出させ、世界市場をリードするような選手=企業を育成する体制づくりが急務ではないでしょうか。目標を設定し、その達成のためのリレーションシップ・マネジメント(良好な関係性の構築・維持)であるパブリック・リレーションズ(PR)が強力な武器となるでしょう。
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パブリック・リレーションズに関心をもつ数多くの読者の熱意に支えられ、井之上ブログは2005年4月4日掲載の第1号「パブリック・リレーションズの世界へようこそ」から数えて今回まで262号を重ね、満5年になりました。こうした節目を機会に、以前から読者の希望がありました「メルマガ」を、近々、自らの手で発行することといたしました。
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2010年04月05日
反捕鯨団体「シー・シェパード」の違法侵入事件
~「エコテロリズム」へ毅然とした対応を
こんにちは、井之上喬です。
皆さん東京の桜も満開。「お花見」は楽しまれましたか?
今回のブログでは、シー・シェパードの「第2昭南丸」への違法侵入事件を採りあげます。この事件については新聞やテレビの報道などでご存知の方も多いかと思います。
4月3日付の朝日新聞(朝刊)には、「反捕鯨の元船長起訴」という見出しで、反捕鯨団体「シー・シェパード(SS) 」メンバーでSSの小型高速船元船長ニュージーランド人、ピーター・ベスーン容疑者(44)が2日、艦船侵入などの罪で東京地検に起訴されたことが報道されています。
■世界の耳目を集める「劇場型裁判」
シー・シェパードは、環境保護団体を自称しているものの、目的達成を大義名分に捕鯨船やその施設に向けた行動は過激で、これまでもしばしばマスメディアを賑わせています。
1980年にはリスボン(ポルトガル)で捕鯨船を爆破し沈没させ、86年にはレイキャビック(アイスランド)などで捕鯨船と鯨解体工場を破壊。こうしたシー・シェパードの一連の過激行動に対し「米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・ジャーボー国内テロ担当部長は02年2月の議会証言で、SSの活動を『エコテロリズム』と表現した。」と朝日新聞(3月13日朝刊)に報じられています。
わが国との関連では、和歌山県太地町でのクジラ魚網の切断事件(2003年11月)をはじめ、第2勇新丸への侵入(2008年1月)、第2昭南丸への小型高速船衝突(2010年1月)、そして2010年には第2昭南丸への薬品ビンの投げ込みや日新丸対するレーザー光線の発射といった妨害行動が起きています。
第2勇新丸への侵入事件で日本政府は、オーストラリア人らSSの活動家2人を拘束したものの、長期化で国際的な批判が高まることを懸念して2日後には洋上で逮捕者をオーストラリア政府に引渡しています。
これに対して当時野党だった民主党が「極めて甘い対応」と批判。SSの暴力行為には反捕鯨国も参加している国際捕鯨委員会(IWC)が全会一致で非難声明を出すなど、NGOからも支持されています。
こうした政治色や国際性の強い事件でもあり、起訴に続く公判では世界の耳目を集めることになります。ベスーン容疑者にとってみれば日本の調査捕鯨の不当性を世界に向けて反捕鯨世論をあおる「劇場型裁判」に持ち込む機会となります。
同様に日本政府にとっても、この事件を見守っている国際社会に対して日本の立場や見解を明確に主張すべき好機となるはずです。
■国際ルール破りは許さない
嘉永6年(1853年)の黒船来航は、太平洋で盛んに捕鯨を操業していたアメリカにとって捕鯨船の物資補給(薪、水、食料の補給点)を目的とした寄港地を確保したいという意図があったといわれています。
石油が発見される前、当時のアメリカとイギリスの捕鯨船は、太平洋、大西洋、インド洋、日本近海など世界中でマッコウクジラを獲っていました。この捕鯨は主に鯨油と各種工業素材に利用されていた鯨ひげを採取するといったもので、肉などはほとんど捨てられていました。
日本のようにクジラ全てを無駄なく使用するというものではなかったようです。歴史的に見ても日本は世界一鯨を大切にしてきた民族だといえます。全国各地の捕鯨港付近には、鯨に感謝してその霊を慰める神社が建立されていることを見てもよく分かります。
つまり西欧先進国はかって、クジラを油の原料として殺戮していたのに対して、日本は国民が生きていくのに必要な重要なタンパク源としてクジラを位置づけていたといえます。
どんな問題も文化の衝突に持ち込むと解決は難しくなりがちですが、少なくとも捕鯨に対する根本的な捉え方の違いは、国際社会の中で堂々と主張すべきではないでしょうか?ましてや調査捕鯨が国際ルールとして認められている以上、船の中に侵入したり、乗組員に危害を与えることが許されてよいはずはありません。
その一方で、1982年に国際捕鯨委員会(IWC)の決議で商業捕鯨は禁止されましたが、日本は1987から調査捕鯨として捕鯨を続けています。調査捕鯨をはじめて20年以上経ちますが、この期間にどれだけ調査データを積み上げてきたのでしょうか。反捕鯨国や反捕鯨団体を説得できるだけの科学的なデータは揃えてないのでしょうか。
文化や価値観はそれぞれの国や民族によって異なるだけに、前述したような文化論だけにはまり込めば解決の出口を失いかねません。したがって捕鯨問題は海洋資源の活用と保護の視点からも、科学的根拠を基に論議されるべき問題だと思うのです。
こうした問題にこそリレーションシップ・マネジメント(良好な関係性の維持)機能を有するパブリック・リレーションズ(PR)は不可欠です。それにもかかわらず、この問題についてパブリック・リレーションズ専門家の声が聞こえてこないのは本当に残念なことです。
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パブリック・リレーションズに関心をもつ数多くの読者の熱意に支えられ、井之上ブログは2005年4月4日掲載の第1号「パブリック・リレーションズの世界へようこそ」から数えて今回まで261号を重ね、ちょうど満5年を迎えました。こうした節目を機会に、以前から読者の希望がありました「メルマガ」を、近々、自らの手で発行することといたしました。
近日、当ブログで「無料メルマガ」の申込み手続きなどご案内させていただきます。多くの方のご参加をお待ちします。
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2010年03月22日
日本が絶滅危惧種にならないためには?
~ガラパゴス化はまだましか
こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。
東京の桜のつぼみもかなり膨らんできました。会社近くの新宿御苑の桜の開花も間もなくです。
グローバル市場が急速に拡大する一方で、日本国内の市場は長期にわたる停滞で縮み傾向を強めています。これまで世界第2の経済大国として国内市場を見据えビジネスをしてきた多くの日本企業にとって、従来のやり方ではもはや生き残れなくなってきています。
そのよい例が携帯電話。インターネットを介したさまざまなサービスが国境を越えて提供される時代に、日本の携帯電話業界はガラパゴス化と揶揄されるような日本固有の規格に固執するあまり国際市場ではマイノリティにとどまっています。
■電気自動車で急速充電器の国際標準化の動き
最近は自動車業界に関する報道が多く見られます。トヨタのハイブリッドカー「プリウス」の不具合や急加速問題に始まり、ホンダが発売した2人乗りのスポーツ型ハイブリッドカー「CR-Z」の好調な受注状況、日産自動車のカルロス・ゴーン社長が次世代「マーチ」のタイでの発表。
またタイヤ大手のミシュランの日本国内生産中止や現代自動車の日本での乗用車販売中止の発表など、日本からの撤退ニュースも流れています。
自動車は日本の基幹産業。すそ野が広い業界ゆえに日本経済に及ぼす影響も大きいものがあります。その中でも注目したいのが、電気自動車(EV)の急速充電器の国際標準・規格統一を目指す協議会発足のニュースです。
今月3月15日に発足したのは「CHAdeMO(チャデモ)協議会」。英語の「CHARGE=充電」と「電気のde」そして「MOVE=動く」を組み合わせた造語だそうで、「車の充電をしながらお茶でも」といった意味も含まれているようです。普及に向けて少しおしゃれ気分も入れてみようと考えたネーミングでしょうか?
CHAdeMO協議会は、トヨタ、日産自動車、東京電力、富士重工を幹事会社に本田技研、スズキ、マツダなど乗用車メーカー大手や自動車部品メーカー、ローソン、三菱商事、東芝など国内の流通、電機などの企業に加えABBやボッシュなどの海外メーカー、そしてオブザーバーとして経済産業省など24団体を含めた158社・団体が参加。CHAdeMO は“オールジャパン”として国際標準化をめざして発足したもの。
電気自動車は走行中の二酸化炭素(CO2)の排出量がゼロで、現在のエコカーの主流であるハイブリッドカーを凌ぐエコカーとして位置づけられ、現在は三菱自動車のi-MiEV(アイ・ミューブ)など日本勢が先行していますが、米国GM、日産、ダイムラーなども2010年の市場投入を予定しており、内外企業入り乱れての競争になることが予想されています。
電気自動車普及のための課題は、1回の充電で100Kmから160Kmの距離しか走れないことです。タウンカーとしては十分かもしれませんが、本格的な普及のためには、一回の走行距離を伸ばし、ガソリンスタンドのように街中に充電インフラを整備することは必須となります。
それも現在のような200Vの電源で、フル充電するのに約7時間もかかるようなシステムではなく、今回の急速充電器のように30分程度で電池容量の80%程度まで急速充電できるような急速充電システムが必要となってきます。
このようなシステムが、ガソリンスタンドや高速道路のサービスエリア、コンビニの駐車場などで整備が進めば、電気自動車普及に弾みがつくと期待されているのです。
■新産業創出に国家的な取り組みを
この取り組みは、鳩山首相が表明しているCO2の25%削減目標達成のための具体的な方策としても、海外にも大きくアピールできる点でも大いに注目されています。しかし、技術的にどんなに世界をリードしていても、それが世界標準になると限らないことは、前述の携帯電話をはじめ、さまざまな分野でこれまで日本が悔しい思いをし、経験してきたことです。
今回の急速充電器についても、ジャパン方式が国際標準になれば日本メーカーにとっては新たなビジネスを拡大するうえで圧倒的優位に立てます。しかし一方では、ドイツのダイムラー、米国のGM、フォードなどもそれぞれの方式で標準化を目指しており、国際標準化機構(ISO)などでも規格統一、標準化に関する議論が始まっています。
特に欧州と米国の動きには、過去の経験からみても注視すべきだと考えます。いかに技術が優れていてもスタンダードを勝ち取らなければ、新しいビジネス、巨大産業の創出は困難です。これからは技術的優位性と必要性をアピールする啓発活動やロビー活動を含めたパブリック・リレーションズ(PR)活動が重要になってきます。このような場合、広告で目的達成することには手法や費用の面から見ても無理があります。
前述のように、日本市場だけのビジネスで採算がとれていた時代は良いのですが、これからはそうはいきません。携帯電話でも日本型の高機能化追求よりもiPhoneのようなスマートフォンによる高機能化やさまざまなフリーのサービス提供モデルは、あっという間に大きなうねりとして日本にも上陸。
さらには中国やインドでもこの流れは加速し世界規模の大きなビジネスになっていますが、ここでも日本メーカーはこれまでの経験や技術力を生かせず苦戦しています。
こうしてみると電気自動車の急速充電器の世界標準化の動きは、単に一つの産業界の話ではないことが分かるはずです。世界規模の新しい産業、ビジネスを創出するうえで日本がどのような役割を果たしていけるかの試金石になるのではないでしょうか。
日本はこれまで、ものづくりで世界をリードしてきました。しかしどんなに良い技術、製品でも消費者に受け入れられないような技術や製品はビジネスとしては成り立ちません。これからは世界中の消費者に向けてものづくり技術とそれを生かしたサービス、そのインフラも含めてシステムとして提案していく必要があると思うのです。
特に、グリーン・エネルギーや新幹線、リニア・モーターなど輸送システムの海外進出、先端医療、安全性の高い原子力など、将来1億3千万人の国民を食べさせていくことができるような有望な産業を育てていくには、政府主導の産学官連携がこれまで以上に重要になってきます。
優れた技術を基盤に、ある国向けには少しデザイン自体を変える、またある国向けにはサービス内容に工夫を加えるなど、よりきめ細やかなビジネス戦略が必要になってきます。いまの日本企業・日本人にはまだそれができる基盤があるはずです。いま日本に最も求められているのは、“世界一じゃないといけないのですか?”ではなく、“世界一を目指しましょう”の精神で、政府が先頭に立って旗を振ることだと思うのです。
目的達成のために企業トップが自ら語り、グローバル市場での成功を得るために、日本企業にはいまこそPRを戦略的に駆使することが求められています。さまざまなパブリックやステークホルダーとのリレーションシップ・マネジメント(良好な関係性の維持)であるパブリック・リレーションズ(PR)は不可欠な手法なのです。
2010年02月18日
ワシントンのNPBに出席して その2
~大雪のトラブルで触れた日本人の心づかい
こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。
前回、ワシントンDCでのオバマ大統領出席のNational Prayer Breakfast(NPB:大統領朝食会)へ出席したお話はしましたが、降り続く雪でワシントンの首都機能はマヒ。スノーマゲドン(雪最終戦争)といわれる今回の大雪は最終的に111年ぶりとなったようです。
ワシントンポストなど現地の報道によると、この冬の累積積雪量は140センチに迫ると報じられ、豪雪の影響で5万世帯、19万人が停電の影響を受けたとされています。また連邦政府は連続4日間の業務停止。現地友人のオフィスも月曜日から木曜日までクローズし、12日の金曜日からようやく再開したとのこと。
私は大雪の初日に無事ワシントンを脱出し帰国できましたが、米国での緊急時体験は私にいろいろなことを考える機会を与えてくれました。
■コンピュータ化がもたらす人間疎外
今回のような緊急性の高い状況に身を置いたことで、コンピュータ社会の欠陥を強く感じました。米国は、ホテルの予約、空港への問い合わせ、電車予約など大型のコンシューマー・サービス分野では日本以上にコンピュータ化されています。
つまり顧客から電話を入れると、コンピュータの指示で顧客の要望に答え解決するシステムです。しかし、突発的な事故や問題が発生したとき窓口には人間の応対が必要となります。特に交通機関がマヒした際には、フライト・スケジュールなどのキャンセルや変更は必須。
そのようなときには、通常オペレータが対応することになっていますが、なかなか出てきません。ホテルのコンセルジェに相談しても「相手が出てくるまで待つしかない」と返事が返ってくるばかり。ようやく待って相手を捕まえても、多くの場合その対応は親切なものとはいえません。とくに英語が不自由な外国からの旅行者にとっては不安と心細さを増長させるばかり。
■トラブルの中で触れた日本人の心づかい
今回の大雪では、普段体験することで当たり前に思っていたことのありがたさを改めて感じさせてくれました。それは日本人のきめ細かな心づかいです。
天気予報で予告されていたとおり、雪は、大統領朝食会の翌日2月5日の午後から降りはじめました。その日、午前中のビジネス・ミーティングの後に、「ダレス空港が閉鎖されるかもしれない」と聞かされホテルに戻ってみると、翌日土曜日の私のフライトがキャンセルされ8日(月曜日)に変更になっていることを知ります。
慌てて800番(日本の料金無料0120番)で航空会社を呼び出しても、オペレータにうまくつながりません。コンピュータでしか返事が戻ってきません。部屋の窓の外を見ると雪がだんだん強く降ってきています。何度試みても人間が電話に出てこないのです。「予定の飛行機で帰国できないと、週明け早々から始まる政府系の重要な仕事に出席できなくなる。どうしょう」。そんなことを考えるとだんだんパニック状態に陥ってきます。
そんな中、ワシントン在住で大学の先輩でもある神田幹雄さん(日米文化センター理事長)が心配して電話をかけてきて、日本人が対応してくれる別のトールフリー800の番号を教えてくれました。こちらもコンピュータ対応なのですが、すぐ電話口に日本人女性職員が出てきました。たまたま日本人客からの問い合わせが少なかったからなのでしょうか、何度かけても、日本人オペレータがすぐ電話口に出てくれます。
外資系航空会社ではたらく、日本人職員の親切で、きめ細かく、てきぱきとした対応で問題が処理されていったのです。ニューヨーク行の列車やバスの利用方法や連絡先など、相手の立場を考えながらの対応は素晴らしいものでした。
翌日のニューヨークのJFK空港でも、日本人職員のきめ細かい心づかいには助けられました。緊急時で自動チェックインができず困っていた時に、日本人職員が複雑な切り替えをてきぱきと行なってくれました。北上する雪が、次第に強まっていくケネディ空港で、彼女たちの仕事ぶりは際立ってみえました。平時の時には気がつかないことでも、パニック的な状況のときにそのサービスの違いを見せつけられた感じがします。
今回の旅行で、彼女たち日本人のもつ心づかいや国民性に触れることができました。日本人の接客能力を再認識することになりました。そこで感じたことは、「サービス業先進国の米国は、システムは良いが人間教育がうまくいっていない。お客に接するということがどういうことか分かっていない」ということです。移民国家米国の弱点が見えた思いがします。
パブリック・リレーションズ(PR)は人間力を強化します。海外でたくましく仕事に従事する日本人の力強さを感じました。こうした人たちがパブリック・リレーションズを身につけると日本は強力になるにちがいないと考えながら米国を後にしたのでした。
2010年02月11日
ワシントンのNPBに出席して
~オバマ大統領のモチベーション
こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。
先週出張で、ニューヨークとワシントンDCを訪問しました。訪問の主目的は、ワシントンDCでのNational Prayer Breakfast(NPB:大統領朝食会)への出席。昨年1月ワシントンで行なわれた、オバマ大統領就任式でテレビから伝わってきた寒さは厳しいものでしたが、現地ワシントンでは88年ぶりの豪雪の直前。東京では体験できない厳しい寒さでした。
NPBは毎年米国大統領出席のもとで行なわれるもので、世界平和を祈る目的で毎年2月に開かれています。今年はオバマ大統領、ミシェル夫人に続き、バイデン副大統領、ヒラリー・クリントン国務長官、マレン統合参謀本部議長など米国政府の要人や上下両院議員、海外からはスペインやフィージーの首相や政府要人、議会関係者、宗教指導者など約140カ国から3000名を越える人が招かれました。
■覚醒するリーダーに触れて
NPBは1953年、アイゼンハワー大統領の時代に、上下両院議員を中心に党派を超えて始められたもので、当時のPresidential Prayer Breakfastの名称は現在の名称に変更。発足時は議会関係者が中心で、党派を超えた連邦議員の個人的な交友を深める目的で始められたようですが、やがて世界各国に広がり、宗教や民族、政治体制を越えた個人のつながりを深めるための朝食会として定着しています。
毎年2月第1週に行なわれるこの行事への出席は私にとって今回が3度目。大統領朝食会の前後にはさまざまな食事会があります。NPBでは着席するテーブルが毎回異なる関係もあり、新しい友人に出会えるのも楽しみのひとつです。
オバマ大統領は席上、「人にしてもらいたいことを、人にしてあげる」ことの必要性を説きました。また「米国は礼節を取り戻す必要がある。祈りは私たちを高慢から守り、我々の心を謙遜にしてくれる」と語り、「成功した時にこそ謙遜になり祈ることが必要」と祈ることの大切さを説いていました。
また「(私の)政策を問題にしてもいいが、動機(motivation)を問題にしないでほしい」。たとえ政策が異なっていてもMotivationが同じであれば相手を受け入ることができるはず、と訴えました。物事を成し遂げるためには目標達成のためのモチベーションが重要となります。国内で医療年金や雇用問題、増税問題など多くの問題を抱えるオバマ大統領が苦悩の中で目標に向かって突き進んでいこうとする強い信念を感じ取ることができました。
また「我々を隔てているのをみるのではなく、互いの共通点を見つけよう」。そしてYou see face of God in enemiesと敵の中にこそ神を見ることができると説いたアブラハム・リンカーン(1809-1865).の言葉を引用。双方が共存できる方法を考えることを訴えました。9/11事件しても、テロの非人道性を叫ぶと同時に、「彼らがなぜ攻撃したのかを考えなければならない」とも語ったのです。相手の視点に立つことの重要性が伝わってきます。
オバマ大統領は最近起こっている数々の問題に対して、「我々は貧困や諸問題に直面しても、日常化したものに無神経になりやすい。自分の快適な空間(comfort zone)から飛び出し、求められているものに答える必要があるのではないか」と、自分の中に閉じこもらず外に目を向け行動することを促しました。
■リーダーが持つべき謙遜さ
オバマ大統領のスピーチに先立ってヒラリー・クリントン国務長官のスピーチがありました。ヒラリーは1993年から出席しているようで、「1953年のアイゼンハワー大統領が出席した最初の朝食会は、わずか200名ですべて男性。それが今では世界百数十カ国から多くの女性も出席する会になった」と喜びを表わしました。
そして出席者全員に向かって、「これまでこのNPBには大統領夫人として、また知事として、上院議員そして国務長官として出席してきたが、私たちはそれぞれ政策や理念が異なっていても、ビジョンや許しや愛に対する思いは同じはず」と語りかけました。またリーダーの果たすべき責任について、最近起きた「ハイチ地震では多くのグローバル・リーダーが試されている。私たちリーダーには問題解決の責任がある」と訴えかけました。
最後に、94年にマザー・テレサがNPBに出席した時のことを話してくれました。サンダル履きの小柄なマザー・テレサはそのスピーチの中で、当時出席していたクリントン大統領に向かい、「世界平和を祈るために私たちは集っているのに、人工堕胎を認めるあなた(大統領)には平和を語る資格はない」と夫クリントン大統領を叱責したエピソードを紹介。
マザーはスピーチのあとヒラリー夫人に呼びかけ、ワシントンに「子供の家」を一緒に建設することを提案したそうです。ヒラリーはこれを受け入れ、翌年の95年6月に孤児院「マザーテレサ・ホーム」がワシントンにオープン。ヒラリーによると、その間マザーはベトナム、カンボジアなど、マザーの出向く先どこからでも矢継ぎ早の電話をかけてきて進捗状況を聞いてきたそうです。マザー・テレサの偉大さを感じさせる話でした。
この話は朝食会の後に話題となりました。偶然に94年の朝食会に出席していた人が、マザー・テレサのあとのクリントン大統領のスピーチの一部を話してくれました。大統領はこのマザーの強い叱責で、「誰かがバスケットの試合で見事にシュートしたあとに、自分が隅でドリブルしているみたいだ」と、自分の存在がいかに小さなものであるのか、その気持ちを出席者の前で素直に明かしたといいます。自分の非を認めることができるリーダー像をみる思いがします。
大統領朝食会のあと5日の昼から強い雪が降り始めました。ワシントンの空港のフライトが全てキャンセルされたことを知り、一日予定を早め、大急ぎで荷造りをしてホテルをチェックアウト。ワシントンのユニオン・ステーションで、間一髪で電車に飛び乗り無事ニューヨークに到着し、銀世界のJFK空港を後に帰国の途に着くことができました。
パブリック・リレーションズ(PR)は個人や組織体と社会の間のインターメディエータ(仲介者)。複雑化する世界をしっかりつなぎ、目的達成のために良好な関係構築を行う手法です。世界平和のための道具として使われるよう祈りたいと思います。
2010年01月04日
新年号 情報発信を通して世界のリーダーに
~パブリック・リレーションズの使命
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年は政治と国民が融合した年であったように思います。1月の米国オバマ大統領の就任に始まり、8月の政権交代による日本の鳩山首相の誕生から新政権の施策に至るまでのプロセスは、私たちに政治をこれまでになく身近に感じさせてくれました。今年はどのような年になるのでしょうか?
「日本はデフレ・スパイラルに陥った」、「日本経済の2番底がくる」、「日米関係はどうなるのか?」、「少子化問題をどうするのか?」などなど、日本にとって問題は山積しています。
■相互理解と情報共有化が鍵に
21世紀になって10年が経とうとしています。20世紀は、多くの国家を巻き込んだ2つの大戦をはさみ、多数の人命を犠牲にして歴史を刻んだ世紀といえますが、21世紀は初頭においてさまざまな問題がグローバル化しています。国家間の戦争は局地的なものになってきてはいるものの、宗教や文化的な違いによる民族間の衝突が世界的混乱に拡大する危惧さえ持たれています。
これらの混乱の多くは相互不信からきていることが分かります。相互不信は一般的に、情報が互いにシェアされていないことから起き、相互理解の欠如の結果としてもたらされる場合が多いといえます。世界の紛争の歴史は情報が共有されない相互不信の歴史でもありました。IT・ネット時代の今日、人類が同じ過ちを繰り返さないためにも、対称性を持った情報が共有されなければならないのです。
情報が共有されることにより、複数の国家を政治、経済の面で統合させることも可能なことは欧州連合(EU)を見ていてもわかります。欧州何千年の歴史の中で初めて20を超える国家が統合されたことはもっと評価されていいのではないでしょうか?
2009年11月に、欧州連合(EU、加盟27カ国)で共通の大統領が選ばれました。新基本条約「リスボン条約」で新設される欧州理事会常任議長(俗称:EU大統領)にベルギーのファン・ロンパウ首相が就任し今月から正式にスタートしました。一方、EU外務・安全保障政策上級代表(俗称:EU外相)には、英国のキャサリン・アシュトン欧州委員(通商担当)が就任します。約5億人の大欧州を代表する「EUの顔」が出来上がったことになります。
私は90年代に、国際PR協会(IPRA:ロンドン)の本部役員をしていたときに、欧州人が情報共有に如何に秀でているかを思い知らされたことがあります。彼らはどのような些細なことでも議論し、相手の理解を得る努力をします。その根底に流れるのは相互尊重です。面白いことに、彼らは時として米国のメンバーと意見衝突することもありましたが、そのようなときは、概してシンプルでおうような米国人と、複数の言語を駆使し、物事をより多面的に捉える繊細なヨーロッパ人との情報共有に対する姿勢の違いがあったように思います。
情報共有のためには、常に自分たちの考えを国民や国際社会に伝えていかなければなりません。伝えることで相手からのフィードバックがあり、情報共有ができるからです。ある意味で政策実行を行う側は、国民や納税者に対して「説明責任」を持つことになります。自著「『説明責任』とは何か」(PHP研究所、2009)には説明責任を果たすためには、政策プログラムの作成および実行の段階で、それぞれ3つのフェーズ(段階)があることを記しました。
1)計画段階 2)実施段階 3)報告段階 の3つで、明確な目標設定とそれぞれの段階での進捗状況を知らせることで説明責任を果たすことになります。これはまさに対象となるターゲットとの関係で、情報を共有することにほかなりません。
■何を日本の切り札にするのか
毎日新聞が元旦の社説「2010 再建の年 発信力で未来に希望を」で面白い記事を書いていました。日本再建のためのヒントとして、大きな危機を克服して国の再建を果たしたとされる奈良時代の施策を紹介した後、日本文化の発信の必要性について次のように記しています。
「最後に強調したいのは文化の発信力だ。奈良時代、先進文明の吸収に励んだ人々は同時に独自の文化も創造していた。万葉集は天皇、皇族から防人、東国の民に至る幅広い作品を集め、今も愛唱されている。伝来の漢字を用いた『万葉仮名』は後のカタカナ、ひらがなにつながった。」と当時の外から貪欲に吸収しながらも独自文化を築いていたことに触れています。
また、「私たちは豊かな伝統文化を持っている。新しい文化と共鳴し、新たな創造に結びつくという優れた環境もある。例えば万葉以来受け継がれている和歌の世界では今も次々と新感覚の作品が生まれている。村上春樹氏の作品が世界的な支持を受け、映画やアニメ、日本食などが国際的に高い評価を得ているように、文化は日本が持つ重要資源である。
日本の発信力を高めることが日本の再建にもつながる。人々が未来に希望を持てる国にしよう。」。まさにソフト・パワーを使うことの必要性を説いているわけですが、この社説に私は強い共感を得ました。
ひるがえって、いま世界は歴史上はじめてグローバル社会の中で、それぞれの国や民族がどのように共生すべきかを真剣に考えるようになったといえます。CO2問題は、海抜の低い島国であるツバル共和国を海底に沈めることになるでしょうし、南極や北極の氷を溶解させることによって世界の生態系や気象に異常をもたらし、地球の存続すら危うくする世界共通の問題として認識されています。
地球が生存するためには、抜本的な対策が必要なことは昨年12月のCOP15が明示しています。これらの問題でソリューションを持っている国は、限られた先進国、突き詰めると日本と米国の2国になるといっても過言ではありません。とくに省エネ、公害技術で日本は世界の最先端を走っているからです。
今こそ日本はその持てる力を十二分に発揮してコペルニクス的な産業構造の大転換を行う時が来ていると考えます。つまり、エネルギー源として石油・石炭を一切使用しないところから全てを組み立てていくことを考えることです。
2020年までに、日本のCO2を90年実績の25%減という数字は極めて困難と経済界は異論を唱えています。しかしながら3-4年で行うということではなく10年かけて行うことで、国家が真剣に、戦略的に目標意識をしっかり持って実行すれば、不可能なことではないと思うのです。これらには、既存の国家予算の中で行うのではなく、将来大きくリターンが見込める投資として、惜しげもなく資金を投下すべきであると考えます。これらは国民を勇気づけるだけではなく、強力な経済刺激策にもなるはずです。
こうして見ると情報の共有化にせよ、日本がそのプレゼンスを内外に示すことにおいても、手法としてのパブリック・リレーションズ(PR)が強く求められることが容易に理解できます。どんなにいい技術でも、知られなければ広く社会の役に立つことはできません。日本の持つ最先端の環境技術を世界に伝え知らせることで、人類が生存する上での共通テーマである地球環境問題で確実に世界のリーダーとなることが可能だからです。
今年がこれらのチャンスを具体化する年であることを願っています。
2009年12月28日
2009年の10大ニュース
~読売新聞が選ぶ国内/海外ニュースから
こんにちは、井之上 喬です。
早いもので今年も残すところ数日、新年を前に皆さんいかがお過ごしですか?
読売新聞社は毎年、読者投票によって国内/海外の10大ニュースを選んできました。今年も2009年の「日本10大ニュース」は12月19日、「海外10大ニュース」は翌20日の紙面で紹介。
1947年(国内ニュース)から継続されているこのイベントには、今年は内外から国内/海外の10大ニュースにそれぞれ、1万207通、6467通の応募があったようです。こうした応募を集計した結果は、それぞれ次のようになりました。
■国内、1位以外はあまり印象に残らず
「日本10大ニュース」を紹介する読売の紙面では、「2001年の日本は、1位の歴史的政権交代が圧倒的で、他の出来事はあまり印象が残らなかった感じもする。(後略)」と弘兼憲史さん(漫画家)のコメントが掲載されています。
同様に「海外10大ニュース」ではピーター・フランクルさん(数学者・大道芸人)が、「オバマ米大統領の就任は、間違いなく世界にとって大きなニュースだった。(中略)ただ、ノーベル平和賞受賞は、世界で一番好戦的な国と言われる米国の大統領だけに最初は驚きだった。(後略)」とそのコメントを紹介しています。
皆さんは、10大ニュースに接してどのような感慨を持ったでしょうか。
《国内》
第1位 衆院選で民主308議席の圧勝、歴史的政権交代で鳩山内閣発足
第2位 日本でも新型インフルエンザ流行
第3位 「裁判員制度」スタート
第4位 日本がWBC連覇
第5位 酒井法子容疑者、覚せい剤所持で逮捕
第6位 天皇陛下即位20年
第7位 高速道「上限1000円」スタート
第8位 イチロー選手が大リーグ史上初の9年連続200安打
第9位 巨人が7年ぶり21度目日本一
第10位 「足利事件」の菅家さん釈放 DNA鑑定に誤り
《海外》
第1位 新型インフルエンザ大流行、世界で死者相次ぐ
第2位 オバマ米大統領が就任
第3位 マイケル・ジャクソンさん急死
第4位 米GM、クライスラーが相次ぎ経営破綻
第5位 ノーベル平和賞にオバマ大統領
第6位 北朝鮮が弾道ミサイル発射
第7位 韓国で射撃場火災、日本人客10人死亡
第8位 中国新疆ウイグル自治区で暴動、197人死亡
第9位 南太平洋、スマトラで大地震相次ぐ
第10位 世界陸上、ボルト選手が3冠
■鳩山イニシアティブと揺らぐ司法
私にとって国内ニュース第1位の「歴史的政権交代」に次いで、印象深かったのは、番外になりますが世界90カ国以上の首脳が出席し9月22日に国連で開催された、気候変動首脳会合での鳩山由紀夫首相のスピーチとその内容です。鳩山さんは温室効果ガスの中期削減目標について、「1990年比で2020年までに25%削減を目指す」と表明し、全世界の注目を集めました。
これまで、日本の首相が国際舞台で脚光を浴び、あれだけの喝采を受けたシーンを目にしたことはありませんでした。いまや人類の最大のテーマともいえる地球環境問題で、鳩山さんの演説が評価されるべきは、「25%達成」が思い切った産業政策の転換を意味するからです。
それだけではなく演説で首相は、わが国だけが高い目標を掲げても気候変動を止めることはできないとして、「世界のすべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築が不可欠だ」と述べ、国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)での合意に向け、主要ガス排出国である米国や中国などの前向きな対応を促したことです。
さらに、途上国支援に関する「鳩山イニシアティブ」を掲げ、地球が抱える最大の問題である温室効果ガスの削減について、見事なリーダーシップを発揮したのです。
今年もうひとつの印象的な出来事。それは、「司法の揺らぎ」ともいうべきなのでしょうか。それらは前述の2009年「日本10大ニュース」にランク入りした「第3位:裁判員制度スタート」と「第10位:足利事件の菅家さん釈放、DNA鑑定に誤り」に感じられることです。
人が人を裁く法廷は、これまで社会人経験のあまりない司法試験に合格した専門家により構成されてきました。そこに一般市民が参加して判決(刑事裁判)を決める制度が、この5月、日本でもスタートしました。陪審制度(米国、カナダ、英国、ロシアなど)、あるいは参審制度(フランス、ドイツ、イタリアなど)と国によって呼称は異なりますが、世界各国ではすでに導入され定着しているものの、わが国の裁判制度においては歴史的な出来事といえます。
足利事件では再審開始決定前の受刑者に、検察当局が無罪を見込んで釈放を認めた初めてのケースとなりました。DNA鑑定の誤りが その大きな要因となっていますが、刑の確定後に再審請求が通ることすら珍しいのに、再審開始決定前の釈放という結果には本当に驚かされました。
この2つのニュースからは、これまでお上の専任事項であったものが、一般市民や良識といったところへの歩み寄りが認められます。公権力でも間違いがあれば正す、つまり「自己修正」が機能したものと見ることができます。「司法の揺らぎ」は、この意味で歓迎すべき事象といえます。
さて、来年はどのような10大ニュースが選ばれるのでしょうか。できれば、明るい話題が多く選ばれることを祈りたいと思います。
今年も井之上ブログをご愛読いただきありがとうございました。混沌とする世界にあって、私達一人ひとりには「人間力」が求められています。来年も、「個」を強化するパブリック・リレーションズ(PR)を皆さんと共有してまいりたいと思います。
それでは良い年をお迎えくださいますよう。
2009年12月07日
リスクを取らない日本企業
こんにちは、井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
リーマンショックから1年以上たち世界経済は回復の兆しを見せています。しかし日本は欧米諸国と比べダメージが少なかったものの、相変わらず出口が見えない状況にあります。為替レートも円は一時14年ぶりに84円に高騰。景気回復から脱出しつつある輸出型企業に深刻な影響を与えています。
戦後の廃墟から立ち直った日本企業は、松下幸之助、本田宗一郎、川上源一、井深大・盛田昭夫などさまざまな名経営者を輩出してきましたが、最近これら先駆者と並び称される卓越した有能な経営者が見られないのは寂しい限りです。どうしてこのような状態になってしまったのでしょうか。
■一番風呂に入らない日本企業
先日ある外資系IT会社の米国人社長から、日本企業のマネージメントが機能していないことについて、こんな話を聞きました。「近頃の日本企業は、リスクをとらない」そしてその理由として、「外から持ち込まれた案件を決定するのに時間がかかりすぎ、相手が嫌気をさして、ほかの企業に話を切り替えざるをえなくさせている」。ほかの企業とは、「日本企業を指すのではなく、多くの場合中国企業」と残念がっていました。
また、海外進出にしても、「日本企業は単独行動をとりたがるが、そのために社内決定に時間がかかりタイミングを逸することも多くなる」。海外の新市場、とくに中国市場の場合は歴史的な経緯もあり、「一社で進出するより、自社で弱い部分は他社(欧米など)とダイナミックに提携し、積極的な市場参入を考えるべき。さもないと出遅れてしまう」と最近の日本企業がスピードに欠き縮み志向にあることを心配しています。彼の奥さんは日本人で、「他人事ではない」と真剣に話をしていました。
このような日本企業や社会の縮み現象に対して、12月4日付けの日経MJは大手広告代理店J・W・トンプソンの2009年調査を引き合いにし、「日本人は世界一『不安』?」とする見出しで、不安を抱えている人の割合は、日本が世界の主要10カ国のなかで一番高い数値(90%)を示していることを明らかにしています。ちなみに、ロシア(84%)、米国(76%)インド(74%)の順で、一番低いのは中国の35%。
新しいビジネスや市場に参入するときリスクはつきものです。戦後日本企業は、廃墟から事業をスタートさせ、80年代初頭には経済超大国に導いた原動力としてもてはやされました。日本企業のこのような性向について外国の経営者に説明するとき、私は「多くの日本企業は一番風呂に入らない」と表現することがあります。つまり、誰かが先にマーケットに入って、成功するのを見極め、そのあとから次々と参入するといったいまの日本企業の特殊性について言及します。試行錯誤のなかで自らの創意工夫とリーダーシップによってサクセスストーリーを築いた冒頭の経営者が懐かしく感じられます。
■イノベーションが育つ環境を
OECDの発表によると、加盟30カ国の一人当たり国民総生産(名目GDP)の順位は1993年の第2位($35,008)から2007年には18位($34,252)に転げ落ちています。また、スイスの国際経営開発研究所(IMD)の発表では、1993年に世界第1位であった我が国の国際競争力は、その集計方法には年度で差異があるものの、2007年(平成19年)の最新ランキングでは第24位にまで転落、そして中国が上位に入れ変わりアジア3位で、シンガポール・香港に続いています。まさに奈落の底を転げ落ちるような状況。
興味深いことに、現在世界で活躍している大企業は、トヨタ、日産などの自動車、三菱重工、日立、東芝などの重電、機械では小松製作所や荏原製作所などのメーカーや大手商社など。これらはいずれも大半が戦前に創設された企業。一方、インテルやアップル、ヒューレット・パッカード、マイクロソフトなど、世界企業ランキングで上位を占める米国企業の多くは戦後誕生した企業です。
つまり日本では相変わらず、歴史や伝統のある会社が日本経済を牽引していることになります。ITの進展で、めまぐるしく世界が変わり、かっての日本の役割を中国や他の新興国が果たすようになったいま、日本には抜本的な企業環境を変えることが求められています。
日本経済は厳しい景気後退局面にありますが、このような時期こそ思いきった改革のチャンス。日本経済がこの難局を打開し、持続的成長経路 をたどるためには何が必要か。就職を希望する学生のマインドセットも変え、「寄らば大樹の陰」ではなく、「起業により、日本社会を変える」といった気概すら求められているのです。変革期だからこそチャンスはあります。
一国の首相がめまぐるしく変わる戦略のない日本。政治の在り方について抜本的な見直しが迫られる新政権には、そうした新興企業がイノベーションを武器に、伸び伸びと成長できる環境を国家の長期的成長戦略の中に具体的に組み込むことが求められています。
日本経済の二番底が危惧されています。大型経済対策が期待されますが、このような時期だからこそ成長性の高い領域への思い切った対応が必要とされています。とりわけ環境および新エネルギーなど日本が他国をリードする、強い分野への戦略的な取り組みと集中的なバックアップが強く求められています。これらへの投資は、現在の国家予算の枠組みを超えても実行すべきもの。リターンが期待できる意味で、将来の豊かな日本を担保する投資となるはずです。
社会を変革させる場合には強力なパブリック・リレーションズ(PR)が求められます。私たちに残された時間はあまりないのです。
2009年11月30日
全9日間、「事業仕分け」が終了
~政府行政刷新会議
こんにちは、井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
8月30日の衆議院総選挙で民主党が大勝し、政権交代が実現して今日で3カ月経ちました。11月11日に「事業仕分け」をスタートさせた、民主党行政刷新会議の一連の作業は27日に終了しました。目標は、過去最大規模の来年度予算概算要求額95兆円から3兆円削減すること。
447事業に対して、必要性に応じて「廃止」「予算削減」を求めた結果、概算要求から約7500億円が削減可能とされ、国庫返納などで捻出できる財源を加えると、その削減額は1兆9500億円に達した(朝日11/28朝刊)模様です。仕分け作業は一般公開で行われ、インターネットでも同時中継されるなど新政権による積極的な情報公開を印象付けたといえます。また仕分け人の判定基準が「あいまい」とする批判も出ましたが、総じて大多数の国民が今回の事業仕分けを歓迎しています。
■求められるプレゼン能力
仕分け人メンバーは、その人選に紆余曲折があったものの、民主党を中心とした国会議員と民間人により構成。TVを通して、今回の「事業仕分け」から見えてくるものは、質問される側に立つ各省庁代表の官僚の返答や説明が不明瞭であったり、その内容が明確性を欠いたものでした。
初めての経験とはいえ、相手に対する説明能力に欠けていたのは明白。民間では、顧客に売り込みをかけたり説明を行う場合、必要とされるのはプレゼンテーション能力です。説明する側に立つ官僚はこれまで、シビル・サーバントとして納税者へ対しどのようなプレゼンテーションを行ってきたのでしょうか?
相手を説得する気迫もさることながら、プレゼンテーション技術に長けていないと相手を理解させることは困難です。「なぜ」、「何の目的で」この事業を行っているのか、事業を通して国民(社会)に「どのような恩恵をもたらすのか」、その「ユニーク性」や(施設の場合)その利用頻度など、「数字に裏付けされた説明」が求められます。多くの天下りを受け入れ、受け入れが目的化している機関では、こうした説明は苦手ということなのでしょうか。
11月28日の主要各紙の朝刊は、トップで事業仕分けが当初の目標の3兆円に及ばなかったことを報じていますが、今回の数値目標に違和感を持っている人は私だけではありません。これまで野党で、行政の細部にわたってアクセスできなかった民主党が、数か月で完全な予算編成ができるはずはありません。まず新予算を組み、1年間走らせ、現場の実態を把握してから、埋蔵金の発掘や無駄な予算を削ってもいいのではないでしょうか。「一度組んだ予算は使い切る」これまでのやり方は、現在の財政状態では通用しないはずです。
■科学技術は日本の生命線
事業仕分けのなかでスーパー・コンピュータ研究など、科学技術予算の大幅削減提案が引き金となり、9つの大学の学長が24日、東京都内で緊急記者会見を行いました。日本の学術や大学の在り方に立って、これらの削減は世界の潮流に逆行する行為であると批判。将来の日本の科学技術への懸念を表しました。翌日のTV番組で、ノーベル賞学者の益川敏英さんが「科学技術分野でNO.2はNO.30を意味する」と語り、科学技術研究の重要性について強く訴えていたのが真に迫っていました。
いま日本から有為な人材が流出しつつあります。その流れ出る先は、これまでのような米国の研究機関ではなく、猛烈な人材引き抜きを国家戦略として行うアジアの新興国です。そうした国の政府からひとりの科学者(研究者)やチームが、数十億円の研究費で迎えられようとするケースが顕在化しています。その意味するところは、迎え入れられた研究者の成果が、相手国のものになってしまうということです。定年退職を迎える科学者は格好の標的になっています。
中国のGDPは今年中にも日本を上回るといわれています。中国をはじめ、多くの人口を抱えるインドなどの新興国が急速なスピードで追い上げをはかっています。これらの国に価格競争で勝てるはずはありません。日本が勝負できるのは、高付加価値製品ということになります。その基礎となるのが科学技術。
予算の問題とは別に、日本には助成金の利用法にも問題があるようです。とくに科学技術分野での問題は、有能なプロジェクト・マネージャーがいないといわれています。これまで日本では国の助成金で研究を行う際、報告書など超大な資料作成が要求されていました。研究者は時として本来の研究より、その作成に神経と時間を取られていることも耳にします。プロジェクト全体を管理できる人材養成も必要とされるところです。
鳩山内閣の予算編成作業はこれから本格化しますが、どのような結果になるのか関心が高まっています。国民への理解と協力を得るために、パブリック・リレーションズ(PR)はなくてはならないものといえます。
2009年11月16日
オバマ大統領初来日
~パブリック・リレーションズの視点
こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。
オバマ米国大統領が11月13日、大統領就任後初のアジア歴訪の最初の国として日本を訪問しました。テキサス陸軍基地での銃乱射事件の追悼式出席で来日が遅れたことにより、14日から始まるシンガポールで開催のアジア太平洋経済協力会議(APEC)初日の首脳会議を欠席しての来日。日程は一週間で、日本の後はシンガポール、中国、韓国を訪問する予定です。
13日は鳩山首相との首脳会談。翌日の14日はサントリーホールで約1500名の出席者を前にアジア外交の基本政策について演説を行いました。世界で成長著しいアジア地域で中国の国際的影響力が増大する中、影響力低下がみられる米国は、オバマ大統領のアジア訪問の最初の地東京で「米国はアジア太平洋諸国の一つ」であることを内外に強く示しました。
■アジア外交の中核:日米関係
鳩山首相とオバマ大統領の会談は今回で2回目。9月に国連総会出席のために訪れたニューヨーク以来。予定より長い、約一時間半にわたった会談で両首脳は共同記者会見を行ないました。
この中で首相は日米同盟について、「日本外交にとってすべての礎。世界環境の変化によって、深化させ、建設的で未来志向の日米同盟を作りたい」と述べています。一方大統領は、「日米同盟は、アジア太平洋地域の安定と繁栄のための基軸。日米は対等なパートナー」であることを強調。民主主義を共有する両国の関係維持こそが地域の安定・繁栄にとって不可欠であることを宣言しています。
共同会見では主に次のことが確認されました。まず、2010年の日米安全保障条約改定50年に向け、同盟深化のための新たな協議を開始。また、米軍普天間飛行場移転問題では、鳩山首相は早期解決を表明。閣僚級作業部会を設け協議に入る。次に両首脳は「核兵器のない世界」を長期的視野にたって目指すことで一致。大統領は、広島、長崎両市への訪問について、将来訪問できたら「非常に名誉なことだ」と語っています。そして温室効果ガス問題については、2050年までに80%削減することで合意。
戦後60年以上経た日米関係。米ソ冷戦時代に締結された日米安保が、新しい21世紀のグローバル・ビレッジにふさわしい、世界平和に根差した地域の安全保障に変わることが期待されています。日米安保条約の見直しの必要性については、とくに政権交代後の米国でも論じられてきていること。
鳩山首相は就任後繰り返し、「対等な日米関係」を強調しています。日本の国益保持にとどまらず、世界平和と繁栄のためにどのような指導力を日本は発揮するのか、日米関係は時代の変化に合った同盟を強化する方向で一致しているものの、今後双方の新政権によるたゆまない対話と努力が求められるところです。
民主主義国家では、政権交代は重要な意味を持ちます。国民の支持を得た新政権が、新しい政策を打ち出すことに相手方は異論をはさむことはできません。それが民主主義のルールだと思うのです。民主主義は米国が世界に誇るもの。同じ民主主義を共有する、英国やフランス、ドイツは米国にどのように対応しているでしょうか。日本の政府には、惑わされることなく、自らの政策を明確に打ち出すことが求められています。
■東京でアジア政策演説
オバマ来日に先立つ9日(ワシントン時間)、アジア歴訪の最初の訪問国に日本を選んだオバマ大統領はAPEC初日を欠席し、東京でアジア政策演説を行うことを報じています(NIKKEI NET:11/12 23:45)。
来日翌14日、サントリーホールでの演説には、各方面から招待されたさまざまな顔が見られました。11月14日の朝日新聞夕刊には、これら招待客の一部が紹介されていましたが、被爆地長崎市長や沖縄宣野湾市長、福井県小浜市長、拉致被害者家族、俳優、学者そして学生や子供などその顔ぶれは多彩。多くの招待者がそのスピーチに感銘を受けたことを報じています。
大統領就任演説もそうであったように、パブリック・リレーションズ(PR)の視点でオバマ大統領のスピーチを分析すると、実に多くのパブリックに対してメッセージを送っていることが改めてわかります。そしてその後の報道内容を分析することで、双方向性を担保していることです。彼のスピーチに共通するものは、どのような民族や文化そして政治環境にあっても人間の尊厳を常に重視していることです。
オバマ大統領が日本との関係で触れたことの中で、とりわけ私に強いインパクトを与えたのは、環境問題解決のために、環境技術で世界の最先端を走る日本との協働を真剣に呼び掛けていたことです。日本はこの分野を成長戦略の主柱に据え、政府、産業界、国民が一丸となって、一日も早く戦略的な取り組みを行うことが明日の日本の確実な繁栄を保証するものであると私は考えています。今世界は技術開発に向かって一斉に走り出しています。時間的な猶予はないのです。
米国の力が相対的に弱体化する中で、一つ対応を間違えると世界は危険な方向へ進みかねません。その中でキーワードは「民主主義」であるといえます。双方向性を持つパブリック・リレーションズは民主主義社会の中でしか生きていけません。絶対主義のなかではプロパガンダになるからです。
2009年10月19日
鳩山政権発足一カ月
~変革への試練
こんにちは、井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
国民の圧倒的多数で総選挙に勝利し、9月16日に誕生した鳩山政権が今月16日で一カ月を迎えました。60-70%の高い支持率を維持しながら国民の期待を背負う、鳩山政権の概観が見えてきました。新政権が早急に手をつけるべき課題は何かが見えてきた一カ月でもありました。
それにしても今回の政権交代が、明治維新以来の「革命」や戦後のGHQによる制度改革に匹敵するとも言われるゆえんは、バブル崩壊後の長引く不況と未曽有の経済危機で、自民党一党独裁に対する国民の意識が大転換したことによるものとされています。
■試行錯誤
鳩山由紀夫首相は就任早々、国会での所信表明をまたず、国連演説で「温室効果ガスを2020年までに90年比で25%削減する」とする方針表明を行いました。加えて核廃絶・非核三原則堅持などの発言は、国際社会から熱い拍手で歓迎されました。
新政権が世界に存在感を示したのは主に外交面。国連演説やピッツバーグでの20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)に出席。早々と中、米、韓、露などの首脳と会談を行い、一定の成果を上げています。岡田外相とのコンビネーションにより、これまでの官僚主導に頼らない外交を進めようとしている点も評価されているようです。
一方、国内では、就任した閣僚がそれぞれ個性的な動きを見せています。前原国土交通相は、八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の建設中止表明や民間人を登用したJAL再生タスクフォースの設置。また日本の成長戦略を支えるであろう、羽田空港の国際ハブ化表明。原口総務大臣は地域主権や番組内容への不当介入防止のためのFCC(米連邦通信委員会)的な組織(通信・放送委員会)の設置検討など、矢継ぎ早の政策を発表しています。
しかし地元民や県知事からの反対や来年度の予算案概算要求などの折衝で、担当大臣関の齟齬が見られるなど試行錯誤を繰り返しています。また最近、鳩山首相が指導力を発揮する場面が少ないせいなのか、改めて懸念させられるのは首相直属で総合調整をはかるはずだった「国家戦略局」の姿がいまだに明確になっていないことです。
現実には菅直人副総理兼国家戦略相が担当する戦略局は一体何をするのか不明の状態が続いています。菅副総理の仕事は企業でいえば「経営企画室」で、企業の中枢で戦略構築を行う重要な役割を担う部署。
国家戦略室をめぐっては、まず権限をより強化し、各省庁への指揮命令を直接行うことを可能にするための国家戦略「局」への格上げが目的とされています。「国家戦略局」設置法案は、来春の通常国会で提出される見通しとなっていますが、そこで具体的に何を行うのか国民の関心は高まっています。
■赤字国債増発か公約の修正か?
10月17日朝刊の朝日新聞社説では、10年度の「概算要求の総額を今年度当初予算の88.5兆円以下に抑えるよう指示していたものが、ふたを開ければ95兆円にものぼった」と政権公約実現のために各省庁が盛り込んだ数字が過去最大としています。翌18日、仙谷由人行政刷新相は、10年度予算概算要求が09年度当初予算(約88兆5000億円)に比べ、約6兆5000億円上回ったことに対して、現在の95兆強の概算要求額を92兆程度に圧縮することを表明しています。
経済危機で歳入も当初見込まれた46兆円から40兆円を割り込むことも予想される中、マニフェスト(選挙公約)に掲げられた項目すべてを実施することに無理が生じています。赤字国債増発への舵切りを行ってでも100%成功させようと考えるのか、将来の負担を和らげるために公約の修正を行うのか、いま新政権は難しい判断を迫られています。
そんな中の16日、米政府が2009年会計年度(08年10月~09年9月)の財政赤字が1兆4170億ドル(約129兆円)で史上初めて1兆ドルの大台に乗ったと発表。その赤字幅は対前年度比で約3倍強に膨らみ、国内総生産(GDP)の10%にも及んでいます。
米国の巨大赤字は、昨年9月のリーマン・ショックに端を発した未曽有の金融危機や戦後最長の景気後退に対処するために導入した金融安定化策や景気対策に伴った大規模な経済対策の実施に加え、 所得・法人税減少で歳入が縮小したことによるとされています。
日本に限らず、舵とりが極めて難しい中での改革には時間と痛みが伴います。弱者を保護しつつ成長戦略を描くことで国民に希望を持たせることは政治の役割であるといえます。
いま国民やメディアには忍耐が求められているのかもしれません。国家予算を新しく政権を担った側(これまで野党として政府に十分なアクセスできなかった)が、わずか一カ月でパーフェクトに現状把握し組み立てることが簡単ではないことは明白です。
大切なことは、パブリック・リレーションズ(PR)の手法を駆使し、プロセスを明らかにし、きめ細かなフィードバックで状況把握を行い、さまざまなパブリックに情報を発信することです。そういえば、選挙戦であれほど叫ばれていた霞が関の「埋蔵金」は見つかったのでしょうか?
2009年09月21日
鳩山新政権発足
~民主党マニフェスト実行
8月30日の総選挙で歴史的な大勝利を収めた民主党。半月後の9月16日、国会での首班指名の後、鳩山由紀夫代表は、第93代日本国首相に就任し、社民党、国民新党との3党による連立政権がスタートしました。
■安定感のある新閣僚
連立政権発足直後の鳩山内閣の支持率は、毎日新聞の調査で77%、読売新聞が75%、共同通信社72%と、小泉内閣に次ぐ高い数字で同政権に対する国民の期待は高まっています。
鳩山新首相が初めて取り組んだ閣僚人事は「脱官僚」に主眼を置いたのが特徴。代表経験者である菅直人(副総理、経済財政担当相兼国家戦略局担当相)、岡田克也(外相)、前原誠司(国交相)の3氏を始めとし、知名度の高い論客を「脱官僚」の最前線に配置したことです。18日には辻元清美国交副大臣を始めとする22人の副大臣を決定し、陣容固めを急いでいます。
大臣就任後初の深夜の記者会見では、これまでのように官僚が準備した原稿を読み上げる光景は見られず、一人ひとり自分の言葉で語っていたことが強く印象に残っています。長い野党時代を経験したからでしょうか、息せき切ったような新閣僚から発せられる就任スピーチの内容と姿勢は、これまでの就任会見と比べて際立っていたといえます。
新政府人事は、民主党内のグループ間のバランスや来夏の参院選挙への布陣も考えた、小沢一郎幹事長への配慮も窺わせ、「挙党態勢」を重視したものとなっています。また新政権には、首相官邸をサポートする組織や具体的な政策決定システムの構築が急がれており、鳩山新政権は試行錯誤を繰り返しながらのスタートとなるものと見られています。
■早速、マニフェスト実行
翌17日、新大臣から次々に新機軸が打ち出されます。前原誠司国土交通相は川辺川ダム(熊本県)や八ツ場ダム(群馬県)の建設中止を表明。長妻昭厚生労働相は、後期高齢者医療制度の廃止や生活保護の「母子加算」復活を表明。原口一博総務相は、国から地方へのひも付き補助金を廃止し、一括交付金として交付。並びに、国の直轄事業における地方の負担金制度の廃止を表明。亀井静香郵政改革・金融相は日本郵政社長に対する辞任の促しと中小企業への金融支援の表明などなど。
政府の戦略的要となる国家戦略室長には古川元久(内閣府副大臣兼任)さんが就任。弱冠43歳の古川さんは東京大学在学中、20歳で司法試験にパスし、28歳で大蔵省を退職、その後浪人経験をしながら政治家を目指してきた人です。頭脳明晰で、ハートもあり大所高所でさまざまな視点が求められるこのポストには最適な人事といえます。
しかしこれらの中には担当大臣間の政策やその守備範囲についての微妙な食い違いも見られます。長年膠着化した組織を全面的に変える場合、多少の齟齬は走りながら調整をするということなのでしょうか。関係者の間で論議が沸き起こっています。
PR実務家にとって興味深い話題がありました。それは岡田克也外相が就任後間もない18日の記者会見で、「外務省での記者会見を原則としてすべてのメディアに開放する」と述べていることです。これまで外務省の霞クラブに所属する報道機関に限定していた会見に、それ以外のメディアに対しても参加を広げる方針を明らかにしたもので、同外相によると、対象媒体は、「日本新聞協会」「日本民間放送連盟」「日本雑誌協会」「日本インターネット報道協会」「日本外国特派員協会」の各会員と、「外国記者登録証保持者」。また、条件付でフリーランス記者も認めるとしています。
岡田外相は何度も「国民の理解が得られなければ、外交はなりたたない」と発していますが、まさに国民の理解を得るために思い切った記者クラブ改革を打ち出したものと考えることができます。日米政府間の「核密約」問題で省内に徹底的な調査を命じていることからも、外務省の透明性が飛躍的に高まっていくことが期待されます。
マニフェストを掲げて国民の支持を取り付けた新政権にとって、数々の難題が山積しています。さまざまなステーク・ホルダー(パブリック)との関係構築を行なうパブリック・リレーションズ(PR)がどのように機能するのか今後が楽しみです。
2009年08月31日
民主党 歴史的勝利
~政権交代、衆議院選挙
今日は井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
8月30日、第45回衆議院議員選挙の投開票が行われました。107年振りの真夏の選挙、その結果は480議席のうち、民主党が308議席、自由民主党が119議席と民主党の圧勝に終わりました。自民党は、1955年の結党以来選挙に大敗し、政権第一党の座を降り、15年ぶりに野党に転落することになります。
他党の議席数では、公明党は21、共産党9、社民党7、国民新党3。日本新党1、大地1、その他6、また公示直前に新しく旗揚げした、みんなの党は5名と善戦。政権与党の自民・公明は共に、太田代表、北側幹事長をはじめ多くの現職閣僚や党幹部、派閥の長が小選挙区で議席を失いました。今回の政権交代の嵐は想像を絶する勢いだったことが証明されました。
■有権者が立ち上がった
300を超える民主党の議席獲得は、一党が占める議席としては戦後最大といわれていますが、自民党敗北の原因はいろいろ考えられます。
開票後に麻生総理が、「自民党への積年の不満と不信が敗因」と敗戦の弁を語っていますが、1955年以来、細川・羽田政権(1993-1994)の一時期を除いて、半世紀以上にわたり国家経営を主導してきた同党への有権者の不満が爆発した結果と見ることができます。
また自民党が日本や世界を取り巻く環境の変化を読み切れず、政官財のもたれあいの構図から抜け出せなかったことなどもあげられます。加えて安倍、福田両首相(総裁)の突然の辞任。「自民党総裁が毎年変わったのも敗因の一つ」と麻生総理がテレビのインタビューに答えたように、国民の自民党離れに拍車をかけたといえます。
さらに昨秋のサブプライム問題は自民党にとって避けがたい逆風となりました。国民の不満は自民党に一気に集中。これまで、「政治には期待しない」と言っていた人たちが、投票行動が自らの生活に直結していることを知らされ、本気になって投票場に足を運び、地殻変動を起こしたのでした。
台風11号の影響にもめげず今回の投票率では、TBSの報道(31日午前1時現在)によると69.29%と、前回2005年(67.5%)より2ポイントほど上回っているようです。また、期日前投票は全国で1398万人。2005年衆院選の1.56倍と過去最高を記録。
■成熟する民主主義
英国週刊誌『エコノミスト』のシンクタンクである、Economist Intelligence Unit(EIU)が発表した民主主義の成熟度のランキング Democracy Index2008 をみると、上位には一位のスウェーデンを始め北欧諸国が占めていますが、日本は前年度の20位から17位に上がっています。評価項目は、1)選挙プロセスとプルーラリズム(複数の民族・宗教等の共存状態) 2)政府の機能 3)(市民の)政治参加度 4)政治風土 5)市民の自由度以下の5項目。
戦後、日本の民主主義は少しずつ成長してはいるものの、「欧米型先進国」のなかで、日本のような国家は、他には存在しません。これまで日本人の多数は、戦後長きにわたって所属する組織で組織票を形成してきました。産業界であれば所属する自動車労連、金属労連などの労働組合やパブリック・セクターでは、官公労(官公庁にある労働組合)などに所属し、これらが政党に対して選挙の集票マシーン役を担ってきたといえます。
企業の政治献金も盛んで、土建関連企業は、公共事業の受注と引き換えに、政治資金の提供から、選挙活動で社員を供出するなど特定の政治家と深い関係を築いてきました。つい最近まで、企業が政治家の事務所や秘書の給与を肩代わりするなどはごく当たり前のこと。個人票は、浮動票といわれ大政党に大事にされてきませんでした。したがって政権与党からは浮動票の投票は歓迎されず、投票率が低いと組織票を持つ政党が優位に立っていたわけです。
いまこの流れが大きく変わろうとしています。小沢一郎代表(当時)の公設秘書問題をきっかけに民主党はいち早く、企業・団体からの全面的政治献金廃止をマニフェストに掲げました。また公務員の制度改革を訴え他の野党も追従するなど、政・財・官のもたれあいを断ち切ろうとしています。
今回の総選挙は、初めて多くの日本人が、組織を離れ、自分の意思によって各党のマニフェストを投票基準とし、自分の望む政策を実現してくれる候補者や政党に一票を投じた選挙といえます。マニフェストによる政権交代が当たり前になって初めて、真の民主主義国家になるのではないでしょうか。
今後の組閣人事が楽しみですが、内政、外交など問題は山積しています。しかし、しばらくは温かい目で見守る度量を、有権者はもとより、敗北した自民党やマスメディアに期待したいものです。
30日深夜の鳩山代表の「勝利会見」で、鳩山さんは3つの交代の必要性について話しました。一つ目は「政権交代」。二つ目は「古い政治から新しい政治への交代」。三つ目は「官僚主導から国民主導への交代」。そして最後に「数におごることのない政治を行いたい」と抑制のある言葉で語っています。
民主党が国民の痛みや叫びを聞きとり、血の通ったきめの細かい政治を行ってもらいたいと願うのは私だけではありません。パブリック・リレーションズ(PR)がどのように機能するか楽しみです。
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<お知らせ>
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いまや日本中で連日連夜、謝罪が繰り広げられている。「説明責任を果たしていない」と詰め寄られる企業不祥事の記者会見。「説明責任は果たせたと思う」と大臣をかばう総理のコメント。
だが国民はけっして納得していない。いまなぜ、どのように《説明責任》を果たすことが求められているのか? パブリック・リレーションズ(PR)の第一人者が、「倫理」「双方向」「自己修正」の三つの原則から、日本における《説明責任》の実態を解説し、問題点を指摘する。情報開示に不可欠なリスク管理にポイントをおいた待望の書き下ろし。
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2009年08月10日
本格的マニフェスト選挙
~各党から出揃う
いよいよ選挙が面白くなってきました。これまでの3バン(地盤・看板・鞄)だけでは選挙が戦えなくなる。新しい政治手法である「マニフェスト(政権公約)」は、7月27日、民主党が発表し、続いて、自民党が7月31日に発表しました。ほぼ全ての主要政党がマニュフェストを掲げた選挙戦に突入しました。
今回のマニフェストは未曽有の不況を反映し、国民生活(社会保障、医療、教育)関連、地方分権・公務員制度改革など各党共通するテーマが多く見られます。早稲田大学大学院教授の北川正恭さんが英国のマニフェストを参考に日本へ導入してから6年、ようやく開花しました。マニフェストは健全な民主主義が根づくベースとなるべきものといえます。
■政権政党に欠如する過去の総括
日本は戦後長きにわたって、自民党の一党支配が続きました。戦後の廃墟の中から立ち上がった日本の成功はミラクルと言われています。経済政策で日本を繁栄に導いてきたのはまぎれもなく自民党です。
しかし新しく掲げられるも具体性が乏しいといわれている、自民党のマニフェストには、何よりも過去の総括がありません。政権与党にとって、これまでとられた政策に対する自己評価なしに新しいマニフェストを掲げても国民は戸惑うばかり。
少なくともこれまで掲げた選挙民への公約がどのような結果をもたらしたのか、主要な政策についてだけでも明確に示されなければ、新しい公約をどのように信じ、政権を委託すればいいのか判断できないことになります。
長期政権が続くと、あちこちでひずみやきしみが起きるのは世の常。最近の世論調査の数字は自民党にとって極めて分の悪い数字です。いま国民の多くが、長期政権を担った自民党が一度政権を明け渡し、次のチャンスに備えることを望んでいるように見えます。まさに健全な二大政党の実現が期待されているのです。
■閉そく状態の社会システムを変えるか
環境問題、農業問題、社会保障・医療問題、教育問題など、これらのどれをとっても政治の介在なしに解決を見ることは困難。国民の多くが、これまでにない政治への期待感を募らせているのは、閉そく状態の社会システムを変えるのに、一人の努力ではどうすることもできないことに気がついたからではないでしょうか。政治による政策決定と実行力が今ほど強く求められているときはありません。
これまで経団連とは疎遠な関係にあった民主党は8月4日、経団連へのマニフェスト説明会に招かれ意見交換会を行っています。国民の生活を守るための政策を掲げる民主党に対し、経済成長を追求する産業界との論戦は、地球温暖化による環境問題や雇用対策を巡って厳しいものがみられたものの、双方が直接意見を言い合う格好の機会であったといえます。
マニフェストが掲げられる前の選挙では、どうしても前述の3バン的な環境で投票行為に走っていましたが、マニフェストが導入されることで各党の主張と、裏付けとなる予算や工程表が明確になります。そして、それらを比較することで投票決定ができる合理性のある選挙が実現します。
政権公約は国民との契約。契約が実行されたかどうかは4年後の選挙で評価されます。これまでのような空手形を切るわけにはいきません。マニフェストを行う上でパブリック・リレーションズ(PR)は車の両輪。その準備段階から最後の評価に至るまで、機能しなければならないのです。
そんな中の8月8日、都内のホテルで渡辺喜美元行政改革担当相が新党の立ち上げを発表しました。党名は「みんなの党(英語名:Your Party)」。15名を擁立し、新しい第三極と政界再編を目指し船出をしました。党名には、何となく渡辺さんの人柄が表れているように感じます。
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2009年07月27日
衆議院解散
~混乱する自民党
今日は井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
7月21日、ついに衆議院が解散しました。2008年9月25日、麻生政権が誕生してから10カ月後の解散。安倍政権を継いだ福田政権が崩壊し新たに誕生した麻生政権は、「選挙管理内閣」ともいわれた政権。就任後、前政権から引きずる社保庁問題や未贈有の世界同時不況にみまわれるなど、さながら暴風雨の中を漂う小舟のように操縦不能の状態が続いていました。
この日は自民党の中川秀直元幹事長らが要求した両院議員総会を開催することなく、代わりに両院議員参加の「懇談会」を開催。続いて衆院本会議では解散宣言がおこなわれ、政府はその後の臨時閣議で「8月18日公示、30日投開票」の衆院選日程を決定しました。8月投票は明治以来107年ぶりのこと。
■タイミングを外した自民党
多くの識者は今の状況を、「自民党は、1955年の結党以来選挙に大敗し、政権第一党の座を降りるのは避けられない」とみています。
解散前の自民党の議席は303。絶対安定多数(269議席)を占め、公明党の31議席を加えた与党の議席は、衆院で法案の再議決が可能な3分の2(320議席)を上回っていました。しかしこのままでは200議席はおろか100議席の前半がいいところという厳しい見方も出ています。
7月5日の静岡県知事選に敗北、続く12日の都議会議員選挙での大敗は自民党から民主党へ軸足を移そうとする選挙民の意思の表れと見ることができます。そんな中、自民党内の不満を抑え込んだ21日の解散宣言はあまりにもリスクが高いと言わざるをえません。
これまで、自民党には何度か解散のチャンスがありました。とりわけ3月12日 に 民主党小沢代表(当時)の公設第一秘書が逮捕された西松建設の違法献金事件は、民主党を厳しい状態に追い込みました。このときこそ自民党が選挙に勝つ絶好のタイミングだったと見ることができます。にもかかわらず自民党は解散を決断しませんでした。
自民党にとっては、まさに勝利の分水嶺だったはずです。3月末の千葉県知事選、4月上旬の秋田知事選における自民の勝利はそれらを裏づけているといえます。あるいは麻生総理は、7月のイタリアでのG8サミット(8日―10日)への出席まで、解散することを考えていなかったのでしょうか。
■潔さが大切
今回の与党自民党の解散劇は、国民の前にさまざまな内部崩壊の過程をみせつけ、国民の自民党からの離反を決定づけたといえます。一度下がったベクトルを上向かせることは至難のわざです。
雇用、年金・医療などの社会保障、教育、日常生活など大多数の国民の生活環境は悪化の一途をたどっています。長引く不況の中で民間企業は、給与カットや血のにじむようなリストラを行っています。その影響を受ける人々の生活。このような中で政治の空白は許されるはずはありません。
自民党への不満は、そうした社会の苦しみを皮膚感覚で理解していないことに対する国民の怒りにも見えます。元来保守的な日本人が今回の変革を支持するとしたら、それだけでも大変なことです。我慢づよい国民性は戦後も一貫して安定を望んできました。その日本人が、将来の安定のために政権交代を望んでいるのが今回の選挙の特質とみることができます。
世の中が混迷しているときには政治家に強い志が求められます。青い考えかもしれませんが、与党であれ野党であれ、世の混乱を鎮め、新しい国家目標を掲げる覚醒された政治家集団であって欲しいと思うのです。
また、元来民主主義国家で一つの党が何十年も与党であり続けること自体が異常といえます。ほどよい政権交代により政治が執り行われ、健全な2大政党に育っていくことで、国民は民主主義社会の繁栄を享受できるようになると思うのです。だから選挙に勝っても負けても潔さが求められます。負ければ次に備えて力を蓄え、勝てば全力投球で国民や世界のために働く。
国家を運営する人たちには、時代の流れを見ることが強く求められています。インターネットや携帯電話、車や新幹線・飛行機など社会のインフラが大きく変わっている今の時代に、自転車も珍しかった明治時代から変わらない制度が戦後長きに渡って通用していたこと自体が奇跡と言わざるを得ません。行政機構はもとより、この国の再構築が必要なのは誰の目で見ても明らかなはずです。
今日本には真の意味での政治力が試されています。政治力を高めるには、パブリック・リレーションズ(PR)が欠かせません。
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2009年05月25日
本格化するマニュフェスト選挙
~自民・民主の「四つ相撲」
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
5月16日、民主党は両院議員総会を開き、前幹事長の鳩山由紀夫さんを新代表に選出しました。鳩山由紀夫新代表は17日夜、新執行部の人事を発表。岡田克也副代表を幹事長に起用。小沢一郎前代表は筆頭代表代行に就任し、来るべき選挙に向けて指揮を執ることになりました。
民主党への支持率も各報道機関が18日に発表した世論調査では上昇、政党支持率でそのすべてに民主党が自民党を逆転。来るべき自民、民主による衆議院選挙は、まさに日本の将来を決定づける、がっぷり四つに組んだ力相撲の様相を呈しています。
■マニュフェストを見て投票
先日久しぶりに大学で早稲田大学大学院教授の北川正恭さんとお会いしました。北川さんはこれまで、私の担当する授業で何度か講義をしてくださっており、マニュフェストとパブリック・リレーションズ(PR)との関係性をよく理解されている方です。
北川さんは日ごろ選挙にマニュフェストを導入することの重要性を説いていますが、最近行われたある調査結果で、面白い社会の変化について話をしてくれました。それは、一般の選挙民が、候補者を選ぶ時に何に対して投票するのかといった問いに対して、答えの一番に上がったのは「マニュフェストを見て投票する」だったそうです。
これまで、政治家に必要なもので、選挙に当選するためには、「地盤、看板、鞄」つまり、 地盤=後援会・支持者、看板=知名度・肩書き、鞄=資金、とされていました。これら「3バン」から繋がる「しがらみ」の中で政治活動を行いがちでした。
しかし、この結果を見る限りでは、選挙の風向きが大きく変わってきたといえます。とくに最近の選挙で大多数を占める、サイレント・マジョリティには、候補者選びにマニュフェストを重視する傾向が高まっていることが考えられます。
■ネット選挙運動へ
北川さんはまた、選挙期間中のインターネットによる候補者の政見放送(動画)の実現に向けて奔走しています。候補者全員がそれぞれ与えられた時間で、自分の政策や信条などを訴えることができれば画期的なことです。
現在大きな選挙では、NHKが政見放送を行っていますが、視聴者が録画をしない限り繰り返して見ることはできません。しかしネット上の政権公約は、有権者が必要であれば何度でも見ることができます。他の候補者との比較も可能になり、国民がより手軽に政治にアクセスでき、有権者にとって自らの一票をより有効なものとすることができます。
特に、選挙ポスターやチラシ、はがき、看板、広告出稿、そして運動員の手当てなど、選挙に勝利するには莫大な資金が必要とされます。現在の選挙環境では、お金のない、若い有為な人材が政治の舞台に上がることは至難の業。
先の米国大統領選で、インターネットは大活躍しました。ネットを利用した個人の小口献金による巨額な献金活動の成功もさることながら、テレビ、新聞などの既存メディアから、新しいYouTubeなどの動画共有サイトも利用され、さまざまな政策提言が行われました。
日本の現行の公職選挙法の基準には、あいまいなところが見られます。政治家への企業献金廃止が叫ばれる中、真に能力のある政治家の国政参加を促すためにも、社会の技術革新に合ったブロードバンド時代の法整備と選挙システムの構築が急がれるところです。
パブリック・リレーションズ(PR)とマニュフェストの精神は同一であるといえます。そこに共通するのは、民主主義社会におけるステーク・ホルダーへの説明責任の伴った「公正さ」と「透明性」です。双方向のパブリック・リレーションズによって、さまざまな有権者を把握した、循環型のより良いマニュフェストが実現可能となるはずです。
2009年04月06日
迷走する政治 2
~外国メディアの日本批判
こんにちは、井之上喬です。
やっと桜の満開を迎えた関東地方ですが、みなさん、いかがお過ごしですか?
いま日本の政治にこれまでにない赤信号がともっています。
先日ある閣僚経験者と夕食を共にしました。話題は現在の日本の政治の迷走。日本が直面している政治の危機的状態をどうすれば脱却できるのかといったことでした。今の日本には、麻生さんや小沢さんを比較しその優劣を論じる悠長な状況はありません。
日本の政治は、奈良・平安時代の律令政治から鎌倉時代、武家政治に移行し江戸末期まで続きますが、明治維新以降長きにわたって官僚主導政治が続いています。このパラダイムは第二次大戦後も大きく変わっていません。今回は、迷走する政治の現状についてさまざまな視点から見ていきたいと思います。
■外国メディアもあきれる日本
日本の政治の迷走ぶりをみて、海外メディアが日本の政治家に対し手厳しい批判記事を掲載しています。米国政治のオピニオンリーダー紙、ワシントンポスト(2009年2月2日付)はショッキングな記事を書いています。ある日本人学者のコメントを引用し、日本はすでに「ゆでがえる」。熱い湯に入れられた蛙は熱さに驚き、飛び出てくるが、ゆっくりと水を煮立たせると、蛙は飛び出す力を失いゆであがる。問題は、すでに蛙が煮立った湯の中にいることだと書かれています。
また、英フィナンシャル・タイムズ紙は2月25日の社説で、「日本の危機は政治がマヒしているせいで悪化している」と指摘。日本はすぐに総選挙を実施して、意思決定できる政府をつくるべきだと訴えています。そして「(中略)慢性的な輸出依存により、世界の需要が衰えると経済が止まってしまった」と日本経済の現状を分析。こうした状況に麻生政権は、不十分な対応を続けていると批判(Asahi.com:ロンドン尾形聡彦)しています。
一方、米誌ニューズ・ウィーク(アジア版、3月9日号)は「Headless in Tokyo:アタマのない東京」という見出しで長文記事を掲載。中川昭一財務・金融担当相(当時)の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)での二日酔い会見写真と相次ぎ辞任した4人の日本の首相らの写真を並べ、「日本はグローバル・ビジネス、文化、テクノロジーにおける大国であるにもかかわらず、バナナ共和国(banana republic)のように運営されている」と指摘しています。「バナナ共和国」とは一般的に政情不安定な小国をいい皮肉られた表現。
そして米紙ワシントン・ポスト(3月25日付)は、麻生首相への支持率が下がる中、小沢一郎・民主党代表の公設秘書の起訴により小沢氏が首相の椅子を得る可能性が薄くなったとし、彼に期待していた国民は落胆していると報道。また90%以上の国民が現在の政治を不満に感じていると、「汚職を嫌って自民党を離党した小沢氏」の去就について報道しています。
■しがらみ政治から脱する
世襲問題については、米紙ニューヨーク・タイムズ(3月15日付)は次男を後継指名した小泉純一郎元首相を批判。政界の世襲は戦後日本のダイナミズムを喪失させている。日本社会をより硬直化させ民主主義が弱体化する兆候かもしれないと分析。またブルンバーグ・ニュースのコラムニストのWilliam Pesek氏は、「数々の深刻な構造問題を抱えているとはいえ、能力に応じてリーダーを選べば、日本は潜在力を発揮して、将来的には再び成長の果実を得ることになると思われる。だが、能力ではなく、「生まれ」で首相ポストが決まり、新しい意見が力を得ない日本政治の現在のありようのままでは、先は真っ暗だ。」(3月19日)と世襲化した日本の政治のありようを厳しく批判。有能な政治家を発掘・育成する環境づくりが急がれています。
日本や英国、デンマーク、スウェーデンなどは皇室と政治が切り離されています。しかし、北朝鮮の金正日一族をはじめ、パキスタンのブット一族やインドネシアのスカルノ一族など、途上国の多くの政治のトップが世襲制で継承されている事実を知るにつけ、日本政界のレベルがその域を脱し得ない危惧を持つことを禁じ得ません。もちろん世襲議員の中にも秀逸な人はいますが、小泉首相以降、日本では安倍晋三氏、福田康夫氏、そして現在の麻生太郎氏の4人の首相はすべて世襲政治家。
しかし政治家としての資質や能力があっても、資金のない有能な新人が政界に進出するためには、政治家個人への有効な支援システムを考える必要があります。私が夕食を共にした前述の政治家は、本人の経験として、「最近後援会等の会費の支払はクレジット・カードで処理できるようになったが、米国の大統領選で使われたような、インターネットでのワンクリック献金は難しい」と指摘しています。会費納入と異なり、クレジット会社が不特定多数の相手に対する処理に消極的なことがその理由にあるようです。また日本では寄付金に対する税控除も受けられません。
日本は世襲や企業など特定の組織との既得権益を排除し、利害関係のない政治家を育てなければなりません。以前このブログで紹介した、司馬遼太郎が蘭医学者、緒方洪庵について語っているくだりがあります。「人のため」に生きた彼の生涯を示し、志の大切さやその高い志を共有することで、大きなうねりを起こすことができるとしています。身を持って教えようとした洪庵の精神。使命感と志を持つことの重要性が語られています。
パブリック・リレーションズ(PR)の手法で語るならば、「国民を幸せにする」これが政治家としての大目標のはずです。この究極の目標に向かって政治家個人個人がどのような行動をとるべきかいま強く問われています。かつて主要閣僚として政治の中枢にいたこの政治家は、何かを心に期したように、静かにしかし力強くその場を離れていきました。
2008年12月06日
急がれる内需拡大
~明るい未来の種をまく
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
いま世界は、米国を震源地とした100年に一度といわれる経済危機に瀕しています。
GDPで年内にはドイツを抜き3位に躍り出る勢いの中国は、11月9日、政府による総額4兆元(57兆円)の内需拡大策として公共投資を行うことを発表。グローバルを襲う金融危機にいち早い対応姿勢を示すものとして世界の注目を集めました。
構造改革による内需転換を訴えた1986年の「前川レポート」の報告書作成メンバーの一人、加藤寛(現加藤寛嘉悦大学長、慶応大学名誉教授)さんは、読売新聞の10月26日朝刊1面で日本の1500兆円の個人金融資産活用による内需拡大を提案していますが、いまだ政府による強力な総合対策が打ち出されていません。
円高の時代こそ内需振興が求められます。今回は日本の内需拡大にとって重要となる、「住宅」、「観光インフラ整備」、「石油代替エネルギー」の3つの分野についてお話します。
■内需拡大の早道は「200年住宅」
内需拡大の切り札は、米国では住宅建設と自動車そしてクレジットカード。米国商務省(経済分析局)の数字によると、民間新設住宅着工件数は、2005年には年率平均200万戸の大台を維持していたものが2008年10月にはサブプライムの影響もあり、実に同79万戸にまで落ち込んでいます。これでは米国景気が良くなるわけはありません。
一方、日本の新規住宅建設は、官製不況とさえ言われた建築偽装問題以降の落ち込みで、2007年には一時的に新規着工が年率70万戸台に下がったものの、最近では同110万戸台を維持しています。しかし日本の住宅の質的レベルは多くの場合、欧米諸国との比較において依然として劣悪。土地価格が右肩上がりの戦後、住宅の寿命を30年程度としたことで、資産として捉えられなかった結果、中古イメージが付きまとった住宅には持ち主が変わると取り壊しするしかありませんでした。
12月4日、自民・公明両党の税制調査会は、2008年1月から拡充する住宅ローン減税の概要をまとめました。特に「200年住宅」購入者は、最高600万円(一般住宅は最高500万円)の減税を行うものでこれまでにない大胆な内容。住宅に対する考え方は、彼我の税制の違いもあり、建物寿命30年の日本と100年-200年の欧米とでは大きく異なりますが、土地本位制で上ものが無視されてきた戦後の日本では、資産価値のある超長期ローンによる安価で良質な住宅購入の実現は計り知れない経済効果をもたらすものとして期待されています。
衣・食・住たりて人は初めて幸福感を味わいます。住宅問題は国民にとって最も関心の高い問題といえます。
■観光インフラ/クリーン・エネルギー
またこれまで日本では、不況時の景気対策にはダムや道路建設など、土木建設関連業者への救済策として税金が投入されてきましたが、100年に一度しか起きない過疎地の河川氾濫のために、数百億、数千億規模の不要なダム建設は知恵のある施策とは思えません。
しかし同じ公共投資でも、美しい観光都市づくりのための事業は意味をもつはずです。日本は2010年までに、1000万人の外国人観光客の誘致を目標に掲げ、2020年には2000万人を目指していますが、フランス、イタリア、英国など、歴史と伝統を持つ成熟した国はいずれも観光事業に力を入れています。日本には電線の地中化はもとより、街並みや街路樹の整備、判別しやすい英語の標識の充実など新しい形の公共事業は必要といえます。
そして、アジア地域での飛行機利用者の急増に対し、日本ではハブ空港もいまだ整備されず、同地域の他の空港に客を奪われている現状において、不必要な規制を撤廃しハブ空港としての羽田空港の拡張工事を前倒しで行うことも喫緊の課題でしょう。
内需拡大の3つ目は脱石油のためのクリーン・エネルギー開発です。米国オバマ次期大統領は、11月4日、新たなエネルギー政策案を発表し、米国が中東、ベネズエラなどの産油国への過度の依存から脱却するために、向こう10年間で1500億ドル(当時のレートで約16兆2000億円)を投入することを提唱しました。
また、太陽エネルギー、風力発電などの「クリーン・エネルギー」の利用拡大やバイオ燃料開発、省エネ対策を呼び掛け、環境エネルギー産業で500万の雇用を創出すると発表しました。
日本も国家の強い意思により、新しい、クリーン・エネルギー開発に技術と資本を注入し統合的に取り組む必要があります。これらの実現は、将来のエネルギー生産・輸出国としての日本の地位を飛躍的に変化させるはずです。
内需拡大について、先の加藤寛さんは、現在GDPの20%しかない製造業のために、輸出型(円安)モデルを追求するのではなく、内需型産業である非製造業の生産性を高め金融業界の活性化を促しています。これらの振興のために国民のコンセンサスづくりを実現し、目的達成に向けて行うパブリック・リレーションズ(PR)は欠かせないものとなるでしょう。
2008年11月08日
オバマの新しいアメリカ
~新世界秩序へ向けて
米国の大統領選挙で民主党のバラク・オバマ上院議員が共和党のジョン・マケイン候補を大勝で打ち破り、来年1月米国大統領に就任することが決定しました。
オバマ氏については以前このブログでも紹介していますが、私が最初に彼を知ったのは昨年2月、ワシントンDC滞在中に偶然ホテルのTVで放映されていた彼の大統領選出馬表明でした。2007年2月10日、地元イリノイ州のスプリングフィールドでの支持者集会で米大統領選への出馬宣言を行ったときでした。オバマ氏のメッセージは、その2日前にワシントンの大統領朝食会でブッシュ大統領のスピーチを聞いた私に、計り知れない衝撃を与えました。
■ 主要国首脳のメッセージにみる違い
故ケネディ元米大統領(JFK)の再来ともいわれるオバマ氏は、就任すれば建国以来初の黒人大統領。ハワイで生まれ、インドネシアでの生活体験を持ち、米国や世界を人種、宗教、文化など多様な視点で見ることのできる逸材ともいえます。国際協調を訴え、これまで敵対してきた諸国との対話姿勢も明確に打ち出しています。11月4日深夜(現地時間)、12万人を超える支持者の前で行ったシカゴでの歴史的な勝利演説の内容は米国民と世界を感動に包みこみました
各国首脳もこの米国新大統領の誕生に熱いメッセージを送っています。11月6日付朝日新聞(朝刊)には以下のようなメッセージが紹介されています。まず欧州連合(EU)議長国・仏 サルコジ大統領は、「あなたの当選は仏、欧州、全世界に大きな希望を呼び起こす。米国と一緒に世界の平和と繁栄を守るための新たな活力が得られる」と表明し、英国ブラウン首相は、「オバマ氏と私は多くの価値観を共有している。緊密に連携して働けることを期待している」。
一方、中国の胡錦濤国家主席は、「中国政府と私は一貫して中米関係をたいへん重視している。両国の対話と交流をさらに強めたい」とそれぞれ熱いメッセージを送っています。
そして日本の麻生首相は、「どなたが大統領になられようとも、日本にとりまして日米というものが基軸というのは終始一貫、変っていない。民主党政権の時であろうと、共和党政権の時であろうと、日本政府としてきちんとした対応を米国とやってこれた。そういった努力を引き続きオバマという人とやっていかねばならぬ。…」(衆院財務金融委員会での答弁)。
麻生さんの同様なコメントはその後TVでも繰り返し流されましたが、皆さんは何を感じましたか?翌日11月7日付の同紙の社説では、麻生首相の感想がのんきすぎると批評し、「『ブッシュ後』の米国が、そして世界が大きく変わろうとしているという鋭敏な時代認識が感じられない。」と論じています。無味乾燥なコメントの中には、世界を良い方向に向かわせようとする情熱が感じられませんでした。麻生さんは米国はじめ、世界が極めて不安定の中にある最中の米国大統領誕生の意味をどの程度哲学的に捉えていたのでしょうか?少なくとも有能なスピーチライターは用意されていたのでしょうか。この問題は、個人の資質に帰すことは当然のこととして、パブリック・リレーションズ(PR)力の問題でもあるといえます。
■ オバマ勝利を日米関係刷新の機会に
ハワイで生まれ、インドネシアでの生活体験など多様な人種、文化のもとで育ったオバマ次期大統領はある意味で米国にとどまらず特異な存在感を持った政治家。イラク戦争、アフガン紛争、イラン問題、北朝鮮問題など解決すべき国際問題が山積する中で、武力と経済力にだけ頼らず、対話を重視し世界のリーダーと関係構築できるオバマ氏の資質に世界の期待は高まっています。
今回の選挙結果は日本にとっても、戦後長きにわたって続いたこれまでの日米関係を再構築する絶好のチャンスといえます。
こうした中、オバマ氏を取り巻くブレーンやジャパノロジストへの日本からのラブコールは高まっています。しかし政権交代のたびに、単にこれらジャパノロジストとのパイプを太くする目的だけで関係性を深めることは彼らの負担を大きくするだけです。
このところ、TV番組で様々な米国のジャパノロジストによる日米関係の今後の在り方についてのコメントが紹介されていますが、全体的に米国側が日本のどこ(誰)とどのように関わればいいのか判らず戸惑っているような印象を受けました。特に東アジアにおける中国の台頭が目覚ましい中、日本はこれまでのように、米国とのチャンネルを築くためのみに、ジャパノロジストに頼るのではなく、彼らを支援することが重要となります。
日本のよき理解者としての彼らを強力にバックアップすることで、彼らの発言力が米国内で増してくるはずです。そのためにはこれまでのアプローチだけではなく、日本が政治改革、金融改革、地方分権、教育改革、環境問題・脱石油エネルギーなど、今後の日本の新しい取り組みを提示し、これらジャパノロジストと情報共有することが重要になってくるものと思われます。
アジアにおけるパワーバランスが変化する中にあっても、日本が新の自立国家として世界に貢献できることは山ほどあるはずです。新しい日本を指し示すことにより、ジャパノロジストの立場が米国で強化され、結果として日本の立場が強まることになるはずです。
内外からの日本の政治家への期待は、今まで以上に高まっています。オバマ氏の勝利は、これまで幾度となく叫ばれてきた日本のリーダーシップの実現に、パブリック・リレーションズ力が不可欠なものであることを私たちに教えています。
2008年09月28日
麻生政権誕生
~政治は変わるのか
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
5名が名乗りをあげ、繰り広げられた自民党総裁選、結果は下馬評どおり麻生さんが圧勝。9月1日の福田首相の突然の退陣表明から3週間後の22日、自民党の新総裁が誕生しました。2日後の24日には麻生政権がスタート。新内閣はさながら選挙内閣の様相を呈し麻生さんは就任早々、衆議院解散を意識した民主党への対決姿勢を鮮明にしました。
諸外国からみれば、日本国を経営するトップがわずか2年で3人目に入るというのはどう考えても異常というしかありません。総裁選挙中、5名の候補者が名乗りを上げるものの、いずれの候補者も、政権党が引き起こした政治の混乱が国民にもたらした不都合を詫びることはありませんでした。パブリック・リレーションズ(PR)の視点でみれば、途上国でも見られないこのような状況が、なぜ日本で起きているのか、日本とはどういう国なのか、将来どこに行こうとしているのか。国内はともかく世界は日本のこの状態を半ばあきれ顔でみています。
■自民党の新TVコマーシャル
自民党の新しい選挙用TVコマーシャルが9月25日に発表されたのを受け、同日、私は日本テレビのニュース番組「リアルタイム」に出演し、このコマーシャルへのコメントを求められました。質問は、このCMをみてどう感じるかといったもの。スタジオで見たCMについて、小泉首相のキャンペーンCMと同じコンセプトで作られていることを指摘しました。
つまり、新しいCMは「選挙の顔」として麻生という人間を前面に出したもの。小泉さんと同じように、強いリーダーを表現するために個性的な麻生さんを前面に出そうとしたことがうかがえます。違いは、小泉さんが、(古い)日本を打ち壊す、と構造改革を掲げ新しい日本の枠組みを語ったのに対して、麻生さんは世論の声を反映させようとしたのか、生活密着メッセージ。
一方、民主党のCMは小沢さんが前面に出るも地方を歩き回り、様々な人たちの声を聞いている姿を画面に出しています。個人の人気で麻生さんに後れをとる民主党の戦略でしょうか、小沢さんを通して民主党全体をイメージさせる内容となっており、日頃、小沢さんが「政治は、国民を幸せにすること」と主張していることが表現されています。
興味深いことに、CMを見ている限り小沢さんも麻生さんも訴えていることはほぼ同じ。「生活者の目線」では、自民党のCMが民主党のCMに似かよってきた印象を与えています。
■在任1年8カ月では国家経営は無理
1982年11月、中曽根首相が誕生して2008年9月の福田政権終焉までの25年10か月の間、実に14名の首相が誕生・交替しています。1人の首相の在任が1.8年、2年にも満たない状態で、国家経営がどうしてできるのでしょうか?民間企業ならとっくに消滅。官僚が力を持つのは当然です。このような状態を許した要因は何なのかを制度を含めて総合的に点検しなければいけません。
首相の在任期間は、現在長期にわたって政権を運営している自民党の党則に強い影響を受けています。自民党では総理大臣には党の総裁が就任。自民党総裁任期は3年、2期と定められていますが、総裁が首相をつとめる内閣への不信任が高まれば、衆議院解散(参議院に解散はない)により、総選挙で信を問い、新しい首相(継続も含め)による内閣が発足します。無事にいった場合、最高6年まで首相を務めることができますが、現実は、まさに日替り弁当状態です。
新しいシステムは、選挙制度を見直し、少なくとも首相の任期を義務づけ、最低4年できれば8年程度に延長する必要があります(ちなみに現在の米国は4年2期)。民間企業でのリストラでも最低数年かかることを考えれば国家経営にはもっと時間が必要なはずです。明確なマニフェストに基づいた政策プログラムにより、プロフェショナルな政治・行政が求められているいま、地方分権、道州制なども含め、これらを全うできるシステムづくりが喫緊の問題として浮上しています。
麻生政権スタート直後、中山国土交通相が問題発言で辞任しました。このような例は、他の先進国でほとんど見ることはありません。繰り返される大臣辞任、見識が問われています。
国家経営には、内政、外交、国民生活・社会福祉、財政、農業からIT、そして教育など多くの事象に対する複合的な視点を持つことが求められます。さまざまな視点と人間力が要求されるパブリック・リレーションズは、これらの問題解決の強力な武器となるはずです。
2008年09月06日
自民党総裁選
~新しい政治の構築に向けて
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
福田首相の9月1日夜の突然の退陣表明により、政治の世界がにわかにかまびすしくなっています。この発表は、同じ日の1日午前に小沢民主党代表による、9月21日開催の民主党代表選への正式立候補表明を受けたタイミングで行われました。
北海道洞爺湖サミットのホストを果たしたばかりの福田首相の突然の辞任ニュースは世界中を駆け巡りました。昨年9月26日に就任以来わずか11カ月で、安倍前首相に続く辞任として国内にさまざまな反響を呼んでいます。
■オープン性を強調
このような大イベントには、双方が有権者をどのように取り込むのかメディア戦略は極めて重要なものとなります。メディアは今回の辞任について、民主党代表選挙にぶつけるために、気色の悪くなった福田さんが首相を退任し、民主党の無風選挙と対称的な、色とりどりの候補者擁立によるオープンな選挙を内外に示すことを意図しているのではないかと報じています。
おりしも米国でも、11月4日の大統領選挙に向けた民主、共和党の候補者決定が同じタイミングで行われ、8月28日の民主党全国大会ではオバマ上院議員、9月3日の共和党全国大会ではマケイン上院議員が大統領候補として指名されました。指名受諾演説の3大ネットなどでの全米の視聴者数はそれぞれ3800万人を超えたとされています。
自民党は今回の総裁選挙ではオープン性を強調し、民主党との違いを浮き立たせ、代表選候補者が対抗馬のない小沢代表ひとりの民主党に対し、開かれた自民党を演出しようとしているようにみえます。候補者も麻生太郎幹事長のような「積極財政派」、与謝野馨経済財政相の「財政規律派」、小池百合子元防衛相の「上げ潮派」、中堅を標榜する、石原伸晃元政調会長、石破茂前防衛相、加えて中堅・若手を代表する棚橋元科学技術担当相、山本一太参議院議員などが立候補の意思を表明し推薦人集めを急いでいます。現状では、5名を超える候補者が争う様相を呈しています。
■マニフェストを示す
さまざまな候補者が名乗りを上げることは、開かれた党を国民に示す意味では間違っていませんが、問題は他の候補者と比べてどのような政策を掲げるのかが鍵となります。北川正恭元三重県知事(早稲田大学院教授)の提唱で、マニフェスト(政権公約)選挙が普及し、2003年の衆院選では民主党がマニフェスト作成を宣言。その後他党にも浸透しつつありますが、これまで自民党は積極的にマニフストを掲げていません。
9月21日の臨時党大会で行われる民主党代表選挙の翌日に実施される、自民党総裁選び(10日告示、22日投開票)では、具体的な政策論争を展開し他の候補者との政策の違いをそれぞれ鮮明に打ち出すことが重要。さもないと国民はただの政治ショーとしかみなさず、自民党離れは加速するばかりとなります。候補者のマニフェストが期待されるところです。
いま国民が求めているのは、戦後日本のシステムの再構築。企業のリストラと同じように、同じ経営者(政党)が自ら思い切った構造改革を行うには無理があります。小泉政権後の自民党によるさまざまな改革に対する進捗は足止め状態。現在の状況は、年金問題や国家公務員制度改革などさまざまな具体的改革のために政権交替を行い、新しい枠組みによる改革でしか実現できないと、私たち有権者に思考転換を促していると見ることもできます。
このような中で、明確なメッセージを国民にわかりやすくタイムリーに送り、人々の心を一つにするためにパブリック・リレーションズ(PR)の果たす役割は大きいのです。
2008年07月12日
洞爺湖G8サミットに学ぶもの
~クリーン・エネルギーを今すぐ
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
7月7日から3日間にわたって開催された、「北海道洞爺湖G8サミット」が閉幕しました。主要8カ国(G8)に、新興国などあわせた過去最多の22カ国の首脳が集まったサミットは、世界で頻発する異常気象や食料危機を受けた地球・環境サミットとなりました。G8の枠組みが、この様な地球規模の課題に十分に対応できるのかが問われたサミットでもあったといえます。
あぶりだされたのは先進国と途上国との間のギャップ。最終日の9日、G8に中国、インド、ブラジルなど新興国8カ国を加えた主要排出国会議(MEM)では、G8が掲げた「50年まで温室効果ガス排出量を半減」とする長期目標に賛同した国は、韓国、オーストラリア、インドネシアの3カ国。その他の新興国の多くの反応は、「現在の温暖化をもたらしたのは先進国」とこの提案を受け入れず、先進国の「過去責任」と自らの「成長する権利」を重ねて強調しました。
■脱石油と代替エネルギー、
地球温暖化の元凶は石油エネルギーに代表される化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)。石油価格の高騰と異常気象による食糧危機は、石油資源や外貨の乏しい、アフリカ、アジアの途上国へ計り知れない打撃を与えています。危機的状態は途上国に限らず、先進国にも、急激なコスト高によるインフレ不況が蔓延する恐れもはらんでいます。
人類がエネルギーを初めて利用するようになったのは、50万年前の「火」の発見に始まります。1万年前には農耕、牧畜による「牛馬」の利用、さらには「風力や水力」などの自然エネルギーが活用されます。16世紀には「石炭」が登場。やがて19世紀中ごろ、米国で石油採掘技術の開発による「石油」の大量生産が開始。1950年代、中東やアフリカでの相次ぐ大油田の発見とともに、エネルギーの主役は石炭から石油へと変わりました。大量生産による安価な石油はエネルギー革命をもたらし、あらゆる動力源となっていきます。
1970年代の2度にわたる石油ショックは、世界中にエネルギー不安をもたらし、当時石油依存度70%超の日本も、単一エネルギーである石油への依存を減らすために原子力や天然ガスなどの代替エネルギーの導入を始めます。最近では、太陽光エネルギー、風力エネルギー、エタノールに代表されるバイオ燃料などの利用も進んでいるものの、政策不在で民間ベースの開発スピードは決して速くないのが現状です。
一方、世界の人口増加はエネルギー問題にも深刻な問題を投げかけています。1830年の10億人から、1930年は倍の20億人。1980年には44億人、2003年には62億人。そして、今世紀半ばの世界人口は90億人以上に達すると予測されています。将来途上国が発展し、1人当たりのエネルギー消費量が先進国と並ぶようになったとき、世界のエネルギー消費量がどのくらいになるのか、考えるだけでも気が遠くなります。
現在、大気中への二酸化炭素(CO2)の放出は自然が吸収する量の2倍を超えているといわれています。化石燃料を燃やし続けた「つけ」は、北極海の氷の消滅や氷河崩落など、生態系にも深刻な影響を与え、石油・石炭に代わる代替エネルギーの開発はまさに、国際社会共通の喫急の課題となっているのです。
■日本にとって千載一隅のチャンス
現在日本の石油依存度は、前述の70%超から、46.5%(ちなみに石炭21.1、天然ガス14.9、原子力11.8、水力3.0、地熱0.1、新エネルギー等2.6各%:いずれもエネ庁2005年度速報値)とその比率を落としているものの、石油価格の上昇は投機の対象ともなりOPECのコントロールさえ不能にしかねない状況にあります。
1998 年末から1999 年初にかけて1バレル、10 ドルを割り込んでいた原油価格は、10年後の現在、1バレル150ドルにせまっています。世界中の投機資金は流入を続け、将来1バレル200ドルまで上昇するとさえいわれています。
石油価格高騰により、従来コスト高だったクリーンな代替エネルギー開発を加速させることができます。日本には、代替エネルギー開発では世界の最先端をいく技術があります。
まさに日本にとって千載一隅のチャンスがあるといえます。このチャンスを生かし、周到な戦略構築を行い、持てるリソースを統合的に投入することによって、将来とてつもない新エネルギー大国になることも夢ではありません。戦後日本の奇跡的な発展は、国民の意思が一丸となって一つの目的に向かって突き進んだからです。
これまで日本は数々の逆境を克服してきました。日本の公害技術や省エネ技術は世界一。GDP1人当たりの1次エネルギー供給におけるエネルギー効率は、日本を1.0とするとドイツは2.41、米国2.08、英国、フランスそれぞれ1.43、1.36とその省エネ率は極めて高い水準にあります(資源エネルギー庁エネルギー白書2006版)。
埋蔵資源に頼ることのない、クリーンな再生可能なエネルギーは最終的には太陽光、風力、バイオマス、水素エネルギーと絞り込まれてきます。多くの科学者は、この中でも将来最も有望なのが水素エネルギーだと考えています。
水素は水から電気分解して抽出する方法と、ガス(天然ガス、プロパンガスなど)からつくり出す方法があります。いずれもその生産において技術的には解決されているようです。酸素と化学反応してエネルギーを発生させる水素。私の関心は水素エネルギーの開発・実用化です。無尽蔵な海水から得る製法は大いに期待できるものです。
聖書に「新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れねばならない」(ルカ5-38)とあるように、「新しいことを始める時には、新しい枠組み」が必要です。そして何事もそうですが、新しいことを行うにはパブリック・アクセプタンスが重要となります。国民の理解と受容なしに進めることは困難を極めます。それらを支援するのがパブリック・リレーションズ(PR)の役割でもあります。
以前このブログ(08年1月4日号「岐路に立つ世界」)でも、PRパーソンにできることがあることをお話ししました。あれからわずか6か月、情勢は悪化の一途をたどっています。私たちは、次の地球を生きる私たちの子孫のためになんとしても、2酸化炭素の元凶である化石燃料依存社会から脱却しなければなりません。いま日本には、コペルニクス的大転換が求められているのです。
2008年06月07日
食糧危機の元凶
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
6月5日、世界的な食糧価格高騰の対応を協議する国連食糧農業機関(FAO)主催による「食糧サミット」がローマで閉幕しました。3日間にわたって約150か国の代表が参加したこのサミットでは、食糧価格高騰の主要因とされる輸出規制やバイオ燃料の開発、気候変動への対応などが協議されました。
世界40カ国以上の首脳に混じって日本からは福田首相が出席し、最終日に9項目からなる共同宣言を採択。朝日新聞(6月6日夕刊)によると、「焦点となっていたバイオ燃料の見直しは、『詳細な検討や、技術などに関する経験を交換することが望ましい』との表現にとどまった」とされ各国の思惑も異なり、会議がすんなりとはいかなかったことがうかがえます。
■ 輸入ストップで食卓は一汁一菜
先日、私の知人からこんな話を聞きました。それはNHKの「おはよう日本」(6月3日)の中の農水省まとめを引用したコメント。日本の食糧自給率は39%と40%を割り込んだようですが、もし海外からの輸入が一切ストップしたとすれば、私たちの毎日の食卓はほとんど一汁一菜で夕食に魚が一切れ添えられる程度で、なんとも質素なものになるという話でした。乳製品や肉類は数日に一度といった状態で、自称グルメ通のその知人は嘆いていました。
さて、世界の主要国の食糧自給率を見ると、なんといってもオーストラリアが237%で断然トップ。次いでカナダの145%、米国の128%、僅差でフランスが122%とここまでが自給率100%を越える国々で、第5番目となるのが、スペインの89%である(日本以外国についてはFAO 2003年“Food Balance Sheets”を基に農林水産省で試算)。この数字からも明白なように、近い将来、もし、深刻な食糧危機に陥った時、先進諸国で真っ先に打撃を受けるのは、日本ということになります。
日本の台所事情は劣悪で、現在の自給率を当面45%に高めようというのがこの国の施策で、なんともさびしい限りです。ちなみにここでいう食糧自給率とは、カロリーベース総合食糧自給率 のことで、国民1人1日当たりの国内生産カロリーを国民1人1日当たりの消費カロリーで除した数値のことです。
■ 元凶は地球温暖化と肉食
食糧危機の元凶は一体何なのでしょうか?根底にあるのは地球温暖化問題。そもそもバイオエネルギー開発のきっかけは、脱炭素社会への転換のために石油に代わるエネルギーとしてバイオ・エタノールが注目を浴びたことでした。
風が吹くと桶屋が儲かる話は以前このブログでも話しましたが、地球温暖化の原因は石油エネルギー問題。その解決のためにバイオ・エタノール開発へドライブがかかり、その結果、トウモロコシ、小麦など食料や飼料の需給のバランスが崩れます。一方では森林破壊が進み、炭素吸収能力の低下、温暖化などに誘発された異常気象により食料安定生産システムが崩壊などなど、まさに負のスパイラルに入っている状況があります。
加えて、人類の経済発展とグローバル化により、これまで地域の伝統的な食文化が欧米型の肉食生活に変化したことも問題を深刻にしています。
財団法人食品産業センターによると、1kgの牛肉を生産するのに必要な飼料は11kg、同重量の豚肉の生産には7kg、同じく鶏肉の生産には4kgの飼料が必要とされています(いずれもとうもろこし換算)。同様に、牛肉100グラムの生産に必要な水は2トン、豚肉は0.6トン、鶏肉0.4トン(2003年、東京大学生産技術研究所沖グループによる)。ちなみに山根式水耕栽培で、100グラムのトマト栽培に必要な水はわずか572ml(APJ調べ)。飼料だけではなく、水も環境資源として重要になっていることを考えると、肉食がその因果関係においていかに環境破壊をもたらすかが理解できます。
一般的に食糧には統合エネルギーがたくさん必要とされます。食べたら得るエネルギー(カロリー数)と異なり、牛肉の場合、統合エネルギーは、牛に食べさせるトウモロコシを耕作するトラクターの消費する石油エネルギーや牛を輸送し、屠殺後、肉を保存する冷蔵庫が消費する電力、そして料理に使うエネルギーなどの一切を指しています。
近年になって自動車や住宅用建材はもとより、食糧においても統合エネルギーは大いに増えています。地中海やアフリカでとれたマグロなど日本へ搬送する水産物や、南米、オーストラリアなど南半球から、北半球のヨーロッパやアメリカに運搬する新鮮な果物など経済性を追求する結果世界中いたるところで食料が輸送されています。
これらの問題の解決にはいろいろな施策が求められます。しかし問題解決のために、これらの施策が国民や消費者にとって分かりやすいものである必要があります。ここで私は3つの基本的な施策を提案したいと思います。
まず、食糧自給率を限りなく100%に近づけること。つまり作付面積を増やし企業でも農業生産に参入できるよう法改正を行い、地産地消への取り組みを真剣に考えることでしょう。そのためには私たち消費者が、少し高くても国産の農作物(安全性の高い)を買うことを考えねばなりません。
次いでなるべく肉食を控えることで、飼料が食糧に転換できる環境を作らなければなりません。メタボ人口が多い日本では格好のチャンスを捉えるべきでしょう。
3つ目は、国をあげて二酸化炭素規制を行うことが重要。明確な数値目標を掲げた取り組みが求められ、脱石油はまさにキーとなっています。代替エネルギーであるクリーン・エネルギーの開発を国家戦略として大規模に行う必要があります。
こうなってみると、生産・収穫された農産物は貴重品。何年か前に、牛乳が生産過剰に陥ったことで市場価格が下落したときに、酪農農家が価格維持のために牛乳を廃棄したり、キャベツなどの野菜生産者が過剰生産で生産物を廃棄処分をするなど社会的問題となっていましたが、このような対処は全く無駄。ODA予算で、チーズやドライキャベツなどにして保存し、日本の貧困者用、途上国の食糧危機や紛争・災害時のための緊急援助用に備蓄するなど、省庁の垣根を超えた統合的な政策が求められています。
そのために、広く生産者、消費者、行政、国際社会にメッセージを送らなければなりません。企業やPR会社のパブリック・リレーションズ(PR)の実務家にはこれらのことが強く求められているのです。
2008年05月03日
衆院山口補欠選挙が語るもの
こんにちは井之上喬です。
皆さん、新緑が目にまぶしいゴールデン・ウイーク、いかがお過ごしですか?
4月27日に福田政権発足後初の国政選挙となった、衆院山口2区補欠選挙では、民主党の前衆院議員で社民党推薦の平岡秀夫氏が、自民党新人で公明党推薦の前内閣官房地域活性化統合事務局長山本繁太郎氏を得票率20%以上の差で勝利。ガソリン税や4月からスタートした、後期高齢者医療制度への不満が民主党勝利の大きな要因となったとされています。
■ 総力戦の果て
今回の選挙では与野党とも今後の国政の行方を占う重要な選挙と位置づけ、それぞれの党幹部を選挙区に送り込み、総力戦を展開しました。自民、民主の代表も現地入りし、自民党福田総裁は、選挙の人気取りだけでガソリン税の切り下げを主張する民主党を非難する一方、民主党小沢代表は、長期政権の弊害を指摘し、国民の生活に目を向けた政治の必要性を説くなど、加熱したものとなりました。
選挙期間中、地方の活性化を訴える自民党とガソリン税や後期高齢者医療制度の廃止を訴える民主党との闘いは拮抗していたかにみえましたが、終盤での後期高齢者医療制度の不備が次々にメディアで取り上げられ露呈。自民党の敗北は、お年寄りにしわ寄せする制度への批判が有権者の間で急速に高まった結果といえます。高齢者の支持が多い自民党にとっては今後の政局運営を左右する大きな痛手となりました。
後期高齢者医療制度の実体について、理解している人はほとんどいないと考えた方が自然です。この制度は、新しく制定された高齢者医療確保法に基づく後期高齢者医療制度として、小泉政権時代の2006年6月に立法化されたもので、その施行が2008年4月1日から始まったものです。国会での批准後、制度の国民への周知徹底のための時間的猶予は2年近くあったはずでした。
■ 果たされない説明責任
田原総一郎さんは、BPnet mail 05/02朝刊の「なぜ自民は山口で惨敗したのか」の中で、後期高齢者医療制度の問題について、制度自体の良し悪し以前の問題として、この制度についての与党の説明責任の欠如が一番の問題であることを指摘しています。
そして、「本当にこの後期高齢者医療制度について書かれた自民党の説明書や厚生労働省の説明書などを読んでも、何を言わんとしているのか、何のためにやるのか、さっぱり分からなかった。何でこんなに分かりにくいのか。」と疑問を投げかけ、元大蔵官僚の榊原英資さんの現役時代の話を披露し、「『官僚の書く文章は、暗号だ。国民にはさっぱり分からないように書くのが官僚の文章なのだ。だいたい官僚の書くものは国民に理解されては困るものが大半なのだが、その中でも特に理解されて困るものは徹底的に分かりにくく書く。官僚仲間にだけ











