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2017年09月04日

「未来の先生展2017」から
〜国内最大級、未来の教育を描く150に及ぶセッション

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

東京都心は8月22日、8月に入って初めて雨が降らず、連続降水日数は21日間で途切れました。これは観測史上2番目の長さだったとのこと。最長期間は22日間(1977年8月6日-27日)の記録だそうです。

さて8月26日(土)と27日(日)の両日、体験型“未来の教育 ショーケース”を目指した「未来の先生展2017」がお台場にある武蔵野大学有明キャンパスで開催されました。

期間中、「公教育」や「私教育」、「国内」・「国外」の枠を超えて、教科教育からスポーツ、芸術、そして学校の枠にとらわれない21世紀型授業や国際系教育、オルタナティブ教育そしてICT、親子向けプログラムなど、未来の教育を描く150に及ぶセッションが20の教室で組まれました。内外から約2500名が参加した国内最大級のイベントには、教育実践家や関係者が集い、未来の教育について語り合う熱い2日間となりました。

会場環境を次期学習指導要領の要となる、“主体的・対話的で深い学び”を子どもから大人まで体験できるようにしつらえ、前川喜平前文部科学省事務次官も27日午後のセッションに特別ゲストとして参加。 「多様性を受け入れる学校づくり?マイノリティ当事者の声から、できることを考える」というテーマで、引きこもりや性的マイノリティ問題についてディスカッションしました。

この教育イベントには、グローバルビジネス学会(SGB)も文部科学省、武蔵野大学と共に後援に名を連ね支援。 SGB提供のセッションタイトルは、「グローバル・ローカル時代を生きる個を育む教育」(27日午前)で人材育成をテーマに私も講演・パネリストとして参加しました。

http://lamp.design-comp.info/mirai/pdf/27/global-local_katamen_0824.pdf

■幼児教育からの「絆(きずな)教育」
パブリック・リレーションズ(PR)は、いうまでもなく主体を取り巻く様々なステークホルダー(パブリック)との間のリレーションジップ・マネジメントです。

したがってその遂行においては双方向性をもつ異なった視点が求められます。これにより異なった言語、宗教・文化・歴史をもつ人々の間での相互理解が可能となるのです。多様性が求められるグローバル環境では、コミュニケーション能力を持ち、世界の人々と心の通った相互理解ベースでの交流を行うことができる、「個」の確立した人間力を有するグローバル人材の育成は不可欠なこととなります。

私は2004年からこれまでいくつかの大学・大学院でパブリック・リレーションズを教えてきましたが、高等教育からの教育では手遅れであることを痛感しています。とりわけネット社会の急速な成長によりグローバリゼーションがハイパー化するなか、パブリック・リレーションズの根幹をなす「関係づくり=絆(きずな)づくり」をベースにした教育は喫緊の課題になっています。

これまで長年にわたって、幼児教育に始まり初頭、中等教育での「絆教育」が教育現場に必要ではないか、また教師養成も含めたシステムづくりが必要ではないかと訴えてきました。

講演(写真)では、こうした視点から私が考えるパブリック・リレーションズ(PR)や「絆教育」について述べ、それがグローバルビジネス人材に不可欠な要素であることを強調しました。

このセッションの参加者(講演・パネリスト)は、「百ます計算」で有名な蔭山英男さん(陰山ラボ代表、元大阪府教育委員会委員長)や前早稲田大学総長の白井克彦さん(日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)理事長)、そしてパネルデスカッションのファシリテーターは、脇阪嘉明さん(朝日学生新聞社長)。パネルディスカッションではそれぞれ異なる専門分野を背景にパネリストによる真摯な議論が交わされたのでした。

「未来の先生展2017」の会場となった武蔵野大学有明キャンパス(写真左)は、2012年の開設。未来の日本の教育について語り合う国内最大級のイベントを実施するうえで、環境・設備とも申し分ないものでした。

写真右は、27日特別ゲストとして参加した前川喜平前文部科学省事務次官と筆者。

■コミュニケーションの基本を学ぶ絵本
前川さんにはお忙しい中、私が関係するもう一つのセッション(27日16:20?17:50)「絵本でコミュニケーションを学ぼう!」を覗いていただきました。

このセッションは、子供が他者と絆(きずな)をつくり、グローバル社会で生きていくためのコミュニケーションの基本について絵本を使って学ぶプログラム。

『リスおばあちゃんのふしぎなうた(仮題)』という絵本(サンプル版)を読み聞かせた後、セッション参加の皆さんで「仲たがいした二人が、どのようにして仲直りするか」をテーマに2コマの絵本づくりに取り組んでもらう、といったワークショップ形式のものでした。

『リスおばあちゃんのふしぎなうた』は、他者とより良い関係を構築し、最短距離で目標を達成するパブリック・リレーションズ(PR)の方法論を用いて幼児・子供向けに企画・編集された絵本です。

この絵本は、パブリック・リレーションズに欠くことのできない目的達成のための3つの要素である「倫理観」「双方向性コミュニケーション」そして「自己修正」を抱合した私が提唱する「自己修正モデル」の研究をベースに私が監修するものです。

主催者の「未来の先生展実行委員会」の委員長の宮田純也さんは早稲田大学時代の教え子。8月最週末の2日間のイベントは成功裏に無事終了したのでした。

*「未来の先生展2017」の詳細は下記ホームページをご参照ください。

http://www.mirai-sensei.org/


投稿者 Inoue: 09:11

2017年07月13日

グローバルビジネス学会2017年度「研究発表会」から
〜岐阜長良川で地方活性化をテーマに28名が研究発表

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

九州北部を襲った記録的な豪雨で、福岡県と大分の各地で多大な被害が出ています。被災者や関係者の方々に心よりお見舞い申し上げます。

週末の7月9日(日)に私が副会長を務めるグローバルビジネス学会(丹羽宇一郎会長/小林潔司理事長)の2017年度「研究発表会」 (実行委員長:高木朗義岐阜大学教授)が岐阜の長良川で実施されました。岐阜大学との共催により「地方活性化とグローバルビジネス」を統一テーマに岐阜市の「長良川うかいミュージアム」(写真左)を会場に催されました。

写真右は左からグローバルビジネス学会の小林理事長、丹羽会長と筆者

このミュージアムは、2012年8月に伝統文化である「長良川の鵜飼」の価値を分かりやすく紹介・情報発信する場として岐阜市長良鵜飼屋の地に誕生したものです。

長良川に面した会場は自然を生かした設計で、金華山頂上の織田信長ゆかりの岐阜城を眼前に仰ぎ見ることができます。

天気に恵まれた研究発表会には昨年を上回る28件の発表が行われ、活発なディスカッションが続きました。

私は、「地方活性と教育」をサブテーマに午前中に行われた5つのセッションのモデレータを務めました(写真右)。その概要をシンプルにご紹介します。詳細は、下記グローバルビジネス学会ホームページの「予稿集」をご参照ください。
http://s-gb.net/seminar_studygroup/2766/

■映画制作体験授業など
1)「実践型インターンシップを通じた地域産業のイノベーションの実現」
南田修司 NPO法人G-net

少子高齢化、生産年齢の人口減少など地域が抱える課題は根深く長期的視点では、産業活性と担い手となる人材確保に大きな課題があるとしています。

こうした状況の中で、双方を両立するプログラムとして実践型インターンシップが効果をあげています。岐阜に拠点を置くNPO法人G-netが取り組む実践型インターンシップ「ホンキ系インターンシップ」の実践事例をもとに企業側、若者側の効果について発表。

2)「アクティブ・ラーニング型講座のオンライン化による学習効果」
炭谷俊樹 神戸情報大学院大学 学長

多くの双方向対話を必要とするアクティブ・ラーニング型講座はオンライン学習には不向きとみなされてきましたが、最近のインターネットベースのビデオ会議システムは、遠隔地に散らばった参加者間のリアルタイム双方向の会話や小グループでのディスカッションをも快適に行うことができるとしています。

このようなビデオ会議システムの一つである「ZOOM」を用いて、アクティブ・ラーニング型の講座「ナビゲーション講座」のオンライン版を実施し、その学習効果について発表。

3)「映画製作が寄与する社会人基礎力の向上の考察」
古新舜 コスモボックス株式会社 代表取締役

文部科学省は2014年、教育現場における「アクティブ・ラーニング」の導入を提言。これは社会の多様化やグローバル化が進む中,主体的・対話的な深い学びを教育現場で実践するあり方であるとしています。

古新さんは、このアクティブ・ラーニングについて映画制作を通じて行っているPBL(Project?Based?Learning)、すなわち課題解決型学習を通じて本活動を実践することで、学修者の主体性、協調性を引き出し、社会人基礎力の向上に如何に寄与できるかを考察しています。

■新しいパラダイムが求められる日本の教育
4)PlanE:Checklist for Japanese University Undergraduate System Paradigm Shift
八木 エドワード 麗澤大学 教授

日本の教育は、大学に問題点が山積していと指摘しています。八木さんによると既存の改革のパラダイムは失敗し、新しいパラダイムが求められているといいます。

日本の大学のゆるさだけでなく、大学入学試験の問題、t-スコア(偏差値)へのこだわり、塾制度、学術分野や行政における英語力不足、そしてグローバル経済に要求される批判的思考、コミュニケーション能力や語学スキルも大きな問題になっているとのこと。

これらは八木さん自身が大学院で学ばれた経験や4人のお子さんの通学(保育園から高等学校)から得た知見、国内大学・大学院で教鞭を取られたことなどの実体験に基づくお考えのようです。


5)梅田眞司 Social Design Laboratory
「フィンランドの教育の体現による、学びの意欲向上」

この研究の目的は,フィンランドの教育のあり方をクラスに体現することにより、日本の教育現場においてもその教育のあり方が学習者の学習意欲の向上や脱落者の防止に有効であるかを模索することにあったといいます。

最終的に一部の測定項目においていわゆる進学校の生徒たちの出すアウトプットと遜色のない結果が認められたといいます。この一連の活動を通して、生徒たちの学習意欲の向上が認められ、脱落者防止に寄与する結果が得られたとしています。

話は外れますが、「4)PlanE」をプレゼンテーションいただいた八木さんとは何と20年ぶりの偶然の再会となりました。当時私は、1994年10月に決裂した日米自動車・同部品交渉においては、米国大手自動車部品メーカー、テネコオートモティブのPRコンサルをしていた時期で、八木さんはキャリア外交官としてアメリカ大使館の経済担当で、いわばカウンターパートでした。

外国人の研究発表の中には、日本の大手企業の現状について「いまだ20世紀の成功モデルを追いかけ、沈みゆく巨艦タイタニック号で、その危機にも気づかずに蝶ネクタイをした楽団員が演奏を続けている」と厳しくコメントし、オーナー経営者の多い地方企業への期待を表すものもありました。

紙面の都合で全てを紹介できないのが残念ですが、トランプ政権とアメリカ議会についての発表や最新の冷凍技術による日本の農林水産業の強化などいずれも興味深い内容の発表が盛り沢山でした。

今回の「研究発表会」でのそれぞれの研究成果を聴くにつけ、グローバル化、ハイパー化が加速する中にあって地方活性化のために強力な推進力を持つパブリック・リレーションズ(PR)がますます重要な役割を担っていることを改めて実感しました。

大会前日の懇親会は長良川名物の鵜飼の篝火(写真)を楽しみながらのバーベキューパーティーで地方都市ならではの学会大会を満喫することができました。


そして20年ぶりとなる偶然の再会や発表者それぞれの地方活性化への思いを熱く感じながら、岐阜市での一日が過ぎていきました。


投稿者 Inoue: 17:51

2016年02月18日

秋田国際教養大学での集中講義
〜「International Liberal Arts」という新しい教学理念

初夏のような陽気だったり、急に冷え込んだりで体調管理が難しい時期ですね。
インフルエンザも流行っているようですが、皆さんお元気ですか。

さて私は、今年から、1月、2月に国際教養大学(AIU:秋田県秋田市)で「Practical Public Relations」の集中講義を行うことになりました。毎週金曜と土曜の2日間、現地に滞在しそれぞれ6教程(6時間)の講義を行っています。

以前、私のブログ(2012年07月23日)で日本経済新聞社が主要企業の人事責任者(人事部長以上)を対象に行った「人事トップが求める新卒イメージ調査」の結果を紹介したことがあります。

この調査の「人材育成の取り組みで注目する大学」については、秋田県の公立大学「国際教養大学」(AIU)がNo.1に選ばれて大きな話題となりました。2位は東京大学で3位は立命館アジア太平洋大学でした。

これがきっかけとなって私は「AIUはどんな教育をしているのだろうか、またどんな学生が学んでいるのだろうか」など強い関心を持っていたところ、偶然仕事で秋田に立ち寄った際に、以前から知己のある元慶応大学教授で現在同大学の教授で大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科科長を務めておられる伊藤陽一教授をお訪ねし、学内を案内いただいたことがあります。それがご縁で今回客員教授として教鞭を執ることになったのでした。

キャンパスを散策すると、国際教養大学創設に深くかかわられた中嶋嶺雄初代理事長・学長の熱い思いが伝わってきます。

■「英語を学ぶ大学」ではなく「英語で学ぶ大学」
AIUは、「国際教養( International Liberal Arts)」という中嶋学長の新しい教学理念を掲げ、英語をはじめとする外国語の卓越したコミュニケーション能力と豊かな教養、グローバルな視野を伴った専門知識を身に付けた実践力のある人材を養成し、国際社会と地域社会に貢献することをその使命としています。

経済同友会が昨年4月に「これからの企業・社会が求める人材像と大学への期待」をレポートしていますがその中で、大学へ期待することとして「アクティブ・ラーニング(課題解決型の能動的学修)の導入によるコミュニケーション能力の向上」を真っ先に挙げています。

AIUの「国際教養( International Liberal Arts)」という新しい教学理念は、まさにグローバル化を加速させる日本の経済・産業界のニーズにミートしたものでした。

AIUでの講義はもちろん、テキストも副教材もすべて英語。これまで海外の大学で英語の講義は何度となく行ってきましたが、私にとっても大変新鮮な経験となりました。

ご参考までに、本講義の目的として下記の4項目を設定しました。

【Objectives】

1. Learn comprehensive ways of thinking that are strategic overviews of the big picture from a global perspective, and through them learn the practice and timing of PR, in order to be able to understand just how essential it is to for organizations to integrate Public Relations methods into management.

2. Based on the PR lifecycle model, learn the basic concepts of Public Relations, which is necessary to survive in a drastically changing global age, and master the concepts of "ethics", "two-way communications", and “self-correction", that are required to achieve objectives.

3. Learn how to read changing circumstances, understand the importance of relationship management accompanied by strategy and speed, and be able to grasp the essence of the practice of Public Relations.

4. Encourage self-awareness as global professionals, and become able to grasp how to include Public Relations in business, as is required of independent, strategically prepared, knowledgeable, and dynamic 21st century leaders in all fields.

20160218-1.jpg

写真は雪中のAIU正面入り口から大学を見たもの。例年に比べて雪は少ないようです。

■知の源泉は24時間365日開館

20160218-2.jpg

5万冊に及ぶ洋書の文献の数では日本一の図書館。いつでも勉強できる環境を提供したいとの大学側の思いもあって24時間365日開館しています。

この図書館は「本のコロセウム」をテーマに、半円のユニークなデザインの木造と鉄筋コンクリートの複合建築物(2008年4月竣工)。美しい杉に囲まれた空間は、安らぎと落ち着きを利用者に与えてくれます。

2014年11月に開校10周年を記念して、故・中嶋嶺雄の業績を顕彰して「中嶋記念図書館」と命名。そういえばこの図書館、どこかのコマーシャルに登場していますね。

20160218-3.jpgこの写真は、私の講義風景です。学生は日本人が半数で他は米国、ノルウェー、中国からの留学生です。

この日(2/12)は、第6週の最初の授業で、メラビアンの法則やリチャード・ルイスの「3つの文化モデル(Lewis Model)」などを講義しました。

その後は3グループに分かれあらかじめ設定されたテーマでPRプロポーザルのプレゼンテーションを行いました。

講義の後は、秋田市内の居酒屋へ招待されました。地元の新鮮な食材をふんだんに使った様々な料理と日本酒は冬国秋田を十分に堪能させてくれました。全員参加してくださった学生の皆さんとの想い出深い一日となりました。

私のパブリック・リレーションズ(PR)の講義を通して彼らがグローバルなコミュニケーション能力を身につけるとともに強い「個」を確立し、グローバルリーダーへと成長していってくれることを、今から楽しみにしています。

投稿者 Inoue: 22:10

2015年11月13日

世界の中の日本を考える
〜「21世紀はいつから始まった?」

皆さんこんにちは井之上 喬です。

東京の紅葉も見どころとなってきました。神宮外苑のいちょう並木や新宿御苑の色鮮やかな紅葉は心を癒してくれます。

今週は、世界の中の日本、について考えさせられる話しに接しましたのでご紹介したいと思います。

■NY市立大学の霍見教授を招いた3年ぶりの講演
最初のお話は、私が副会長を務めるグローバルビジネス学会の第36回セミナー(11月10日)における講演です。この日の講師は、日本に警鐘を鳴らし続けてきた稀有の学者として知られるニューヨーク市立大学名誉教授の霍見芳浩(つるみ よしひろ)さんでした。

写真:メインテーブルの中央が霍見芳浩教授。左はグローバルビジネス学会の小林潔司理事長で右は筆者。

2012年の夏にご講演をいただいて以来のお話でした。テーマは「21世紀情報社会に求められる思考と行動-―日本の政治行動と世界から日本はどのように見られているのか」。

「日本の商業メディアを通じてはわからない世界のこと」を最近の安倍首相訪米、米国議会での演説の評価にも触れながら、御年80歳とは思えないエネルギッシュなお話をいただきました。

会場では参加者に、講演のテーマにもなっている「21世紀は、いつから始まったのか?」との問いかけから始まりました。

あなたはどう答えますか?「それは2001年でしょう」と答える方も多いと思います。

しかし霍見さんの答えはこうでした。「過去の大きな分水嶺を見てみると、20世紀は1889年のパリ万博でそれまでの軽工業から、重化学工業への大きな変化が起こり、その象徴となるのが万博に合わせて作られたエッフェル塔」。

それでは21世紀の始まりは「1989年11月9日のベルリンの壁の崩壊!20世紀の構造が文字通り壊れ新しい時代に突入していった」と明確な回答を出していました。

そして21世紀の日本については、霍見さんは早くから警告を発していますが、司馬遼太郎さんが『日本は国際社会や一国が置かれた環境など一切考慮しない伝統をもち、さらには、外国を考慮しないことが正義であるというまでにいびつになる』と警告したように、21世紀のグローバル時代、情報社会で世界から孤立していると改めて強く警告しています。

つまり世界から好かれていないし、信用されていない、と手厳しい判断で「誰と組むかの選択肢に日本が入っていない」と私たち日本人の肌感覚では感じられない、世界の中の日本の実態に警鐘を鳴らしていました。

■「世界経営者会議」にみる新しいビジネスモデル
霍見さんの講演と同じ11月10日から2日間にわたり、日本経済新聞社などの主催による「世界経営者会議」が開催されました。

写真:ABB(スイス企業)が開発したロボット「YuMi(ユミ)」を紹介するウルリッヒ・シュピースホーファーCEO
 
第17回となる今回のテーマは「未来の扉を開く突破力」で、世界のそうそうたる企業経営者が顔をそろえ講演をされたのを記事でご覧になった皆さんも多いのではないでしょうか。

私がその中で興味を持ったのは、世界の四大会計事務所の1社であるKPMGグローバルストラテジーグループ統括パートナーのニコラス・グリフィン氏の講演内容です。

グリフィン氏は「ビジネスの世界は、産業セクター間がぶつかり合い、これまであったような循環的な変化ではなく、技術革新(イノベーション)による全く新しいビジネスモデルが成長のために必要になっている」としています。

氏はそのなかで、積極的に新しいビジネスモデルを生み出す、M&A(合併・買収)など色々な手法があるが、日本企業にとって異業種との協業(コラボレーション)が成長のために考えるオプションではないかと、直前に明らかになったシスコとエリクソンのコレボレーションを例に挙げ、日本企業の世界での成長戦略の1つにコラボレーションという手法が有効ではないかとの考えを示していました。

奇しくも同じ日の日本経済新聞には、「日本企業の海外M&A初の10兆円乗せ」の見出しで、日本企業による海外企業のM&Aが9年ぶりに過去最高を更新し、10兆円を突破したとの記事がありました。

世界市場で成長していくためにはこれまでの日本企業にない、新しいビジネスモデルで市場を創出することにドライブがかかっているように見えます。

M&Aで規模を追求する、そして新しい選択肢として日本企業の優れた技術力を生かした国際的なコラボレーションという選択肢もあるのかもしれません。

2020年の東京オリンピックは、日本のビジネス界にとって大きな分水嶺になる可能性を秘めているとも言えます。世界から孤立するのではなく、世界からコラボレーションのパートナーとして選ばれる日本企業になる。

今はまさにダイナミックな新しいグローバルーション世紀にふさわしい大潮流の中にあるのかもしれません。そんな今こそ国を構成する一人一人に日本人としてのソフトパワーが問われる時代だと痛感しました。

投稿者 Inoue: 15:48 | トラックバック

2015年06月18日

グローバルビジネス学会が第3回全国大会を開催
〜統一テーマは「地方創生とグローバルビジネス」

皆さんこんにちは井之上 喬です。鬱陶しい毎日が続きますが、お変わりはありませんでしょうか。

私が副会長を務めています学術団体グローバルビジネス学会(The Society of Global Business)の「第3回全国大会」が、来る7月4日(土)と5日(日)の両日にわたって早稲田大学国際会議場(井深大記念ホール)を主会場に開催されます。

大会実行委員長には白井克彦氏(放送大学学園理事長・前早稲田大学総長)が就任しています。


■夢や希望のある魅力あふれる地方に
第3回全国大会では、「地方創生とグローバルビジネス」(Revitalization of Japan's Local Economies and the Role of Global Business)を統一テーマにしています。

初日は地方創生を国家的テーマに推進する、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部 地方創生総括官の山崎史郎氏による基調講演をはじめ、地方創生のための様々な試みを行っている長野県知事の阿部守一氏をはじめ企業や大学、そして地方金融機関などからのパネリストによる討論が続きます。

この「まち・ひと・しごと創生本部」(地方創生担当大臣:石破茂衆議院議員)は、人口急減・超高齢化という大きな課題に対し政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生できるように、昨年9月に設置されたもの。

「地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を克服する」。そのために、国民が安心して働き、希望通り結婚し子育てができ、将来に夢や希望を持つことができるような、魅力あふれる地方を創生し、地方への人の流れをつくるといったことを基本目標に掲げています。

こうした背景を踏まえ、第3回全国大会では、「地方創生とグローバルビジネス」を統一テーマに採択しました。

■地方創生?成功のための課題はなにか?
基調講演に続き、国際経済連携協定研究会によるTPPが創出する日本経済、とりわけ地方経済に与えるインパクトについての報告と討論が渡邊頼純氏(慶應義塾大学教授)やラリー・グリーンウッド氏(元米国APEC大使)らにより行われます。

さらには地方創生を掲げる自治体首長(湯崎英彦広島県知事)、地元企業家ら4名の発表者により、地方創生の現状と直面する様々な課題などについて語っていただきます。

2日目は会場を早稲田キャンパス3号館 701号室/702号室に移し、グローバル「人材教育におけるエンタテインメントの役割」(湯山茂徳氏)、「地域ブランドに関する法律について」(野崎雅人氏)、「投資協定の利用により保護される投資家の範囲」(牧野達彦氏)、「MBAコースで、パブリック・リレーションズ教育に挑戦する」(北村秀実氏)など学会員の優れた研究成果の発表が行われます。

グローバルビジネス学会(理事長:小林潔司 京都大学大学院教授/会長:丹羽宇一郎 前中国大使、伊藤忠商事前会長)は、グローバルビジネスに関する研究発表、知見や知識の交換、会員相互および内外の関連学会と連携強化を図ることにより、国内経済の活性化はもとより、世界経済の発展に寄与する人材育成を目的に学術団体として20012年4月に設立されました。

当学会が主催する第1回全国大会は一昨年、今回と同様に早稲田大学国際会議場(井深大記念ホール)において「多極化におけるグローバリゼーション」を統一テーマに開催されました。

第2回全国大会」は昨年、「日本型クリエイティブサービスのグローバル化―世界に広がる日本のおもてなし」を統一テーマに京都大学を会場に開催。

現在、第3回目の開催準備を進めている最中ですが、「国内経済の活性化はもとより、世界経済の発展に寄与する人材育成を目的」とした当学会の役割やプレゼンスの高まりを皆さんと共有できれば幸いです。

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■グローバルビジネス学会「第3回全国大会」への
 参加申込み

日時・会場:
7月4日(土)早稲田大学国際会議場(井深大記念ホール)
7月5日(日)早稲田キャンパス3号館 701号室/702号室
※全国大会の詳細プログラムについては、
http://s-gb.net/news/1539 を参照ください。

参加費と参加申込み (定員制)
・学生:大会参加費 無料/懇親会3,500円                           
・一般:大会参加費5,000円/懇親会5,000円
・会員:大会参加費4,000円/懇親会5,000円
※参加申込みは同学会のホームページ
http://s-gb.net/ )の
「申込みフォーム」をご利用ください。

投稿者 Inoue: 17:19 | トラックバック

2015年03月26日

次世代のリーダーのために
〜早稲田大学「パブリック・リレーションズ」最終講義

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

気象庁は23日、東京の標準本となっている靖国神社の桜が開花したと発表しました。平年より3日、昨年より2日早い開花だったとのこと。いよいよ本格的な春の訪れですね。

開花を前にした3月14日は、早稲田大学における私の最終講義日でした。

最終講義には、受講生のOB/OGや現役大学生、関係者が聴講し、90分の講義を行いました(写真1)。講義後は懇親会(写真2)や二次会を催していただき、私にとって想い出深い一日となりました。

            写真1

            写真2

■これまで延べ2000人の受講生
「本コースは学際的視点に立った、従来型の広報とは異なる、幅広い、奥行きの深い、日本で初めての本格的なパブリック・リレーションズ(PR)の授業で、理論、知識、実践(技術)力に加えそのスピリットを修得します。」

これは、開講に当たり「早稲田2004年前期シラバス」に記された講義要綱です。また、その学習目標として次のようなことを掲げました。
                  
             ◇
「パブリック・リレーションズの学習を通して次世代を担う、自立した、戦略性を保有する、知的かつ行動的な、日本人の社会性を強化するコミュニケーション手法を学ぶ。言い換えれば、国際社会で活躍できる、21世紀のリーダーとしての資質を高め、『双方向性コミュニケーション』と『自己修正能力』を体得させることを目標とします。」
             ◇

こうした目標を掲げ、2004年4月?2015年3月まで1年間を前期・後期に分け、「次世代のリーダーのために」をテーマに「パブリック・リレーションズ概論」と「パブリック・リレーションズ特論」2つの科目の教鞭を執ってきました。

「特論」の総仕上げの7月は、早稲田キャンパスを離れ、鴨川や伊豆川奈のセミナーハウスで講義と3時間に及ぶプラニング・テストを行いました。参加者全員でバーベキューや海水浴を楽しんだことも懐かしい想い出となっています。

早稲田では、商学研究科や公共経営研究科など大学院でも教鞭を執りましたが、12年間に及ぶ授業を通して、これまで延べ2000人の教え子が社会に巣立っていきました。

■多彩なゲスト講師
授業には、内外で活躍する経営者やジャーナリスト、アカデミアンなどの分野から著名人を招き、パブリック・リレーションズが組織体にとって如何に重要となるかについてケーススタディを通して実践的なお話をいただきました。

こうしたゲスト講師を迎えた授業も本講座の特長であり、受講生からも大変喜ばれました。

毎年200名に及ぶ受講生が登録する「概論」では、大星公二さん(NTTドコモ相談役、前会長CEO)、大竹美喜さん(アメリカンファミリー生命保険会社創業者・最高顧問)、古川貞二郎さん(元内閣官房副長官)、丹羽宇一郎さん(前伊藤忠商事取締役会長・前中国駐在特命全権大使)、北山 禎介さん(三井住友銀行取締役会長)、ウイム・ロレンツさん(Wim Roelandts, CEO, Xilinx Inc.)アレン・マイナーさん(Allen Miner, Chairman & CEO, SunBridge Corp.)。

北川正恭さん(早稲田大学院公共経営研究科教授・前三重県知事)、橋本 大二郎さん(慶應義塾大学特別招聘教授 ・前高知県知事)、下村 健一さん( 内閣官房内閣審議官・内閣広報室)、今は亡き池田守男さん(資生堂会長)ら多数のゲスト講師が、私の授業に彩りを添えてくださいました。(※肩書は当時のものです。)

またゼミ形式の「特論」では、ジャーナリストでは山田厚史さん(朝日新聞編集委員)、高木徹さん(NHKディレクター)などにもお世話になりました。

一人ひとりのゲスト講師のお顔や講義内容に想いを馳せ、改めて心より感謝の念を深めています。

この紙面を借りて謝意を表させていただきます。本当にありがとうございました。

加速するグローバル化のなか、民族問題、環境問題、領土問題、貧困格差問題などさまざまな問題や課題を抱える世界にとってそれらの解決のためには複合的な視点をもつパブリック・リレーションズの活用が強く求められています。

インターネットの普及は劇的に世界の枠組みを変えようとしています。2極分化から急速に変容した多極化の流れは、国家間の調整を困難なものにし、個人がこれまで以上に政治や経済活動に影響を与え、組織体にとっての統治がより困難なものとなってきています。

こうした国際環境にあって、複合的視点を持つ、インターメディエーター(仲介者)としてのパブリック・リレーションズ(PR)実務家へ課せられた責務はますます重大なものとなってきています。そして私の教え子達が新しい日本の担い手になってくれることを心より期待しています。

これからは、幼児教育への「絆(きずな)教育」の普及にも力を入れていきたいと思います。

最後に、最終講義に当たり、彼らに贈った辞をご紹介します。


              ◇
         次世代のリーダーたちへ

         あなた方、ひとり一人が
    パブリック・リレーションズを実践することで
    日本を、そして世界を変えることができます。
              ・
       不透明さが拡がるこの日本や世界を
           平和で希望のある
           社会に変えるのは、
           あなた自身であり
       パブリック・リレーションズの力だと
           私は信じています。

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2014年10月16日

「絆(きずな)教育」
〜日本の明るい未来を拓くヨコミネ式

こんにちは、井之上喬です。

日本社会にパブリック・リレーションズ(PR)を根付かせたいとの一念で、2005年4月に始めたこのブログもお陰さまで今回、500号を迎えることになりました。

週一度のペースで発行してきた井之上ブログ。読者の皆さんには、いつもご愛読いただき誠にありがとうございます。これからも平和で希望ある社会づくりを目指すパブリック・リレーションズの一環として、引き続きブログの発行に注力して参ります。ご支援くださいますようお願いいたします。

このブログの100回記念(2007年2月17日)ではパブリック・リレーションズ(PR)の先進国、米国で1952年に発刊され、半世紀以上を経た今日も世界中で愛読されて第10版を重ねる『Effective Public Relations』を紹介しました。

200回記念(2009年1月17日)では日本文化とパブリック・リレーションズの接点として「絆(きずな)」をテーマにし、教育について話しました。

300号記念(2011年1月24日)では、政府や国民、政治家と有権者とのリレーションシップ構築の象徴ともいうべき「マニフェスト」についてお話しました。

400号記念(2012年10月1日)では、このブログがスタートしてからの7年半の間に起きたさまざまなことに触れました。内外の経済、政治の移り変わり、また私事になりますが自著の出版や早稲田大学に次いで京都大学でも教鞭を執ることになったこと、そして東日本大震災福島原発事故などでした。

500号を記念して今回は、私が日本の将来にとって最も重要と考える教育、それも「幼児教育」をテーマに採り上げました。

■横峯吉文さんとの出会い
横峯さんを初めて知ったのは2010年、偶然にフジテレビの番組「エチカの鏡」を観ていたとき。

画面には、自分の背丈より高い跳び箱を跳んだり、逆立ち走行したり、小学校で習う、読み書き、ソロバンができたり、また生来持っている子は極めて少ないとされる「絶対音階」をほぼ全員が持っていたり、毎朝かけっこや本を読ませたり(卒園まで1000冊以上読む)、私はその映像に強烈なショックを受けました。

私が2004年から早稲田大学で、これからのグローバル社会で必要となる、日本に馴染みのないパブリック・リレーションズ(PR)の普及のために、「パブリック・リレーションズ論:次世代のリーダーのために」をスタートさせたのも、「個」のしっかりした、「人間力」ある人材育成が重要と考えたからでした。

一方授業を始めて10年が経過した現在、グローバリゼーションは私たちの予想を超え猛スピードで進行しています。パブリック・リレーションズはグローバル社会の基盤と考える私にとって、その一刻も早い導入を考えた場合それは幼児期からの導入が喫緊と考えるようになりました。つまり大学や大学院だけでの教育では遅すぎるということでした。

パブリック・リレーションズは目的(目標)達成のための「リレーションズ活動」、すなわち「関係構築活動」です。「絆づくり」を、他の言葉に置き換えると、「関係構築活動」とすることができます。

「関係構築」という言葉は、子どもの世界には似合いません。したがって、幼稚園(保育園)、小学校、中学校において、パブリック・リレーションズの概念を伝える際は、「きずな教育」という言葉に置き換えるとしっくりきます。「絆づくり」はその真髄においてはパブリック・リレーションズそのものだからです。

そんなこともあって、父の郷里を訪ねた昨年12月の暮れも押し迫った頃、鹿児島志布志市に本拠を構える横峯さんに電話を掛けたのでした。幼児教育の話で1時間があっという間に過ぎ、ご本人とお会いしたのは新年早々の1月。

志布志のヨコミネ式保育園を初めて訪問したのは、今月台風18号が直撃する最中。社会福祉法人純真福祉会理事長をつとめる横峯さんが運営する、市内3つのヨコミネ式直轄保育園を訪れました。

そこにはエチカで紹介された世界がありました。先生が一方向で教えるのではなく、自学自習という、自らがそれぞれのスピードで学習する方法でのびのびと勉強する姿に引きこまれます。

音楽好きな私が驚いたのは、年長組の楽器演奏の時間で「Sing Sing」というスイング・ジャスの曲を約20名の園児がそれぞれ、キーボード、パーカション(ドラムス、タンバリン)、マリンバなどの楽器を使い見事に演奏していたことでした。

「ヨコミネ式はスパルタ教育」、「詰め込みすぎ」といった批判もあるようですが、実際現地で見る限り、子どもは明るく、自由に楽しみながら学んでいます。

他の園で断られた、ダウン症や小頭症、未熟児で生まれ難病を抱える幼児を預かり根気強く見事に改善させているその教育姿勢には感動すら覚えるのでした。

市から経営を引き継いだときには10名足らずの園が、7-8年で100名を超える園児を抱える園になったというのも頷けます。

横峯吉文さんは、プロゴルファーの横峯さくらさんの叔父さん。横峯さんとは、同じ鹿児島の血を継ぐ私にとって特別な「縁」を感じます。昨年暮れに初めて横峯さんと電話で会話をし、今月、鹿児島県志布志市の「伊崎田保育園」で別れたのが10月7日。そして翌々日の9日、偶然私も関係する、「ふるさとテレビ」主催の「ヨコミネ式教育法」(会場:衆議院第一議員会館)講演会でお目にかかることともなったのです。

■すべての子どもは天才
ヨコミネ式教育は、「すべての子どもが天才である。ダメな子なんて一人もいない。」「すべての子どもが天命をうけてこの世に生まれて来た。その天命を最大限に発揮させたい。」という理念に基づくものです。

ヨコミネ式教育法の究極の目的は「自立」。自立とは、「自ら考え、自ら判断し、自ら行動・実践すること」としています。

子どものやる気を起こし、子どもの持つすばらしい才能を開花さるため、「読み・書き・計算・体操・音楽」を通して、「学ぶ力」・「体の力」・「心の力」をつけさせ、生まれ持っている「可能性」を最大限に引き出すといいます。

この「ヨコミネ式」は、現在では国内で350を超える保育園、幼稚園や学習軸塾で「ヨコミネ式」が導入され、海外へも拡がっているとのこと。

「過保護でしかも無関心な社会になっている。おじいちゃん、おばぁちゃんや両親が子どもを甘やかし、保育園や幼稚園がチヤホヤし、よってたかってわがままな子どもをつくっている。」。こうした過保護が不登校・ひきこもり・家庭内暴力・思春期を乗り越えられない要因となっていると説いています。

また、「先生は教えているつもりでも、子どもは押し付けられていると感じている。もっと子どもの自立性を尊重すべきだ。」など、子どもの目線から教育を考える姿勢は一貫していて、とても説得力があります。

特に講演会で話す横峯さんの口調は、同郷で同世代でもある綾小路きみまろ調のアクティブでウィットに富んだお話しぶりは、笑いあり、ため息ありで最後まで飽きることなく聴衆を魅了し引きこまれます。

先に紹介した、「エチカの鏡」で「ヨコミネ式」が紹介された時は、当時のエチカ史上最高の視聴率を記録したようですが、頷けるはなしです。

35年間幼児教育に力を注いできた横峯さんとの出会いは、私に幼児教育への重要性を確信させてくれました。

この夏から、「きずな教育」を如何に「ヨコミネ式」に組み込むか、まず横浜にある北寺尾むつみ保育園(ヨコミネ式)で鹿児島で小学校校長をやっていた長深田悟園長とのコラボレーションが始まりました。これまでのヨコミネ式幼児教育に「コミュニケーション能力」と「自己修正能力」を有する、「きずな教育」がどのようにバランスされるかいまから期待に胸を膨らませています。

このように、「絆」とパブリック・リレーションズが結合・合体することで、日本社会でパブリック・リレーションズがより広く科学的に理解されるのではないかと考えています。

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2014年09月18日

グローバルビジネス学会新会長に丹羽宇一郎氏が就任
?経営と外交経験から得た優れた国際感覚

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

私が副会長を務める学術団体グローバルビジネス学会(事務局・東京都新宿区)の新会長に丹羽宇一郎氏が9月1日付で就任されました。今回は丹羽新会長のプロフィールや就任の抱負などを紹介します。
丹羽新会長は、1962年3月に名古屋大学法学部卒業し、同年4月に伊藤忠商事株式会社に入社。入社後は主に食料部門に携わっています。同社業務部長を経て、1992年に取締役就任。常務取締役、専務取締役を経て1998年4月に代表取締役社長、2004年に会長に就任しています。社長時代は経営危機あった同社を立て直し、中興の祖と言われる名経営者です。

2010年6月?2012年12月の間は中華人民共和国駐在特命全権大使。2013年4月には早稲田大学の特命教授に就任。2006年10月?2008年10月経済財政諮問会議民間議員、2007年4月?2010年3月地方分権改革推進委員会委員長を務めています。

主な著書に『人は仕事で磨かれる』(文集文庫刊、2008年)、『負けてたまるか!若者のための仕事論』(朝日新書刊、2010年)、『北京烈日』(文藝春秋刊 、2013年)、近著の『中国の大問題』(PHP新書、2014年6月)など多数。

■ヒューマンで公正無私な行動派
近著の『中国の大問題』では「感情に流されて、14億人の巨大市場をみすみす捨てることこそ、彼らに資するだけだろう。」と国益を最優先する考え方をシンプルに説いています。

丹羽さんは、伊藤忠時代に北京市、江蘇省、吉林省などの経済顧問を歴任。大使時代には33ある1級行政区のうち27地区を視察し、チベット自治区を公式訪問した最初の日本大使としても知られています。

領土問題と靖国問題。2つの難題を抱える日中関係を好転させていくために中国の内情に精通している丹羽氏の卓見は傾聴するに値するものだと思います。

丹羽さんに私が初めてお目にかかったのは、昨年の11月。京都大学における学会全国大会での講演依頼が訪問の目的でした。柔和で端正、はっきりした口調で話をされる丹羽さんに強い印象を受けました。

たまたまお会いする数日前に、友人が事務局長を務める会「方正友好交流の会」発行の機関紙に丹羽さんの記事が掲載されていました。

方正(ほうまさ)県は東北中国の黒竜江省ハルビン郊外にあり、終戦直後の混乱期に約5000人の日本人開拓民とりわけ婦女子が力尽きて亡くなった地。

このことに心を痛めた当時の周恩来首相はその死を悼んで、中国政府唯一の日本人公墓として、日中国交回復の10年ほど前に慰霊碑を建立(1963年)したのでした。

機関誌によると、その方正公墓に当時の丹羽中国大使が公式訪問を願い出ましたが、折からの日本政府による尖閣国有化で日中関係が険悪な中、現地政府が安全上の問題で受け入れを拒絶。それでも現地訪問を強く望んだ丹羽大使は私人として身一つで、方正公墓訪問を果たしたのでした。

記事はさらに、丹羽さんが中国国内で日本人残留孤児の話を聞けば現地に飛び、彼らに面会したことなどを紹介。公人でありながらヒューマンな行動をとる丹羽さんに感銘を受けたのでした。

6月に出版された丹羽さんの著書『中国の大問題』(PHP新書)には、中国の抱える問題や今後の日中関係や日本の将来についてなど、深い洞察力で語っています。

ちなみにベストセラーとなっている『中国の大問題』の印税は全額、「(公社)日本中国友好協会」に寄付され、中国からの私費留学生への奨学金として使われているそうです。

社長時代から電車通勤を続ける、丹羽さんのその公正無私な考えと行動力に改めて尊敬の念を抱いたことを憶えています。

こうしたご縁もあってグローバルビジネス学会の第2回全国大会(2014年3月22日-23日、京都大学)では「日本の将来の核心は教育にある」をテーマに講演をお願いすることとなりました。そしてこの度は、新会長への就任をお願いし、快く引き受けていただきました。

■発展性ある学会への成長を目指す
丹羽さんは会長就任にあたり、「グローバル経済において成功するためのより専門的な知識や能力を持つ有能な人材を育成していくことが、今まさに必要とされるなかで、グローバルビジネス学会会長としての任務を喜んでお引き受けしました」と述べています。
「私は将来に関して楽観的な見解を持っていますが、その前提として、次世代の専門家が多くの知見を習得するため新たな手法や技術を学習し、幅広くグローバルに活躍する基盤を築いていくことを希望しています」とより発展性のある学会への成長を目指し、意欲的な抱負を語っています。
また、グローバルビジネス学会の小林 潔司理事長(京都大学経営管理大学院教授)は、「丹羽氏を新会長としてお迎えすることは、当学会にとって大変な栄誉であるとともに、将来に向けた明るい兆しでもあります。丹羽氏は、多くのグローバルなビジネスや外交官としての経験に加え学術的な専門知識などさまざまな知見を学会にもたらすことになり、当学会のミッションが成功するように導かれると確信しております。」と述べています。

グローバルビジネス学会( http://s-gb.net )は、2012年4月に設立されました。
グローバルビジネスに関する研究発表、知見や知識の交換、会員相互および内外の関連学会と連携強化を図ることにより、国内経済の活性化はもとより、世界経済の発展に寄与する人材の育成を目的にしています。
経営者としての国際ビジネスでの豊富な経験と外交官としての優れた国際感覚を合わせ持つ丹羽さんはまた、パブリック・リレーションズの重要性について深く理解した方です。

そんな丹羽さんとこれから一緒に仕事ができることに喜びを感じると共に、グローバルビジネス学会の舵を今後どのように執られるのか大いに期待されるところです。丹羽会長どうぞよろしくお願いいたします。

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2014年06月12日

3年目を迎えたグローバルビジネス学会
?総会特別講演は原丈人さんの「公益資本主義的経営」

皆さんこんにちは井之上 喬です。

梅雨入りとともに各地で大雨の被害が相次いでいます。これも地球温暖化の影響でしょうか。早くすっきりとした夏空に出会いたいものです。

私が副会長を務めるグローバルビジネス学会(SGB)は、6月6日に第2回年次総会を開催しおかげさまで3年目を迎えました。

■学会ジャーナルの発刊などで国内外への情報発信を強化
2年目の2013年度の主な活動内容をご紹介しますと、マンスリーセミナーではライフネット生命の出口冶明社長(当時社長)、三井住友銀行プロジェクトファイナンス営業部長のラジーブ・カナン氏、前高知県知事の橋本大二郎氏、前駐米大使の藤?一郎氏、株式会社シグマクシス代表取締役会長兼社長(元日本IBM副社長)の倉重英樹氏など国際経験豊かな皆さんから講演をいただきました。

また研究会では、グローバルビジネス法務研究会、人材開発育成研究会に加え、特別研究会として秋に「国際経済連携協定研究会(TPP研究会)」を立ち上げTPP交渉に関する緊急提言をこれまで2回にわたって行いました。

今年3月には、「日本型クリエイティブサービスのグローバル化 ?世界に広がる日本のおもてなし?」と題し2日間にわたる全国大会を京都(京都大学)で行いました。活動内容についてはグローバルビジネス学会のホームページ http://s-gb.net/ にアクセスしご覧になってください。

そして新たに評議員には、企業のレピュテーション・マネジメントの研究で著名な、米国ダートマス大学タックビジネス・スクールのポール・アルジェンティ教授を( http://s-gb.net/news/1011/ )またアドバイザリーには前中国大使の丹羽宇一郎氏をお迎えしました( http://s-gb.net/news/1228/ )。

3年目となる2014年度は、マンスリーセミナーに加え時宜を得た特別セミナー、全国大会の開催、研究会の実施などに加え内外の関連機関との交流・講演・シンポジウム、そして2015年1月刊行予定で学会ジャーナルの刊行を予定するなどさらに活動の幅を広げ、国内外に向けて情報発信していく計画です。

グローバルビジネス学会の今後の活動に注目してください。

■これからはアフリカの時代だ!
また年次総会の後には総会特別講演会として、原 丈人(はら じょうじ)氏から「グローバルーバルビジネスの新潮流 公益資本主義的経営とは」?米国型経営を乗り越えた新しい経営のあり方について?と題し、1時間ほどお話しをいただきました。
原さんは、慶応大学在学時からマヤ文明など中米考古学に興味を持ち研究を重ねる傍ら、27歳の時に渡米しスタンフォード大学院在学中シリコンバレー初の光ファイバー事業に成功。84年デフタ・パートナーズを創業し、米英イスラエルの革新的な技術を持つベンチャー企業への出資と経営を行っています。

世界第二位ソフトのボーランド、インテルと合併したOPLUS、サイバーセキュリティー大手フォーティネットなどを会長、社外取締役としてゼロから立ち上げたビジネス経験を持ち、2005年からはアジア、アフリカで情報インフラ整備、栄養改善事業に取り組んでいます。また、国連政府間機関特命全権大使、財務省参与など日欧米の公職を歴任している国際人であるとともに異色の経営者です。

原さんは、光ファイバーを使った大型ディスプレイ開発会社を作った29歳のころは、クリスマスの時期はクリスマスのない国、正月や旧正月などの時期にはそのような慣習がない国に移動し、休みを取らずに仕事をしたエピソードや、「お金がないならないなりの方法でやる」、「お金がないと知恵を使う」。「思い入れがあってこそビジネスは成功する」など自らのビジネス哲学を披瀝。さまざまなことに挑戦し続けている原さんの熱き思いがひしひしと伝わってくる講演でした。

また彼は「人口の多いところでビジネスを作る、つまりこれからはアフリカだ」と断言し、今世紀中に世界人口は100億人に達し、アフリカ人は30%を超えるとする人口予測を紹介しています。

そして原さんは、多くのビジネスマンが注目しているアジアではなく、軸足をアフリカに置き栄養不足の改善、マイクロファイナンスの促進そして日本からの事業促進投資の拡大プログラムに取り組んでいます。

まずビジネスを創出し儲かったお金で栄養不足を改善、そして教育を充実させ自立家、起業家を育成するとし、アフリカではすでに牛肉に含まれるタンパク質をはるかに上回る、栄養豊富な藻スピルナの培養にも成功しているとしています。
原さんはグローバル人材の要素として、1)多様性を受け入れること、2)前向きで楽天的であること、そして3)物事の在り方、理念教育を受けていること、を挙げていました。

あまり大柄ではありませんが、若いころから世界を股にかけて常に新しいビジネスに取り組んできたエネルギッシュな、人を惹き付けてやまない原さんの人柄に接した貴重なひと時でした。

実は原さんとはこの春に、ご本人が最高顧問をつとめる一般社団法人公益資本主義推進協議会(代表理事:大久保秀夫フォーバル会長)の有識者会議で初めてお会いしました。

この協議会はこれまでの金融資本主義から、「企業は社会の公器であり、企業活動の目的は利潤の追求のみならず公益に資すること」とする「公益資本主義」への転換を目指し、日本起点の根本原理を考案・実行する組織で私も大いに賛同しています。

東北大震災を契機に設立され、3年目を迎えたグローバルビジネス学会は、小林潔司理事長、大竹美喜会長ともども、今後も時代の先を読む先進的かつ羅針盤的な役割を担ってまいりたいと思っています。

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2014年04月04日

グローバルビジネス学会、京都での第2回全国大会成功里に終了 ?統一テーマは「日本型クリエイティブサービスのグローバル化?世界に広がる日本のおもてなし」

皆さんこんにちは井之上 喬です。

新会計年度を迎えたのと時を同じくして、東京の桜は一気に開花しソメイヨシノは満開に咲き誇っています。会社近くの名園・新宿御苑の桜も今週が見ごろで多くの人達が桜を愛でに訪れています。私が経営する井之上パブリックリレーションズでは、弁当付き花見を新宿御苑で行うのが恒例となっています。日本人にとって心うきうきする季節ですね。

先月、私が副会長を務めるグローバルビジネス学会の第2回全国大会が、場所を昨年の早稲田大学から京都大学に移し、3月22日(土)と23日(日)の2日間にわたり開催されました。


■京都ならではの嗜好も
今回の統一テーマは「日本型クリエイティブサービスのグローバル化?世界に広がる日本のおもてなし」。共催は京都大学経営管理大学院で、初日の会場は芝蘭会館(稲盛ホール)、2日目は吉田キャンパス総合2号館でプログラムされました。

後援は、今回から外務省が新たに加わり、経済産業省、中小企業庁、日本貿易振興機構(JETRO)、独立行政法人中小企業基盤整備機構、公益法人日本ニュービジネス協議会連合会、財団法人アジアフードビジネス協会、日本ベンチャー学会、特定非営利活動法人日本教育再興連盟。

初日は橋本大二郎氏(グローバルビジネス学会評議員・慶応義塾大学特別招聘教授)の総合司会で進められました。京都市の「京都観光おもてなし大使」を務める妙心寺退蔵院副住職の松山大耕氏による基調講演に始まりました。ちなみに退蔵院は宮本武蔵ゆかりのお寺です。

続くパネルディスカッション「関西流おもてなしとグローバル市場」ではパネリストに松山氏のほかに、井上勝之氏 (公文教育研究会 経営企画室 室長)、輿水精一氏 (サントリー酒類株式会社ブレンダー室チーフブレンダー)、村山卓氏(株式会社ユー・エス・ジェイ マーケティング本部営業部ジェネラルマネジャー)といった関西系企業で活躍する方々を迎え、モデレーターの前川佳一氏(京都大学経営管理大学院特定准教授)のもと関西流とグローバルと言う、ユニークなテーマ設定のもとさまざまな分野で活躍している皆さんのディスカッションは示唆に富んだものでした。

松山氏の「茶道で言う『お点前』を超えたところに日本型の良さがある。型を知ってそれを超越する『型破りな企業』が京都に老舗が多い理由なのかもしれません」との分析は非常に興味深いものでした。

また、午後の部では笹谷秀光氏(伊藤園取締役CSR推進部長)による「グローバルな共有価値創造戦略?伊藤園のお茶のおもてなしと世界のティーカンパニーへの取組みを例として」、田中秋人氏(アジアフードビジネス協会理事長)の「日本型クリエイティブサービスとアジア展開」、グレゴリー・クラーク氏(多摩大学名誉会長)の「日本文化と経営」そして丹羽宇一郎氏(前伊藤忠商事会長)による「日本の将来の核心は教育にある」など内外で活躍する各界を代表する有識者の講演などが行われました。

初日の最後は、小林潔司京大院教授(当学会理事長)と坂田優子さんによる、祇園の紹介といま人気No.1の舞妓紗月さんの日本舞踊が披露されるなど、京都ならではのプログラムも組まれました。

■さまざまな分野で熱い議論を展開
2日目は、グローバルビジネス学会員による12の研究発表と1つの特別セッションが行われました。

研究発表は6つのカテゴリーに分けられ6名の担当座長が進行を務めました。
『エネルギー問題とグローバル化』では、日本を代表する水素研究者の山根公高氏の「水素エンジンから見た液体水素燃料の有効性、安全性と多量生産・移送の可能性」、そして仏エネルギー会社TOTAL-FINA-ELFの前極東代表de Mestier, Hubert氏の「An Energy Mix Strategy to Secure Japan's Future in the Global Economy」

また『ものづくりのグローバル展開』では、サンヨーの宮本琢也氏の「総合電機メーカーの研究開発体制の歴史的変遷」、前関西学院大学院教授の北村秀実氏の「日本企業のグローバル化を支える3つのチカラ」。個人的には北村さんの提示する3つのチカラの重要な要素として位置づけられる「パブリック・リレーションズ(PR)」の捉え方に関心を持ちました。

さらに『グローバル化時代におけるエンタテイメント』では、京都大学院特命教授の湯山茂徳氏の「エンタテインメントの原理」、「グローバルビジネスにおけるエンタテインメントの役割」。

『グローバル化に向けた組織整備』では、京都大学生の戸村翔一氏の「大学生組織における人材育成並びにチームビルディング」また出雲市役所の三加茂圭祐氏の「地方におけるインバウンド・ツーリズムの推進に向けて」。

『地域・文化のグローバル化への影響』では大学教授の朴熙成氏の「韓国化粧品ODM/OEM企業のグローバル化に関する一考察」、前メリアルジャパン社長のMichel Lachaussee氏の「Managing a foreign company in Japan: lessons for Japan’s business transformation」

『投資・社会制度とグローバル化』では国際弁護士井上葵氏の「投資協定仲裁の発展と課題」、そして元マッキンゼー、現AZCA, Inc.社長の石井正純氏の「シリコンバレー・エコシステム の活用による日本企業のコーポレートベンチャリング」などグローバル化をテーマにしたさまざまな講演が行われました。

また私がモデレーターを務めたTPPフォーカスの特別セッション「国際経済連携協定研究会?日本はTPPにどう取り組むべきか?」では、4月のオバマ大統領来日前の日米政府間による最終的協議が行われる中でのセッション。

昨年秋にスタートさせた研究会では、これまで2回にわたってTPP交渉に関する緊急提言を行っています。

近藤剛氏 (研究会座長:伊藤忠商事株式会社理事、元日本道路公団総裁)による中間報告の後、同氏を加えたパネルディスカッションにはGreenwood, Jr., C. Lawrence氏(元APEC米国大使)、林康夫氏(JETRO顧問/元JETRO理事長)、中野憲一氏(弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所)、浅川芳裕氏(ジャーナリスト・山口大学農学部非常勤講師)を迎え、農業自由化に集約した活発な議論が展開されました。

紙面の都合で多くをご紹介できないのが残念ですが、この2日間の大会は、私に多くの収穫をもたらしました。

特に印象に残った話は、松山副住職の京都にある老舗企業の話です。

創業200年以上の老舗企業が3000社強と世界でも断トツの日本のなかでも京都の占める割合は4%で日本一だそうですが、松山副住職はその背景について覚醒的な話をしてくれました

「常にお客様を向いている。継続を最優先に優秀な人材を常に採用し続けてきた。本業で社会に貢献するCSRを重視する企業観。超長期的視点。人間を主体とした経営観」などが企業の持続性を支えているとしています。

この話は、企業経営においてこれまでの人材をコストとみなし、利益やプロセス・手順を重視する「アルゴリズム型経営」から、人材を資産とし従業員を大切にした「社員の成長は会社の成長」とする新経営概念、「ヒューリスティック型経営」に他ならないと感じさせるものでした。

古臭いと感じる老舗企業の経営こそ、今の日本企業の閉塞感を脱する一つの解があるように感じました。

そう言えば京都を拠点とする企業の経営者には、パブリック・リレーションズ(PR)に欠かせないストーリテリングができる経営者が多い気がします。古都京都に日本の未来の方向性を見た2日間でした。


――――――――――――――――――――――――――
グローバルビジネス学会にご興味のある方は是非下のHPにお立ち寄りください。
また、学会への入会お申し込みは下記アドレスで受付けています。
皆さんの入会をお待ちしています。

■グローバルビジネス学会ホームページ:http://s-gb.net/
■入会申し込み先:http://s-gb.net/admission/form1/

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2014年02月28日

グローバルビジネス学会、第2回全国大会を京都で開催 ?統一テーマは、世界に広がる日本のおもてなし

こんにちは、井之上喬です。

私が副会長を務める学術団体グローバルビジネス学会(The Society of Global Business)は、「日本型クリエイティブサービスのグローバル化―世界に広がる日本のおもてなし」を統一テーマに3月22日と23日両日にわたって京都大学を会場に第2回「全国大会」(大会実行委員長:小林潔司京都大学大学院教授)を催します。京都大学経営管理大学院が共催します。

同学会は、グローバルビジネスに関する研究発表、知見や知識の交換、会員相互および内外の関連学会と連携強化を図ることにより、国内経済の活性化はもとより、世界経済の発展に寄与する人材育成を目的に2012年4月に設立されました。

第1回「全国大会」
は「多極化におけるグローバリゼーション」を統一テーマに、昨年3月、2日間にわたって早稲田大学の井深大記念ホールを会場に開催されています。

■京都ならではのプログラム
第2回「全国大会」の初日(3/22)は、京都市の「京都観光おもてなし大使」を務める妙心寺退蔵院の松山大耕副住職による基調講演。続いて統一テーマに合わせ、パネルディスカッション「関西流おもてなしとグローバル市場」では、公文教育研究会やサントリー、ユー・エス・ジェイなどからのパネリストによるディスカッションが行われます(モデレーター:前川佳一 京都大学経営管理大学院特定准教授)。

また丹羽宇一郎前伊藤忠商事会長・前中国大使やグレゴリー・クラーク多摩大学名誉学長、田中秋人 アジアフードビジネス協会理事長(前イオン専務)など各界を代表して内外で活躍する有識者の講演が行われます。

そして京都ならではのプログラムとして、坂田優子さんと舞妓の紗月さんによる「祇園のおもてなし」も組まれています。

■「日本経済とTPP」
2日目は、学会員による「研究発表会・特別セッション」が行われます。まず研究発表のテーマは大きく「エネルギー問題とグローバル化」や「ものづくりのグローバル展開」、「グローバル化時代におけるエンタテイメント」、「地域・文化のグローバル化への影響」、そして「投資・社会制度とグローバル化」などに大別され、12名の発表者による発表が行われます。

学生から豊富なキャリアをもつ内外のビジネスマン、学者まで、多彩な顔ぶれによるユニークで斬新な発表が期待されます。

一方、環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する12カ国による閣僚会議は、25日、妥結時期の目標を設定できないまま閉幕しましたが、2日目にはこうした停滞するTPP交渉や日米対立などの現実を踏まえた「特別セッション」も行われます。

このセッションは、昨年9月に当学会の常設研究会でスタートした、「国際経済連携協定研究会」(別称:TPP研究会)によるもので、テーマは「日本経済とTPP」。

研究会座長の近藤剛氏(元道路公団総裁)や副座長のローレンス・グリーンウッド氏(元APEC米国大使)、顧問の林康夫氏(元JETRO理事長)などが登壇し、活発な議論が期待されています。なおこのセッションのモデレーターは私が務めます。

<詳細プログラムと参加費(定員制) >
今大会の詳細プログラムと組織体制については( http://s-gb.net/nationalcon_2nd/ )、
また、参加申込みは同学会のホームページ( http://s-gb.net/form_nc_jp/ )の「申込みフォーム」をご利用ください。
《参加費》
・一般:大会参加費10,000円/懇親会5,000円
・会員:大会参加費5,000円/懇親会5,000円
・学生:大会参加費 無料/懇親会3,500円

この時期の京都は天候にもよりますが、桜が楽しめるかもしれません。皆さん、この機会に是非京都に出向かれませんか? 心よりお待ち申し上げています。

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2014年01月30日

地球儀的な感覚を!
?多様性こそ真のグローバル化の源泉

皆さんこんにちは井之上 喬です。

新年を迎えたばかりと思っていたら、今週土曜日には早や如月(2月)を迎えます。一日おきに寒い日と暖かい日が交互に訪れる不順な天候が続いていますが体調は大丈夫でしょうか。

首都圏でのインフルエンザは、ここ1?2週間がピークとの予想もあります。外から帰ったら手洗い、うがいを励行しましょう。

■2人のミスターNHK
今週はNHKの籾井勝人(もみい かつと)新会長の就任記者会見での従軍慰安婦問題、尖閣諸島などの領土問題、靖国神社参拝、国際放送などに関する発言への批判が噴出したことは皆さんもご存知だと思います。

国際経験を買われてのNHK会長就任でしたから、会見での一連の発言には残念ながらクエスチョンマークがつきましたね。どのようなトップにも新しい環境でのメディア・トレーニングは必須ですが、受けていたのでしょうか。

偶然ですが先日私が副会長を務めるグローバルビジネス学会では、第18回のモーニングセミナーを開催しましたが講師はかつて“ミスターNHK”と呼ばれた国際ジャーナリストの磯村尚徳(いそむら ひさのり)さんでした。

国際ジャーナリストとして日欧米で講演活動などに活躍中で、2013年3月にはNHK特集番組、テレビ60年「磯村尚徳さんと語る報道番組」「あの時世界は」が放送されましたのでご覧になった皆さんもいらっしゃると思います。

当日は84歳とは思えない現役当時と変わりないダンディさと語り口で、1時間を超える講演を立ったままで行っていただきました。

テーマは「グローバル化の落とし穴 ?アメリカの知的ヘゲモニー」で話の内容は、“赤と白”、Coin laundry for brain、米国の知的ヘゲモニー、そして理想のグローバル人材、の大きく4つの流れで構成されていました。

欧州での豊富な経験とジャーナリストの視点からのお話は、われわれ日本人の一般的な考えともいえる米国中心のグローバル化に対し一石を投じた内容であり、私にとってはこれまでのグローバル化に対する考えをもう一度見直したいと思わせるような内容でした。

冒頭の“赤と白”では昨年就任したフランシスコ教皇(ローマ法王)を、白衣を着た革命的な聖職者と紹介し、権力の象徴である玉座を廃止したり、教会の腐敗を批判したり、いわゆるグローバル化は「人を殺す経済である」であると堂々と批判し庶民に大人気であることを紹介してくれました。

さらに、“Greed is good”(物欲第一主義)の市場主義に引導を渡したことなど、日本のマスコミではなかなか報道されないような欧州の常識も披露していただきました。

また、Coin laundry for brainではIT革命により、いつでもどこでも、だれでもが同じような情報の平坦化状態にあるように感じられますが、「それはコインランドリーでずっと洗われているから」で、日々の膨大な情報は実は米国系の4つのメガメディアから出ているとしています。

これら4つのメガメディアは、マードック氏率いるニューズコーポレーション、CNNなどが加盟するタイムワーナー、そしてディズニー、グーグルで、そしてその背後には米国政府が存在するとした世界のメディア構造を指摘していました。

■情報の洪水に流されるな!
さらに昨年スノーデンの暴露でベールを脱いだNSA(米国国家安全保障局)については、当初テロリスト対策を名目に組織されはしたがCIAの3倍の予算で修士以上の職員3万8000人を擁していると語りました。

NSAが世界中の人々の情報を収集、解析していることは独メルケル首相の携帯電話盗聴問題でも明らかで、唯一の超大国米国が“米国流のグローバル化”を統率していると鋭く指摘。

そのほかにもユーロ危機は、米国のヘッジファンドが引き起こした危機でギリシャなどの欧州は犠牲になったと、我々が日々接する米国中心のニュース報道視点とは異なる欧州の常識も披露していただきました。

最後に理想のグローバル人材のためには、「地球儀的な感覚」、「Another America(リベラルで知的で良質なアメリカと組む)」、さらに「米国だけが留学先でない」と多様性がなければ真のグローバル化とは言えないと締めていただきました。

パブリック・リレーションズ
(PR)に関わる一人として、真実はどこにあるのか、情報の価値をどこに見出すのか、米国一辺倒のグローバル化なのか、多面的な視点をもつことの意味、日本が主体的なグローバル化とはどのようなものなのか、などについて改めて考えさせられる貴重な時間でした。

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2013年08月01日

京大MBAスクールが世界初の試み
?アジアにフォーカスしたグローバルビジネスリーダー育成

皆さんこんにちは、井之上喬です。

今日から8月に入りますが、4月から始まった私の担当する2つの講義が終わりました。

ひとつは、先日早稲田大学のオープン教育センターのゼミ形式授業「パブリック・リレーションズ特論」が千葉の鴨川での合宿を最後に終了。もう一つは、京都大学経営管理大学院の「アジアビジネス人材育成寄付講座」(Chair of Human Resource Development for Asian Business)です。

後者の京大ビジネススクール(MBA)講座は、今年4月から来年3月までの1年間にわたるもので日本の大手企業の俊英を受講生に今後急成長が見込まれているアジアでのビジネスリーダー育成を目的としています。

近年の国際環境は、米国のプレゼンスの低下や欧州経済の混乱により、先進諸国経済の先行きに不安を拡大させる一方、リーマンショックからいち早く立ち直ったアジア諸国の急速な成長と経済力拡大による「アジア市場の取り込み」は、進展するグローバル化の中でどの国の成長戦略にとっても必須要件となっています。

米国がアジア重視の姿勢を明確に打ち出した現在、日本企業がこれまでのアジアにおける事業活動を新たな次元に引き上げ、その対応力を抜本的に強化していくことは喫緊の課題になっています。
 
本講座ではアジア諸国の歴史や文化、ビジネス様式の理解と事業の企画・開発・推進、そして企業経営、社会貢献、人材育成、コミュニケーションなどの能力開発を通じて、日本とアジアの国々の経済・社会成長に資する受講生による日本型ビジネスモデル構築の実証研究が行われます。

講座の寄付者には三井住友銀行、野村総合研究所、大阪ガス、大林組、日本生命、三井住友海上火災、 富士ゼロックスが名を連ねています。

■世界初の現地ビジネススクールとの提携
本講座推進責任者で、経営管理大学院経営研究センター長の小林潔司教授は、「世界GDPのうち、非先進国が生み出すGDPは10年以内に50パーセントを突破する。 途上国の中所得者層の規模は2030年までに12億人規模に達し、途上国の中所得者層の人口が、アメリカ、ヨーロッパ、日本を合わせた総人口よりも大きくなる」と途上国とりわけアジア重視を強調。

また、「これまでの多国籍企業が1つの国際的デファクト標準(one-size-fits-all standard)を巡って競争するモデルから、それぞれの国の実情にあった新しいしなやかな標準 (one-finds-own-size standard) モデルが求められており、それぞれの国とのアライアンスに基づいて共同開発する戦略が求められている」と前述の新しいモデル構築の必要性を説いています。

本講座では、アジア各国の有力大学や現地ビジネススクールをはじめ行政機関、企業との連携やネットワーク構築を通し、効率的かつ迅速な人材育成教育の実現を目指しています。

そのために、アジア主要国のビジネススクール、政府機関、現地企業等から26名に及ぶ講師陣を招聘して、アジアビジネスをリードする卓越した人材育成のための教育カリキュラムを組み、教材の開発も進めています。

カリキュラムでは、英語集中研修や4つのテーマ(各国の状況、リーダーシップと人材管理、CSRパブリック・リレーションズ)を含むコアコンピテンシー集中講義を行います。

加えて受講生がアジア各国(初年度はタイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、インド)に滞在し、現地企業・政府機関等との人脈構築、現地ビジネス環境などのフィールドリサーチを行う計画です。

この講座の特徴は、世界でも初めての試みとなる、現地ビジネススクールとの提携です。

講座の重要部分は現地でのインターンシップですが、現地でトップを走る提携先の拠点大学を経由して現地企業でインターンシップを行い、これまで取引先や日系社会としかネットワークを持たない日本企業が相手国大学を経由することにより、通常のビジネス活動では展開できないネットワーク形成を可能としています。

■京大ビジネススクールが西日本でトップ
社会人の間で「学び直し」への意欲が高まるなか、MBA(経営学修士)を取得できる大学院が関心を集めているようです。

日本経済新聞社と日経HRは昨年から「ビジネスパーソンが通ってみたいMBA大学院」について、「ビジネススクール調査」を実施しています。

今年は、全国の20?40歳代を中心とするビジネスパーソン1715人を対象に同調査を行っています。

その結果、首位は東日本が慶應義塾大学大学院の経営管理研究科(1477点)、西日本は京都大学経営管理大学院(1753点) が、2年連続して選ばれています。

東日本の2位は早稲田大学大学院商学研究科(1048点)、3位は一橋大学大学院商学研究科(841点)。西日本の2位は神戸大学大学院経営学研究科(1200点)、3位は同志社大学大学院ビジネス研究科(688点)。

私は前述した京大のアジアビジネス人材育成寄付講座で前述の4つテーマのひとつである、「グローバルビジネスの基盤としてのパブリック・リレーションズ」をテーマに5回の講義を担当しました。

グローバルビジネスの基盤となるパブリック・リレーションズ(PR)とは何か、また混沌とする社会にあって何故必要とされるのか、その背景をグローバルな視点で受講生の理解を深めることが主眼でした。

企業や組織では人材不足に陥ると、企業側の視点に立った即戦力となる人材の確保に走りがちになりますが、多様性が求められるグローバルビジネス環境では、異なる相手を理解し自己を主張できる豊かな「個」の確立した、人間力ある人材が求められます。

パブリック・リレーションズは、目的や目標をスムーズに達成するために必要な、「倫理観」、「双方向性コミュニケーション環境」、そして、「自己修正能力」の3つのグローバルビジネス人材に不可欠な基本要素を併せ持った手法。

ダイバーシティ(多様性)は倫理観のある双方向性環境の中で有効となり、相互理解のない異文化間の衝突は、自らの修正に至らず、国家間の戦争にさえ発展しかねません。さまざまなステークホルダーとの良好な関係構築づくりを通してリレーションシップ・マネジメントが行なわなければなりません。

大手企業で次代を担う人材として推挙された受講生。米国ビジネススクールのように、1年間まるまる勉学に没頭できる環境の中での講義は、昼間社会人として働き夜間や休日に受講する日本型MBAスクールと異なり熱気溢れたものでした。

その勉学態度だけでなく新たな知識の吸収力や応用力などには目を見張るものがありました。近い将来、この講座の受講生からアジアやグローバル・ビジネスにおけるリーダーが輩出されるであろう手応えも感じることができました。

京大の強みであるフィールドリサーチや研究手法も取り入れ、小林教授のリーダーシップのもとでこれまでにない斬新な教育コースの開発や、それを実現するスピードと事業力が、京大MBAスクールを西日本でトップの座に輝かせた証左といえなくもありません。

私が日頃口にする「時流の潮目を読む先見性」を実感できるプロジェクトでした。

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2013年03月25日

グローバルビジネス学会 第一回全国大会開催
?10件の研究発表と講演・パネルで終了

こんにちは井之上喬です。

グローバルビジネス学会(SGB)の第一回全国大会が3月16日と17日の両日にわたって開催されました。「多極化におけるグローバリゼーション」を統一テーマに、数々の講演とパネルディスカッション、そして10件に及ぶ学会内研究成果の発表と討議が行われました。

世界経済の発展に寄与する人材の育成を目的としたグローバルビジネス学会は国際的学術団体。昨年4月に設立されて最初となる全国大会には、会場となった早稲田大学国際会議場の会議室(16日)と井深大記念ホール(17日)に、グローバルビジネスに関心の高い会員、一般参加者約250名が出席しました。

■ハイレベルな10件の研究発表とTPPセッション
初日の10の研究は、インフラ、知的財産、人材教育、競争力、新提案の5つのカテゴリーに大別され発表が行われました。

最初は、山根公高東京都市大学准教授による「水素エネルギー社会と水素自動車のグローバル化に向けて」。来るべく水素社会に向けて、技術的に優位性を持つ日本から世界普及の重要性についてさまざまな数値を用いて発表されました。

二番目は、日立の英国での鉄道事業における研究として、「英国鉄道ビジネス参入への挑戦」が山田千晶氏(日立製作所)から発表されました。同社がさまざまな試行錯誤を経て今日のビジネスモデルを構築したことを、検証を通して明らかにしています。

これ以外に、ビジネスのグローバル化が進む中で増加が予想される国際係争における国際仲裁について、中野憲一、原悦子弁護士(毛利・アンダーセン・友常法律事務所)による「国際取引と投資協定仲裁」の発表。

紙面の都合で、詳しくご紹介できませんが、他の発表では、渥美育子氏による「グローバル人材を測定するインデックス試論」、丸田力男氏による「日本産業のグローバル競争力の低下―その真因究明と改善策の提案」。

山川義徳・金井良太・岡宏樹・原良憲各氏による「オープンサービスイノベーションを支える脳科学の産業応用?文化多様性に適応するためのニューロITストラテジー」。

今回唯一の米国人ビジネスマンPaul LaValla氏による、“Death and Rebirth of the Domestic Economy”など、それぞれ独創的なテーマの発表が行われ、発表後の質疑応答は毎回時間切れの状態。

とりわけ興味深かったのは、学生会員による発表(大和田克:早大院、神谷貴大:中大、梅田知里:慶大)で、「世界情勢の変化と教育制度の転換―アイデンティティ確立こそ,今教育に必要だ」をテーマに、大学教育には宗教、哲学、歴史、とりわけ明治維新以降の日本近現代史の学習が必要であることを学生の視点で論じていたことです。

10件の発表の詳細については次の予稿集サイトにアクセスください。

http://s-gb.net/contents/sgb_1stcon.pdf

初日の16日には特別セッションとして、今最もホットな国際的な貿易問題であるTPPが討議されました。前日には、安倍首相が日本のTPP交渉参加を正式表明しただけに会場は熱気で満席。

セッション参加者は、渡邊頼純氏(慶応義塾大学教授)、近藤剛氏(早稲田大学特命教授/伊藤忠商事理事)、そして在日米国商工会議所のローレンス・グリーンウッド氏(U.S.-Japan Regional Leadership Committee共同議長/元APEC米国大使)の3名。

(写真:16日TPPセッション 右から渡邊教授、近藤教授、
グリーンウッド元APEC大使)

冒頭はモデレータの渡邊教授による、日本で誤解されているTPPの諸問題について解説が加えられました。

これを受け、商社時代ワシントンでロビイストとして活躍していた近藤氏が、日本での国際経済連携構想は30年以上前の大平内閣に遡ることを披瀝。重要なことは日本の農業のように、保護主義を貫き通すことではなく、積極的な海外輸出を含む市場開拓をマーケティング手法など駆使して行い、ブランド化することで産業競争力をつけることであるとし、タフなネゴシエータによる、一刻も早い交渉参加を訴え、TPPが日本にも大きな恩恵をもたらすことを強調。

またグリーンウッド氏は、TPPについての情報不足に起因すると考えられるTPPに対するイメージの“Obake”化にも言及。TPPを理解していないことでTPPが恐ろしい存在として国民の前に立ちはだかっているのではないかと、政府の国民へのコミュニケーション不足を指摘しました。

フロアからのさまざまな質問も受け、最後には情報交換や情報発信を積極的に行うことで交渉に入っても不必要な摩擦は避けるべきとする意見で一致しました。セッションは予定を10分オーバーして終了。

また16日は、昼の時間を利用して、守山宏道経済産業省中小企業庁国際室室長による講演「我が国、中小企業の海外展開」が行われるなど、盛りだくさんのプログラムでした。

■グローバル人材に必要な5つの”C”
2日目の17日午前中は、大竹美喜会長、小林潔司理事長の挨拶に始まり、小島順彦三菱商事会長が統一テーマを受けた基調講演を行いました。なかでも人材育成の重要性について語っていただきました。

中東サウジアラビアでの勤務経験が自らの原点にあるとし、英語は重要だがもっと重要なことは、1)自分の意見を持つこと、2)自分の意見を自らの言葉で伝えようとする姿勢、3)目標に向かって貪欲に努力する精神的な逞しさを持つこと、の3点としています。

また、グローバル人材には以下の5つの“C”が必要として、
Curiosity(探究)、Challenge(挑戦)、Communication(意思疎通)、Courtesy(礼儀)、 Characteristics(独自性)を挙げ、とりわけコミュニケーション能力が求められるとし、同世代だけでなく若年から壮年までが連携し合う、タテ、ヨコのコミュニケーションの重要性に触れています。そしてタフな人材育成には、米国の授業で行われているようなディベートも取り入れる必要があることを指摘。

基調講演を受けてパネルディスカッション(モデレータ:井之上喬)では小島氏も加えた5名のパネリストによる討議が行われました。

(写真:パネルディスカッション:右から、小林潔司、関口和一、
小林りん、アレン・マイナー、小島順彦、筆者)

最初のアレン・マイナー氏(サンブリッジ会長)が日本の若者のベンチャー精神は日本人が考えているより旺盛とし、彼らの中に世界市場を見据えて行動する人材が現れていることを指摘。また、日米起業協議会(イノベーション・アントレプレナーシップ・カウンシル:経産省、国務省共催)の米側委員を務める同氏は、日本人の外国に対して持つ関心の高さは世界一と日本のグローバル化に肯定的な見方を示しました。

軽井沢での国際的な中高一貫校開設の準備に追われる小林りん氏(インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団代表理事)は、これからの教育は1)問題設定能力、2)リスクテーキング能力、3)多様性への寛容力に重点を置く必要があると自らの体験を交えながら語っています。
一方、日本経済新聞の関口和一氏(論説委員兼編集委員)は、英語教育は必須としながら、これから必要とされる人材として、1)ベンチャー人材、2)ソフトウェア人材、3)グローバル人材の3つを挙げ、個性を持ち「人と違うことをやる」ことができていないとし、教育の中身は、知識習得偏重主義から 問題設定能力向上に力点が置かれる必要性を強調。

小林潔司教授は、「自分のコア」を持つことが大切。海外では日本のどの大学を卒業したなどは誰も知らないし気にも留めない、重要なことは自分が何者で、何を考えている人間であるかである、とこれからは個人の人間力が重視されるとし、「学生の両親に対する教育」の必要性も説いています。また京都大学経営管理大学院が、4月から開講する「アジアビジネススクール」の人材育成プログラム概要を説明。

最後に、大学の就活問題が議論として浮上。現在のように3年から就職活動を始める状況は決して健全ではないとし、就活前の学習や海外での異文化体験を奨励し、大学4年の後半からでも遅くないとする意見が多く出されたのが印象的でした。

午後からは、3つの研究発表が行われました。一つは、原良憲氏(京都大学経営管理大学院教授)による「おもてなし革新のグローバル人材育成」、もう一つは小林潔司氏(同教授)による「グローバル人材育成の必要性」、そして私の発表となる「グローバルビジネスのインフラストラクチャーとしてのパブリック・リレーションズ」。私の発表については紙面の都合で、別の機会にご紹介したいと思います。

(写真:筆者研究発表)

これらの発表に続き、木村惠司氏(三菱地所会長)、釡和明(IHI会長)、田中秋人氏(イオン顧問)、Alison Murry氏(欧州ビジネス協会事務局長)による講演が続きました。日本のエグゼクティブの皆さんからは、グローバル企業としての企業紹介に続き、グローバル人材育成の現状と課題についてお話しいただきました。 

最後のMurry事務局長は、3月末から話し合いに入るとされる、日本とEUのEPA(経済連携協定)が二つの経済圏に与える影響について語ってくれました。

最後は、大会実行委員長の白井克彦前早稲田大学総長からのお話で無事2日間の大会は終了。

今大会の特色は、ペーパレス化をめざして「予稿集」を電子出版で行ったことと、また初めての試みとして、ニコニコ動画でインターネットのリアルタイム放送を行ったことです。アクセス数は、この種の放送には珍しく6万超。

その後の懇親会には、参加者・講演者などに加え、日ごろお世話になっている三井住友銀行会長の北山禎介さんや日本政策投資銀行社長の橋本徹さん、元内閣官房副長官で東京都社会福祉協議会会長の古川貞二郎さん、また大使館関係ではベラルーシ、コソボ、ベナンの駐日大使など大勢の方々が駆けつけてくださり、暖かい雰囲気のなかで交歓が行われました。

最後に、この大会成功のために、尽力いただいた関係者の皆さん、とりわけ会場を使用させていただいた白井先生をはじめとする早稲田大学関係者そして実行委員の方々、就活中にもかかわらず参加してくれた学生ボランティアの皆さん、そして学会事務局スタッフの皆さん本当にありがとうございました。

次回のSGB全国大会は、京都で開催の予定です。

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2013年02月18日

グローバルビジネス学会 全国大会のプログラムが固まる
?数々の講演と10件に及ぶ学会内研究成果を2日間にわたり発表

こんにちは井之上喬です。

世界経済の発展に寄与する人材の育成を目的とした学術団体グローバルビジネス学会は先週、来月3月16日と17日の両日にわたって開催される第一回全国大会(統一テーマ:多極化におけるグローバリゼーション)の実施プログラム概要を発表しました。

昨年4月にこの学会が設立されて初めての全国大会は、早稲田大学の国際会議場で開催。早稲田大学が会場に選ばれたのは、戦後のグローバルビジネスを体現したソニー創業者井深大が寄贈した、井深大記念ホールで開催することでその精神に触れることができたらと考えたからです。

実行委員長には、会場が早稲田ということもあり前早稲田大学総長の白井克彦氏(放送大学学園理事長)が就任。委員長はじめ実行委員会メンバーには主催地大学のアカデミシャンが多く関わっています。
副委員長の太田正孝氏(早稲田大学商学学術院教授)、同じく森欣司氏(同理工学術院客員教授)、加えて中村清氏(国際学術院教授)、松田修一氏(同大学名誉教授)、元高知県知事の橋本大二郎氏(同大学院客員教授/慶大大学特別招聘教授)など。

そのほかメンバーには、原良憲氏(京都大学経営管理大学院教授)、木村東一氏、杉本孝氏(共に同大学経営管理大学院特命教授)、そして国際弁護士や公認会計士、国際ビジネスで活躍するビジネスパーソンも加わっています。ちなみに私は、副委員長として関わらせていただいています。

■特別セッションは、いまホットイッシュのTPP
第一回全国大会の統一テーマは、「多極化におけるグローバリゼーション」。

東西冷戦崩壊後の米国一極集中から、ITの進展や先進国からの投資などで経済力をつけた新興国の台頭により、国際システムは多極化への動きを強め世界はグローバリゼーションの真っただ中にいます。

多極化の中で加速するグローバリゼーションとはどのようなものなのか?私たちがグローバルビジネスを推進していく中で克服すべき課題は何なのかなど、2日間にわたって数々の講演とパネルディスカッション、そして10件に及ぶ学会内の研究成果が発表されます。

初日の16日には、10件の研究成果が発表され、「英国鉄道ビジネス参入への挑戦」や「水素エネルギー社会と水素自動車」、「国際取引と投資協定仲裁」、“Death and Rebirth of the Domestic Economy”などが当学会員により発表されます。

これらの研究発表はいずれも時宜得たテーマで行われます。中でも、「英国鉄道ビジネス参入への挑戦」は、長年英国鉄道への運輸車両納入を手掛けてきた日立製作所が、それまでの製品単品販売主義からシステム販売主義に方針転換し、大型受注を成功させたプロジェクトを検証したものです。

また、「国際取引と投資協定仲裁」は、大手国際弁護士事務所の中野憲一氏によるもので、グローバルビジネス環境下での国際取引上発生するさまざまなトラブルについて投資協定仲裁にフォーカスしてプレゼンテーションが行われます。

そして、16日午後一番から始まるTPP特別セッションでは、この方面の第一人者である渡邊頼純氏(慶応義塾大学教授)や近藤剛氏(早稲田大学特命教授/伊藤忠商事理事)らにより討議されます。

TPP(環太平洋経済連携協定)は、安倍首相が今週オバマ大統領とワシントンで会談を行う中で最も関心の高いイッシュ。このセッションではTPPとはどういったものなのか、その本質的な意味合いから始まり、何を日本にもたらすのか?どのような課題があるのかなどについて、パネルで議論を進めていきます。

渡邉教授と相対する近藤剛さんは、小泉政権で道路公団民営化のために総裁(2003?2005)として辣腕をふるった人ですが、伊藤忠のワシントン事務所長時代には当時のカーラ・ヒルズ米通商代表部(USTR)代表など豊富なホワイトハウス人脈を駆使してロビー活動を行っていた人です。在日米国商工会議所(ACCJ)のTPP関連の人も加わったセッションは参加者の関心を惹きつけることでしょう。

■基調講演とパネル、そしてさまざまな発表、講演
2日目の午前中は小島順彦氏(三菱商事会長)の基調講演とパネルディスカッションが組まれています。
総合商社として国際的な人材育成に注力する三菱商事トップからは、グローバル化がもたらすものはどのようなものなのか、またどのような人材育成が求められているのかなど、その語られる内容に期待がかかります。

パネリストには当学会理事長でもある小林潔司氏(京大大学院教授)、関口和一氏(日本経済新聞論説委員兼編集委員)、小林りん氏(インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団 代表理事)、アレン・マイナー氏(サンブリッジ会長)が参加(筆者のモデレータによる)。それぞれ異なったバックグラウンドをもち第一線で活躍するパネリストによる白熱した討議が期待されます。

午後からはまず3つの研究発表が行われます。最初は原良憲京都大学経営管理大学院教授による、「おもてなし革新のグローバル人材育成」 、続いて井之上喬による「グローバルビジネスのインフラストラクチャーとしてのパブリック・リレーションズ」。最後は小林潔司教授による「グローバル人材育成の必要性」がありますが、いずれも斬新なテーマで発表されます。

その後に、各界を代表する内外4名の有識者の講演が続きます。

最初の3名は日本のビジネス・エグゼクティブ。危機にあったIHIにあって7人抜き大抜擢人事で社長に就任し同社の立て直しに貢献した釜和明会長。続いて、日本はもとより、グローバル進出に力を入れ世界有数の不動産会社の三菱地所木村会長による話。そして中国、マレーシアなどで、数々の課題解決を通してアジアビジネスを成功に導いた、田中秋人イオン顧問(元専務執行役)。

最後にヨーロッパからは、アリソン・マリーEUビジネス協会(EBC)事務局長による今春から交渉入りが予定される、日本と欧州連合(EU)による経済連携協定(EPA)交渉についての話など、最新の講演内容になるはずです。

今回の全国大会開催についてグローバルビジネス学会の大竹美喜会長(アメリカンファミリー生命保険会社創業者兼最高顧問)は、「当学会では社会科学、人文科学、自然科学といった専門分野を越えてグローバルビジネスに関する有益な情報を国内外に発信していくことを使命のひとつとしている。この全国大会が国際的な連携をさらに深める機会になることを期待している」と語っています。

また17日の夕方から始まる懇親会には、理事長、会長、役員をはじめとして、アドバイザリーの方々にもお越しいただく予定です。経験豊富な皆さんとの積極的な意見交換が期待されます。

3月17日の私の発表にもあるように、グローバルビジネスを遂行する上でパブリック・リレーションズ(PR)はインフラストラクチャー(基盤)です。皆様のご参加をお待ちしております。

全国大会のプログラム詳細は:http://s-gb.net/news/628/をご覧ください


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グローバルビジネス学会「第一回全国大会」へ参加希望される方は
http://s-gb.net/nationalcon/からお申し込みください。

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2013年02月04日

日経-京大共催シンポジウム「グローバルリーダーの条件」から ?再認識されたパブリック・リレーションズ(PR)の役割

こんにちは井之上 喬です。

昨日(2/3)は節分でした。豆まきの風習は平安時代に起源をもつといわれ、季節の変わり目に邪気を払うために行うと考えられているようです。皆さんのお宅では節分をどのように過ごされたのでしょうか。

さて今回は、先月24日に催された京都大学経営管理大学院と日本経済新聞社の共催による
“The Nikkei Asian Review”(週刊英文経済誌)の創刊1周年を記念したシンポジウム「アジア新潮流・グローバルリーダーの条件」(会場:日経ホール)についてお話します。

このシンポジウムは、京都大学の有するビジネスリーダー育成に関する知見をベースに、アジアビジネスに精通している専門家を招き、グローバル化の進展のなかでリーダー育成とビジネスネットワーク構築のための課題などについて考えていく目的で催されたものです。

グローバルビジネス学会が国際協力銀行とともに、このシンポジウムを後援していた関係や京都大学経営管理大学院の特命教授を務めていることもあって、後半(16:30-17:50)のパネルディスカッションでは私がモデレーターを務めました。

■アジア経済圏の新たな統合化
翌朝の日本経済新聞の紙面(9面)ではこのシンポジウムについて、「参加者からは経済危機への抵抗力を高めるために、経済統合を通じたアジア経済圏の強化が必要との声が目立った。」と報じられました。

国内市場・経済が低迷する日本にあって、急拡大するアジア市場を中心とするグローバル市場への企業対応がまさに問われています。とりわけ経済成長で大きな潜在力をもつアジア地域において、ビジネス成功のためのネットワークの強化・拡大は日本企業にとってまさに喫緊の課題となっています。

また同紙では、基調講演を行ったフィリピンのアキノ政権のエコノミスト、カイェタノ・パデランガ・フィリピン大教授が2008年のリーマン・ショック後のASEANの動きについて、「東南アジア諸国連合(ASEAN)経済は内需を強めながら域内の結束を強めている」と伝えています。

駐英タイ公使で前タイ財務省ASEAN財務金融局長のケツダ・スプラディット氏も基調講演で、ASEAN10カ国と日中韓印など6カ国をひとつの自由貿易圏とする東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉入りに言及し、「地域の新たな統合が始まろうとしている」と地域経済の将来性を強調。

■PRはグローバル人材に不可欠な要素
私がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、「グローバルビジネスリーダーの条件とはどのようなものなのか?」についてそれぞれ異なったバックグラウンドを持つ6名のパネリストの方に登壇いただき討議を進めました。 

6名の方々(順不同)は、星文雄氏(国際協力銀行代表取締役専務)、北山禎介氏(三井住友銀行取締役会長)、大曽根恒氏(東洋エンジニアリング常務執行役員)、田中秋人氏(イオン中国・アセアン事業顧問/前イオン専務)、小林潔司氏(京都大学経営管理大学院教授/経営研究センター長)、そして太田泰彦氏(日本経済新聞社論説委員兼国際部編集委員)といずれも各界を代表し、グローバルビジネス分野で素晴らしいキャリアをもつ方々です。

(写真:左より、筆者、北山、星、大曾根、田中、太田、小林の各氏)

紙面の都合もあり80分にわたるパネルディスカッションの中から、6名のパネリストがグローバルリーダーに抱くイメージや条件、そしてグローバル化の課題などについて簡潔な紹介と、モデレーターとして私のまとめを行ってみたいと思います。

幼少の頃から海外生活体験を持つ星さんは、グローバルリーダーの条件について、英語でのコミュニケーションがとれること(可能であれば中国語、スペイン語などグローバルな言語をもう一つ)、出身国の政治や経済、文化などについて語れること、そして世界の政治や経済動向を理解して自分の考えを述べられることなどを挙げています。

リーダーに対する処遇は、日本国内とは異なる給与、要するに欧米先進国企業と同等の処遇を与えることが肝要であり、日本式経営を押し付けるべきではないとしています。

銀行マンとして米国やマレーシアなどでのビジネス経験を持つ北山さんは、コミュニケーション能力はローカルビジネスを展開していくうえでアジアに限らず欧米においても共通する普遍的な要件であると述べています。

タイなどで女性の活躍が目立っている現状を踏まえ、スタッフ拡充のため現地ナショナルスタッフに対し権限をいかに委譲していくかということと、ダイバーシティに配慮することが重要としています。

また、初等教育から高等教育の全ての段階における教育システムのブラシアップ、つまりコミュニケーション能力や倫理観を高めるだけでなく英語をツールしてグローバルに発言できるよう日本の教育システムを改革し、内なる国際化を進める必要があると述べています。

現地法人の社長も務めインドビジネスの経験が長い大曽根さんは、グローバルリーダーの条件として熱い情熱をもったジェントルマンであること、広い視野と好奇心をもつこと、そして基本的な語学力を挙げています。

また日本人リーダーに求めるものとしては、現地の歴史、文化、生活習慣などに対する理解や経営方針の明確化と伝達・理解の徹底。ローカルリーダーに求めるのは、世界的視野と理解力、向上心と改革力、そして後継者育成としています。

イオンのアジア進出に長年かかわってきた田中さんは、グローバルリーダーの資質として、3つ挙げています。一つ目は、ステークホルダーとの関係構築のためのコミュニケーション力(英語+現地語)です。日本人の文化である謙譲の美徳や陰徳を積むという行動は海外ではほとんど評価されない。情報発信力が極めて重要となるといいます。

二つ目は、高潔で包容力のある豊かな人間力(リーダーシップ)で、倫理感(公私のけじめ)や150%クリーンハンドの原則、同じ目線で対話できる資質について言及。

三つ目の斗う力については、交渉という戦争に勝つためには確かな戦略の下に周到な戦術が練られなければならない。そして戦斗に勝利するための備え、武器、弾薬や兵糧などの準備を万全にする必要があると述べています。

京大で教鞭を執る以前、IMFやOECDなどの国際機関で従事した経験を持つ小林さんは、グローバル人材にはロジカルシンキングが重要。理屈で攻めて合理的に説明できればビジネスで勝ちを得られる。そうしたタフネスがあるかどうかが肝要としています。

また日本にもっと「知的ゴロツキ」つまり欧米のように、博士号を持ち個人や自国の利益のために相手と丁々発止できるしたたかな人材を増やす必要性を説いています。

そしてコミュニケーションは受け手がするものという考えを変えなければならないとし、彼らと一緒に新しいものをつくるといった共感が必要で、こうしたポジティブな考えがあれば上手くコミュニケーションが取れると述べています。

最後に今年の4月から東京で開講する京大アジアビジネススクール開設に中心的役割を果たしてきた小林教授は、思い切った人材育成プログラムを発表しました。

太田さんは、ワシントンとフランクフルトで日経の駐在記者として米欧の政官界やグローバル企業を取材した経験から、グローバルリーダーはコミュニケーション能力が最大の要件。多国籍、多言語、多民族、多文化の組織を束ねるリーダーの力は、他者に伝わる明確な「言葉」と「理念」だと明言しています。

そしてTPPなど広域経済連携の時代に入り、企業の舞台は海外に一段と広がっているが人材が追いついていない。海外で人(日本人)を育てる必要があるとの提言もありました。

黙っていては伝わらない。文字で書いた文書でも伝わらない。太田さんは自分の言葉で語る大切さを強調し、記者としていつも「発言取材者に対してストーリー性を求めている」ことを強調。つまり企業トップが自らの哲学や生きざまについてストーリーテリングができないと読者を感動させることはできないとしています。

欧米の企業トップにとって自らのストーリーテリングはトップの務めになっていますが、日本人経営者の中にも少しずつその必要性について理解を示す人たちが増えつつあります。

(写真:筆者)


こうした6名の方々のお話に共通したのが「グローバルリーダーにはビジネス相手の説得や市場開発のため現地語と英語によるコミュニケーション能力が不可欠」ということでした。

コミュニケーションとりわけ双方向コミュニケーションパブリック・リレーションズ(PR)活動にとって、「倫理」「自己修正」とともに3つの基本原則を構成する一つです。

こうしてみるとパブリック・リレーションズは、グローバルビジネス人材に不可欠なインフラストラクチャーであることがわかります。さまざまなステークホルダーとの関係構築作りこそパブリック・リレーションズだからです。

例えばダイバーシティ(多様性)は、双方向コミュニケーションの環境の中で有効となり、相互理解のない異文化間の対立は自らの正しい修正に至らず、国家間の戦争にさえ発展しかねません。進出企業を取り巻く様々なステークホルダーとの倫理観に基づく良好な関係構築づくりを通してリレーションシップ・マネジメントが行なわなければなりません。

アジア地域には多様な国家や地域が多く、相互理解と受容性が大事になりますが、同時にその姿勢をステークホルダー積極的に伝えていくことも重要となります。

これまで欧米主導であったグローバルビジネスの重心がアジアに移行しつつある中、文化、商習慣、言語、宗教が異なるアジアで成功するリーダーシップと本社トップのもつリーダーシップでは求められる役割も異なってきます。こうした異質性について大学教育や企業研修を通して積極的な内なる国際化への努力が求められていると言えます。

このシンポジウムを通して、ASEAN10カ国と日中韓印など6カ国をひとつの自由貿易圏とする東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の深まりのなかで、パブリック・リレーションズの機能がますます重要なものになることを実感しました。

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グローバルビジネス学会が第一回全国大会を開催
「多極化におけるグローバリゼーション」を統一テーマに講演と研究成果を発表

グローバルビジネス学会は本年3月16日と17日の両日、第一回全国大会(実行委員長:白井克彦 放送大学学園理事長/前早稲田大学総長)を早稲田大学国際会議場(井深大記念ホールほか)で開催します。
全国大会初日は、TPPに関して慶應義塾大学の渡邊頼純教授によるセッションのほか学会員の優れた研究成果が発表されます。2日目には小島順彦氏(三菱商事会長)の基調講演をはじめ、内外で活躍する各界を代表する有識者の講演とパネルディスカッションが組まれています。2日目の大会後には懇親会も催されます。なお、学生は参加費無料(※懇親会のみ有料で3,500円)。

*第一回全国大会の詳細と参加申し込みは学会ホームページ(http://s-gb.net)から。

■本件に関する問い合わせは下記へ
「グローバルビジネス学会」第一回全国大会実行委員会E-mail:info@s-gb.net

投稿者 Inoue: 14:08 | トラックバック

2013年01月07日

アジア諸国といかに協働すべきか?
?喫急の課題はグローバル人材育成

新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

2013年の最初となる井之上ブログです。今年も皆さんとさまざまな問題や課題について一緒に考えていきたいと思います。

昨年暮れに行われた総選挙では、3年3ヵ月続いた民主党が大敗を喫し、自民党が復権しました。

第三極が乱立し国民に積極的には支持されない自民党が消去法で残ったと言われていますが、新政権誕生前から円安や株価上昇がみられ、長い間閉塞感に陥っていた日本社会は政権交代により、かすかな希望の光に久しぶりに明るい新年を迎えています。

構造的な問題を抱え低迷する日本にあって、グローバル市場への企業対応が強く求められています。

とわけ経済成長で大きな潜在力をもち変化の速いアジア地域において、いかにビジネスを拡大し成功させるかが問われています。そのために日本企業にはシステムの再構築が迫られ、ネットワークの強化・拡大やグローバル人材の育成は喫急の課題となってきています。

■アジアパワーを取り込む
とりわけ世界人口の60%近くを抱えるアジア地域には、異なった言語、宗教・文化・歴史を有する多くの国々が存在しています。

日本のグローバル化の流れは、1985年のプラザ合意による円高とITの進展にその始まりを見ることができますが、特に90年代に入り、多くの日本企業は円高対応によりアジア新興国・地域への工場進出をはかり、アジアを生産/製造基地として位置づけするようになります。

また現地政府の優遇政策による安価な人件費やサプライチェーンの確保、そして日本企業が同一の工業団地に工場を建設することによる裾野産業の現地化促進など、日本企業はひたすら効率化を図ってきました。

当時のアジア市場は未成熟で、もっぱら安価に生産された製品は欧米市場への輸出を目的としたものでした。

そんなアジア新興国・地域もこの数年で状況が一変します。日本や欧米資本の投資が進むにつれ、「世界の工場」から「世界の消費市場」としてのアジアが脚光を浴びています。

いまや、ASEAN諸国(10か国)に加えたASEAN+6(日本、中国、インド、韓国、豪州、ニュージーランド)のGDP合計は約20兆米ドルで、EU(約17.6兆ドル)やNAFTA(約18兆ドル)を上回るほどの勢い。

また世界的な情報化(ネット)社会が進展する中、人件費の高騰により購買力を身につけたアジアの新興国・地域における富裕層の台頭は競争原理が働く市場を形成し、消費者意識の高まりと共に、企業にきめ細かいマーケティング戦略そしてPR戦略の構築を求めています。

国の事情によって異なるものの、さまざまな規制緩和は、現地経済に新たな成長の機会を与えています。ベトナムのケースを例に挙げると、政府が実施した外資の小売流通業への進出解禁(2009年)は日本からはイオンなどの流通企業の現地進出にドライブをかけ、急速な「消費市場」化に拍車をかけています。

こうしたアジア諸国の変化を把握し、日本企業がいかにこれらの市場を取り込むかが今後の企業の盛衰に大きく影響を与えるのではないでしょうか。

これらアジア市場では、多様化を受け入れることが重要といえます。現地従業員やパートナーに現地および本社のマネジメントが日本型経営を押し付けていないか常にチェックすることが不可欠と言えます。

海外市場に進出する企業は、現地の商習慣や経済・産業・社会の状況を把握し、消費者や現地パートナーそしてその国の政府機関をはじめとするさまざまなステーク・ホルダーに対して、適切に対応しているでしょうか?

アジア地域は日本企業にとって他国の企業と比べ優位性を保っています。それは日本企業のイメージが良好であることからきています。

「フォーチューン」の企業ブランディング調査、「世界で最も称賛される企業」(2012)のトップ50のなかにはトヨタ(33位)とホンダ(50位)の2社しかランクされていません(トップ3は:アップル、グーグル、アマゾン)。しかし、同じフォーチューンの「アジアで最も称賛される企業」(2012)のトップ50では日本企業が実に30社(60%)ランクされ、首位のトヨタに続き、キャノン(2位)、SONY(4位)、本田(5位)と上位10社に5社がランクされています。

この数字が意味するものは、アジア市場での日本ブランドはまだ強くそのブランド力を背景に優位なビジネス展開が可能だということです。

しかし一方では、日経ビジネス年末合併号に紹介されているように、世界の就職人気ランキングトップ50に、日本企業は、SONY(15位)とトヨタ自動車(45位)の2社しか入っていないことが明らかにされています(トップ3は:グーグル、KPMG, P&G)。(出所:国際コンサルティング会社ユニバーサル社の2012年調査)。

原因の分析がありませんが、「日本企業の職場環境は息苦しすぎる」と不満をぶつける外国人社員が少なからずいることも理解しておく必要があるのではないではないでしょうか。

■グローバルビジネス人材の発掘と教育
このように急速なグルーバル化への対応が迫られる中で、日本企業の喫緊のテーマは、いかにグローバルビジネスを推進できる人材を確保し育成するかではないでしょうか。

先の日経ビジネスでは、日本企業によるさまざまな取り組みについて紹介していますが、中でも興味深いのは日産です。

同紙は、ゴーンさんが日産社長に就任してから社内にNAC(ノミネーション アドバイザリー カウンシル)という組織を立ち上げていることを紹介しこう述べています。「NACとは、世界各国の日産で働く優秀な従業員を発掘・育成し重要な仕事に登用する仕組みのこと。上司の推薦のほか、『キャリアコーチ』と呼ぶ人材発掘のスペシャリストが世界中を飛び回り、優秀な人材を見つけ出す。」とし、さらに同社が、ノミネートした人材一人ひとりに育成プランを作り、若いうちから重要な仕事を任せその成果評価を繰り返し行うことで重要ポストの後継者候補を育てるとしています。

グローバル人材育成のための研修を行っている日本企業に富士通があります。同社は10年以上前からGKI(グローバル ナレッジ インスティチュート)をスタートさせ、毎年30代後半?40代の社員20人程度を本部長推薦で選抜し、半年間にわたって自己研修とグループ研修を組み合わせて行っているようです。使用言語は原則英語で、期間中には数回の海外研修が含まれているとのこと。

日産や富士通の取り組みのように、企業内での人材発掘と研修制度は今後ますます重視されるでしょう。

日本人社員が海外での研修を通して、相互理解による現地の文化や商習慣などを学び、現地社員は日本本社での研修により企業文化やより深い技術の習得、そして社内ネットワークの構築など本社で学ぶ絶好の機会となるはずです。

日本のグローバル企業が日本人従業員だけ雇用していた時代は過去のものとなりつつあります。

有能な外国人雇用者の確保は将来の成長を左右するほどクリティカルです。自社を魅力的な企業にするためには組織構造や企業風土の見直しも必要になるかもしれません。ステーク・ホルダー(パブリック)との良好な関係を構築する、「倫理」「双方向」「自己修正」の3つの要素を抱合する、パブリック・リレーションズ(PR)の強化は必定といえます。


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日本経済新聞社は「The Nikkei Asian Review」の創刊1周年を記念して、京都大学経営管理大学院と「アジア新潮流・グローバルリーダーの条件」と題したシンポジウムを1月24日(木:14:00-18:00)、日経ホールにて開催します。定員500名で参加費は無料。
私は「アジア新潮流 グローバルリーダーの条件」(16:30-17:50)をテーマにパネルディスカッションのモデレーターを務めます。
参加を希望される方は、詳細を以下の日経サイトでご確認のうえ、お申し込みください。

http://esf.nikkei.co.jp/e/event.asp?e=00965

投稿者 Inoue: 17:40 | トラックバック

2012年12月03日

グローバルビジネス人材育成を考える
?京都大学経営管理大学院のシンポジウムから

こんにちは井之上 喬です。早くも師走に入り、寒さも一段と厳しさを増してきましたが、皆さんお元気ですか。

先日(11/19)、「グローバルビジネス人材育成を考える」をテーマに京都大学経営管理大学院が主催するシンポジウムが開催されました。会場は、京都大学芝蘭会館の稲盛ホール。

グローバルビジネス人材育成に関してわが国の産・学・官が、グローバル社会における事業活動を新たな次元に引き上げ、その対応力を抜本的に強化するために大学が果たすべき役割、とりわけ経営専門職大学院におけるグローバル人材育成のための課題を議論することを目的としたものでした。

このシンポジウムに私が副会長を務めるグローバルビジネス学会が共催した関係もあって、私はパネルディスカッションのコーディネーターを務めることになりました。

(写真 敬称略:左から澤井、田中、安間、筆者、北山、式部、林の各パネリスト)

■質的変換期を迎えた大学教育
シンポジウムは、京都大学の徳賀芳弘経営管理大学院長の開会挨拶にはじまり、文部科学省の板東久美子高等教育局長による「グローバル人材と大学教育の役割」、国際協力銀行の奥田碩総裁が「グローバル化時代のビジネス」、そして京都大学の森純一国際交流推進機構長が「ナレッジエコノミーと大学のグローバル人材教育」をテーマにそれぞれ基調講演を行いました。

板東さんは、「主体的に学び考え、どんな状況にも対応できる多様な人材育成のため、大学の機能を再構築し、大学教育の質的転換を図るためのガバナンスの充実・強化が不可避だ」と指摘。

奥田さんは、「武士道精神に学び、国際社会で尊敬される正しく強い日本人になれ」と強調。

森さんは、「新しい大学院教育」や「海外大学との協働コース」、「学生の海外派遣」、「産業界との連携」など7つの施策を具体的に提示しました。

次いで私がコーディネーターを務めるパネルディスカッションが始まりました。

■異なった背景をもつ6人のパネリスト
パネリストには各界を代表して、三井住友銀行の北山禎介会長、米州開発銀行 の式部透顧問、JETROの林康夫顧問(元同理事長)、国際協力銀行の安間匡明経営企画部長、三井物産の田中浩一代表取締役常務執行役員、そして京都大学の澤井克紀経営管理大学副院長の6名に参画いただきました。

冒頭はバックグラウンドの異なるパネリストに、グローバル人材の育成に関する課題についてそれぞれの立場で自由なコメントをいただき討議を進めました。

北山さんは、金融業のグローバル人材育成として高度な金融の知識、語学力、文化、宗教に対する理解と内なる国際化への対応が必要であるとし、コミュニケーションのツールとしての英語力やタフで異質な集団を育てるためのプログラムをカリキュラムに入れる必要があると語っています。

式部さんは、政府間国際交渉や国際機関の職員の資質として、英語力、専門知識、相手との信頼関係を構築するために人間力や交渉能力が必要とされ、実務経験をOJT (on the job training)をとおして積み重ねることが重要としています。

林さんは、今後中小企業が世界をリードすると予測し、わが国中小企業のために日本全体で国際ビジネスに対応できる人材ストックが重要となることを強調。大学生には在学中の海外留学が望まれるといった見解が示されました。

安間さんは、ポスト・マージャーの強化や製造業で新興国と厳しい競争に晒されている分野でのマーケティング力の強化を訴えました。新興国との関係では信頼関係の構築が重要であり、とりわけ民間企業への理解が必要とされることを強調。

田中さんは、三井物産では異なる文化、宗教の理解のある人材が欲しいと自社の求める人材像についての考えを示し、同社の通年採用の約40%が外国籍であることを明らかにしています。

経営管理大学院で教鞭も執る澤井教授は、グローバル人材に求められる素養は、教養であるとし、外国人と会話を弾ませる、相手の言動に対する幅広いレスポンスが必要であるとしています。同時に、専門性を一つでも持つことで応用力や人間力をつけることができると指摘しています。

このパネルディスカッションにおける「グローバル人材として求められる要素」は、高度な専門知識と語学力に加え多様な文化や価値観、宗教観に対する理解力や適応力、精神力、コミュニケーション力、ユーモアセンスが挙げられ、また国際交渉を担う人材に対しては、特に実務経験の重要性が強調されました。

これらのスキルを統合し、グローバルなビジネス・シーンで優位性を高めていくためにはパブリック・リレーションズ(PR)の素養をもつことがいかに重要か、基調講演やパネルディスカッションを通して、私は改めて実感しました。

パネルディスカッションの冒頭で私は、グローバル社会の中でパブリック・リレーションズはビジネス遂行するためのインフラストラクチャーであると強調しました。

なぜならば、多様性が求められるグローバルビジネス環境では、自己を主張できる豊な人間力ある人材が求められているからです。パブリック・リレーションズは、目的をスムーズに達成するために必要な、「倫理観」、「双方向性コミュニケーション環境」、そして、必要な際の「自己修正能力」の3つの要件で成立します。これらはグローバルビジネス人材に不可欠な基本要素といえます。ダイバーシティは双方向性環境の中で有効となり、相互理解のない異文化間の衝突は、自らの修正に至らず、国家間の戦争にさえ発展しかねません。

つまり、さまざまなステークホルダー(パブリック)との良好な関係構築づくりを通してリレーションシップ・マネジメントが行なわれなければならないからです。

パネルディスカッションの後には、京都大学経営管理大学院の小林潔司経営研究センター長からの報告「アジアビジネススクール開講によせて」が続き、2013年4月に東京で開講する「アジアビジネス人材育成講座」の概要も紹介されました。

午後1時30分にスタートしたこのシンポジウムは、教育制度の改革や各大学の生き残りをかけたさまざまな試み、経済界や国際社会との協働などについて熱い議論が交わされ、その余熱が残る中で澤井克紀副大学院長の閉会挨拶を最後に6時に終了しました。

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井之上喬著「パブリックリレーションズ」(2006年3月、日本評論社刊)は、おかげさまで2012年5月30日付で第6刷が発刊されました。ご愛読ありがとうございます。

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2012年10月22日

京都大学でパブリック・リレーションズ授業始まる
?グローバルリーダーの養成を目的に

こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

今学期から京都大学経営管理大学院(ビジネススクール)で、私の授業「パブリック・リレーションズ論」が開講しました。

京大でのこの授業の役割は、急速に変化する社会とグローバル化に適応できるグローバル・リーダーをそのインフラとなるパブリック・リレーションズ(PR)を通して養成することです。

これまでパブリック・リレーションズの授業は2004年から早稲田大学で教えていますが、早稲田以外の大学で教鞭を執るのはこれが初めて。

とりわけ紅葉が始まる京都での講義は、個人的にも日本の伝統文化や古都の落ち着いた雰囲気を味わうことができ、また気分の転換にもなり、毎回京都に行くのが楽しみです。

小林潔司教授との出会い
この授業を行うことになったきっかけは、昨年秋に2度にわたる関西での講演。10年来の知人で同経営管理大学院のアドミニストレーション・スタッフの嫁勢久恵さんから京大の大西有三副学長と小林教授を紹介されたことに始まります。

当時小林教授は経営管理大学院の院長(現在、同大学院経営研究センター長)でしたが、自らは工学系の方で、日本で唯一の文理融合型によるビジネススクールを設置し推進されています。

京都大学での講演後の夕食会の席上で小林教授は、「来年から京大でパブリック・リレーションズを教えてくれませんか」と言われたのでした。

若い学者時代から小林さんは、世界銀行や、WHOをはじめとする国際研究機関における経済職、欧米の主要12大学での経済学部の併任・客員教授等を歴任するなど、さまざまな海外の職場で数多くの異文化体験をされています。

日本人に欠け、必要とされているものが何なのかよくわかっておられ、私の講演の内容に共鳴してくださっていたようで、初対面であったにもかかわらず意気投合。

小林先生の物事を成就させるときのスピードと推進力、そしてノバルティスファーマ社の協賛なども仰ぎながら「パブリック・リレーションズ論」の講義が京都で実現するに至ったのでした。

それ以来小林教授とは、日本が直面しているさまざまな問題解決のために如何にパブリック・リレーションズが必要であるかを語り合ったのでした。そんなわけで、今年4月にスタートしたグローバルビジネス学会( http://s-gb.net ) の設立に、それほど長い時間は必要としませんでした。

■パブリック・リレーションズはグローバル人材養成のインフラ
IT技術の進展と昨年3月11日の東日本大震災は、日本に急速なグローバル化への対応を促しています。

とりわけアジア諸国への展開を急ぐ日本の組織体には、多様な現地の文化や宗教、民族性、商習慣などとどう向き合っていけばいいのかが問われています。

ここでは相手との間で価値を共有するための「倫理観」、多様性を認め健全な相互関係を構築するための「双方向性コミュニケーション環境」、そして必要な時に自らを修正する「自己修正能力」、これらがあらゆる事柄の基盤として求められます。

つまりインフラストラクチャーとしてのパブリック・リレーションズが必要とされています。

また日本企業にとって、途上国や新興国との価格競争に巻き込まれないためには付加価値をどのように高めるべきかはクリティカルな問題。また日本企業の特徴ともいえる現場主義や現地の市場環境への適応をどのように行うのかといった点においても、日本型ビジネスモデルの構築が急がれています。

日本企業のブランド力を維持しながら、企業の現地化を進めていくためには、現地国で直面するさまざまな課題に対処できるパブリック・リレーションズ能力を身につける必要があると同時に、これを構築・維持できるコミュニケーション力や文化的、歴史的素養をもつ人材を育成することが必要とされているのです。

*11月19日(月)13:30?17:45、京都大学稲盛ホールでシンポジウム、「グローバルビジネス人材育成を考える」が開催(主催:京都大学経営管理大学院、共催:グローバルビジネス学会)。筆者もパネルディスカッションのコーディネーターを務める。大学におけるグローバル人材教育はどうあるべきかがテーマ(入場無料: http://s-gb.net/contents/20121119.pdf )。

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井之上喬著「パブリックリレーションズ」(2006年3月、日本評論社刊)は、おかげさまで5月30日付で第6刷が発刊されました。ご愛読ありがとうございます。

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投稿者 Inoue: 20:47 | トラックバック

2012年07月23日

「人事トップが求める新卒イメージ調査」から
?企業の期待は国際性や教養を備えた人材

こんにちは井之上 喬です。
関東地方も梅雨明けとなったようですね。

今年の就職活動(就活)は、経団連が昨年3月に「採用選考に関する企業の倫理憲章」を見直し、従来10月だった説明会の解禁時期を、12月へ遅らせたため例年より2カ月遅れの日程でスタートしています。

就職情報サイト「マイナビ」の調査によると、6月末時点で「内々定」を得た2013年卒業予定の全国大学生・大学院生は、前年同月比4.2ポイント増の50.3%となったとのこと。ただ回答者には、就活に熱心な学生が多いため、実際の内定率はこれより低くなるのではないかと見られているようです。

現在、大手企業の選考は一段落したものの、中小企業はこれから本格的な採用に乗り出す時期で、大学生の就活は「第2ラウンド」を迎えています。

こうした時期に日本経済新聞が「人事トップが求める新卒イメージ調査」をまとめ、7月16日の紙面で紹介しています。

■人材育成で企業注目度No.1は国際教養大学
この「人事トップが求める新卒イメージ調査」は、日本経済新聞社が主要企業の人事トップ(人事部長以上)を対象にアンケート調査を実施。136社から回答を得て集計したもの。

「人材育成の取り組みで注目する大学」については、秋田県の公立大学「国際教養大学」が35社から選ばれNo.1。2位は東京大学で13社、3位は立命館アジア太平洋大学(APU)で10社から選ばれています(3社までの複数回答)。

上記3校以外では早稲田大学が4位(9社)、慶應義塾大学が5位(7社)、立命館大学が6位(5社)で、そして一橋大学、京都大学、大阪大学、金沢工業大学がいずれも7位(3社)という結果でした。

国際教養大学は2004年に、元東京外国語大学長の中嶋峯雄さんを学長に迎え入れ秋田県秋田市に開校。ほぼすべての授業を英語で行い、学生に1年間の海外留学や国内の寮で外国人留学生らと共同生活することを義務づけています。

立命館アジア太平洋大学(APU)は、2000年に大分県別府市で開校。同大学は外国人留学生が学生の約半数を占め、学部講義の約80%を日本語と英語の両方でおこなっているとのこと。

企業の真相者に対する期待が、国際性や海外で活躍できる教養を備えた人材に集まったようです。

■企業が一番求めるのは、「コミュニケーション能力」
大学新卒者の採用において、企業側が求める人材像についての質問では、1位が「コミュニケーション能力」(59.6%)、次いで2位は「チャレンジ精神」(54.4%)、3位以下は「主体性」「行動力」、「意欲・情熱」と続きます(3つまでの複数回答)。

面白いことに「専門性」は2.2%しかなく、「幅広い知識」はゼロ。専門知識の有無や豊富な情報量よりも、上司や同僚と上手くコミュニケーションがとれ、前向きに仕事ができるかどうかが重要視されているようです。

就職・採用活動の最終段階である面接において企業側が重視するポイントは、「質問に対する的確な答え」が80.1%と最も多く、次いで2位は「自己アピールの中身」(54.4%)、3位は「臨機応変の対応力」(49.3%)の順。

こうした調査結果について、大学と人事コンサルティング会社の専門家は次のようにコメントしています。

「コミュニケーション能力やチャレンジ精神を求める傾向は海外でも出ている。答えのない問題の答えをチームで見つけるような作業のできる人材の需要が、先進国では特に高まっているのだと思う。」(大学准教授)

「コミュニケーション能力ならば、かつては日本語や英語で会話できればよかった。グローバル経済が進む現在では、異文化で育った人間と対等に議論しあえる人材が必要とされる。」(人事コンサルタント)

企業側が1位に挙げた「コミュニケーション能力」は、パブリック・リレーションズ(PR)のインフラともいうべき基本要素。そのコミュニケーションに「目的」と「戦略性」、そして「双方向性」、「倫理観」を加えるとパブリック・リレーションズ(PR)へと発展していきます。

大学の4年間で高度な「コミュニケーション能力」を身につけることは難しいことです。私の所属する学術団体「グローバルビジネス学会」( http://s-gb.net )は、世界経済の発展に寄与する人材の育成を目的に今年4月設立されました。社会人だけではなく大学生にとっても「コミュニケーション能力」を高め、パブリック・リレーションズ(PR)を学ぶ最適な場ともいえます。

国際教養大学が創立された年の2004年は、私が早稲田大学で初めて「パブリック・リレーションズ論」の教鞭を執った年。これまで千数百人の受講生が卒業し、さまざまな分野で活躍しています。

企業側が求める人材像の1位に「パブリック・リレーションズ能力」となる日が、一日も早く来ることを願っています。その時の日本は、「個」の確立した強力な国になっているはずです。

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井之上喬著「パブリックリレーションズ」(2006年3月、日本評論社刊)は、おかげさまで5月30日付で第6刷が発刊されました。ご愛読ありがとうございます。

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2012年07月09日

グローバルビジネス学会特別講演会 霍見芳浩教授を迎えて
?日本に警鐘を鳴らし続けてきた稀有の学者

こんにちは井之上 喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

先日、アメリカからニューヨーク市立大学大学院教授の霍見(つるみ)芳浩さんが来日しました。この機会を利用し、グローバルビジネス学会のアドバイザリーでもある霍見教授に、同学会主催の特別講演でお話しいただきました。

ハーバード大学で、日本人初のDBA(経営博士号)を取得したことでも知られている霍見さんの講演テーマは「21世紀の第三次産業革命と企業の国際戦略の新局面」。

講演が7月の開催ということを考え、会場は気分転換にホテルオータニにあるレストラン「トレーダーヴィックス」で行われました。

■多くの日米問題をNYから発信
霍見さんとの初めての出会いは20年以上前の日米経済摩擦が佳境の時でした。当時は日本の経済力も強く、両国の経済摩擦激化の渦中NYにいながら両国関係を冷徹な目で観察・分析し日米双方に警鐘を鳴らしていました。

特に日本に対して、ある時は厳しい忠告、ある時は日本政府や企業へのアドバイスなど、さまざまな分野でコメントを発してきました。

霍見さんがハーバードビジネススクール時代に前米国大統領ジョージ・ブッシュJr.を教えたことは広く知られていますが、ブッシュJr.の大統領就任時には大統領としての適性に対して早くから危惧するなど、オープンでストレートな発言は常に聞くものに緊張感を与えたものです。

1990年代半ばに米国コダック社が富士フィルムを提訴した際には敢然と米国の理不尽な対応に対し批判し、富士フイルムに適切な助言を与え、同社を1998年のWTO勝訴に導きました。この時期、日米半導体問題や自動車部品問題などに関わっていた私は、霍見教授の来日のたびにお会いし意見交換を行ったものでした。

そんな霍見教授が講演の中でいまの日本の抱える問題についていくつかの助言を与えてくれました。

■新しい人材育成と歴史に学ぶことの重要性
霍見教授は、グローバル化とは、資金・情報・技術がインターネットを通じて世界中で回っていく事であり、それを支える経営システムが、次の時代に不可欠になると指摘しています。

そして日本はもっと変わるべきとし、日本のシステムを平たく言うと、20世紀の第2次産業革命に完全適応するマネジメント機構であり、21世紀になった今でもそれを引きずっていて、このまま第3次産業革命に突入するのは無理があると語っています。

これからの日本にはグローバル化を支える経営システムが必要とし、メーカーの企業経営には生産技術だけではなく、経営力つまりソフト力が求められるとしています。

規模の経済がもう通じない中で、「経営力」=「国際政治力」、「国際的人材」の投与がエッセンシャルであるとし、以下の3つを挙げています。

まず最初に、経営トップは進出先の大統領と会ったときに話せるか?それと同時に向こうも話したいと思っているか?

次に、日本の自動車に代表されるメーカーは、いかに米国社会に貢献つまり土着化(雇用創出)しているかを広く伝えているか?在米日系企業は米国での現地生産により、今や100万人の雇用を維持していることを強調すべきと話しています。

3つ目は、「生え抜きにこだわらない人事制度」や女性を登用しているか? 本社で実践していないことを世界で実践することなどできないと断言。
ある米国の日系自動車メーカーの有能な米国人マーケティングのスターが米国の競合会社からの途中入社で17年間も会社に貢献してきたにもかかわらず優遇されず、愛想を尽かして元の競合会社に戻った話しを聞かせてくれました。

霍見教授は米国の産業政策に影響を与えたビジネススクールの教え方に批判的で、その講義内容を見ていると、かつては製造業に戻ることを前提にプログラムが組まれていたが、今やその流れは消えてなくなり、Labour Economicsなどの労働関連の講義が完全に講義からなくなってしまった。

その結果、ビジネス自体が金融など、マネーゲームであるかのように教えられ今日の流れになっていると指摘しています。

同氏は、「今までその事を指摘し続けてきたが、最近やっとアメリカ内で注目されてきた。その結果、本社が中国などから人を呼び戻している。」とし、米国経済が製造業への回帰を図っていると語っています。このところオバマ大統領が米国の製造業復権に力を入れているのもうなずける話です。

特に根幹に関わる事業は自前で生産し、市場からのクイック・レスポンスをフィードバックさせ製造業を再生するとした手法は、日本企業が米国へ進出し、試行錯誤により独自のシステムを作り上げていくプロトタイプになっているとし、サプライヤーと協調して事業を行うクラスタリングの雛型になっているとしています。

イメージ商品であればある程、社会にいかに貢献しているのか?が重要になって来ると語っています。

霍見さんは日本企業について、80年代の日本企業ではない、新しい企業のあり方についてもう一度本格的に勉強し直さなければならないと強調しています。

また今の日本は「坂の上の雲」に代表される幕末から明治への転換期を学ぶ事が絶対不可欠であることを強調。当時は、教育制度、精神的武士道(=公的奉公)という土台があったとしています。

また教育問題についても触れ、現在の偏差値、指定校制は不要とし、英語教育を含めた教育の見直しの必要性を強調。今の日本には型破りの人材が必要で、面接に参加する人間に何を勉強したのかをひたすら聞くようにすべきだとアドバイス。

とくに日本人はディベートがあまりにも下手で、感情が表立ちすぎる。一方で、アメリカは小中高大、全てで勉強する。またまとめる作業もあるのでここで力がつくとしています。

英語の重要性は高まっているものの、いまだに日本は北朝鮮と同等レベルとし、日本は散々英語教育を受け、海外にも自由に出られるにもかかわらず、英字新聞1つ読めない。それを恥とも思っていない事実が恐ろしいと、英語教育を手厳しく批判しています。

日本から来る留学生を見ていると、女性は実に優れている人が多い。一方で、日本で優秀と言われている男性は、海外で落ちこぼれになる可能性が高い。教師として、彼らは要注意な人間であるとし、個人で勝負するグローバル社会で、彼らは一度挫折を味わうことになるが、そこから立ち直った人間は伸びるとしています。

そして日本企業の採用方針が変われば、日本の教育も変わるとし、日本企業の方針転換を促しています。

霍見教授の話の中には、経営トップのコミュニケーション力やさまざまなステークホルダーとの関わりなど、パブリック・リレーションズ(PR)が多く関わってくることがわかります。

まさにグローバルビジネス学会の第一回の特別講演にふさわしい内容でした。

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2012年05月28日

「しなやかな標準化」とは
?グローバルビジネス学会 第一回セミナーが開催

こんにちは井之上 喬です。

先日、「グローバルビジネス学会:Society of Global Business(SGB)」のセミナーが開催されました。

このセミナーは学会が毎月一回行う会員向けの勉強会で、4月にスタートした学会にとっては第一回目のセミナーとなりました。一回目は学会理事長の小林潔司京都大学教授が講師を勤め、「国際技術標準化戦略をめざして」というタイトルでご講演いただきました。

そこには、「技術立国」を普遍的な国家目標に掲げる日本への多くの示唆があります。

また小林教授が、講演の中で強調されていた、「しなやかな標準化」は、グローバルビジネスを考える上での道標であると認識を新たにしました。ぜひ、皆さんともこの考え方を共有したいと思います。

■これまでの日本の問題点
研究者としてのキャリアとして土木工学を最初に持つ小林教授は、日本が標準化戦略を考える上で抱える問題点を5つ列挙しています。

ひとつは、技術が優れていれば市場競争力があると考える技術中心主義、2つ目は、フレキシブルな資金調達を考えない資金計画の自己完結主義、3つ目の問題点は、狭い専門性の範囲の中でのみ技術を評価し、市場のニーズを考えない専門家主義、4つ目はシステムを構成するすべての要素に国産技術や技術基準を用いようとする国粋主義、そして5つ目の問題点は、要素技術にこだわるあまりシステム全体の構想力が欠如する要素技術偏重主義にあるとしています。

また、市場競争の形態変化についても言及し、世界はこれまで伝統的競争とされた価格競争や品質競争から、ビジネスモデル間の競争、つまり標準化競争や生き残り競争に移行していると論じています。

また道路交通事業におけるアセット・マネジメントについても語り、ベトナムの大学との連携による道路アセット・マネジメントに関する教育・研究活動について事例を紹介。

いくつかの解決すべき問題があるとしながらも、ベトナムの道路データを用いて、アジアでの京都モデル(日本が開発した標準化モデル)が適用可能であるとし、具体的には、道路建設に加えて維持管理ノウハウをパッケージで行うインフラ支援が可能であるとしています。

そのためには、競争関係にある世界に存立する2つの法体系(中東地域を除く)、即ちヨーロッパ(日本や他のアジア諸国を含む)中心のシビルロー(civil law:大陸法)とアングロサクソン諸国の英、米、加、豪中心のコモンロー(common law:英米法)との比較において、シビルロー型標準化モデルの適用が、それぞれの事情に合わせ開発・維持管理を行うカスタマイズ戦略の実現に適しているとしています。

■しなやかな標準化
小林教授は、「単一の技術標準が世界のどこでも画一的に通用するというものではない」とし、前述の「技術標準のカスタマイズは必ずや必要となる」と断言。

さらに技術標準を展開することにより付加価値が生まれるとし、そこに、「標準を活用して実行する付帯事業やノウハウの販売、補完的製品の販売、ブランドや集客力の活用、リクルーティングや社内活性化策としてのブランドの活用、市場情報蓄積による顧客満足の向上等の新しいビジネスチャンスが生まれる」と語っています。

技術が複雑化すればするほど技術を活用するサービスの重要性は増加し、知的所有権をオープン・ソースとする場合、標準化の対象となる製品は無料で提供されるが、それを基盤とした製品の展示・説明や受発注処理、決済、品質保証、メンテナンス、サポート、インテグレーション、コンサルティング、教育・出版、講演、そしてブランド活用などの付帯事業は有効な収益事業の対象となるとしています。

またインフラ技術の場合、コア技術が国際標準であっても、安全・安心技術や健康、快適等の価値を付加するための付帯事業にビジネスチャンスが生まれることもあるとモデル化にる新市場創出の可能性を論じています。

そして日本人から見た「日本的技術開発・経営モデル」で海外展開を一方的に推し進めるのではなく、世界の自由貿易の根底となる国際標準化の流れにいかに合理的に対応していくかが重要としています。

つまり「厳格な標準化(one-size-fits-all standards)モデル」ではなく、それぞれの国の実情に合った新しい「しなやかな標準化(one-finds-own-size standards)モデル」をアジアの国々とのアライアンスに基づいて共同開発すべきと主張。

この、しなやかな標準化モデルを構築するためには、日本企業が得意とする要素技術やアセンブリ技術の発展と、現場での適用能力を思考した新しい経営管理技術やビジネスモデル、そして制度的プラットホームの構築・提案が求められるとしています。

またこれまで主流であった欧米流のquality control(仕様規定)型標準から、quality assurance(性能規定)型標準への移行。それを規範とする新しい技術開発・経営に関する国際標準モデルの具体的な提唱が求められると語っています。

これからは日本型だけを押し通すのではなく、「互いを尊重」しローカライゼーションを推進することによるWin-Win関係の構築が重要であるとしています。

グローバルビジネスを考える上で、パブリック・リレーションズ(PR)は欠かせません。
「互いを尊重する」と言う考え方には「倫理観」「双方向環境」「自己修正」が内在し、私の考えるパブリック・リレーションズと通じるものです。

小林教授の講演の中で、さまざまな分野で標準化を実現させるためには、パブリック・リレーションズが重要であると語っていたのが印象的でした。
小林潔司理事長の講演は、グローバルビジネスを考える上での不可欠な視点が示され、学会として大きな一歩が踏み出せるセミナーとなりました。


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2012年05月07日

キックオフミーティングが開催
 ?グローバルビジネス学会

こんにちは井之上 喬です。

皆さん、ゴールデンウィーク(GW)は、いかがお過ごしになりましたか。私は、都会の喧騒から離れ、新緑の長野で久しぶりにじっくり自分と向き合う時間を持つことが出来ました。

今年の長野は、例年よりも桜の開花が遅く、あちこちで満開の桜を目にすることができ、ダブルのお花見を満喫することができました。

4月23日のこのブログでもお話したように、4月は新年度の始まりとともに、「グローバルビジネス学会:Society of Global Business(SGB)」( http://s-gb.net )の発足(4/23)とキックオフミーティング(4/27)などで多忙な日々を送りました。

■キックオフミーティングでの思い
とりわけ4月27日のキックオフミーティングには、30名を超える役員・アドバイザリーメンバーの方々が参加しました。

2012年4月27日グローバルビジネス学会 キックオフミーティング1


出席者はまさにそれぞれの分野で頂点を極めた方々。関西はもとより、中にはシリコンバレーからこの日のために来日してくださった方も参加。

各人のお話は自信に裏打ちされた説得力のあるもので、グローバルビジネス学会への期待の高まりを感じさせられました。

話のテーマは、大きな変革が求められている日本と厳しい世界情勢のなかにあって、学会が人材育成でどのような役割を果たすべきかといったことに絞られました。

驚いたことに、出席者の皆さんがそれぞれ異なる途を歩んできたにもかかわらず、この日本に対する想いが同じであることに気づいたときには感動しました。

志を一にしている人の集まりだからなのか、それぞれの話は非常に刺激的であるとともに、調和的なものでもありました。

初めての集まりということもあってか、参加者ひとり一人の思いや抱負が伝わり、あっという間に制限時間の2時間が経過。

2012年4月27日グローバルビジネス学会 キックオフミーティング2

■毎月一回のランチョンを定例に
小林潔司理事長(京都大学経営管理大学院教授)、大竹美喜会長(アフラック創業者件最高顧問)を始め皆さんが、今後毎月定期的な集まりを持つことについても多数賛同があったことは嬉しい限りです。

グローバルビジネス学会の担う役割の大きさを痛感させられました。

この毎月の集まりは、原則第3土曜日に「ランチョンミーティング」として開催され、毎回テーマを決めて行います。

スピーカーは学会の役員・アドバイザリーメンバーの中から必要に応じて選定され、それぞれのテーマで発表をしてもらいます。どのスピーカーも高名で実力のある方々ばかり。

また海外からの来訪者が会ったときには、その方にもスピーカーとしてお願いします。

これら豊富なメンバーによる発表を通して、次の日本を担う若い会員に対してさまざまな知見の提供とアドバイスを行って頂きます。

早速5月19日に第一回目が行われる予定です。トップバッターの講師は小林潔司理事長です。

私もこのゴールデンウィーク(GW)に考えをまとめ、なるべく早い時期に発表したいと思っております。私の取り上げるべき最初のテーマは、日本の社会に欠けているパブリック・リレーションズ(PR)の社会浸透についてです。


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2012年04月23日

グローバルビジネス学会がスタート
〜人材育成を目的に経験豊富な専門家が参画

こんにちは井之上喬です。

このたび「グローバルビジネス学会」が発足しました。

「グローバルビジネス学会:Society of Global Business(SGB)」( http://s-gb.net )は、グローバルビジネスに関する研究発表、知見や知識の交換、会員相互および内外の関連学会との連携強化を通して国内経済の活性化はもとより、世界経済の発展に寄与する人材の育成を目的とした学術団体です。

本学会の理事長には京都大学大学院教授の小林潔司さん、また会長にはアメリカンファミリー生命保険会社の創業者で最高顧問の大竹美喜さんが就任しています。

学会の特色は、グローバル経験の豊富なアカデミアとさまざまな分野で経験を持つビジネスの実務家とが協力し合い、世界的視野に立って国際的連携を深めていくことのできる人材を育成するところにあります。

■学会設立の背景
「グローバル」という言葉が日本に頻繁に登場するようになったのは1990年代。IT技術とりわけ通信技術が発達した日本では、「ウインドウズ95」の登場により、それまで意識されていた「国際化」から、地球規模すなわち「グローバル」規模での活動が求められるようになります。

しかし現実には、日本人の語学べた、国際的視野や体験の欠如などで、一部の企業を除くとグローバル化は単なる掛け声に終わっていると言えなくもありません。

昨年の3.11の大震災は日本人を覚醒させてくれました。このブログの本年3/12号にも書きましたが、大震災は世界が単に地理的につながっているだけでなく、金融経済やモノづくりに必要な物流・サプライチェーンなど、企業のあらゆる活動がネットワーク状に連鎖していることを示したのでした。

震災被害や超円高の進行そして地球規模の顕著な変化を受けて、大企業にとどまらず多くの企業がその活動の主戦場を国内から海外へと移そうとする中、各分野で新たな変化に対応できる人材育成が、日本の喫緊の課題として浮上しています。

そんななかの今年2月、もはや危機的状況にある日本や世界をどうすれば変えられるのか?
ともに考え語り合うようになった志を同じくする方々と議論を深めながら、学会設立に向けた準備に着手しこのたびの発表となりました。
また、グローバルビジネス学会の4月23日配信のプレスリリースhttp://s-gb.net/news/ )にもあるように、「グローバルビジネスは、単に国際的な事業展開を行うことにとどまらず、企業や個人が、経営資源を活用して目的達成のためにさまざまな地域のステークホルダーと良好な関係構築を行い業務遂行すること」にあるといえます。

多様な価値観が混在するグローバル社会では、倫理観に支えられたコミュニケーション能力に加え、必要なときに自らを修正できる能力を有するしっかりした人間力ある人材が強く求められています。

この学会はこうした背景を踏まえ、グローバルビジネスという極めて実務的で多様な研究領域へのアプローチと有為な人材育成のために、学者や研究者だけではなく、経営、技術、生産、人事、労務、法務、財務、マーケティング、パブリック・リレーションズ(PR)などさまざまな分野で活躍する実務家や専門家への参加の呼びかけを行っています。

■知見・経験豊富な専門家との交流を
この学会の特色は、前にもお話したように各分野で著名な実績を挙げてきた、学者、研究者、実務・専門家が集まり構成されていることです。

学会の小林理事長は、京都大学経営管理大学院の院長をこの3月まで務められ、現在同大学院経営研究センター長。

ワシントンの世界銀行やヨーロッパのOECD、WHOで客員研究員などをやられ欧米の研究事情に精通し、世界動向をしっかり押さえておられる方。学外の企業とのつながりも多くビジネス・マインドをお持ちの異色の学者です。驚くべきは、これまでご本人が書かれた査読学術論文(学術的にチェックの厳しい)がなんと370編に及び、約50冊もの本を著していることです。

いるも明るく朗らかな情熱家で、新しいものへの探究心が強いこれからの京都大学を牽引していかれる方です。

大竹美喜会長は、アフラックの創業者として日本初の「がん保険」を立ち上げ、同社を在任中に米国本社をはるかに凌ぐ資産5兆円企業に育て上げた名経営者。

ある会合で知り合ったのを契機にもう20年近くのお付き合いをさせていただいています。早稲田大学の私の授業(パブリック・リレーションズ概論)でも講義をしていただいたり、大竹さんが東京都社会福祉協議会会長時代に私を「家族力大賞」の審査委員に誘ってくださったり、こうしたお付き合いを通して大竹さんの人生哲学に触れ価値観を共有するようになりました。現在は各方面で人材育成のために東奔西走されています。

それ以外にも、各分野からさまざまな体験を持つ専門家が役員やアドバイザリー・
ボードを引き受けてくださいました。

ベンチャー企業の成功者、金融専門家、グローバル・マーケティングのエキスパー
ト、政府高官(官僚トップ)を長年務めた方、ファンドマネジャー、国際弁護士・会
計士、国際問題専門の学者や学長経験者、日本の携帯電話産業の礎を築いた経営者、
ネット保険の創業者、ジャーナリストなど、多彩な顔ぶれです。メンバーの方々には
学会のホームページを通じてさまざまなメッセージを発信していただきます。

メンバーの皆さん、学会の目的に賛同いただき感謝の念に堪えません。この場をお借りして御礼申し上げます。

また私の役割は、会長を補佐する副会長。国際学会として学会がスムースに運営されるよう努力してまいりたいと思います。

人材育成が私のライフワークです。2004年に早稲田大学でパブリック・リレーションズ(PR)の教鞭をとり、これまでに約1500名(院生も含め)を社会に送り出しました。グローバルビジネス学会が、社会人への新しい教育的啓発の場として役割を果たすことができればこれに勝る喜びはありません。

世界はとりわけ政治・経済分野で混迷状態にあります。人材育成を目的とするグローバルビジネス学会が、世界の抱えるさまざまな課題に果敢に挑戦し解決に導くことのできる有為な人材を一人でも多く輩出し、閉塞状態の日本に新風を巻き起こすことを願っています。

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2011年05月30日

東日本大震災が教えたもの
〜「絆(Kizuna)」の大切さを改めて認識した日本人

皆さんこんにちは井之上 喬です。

東日本大震災から2ヶ月半、いま被災地域には復興の響きが広がり聞こえています。

フランスのドービルで開催されたG8サミットでは、5月27日の首脳宣言で、東日本大震災の復興に取り組む日本との連帯を誓い、犠牲者に対する追悼と被災者の勇気に敬意を表明。また各国首脳は日本の震災復興への協力を表しました。

一方、日中韓の観光担当相会議では、2日目の5月29日に観光への風評被害を防ぐために共通の危機管理マニュアルを作成することを発表。

■「絆(Kizuna)」を再認識した日本人
今回の震災は、日本人が古来有していた人と人との「絆(きずな)」の大切さを教えてくれました。

絆は人と人、人と社会(地域)、国と国とのつながり(関係性)を指しますが、核家族化が進み家族や地域社会が崩壊していく中で起こった災害は、人間のつながりが生きていく上で如何に必要かを私たちに気づかせてくれました。

とりわけ風評被害にあった被災地での頼りは、互いが信じあえる共同体における双方向の円滑なコミュニケーション。そしてその上に成り立つ、家族や友人、地域の人たちとの深い絆です。

以前このブログや2009年7月に出版した『「説明責任」とは何か』(PHP新書)の「あとがき」にも書き記したように、日本における「絆(kizuna)」はハイコンテクスト・カルチャー(high context culture)における絆といえます。

つまり積極的に相手に伝える努力をしなくても、日本のような同質社会では、以心伝心で相手に自分の考えを伝えることができますが、人種や言語、文化が異なるグローバル社会では、ローコンテクスト・カルチャー(low context culture)型でないと相手にうまく自分の考えを伝えることができません。

その意味で日本にはローコンテクスト型の絆づくりが求められているといえます。これこそパブリック・リレーションズ(PR)です。

グローバルの一員として、日本がいま必要としているのは、この新しい「絆(Kizuna)」を社会に根付かせることだと思うのです。

パブリック・リレーションズはさまざまなステークホルダーとの関係構築を重視するリレーションシップ・マネジメントです。

目的達成のために、倫理観双方向コミュニケーション、そして自己修正が機能したパブリック・リレーションズが強く求められています。

■井之上PRと日本PR研究所の試み
最近、私の経営する会社、井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)と日本パブリックリレーションズ研究所(JPRI)は、それぞれCSRの一環として、地方自治体などの公的機関、自治体観光局や観光業に携わる諸団体に対する無償マニュアルの提供や無料相談を開始しました。

具体的には、「公的機関向けツイッターマニュアル」の無償提供(井之上PR:5月12
日発表)と自治体観光局や観光関連団体への「風評被害を避けるための『情報発信方法』の無料相談」(JPRI:5月25日発表)です。

被災地では電気や通信、交通機関は切断され、地域はもとより外部との連絡が一切途絶える中、ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が思わぬ働きをしました。

井之上PRでは、地方自治体などに対して「公的機関向けツイッターマニュアル」を5月12日から無償提供しています。このマニュアルは公的機関の広聴広報、PR部門などを支援するために用意されたもので、誰でも簡単に利用できるよう作成されています。

同社は、東日本大震災で防災無線の破壊などにより自治体から住民への情報発信手段が寸断される中、ツイッターなどのSNSが活用されたことを重視、CSR活動の一環として実施したもの。

通話制限を受けた携帯電話からでもアクセスできるツイッターは、その後の余震や避難場所、生活用品の支給状況などについても情報提供を続けることができ、被災地と救援主体との双方向のコミュニケーション環境を可能としています。

一方JPRIでは、東日本大震災で風評被害の深刻な影響を受けた観光業界、とりわけ自治体観光局や観光関連団体に対し、「風評被害を避けるための情報発信方法」の無料相談を5月25日より開始しました。

3・11以降、政府の広報体制の不備が指摘されていますが、一般的に風評被害は危機管理状態とりわけ情報発信者からの情報が一元化されないときに生じますが、情報混乱による被害は、日本のメディアにとどまらず、外国メディアにも及んでいます。

不確実情報による風評被害はグローバルに拡散され、日本製品の輸出にも悪影響を与えていますが、深刻なのは日本の観光業。

中国をはじめ、韓国、台湾からの観光客は激減。先日の日中韓首脳会談の際も中国の温家宝首相や韓国明博大統領が被災地に赴きイメージ払拭に努めるなどしました。

JPRIは無料相談の対象を、周辺地域の観光業界にとどまらず、農林水産業、畜産業、食品製造などに携わる機関で自らが情報発信を必要とし、且つPR意識のある団体としており、自治体関係部門では、観光協会、旅館組合、酒造協会、組合などが含まれています。

相談内容は、ニュースリリースの作成やメディアの取材誘致、記者会見の実施方法などに関するアドバイス。また、キャンペーンの打ち方や海外(特にアジア地域)への情報発信方法など。期間は6月30日(木)までですが、状況を見て期間延長もあるとしています。

PR会社にとっては顧客企業へのPRそのものがCSRともいわれています。社会に良い影響を与える顧客企業を持つことで、PR会社の企業への支援が、社会をより良い方向へ変化させることになるからです。

――――――――――――――――――――――――――
井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)は5月12日に地方自治体など公的機関向けに「ツイッターマニュアル」を無償で提供することを発表しました。ご興味のある公的機関の皆様は是非、お問い合わせください。詳しい情報はWebサイトでご覧になれます。

            ◇

日本パブリックリレーションズ研究所(JPRI)では、東日本大震災で風評被害の深刻な影響を受けた観光業界、とりわけ自治体観光局や観光関連団体に対し、「風評被害を避けるための情報発信方法」の無料相談を5月25日より開始しました。詳しい情報はWebサイトでどうぞ。

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投稿者 Inoue: 14:14

2011年03月28日

早稲田vsウォートンMBA学生のビデオ討論
 ?被災地への思いを共有して

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

先日私がパブリック・リレーションズ(PR)の教鞭を執る、早稲田大学大学院公共経営研究科の学生と米国ペンシルバニア大学大学院、ウォートンスクールの定例ビデオ・カンファレンスが行われました。

この定例討論は、公共経営の学生とウォートンスクール/ローダーインスティチュートの学生との間で毎春行うもので、昨年は「CSR」をテーマに日米企業のCSRに対する取り組みとその違いについて論じ合いましたが、今年は直前の震災発生のため当初の予定を変更し「東日本大震災」にテーマをしぼりました。

ウォートン側はMBA生、早稲田側からの出席者は、終業式を中止にしたこともあり、院生2年の三加茂圭祐君の声かけでアジア太平洋研究科や教育研究科など学内の他の院生にも参加してもらいました。またコーディネータとして、ウォートン側はプログラム・ディレクターの長友恵美子さん。早稲田側からは私がモデレータとして、そしてまとめのためのレクチャーを行いました。

早稲田大学大学院公共経営研究科の学生と米国ペンシルバニア大学大学院、ウォートンスクールの定例ビデオ・カンファレンス

■被災地へ思いを馳せながら
連日地震・津波・福島原発のニュースであふれる日本の学生と、大災害を米国から注視するウォートンスクールの学生とのビデオ討論会は、これまでのものとは異なったものになりました。

討論会が始まる前に、ウォートン側からのたっての希望で言語文化部長のDr. Kenric Tsethlikaiから東日本大災害に対する丁重なお見舞いの言葉をいただきました。

双方の学生紹介の後に、さっそく討論に。討論のテーマは3つ設定され、1つ目は、「今回の大震災時の日本政府の対応」について、2つ目は「この大震災とソーシャルネットワーク(SN)の関わり」、最後は「日本でのSNSの普及と将来;実名vs匿名」について。

最初の、「今回の大震災時の日本政府の対応」では、海外のメディア(CNN、FOXなど)における、日本政府の福島第1原子力発電所への対応についての批判を日本人としてどう受け止めているのか? また、日本政府のこれまでの対応をどのように評価しているのかなどについて討論が行われました。

続いて、放射線リスクに対する日米メディアの反応の違いについて論じ合いましたが、日本と比べ情宣的な米国メディアの報道について、日本側がどのように感じているのかについても話し合われました。

2つ目の「この大震災とソーシャル・ネットワーク(SN)の関わりについて」では、今回の地震で「SNS」がどのように利用されていたかといったもので、具体的には家族との連絡や地震情報を得る時、また情報を発信する際のSNSの利用状況などについて討論が行われました。

また今回の地震の経験で固定電話や携帯電話が使えなかったことなどから、将来はツイッターや、スカイプ、FacebookなどSNS利用の傾向がより高まるのではないか、といったことについても話し合われました。

3つ目の「日本でのSNSの普及と将来;実名vs匿名」については、実名公表をためらわない米国に対して、匿名的な利用傾向が強い日本では、Facebookより匿名で自分の気持ちが日記形式で書けるMixiへの人気が高いことなども話し合われました。

またFacebookのもつ魅力の一つである、表面的ではあるが実名で日々の行動を書き記せる、利便性の高いサイトの魅力についても討論。

面白いことに米国でのFacebookは就活に活用されていて、企業側が書類選考の際に実名で登録されている学生の情報にアクセスし参考にするケースもみられるようです。

一方今回の災害で、日本側から、これまで信頼性の高かった携帯電話の機能不全が露呈したことが明かされました。これらが実名でのツイッターやFacebook利用によるSNSへの信頼性を高め、今後日本での利用増加が見込めるのではないかといったことについて論じ合われました。

■ルイスの文化モデルと日本人のソフトパワー
討論の最後に、日本人被災者の行動に対する世界からの賞賛とその文化的差異について話し合われました。

ウォートンの学生たちは被災地で整然と並ぶ日本人を見て、「日本人ってすごい」と感じたようです。

またこのところの海外からの報道を見ても、日本人はどうしてあの様な行動がとれるのか西洋人にとっては興味が尽きないようです。

授業では、リチャード・ルイスの「3つの文化モデル(Lewis Model)」を使い、西欧人と日本人の文化的相違を考察しました。

このモデルは、西欧諸国にその特徴がみられるLinear-Active(線状的)文化、そしてラテン諸国にみられる Multi-Active (複合的)文化、最後に、日本を代表するアジア諸国のReactive(反応的)文化を分類し、それぞれがもつ特性を当てはめたモデル。

授業では、「避難所に物資が届いた時に我先にと、物資の取り合いにならずに整然と列を成して順番を待っている日本人を見てびっくりしたが、これは日本では普通のことなのでしょうか?」といった質問も米側から飛びだしました。

日本人は、冷静でパニックに陥らず、規律正しく、自然に敵対することなく融合し、地震など人間より大きな自然の力によって起きた事象に対しては受け入れる傾向が強いことなども話し合われました。

また前回紹介した、ジョセフ・ナイ、ハーバード大学教授の「ソフト・パワー」についても討論し、この震災とその復興を通して、日本がソフトパワーを世界に示すいいチャンスであることも論じ合いました。

1時間半の時間はあっという間に過ぎ、定刻をオーバーしての議論でしたが、次世代を担う若者が地球規模で助け合おうとする精神に心を打たれるとともに、世界が良い方向へ進んでいくことを感じさせてくれた授業でした。

授業の後に長友さんからの話しで、この討論に参加した学生が中心となって、今週ウォートン内で数百人規模の日本の被災者のための募金活動パーティが開催されるとのこと。

このような募金パーティは、同大学内でも複数あるようで、日本支援の輪が広がっているようです。

最後に私の心に残った話は、日本側学生の一人、森田昌代さん(アジア太平洋研究科2年)のエピソードです。

討論会前日にペルーから帰国した森田さんは、ダラスから日本に向かう飛行機に乗り合わせた一人の米国青年と知り合います。彼は以前「ジェット・プログラム」(文科省主催)で東北地方のある町に英語教師として滞在していたようで、今回の震災を知り、何とか被災地に戻り現地の人たちを助けたいといたたまれず飛行機に飛び乗ったといいます。

多くの外国人が次々と日本を離れていくなか、放射能の危険も顧みず被災地に向かうこの青年の勇気と彼の無事を祈らずにはいられません。


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投稿者 Inoue: 10:25 | トラックバック

2011年01月31日

古川貞二郎元官房副長官を迎えて
〜「パブリック・リレーションズ概論」

こんにちは井之上 喬です。

2004年にスタートし、私が教鞭を執る早稲田大学の「パブリック・リレーションズ概論」。この授業のなかの「組織体とパブリック・リレーションズ」のシリーズでは毎年、大手企業の経営者広報部長海外の企業経営者、そして自治体や政府で活躍した方など広範にわたってさまざまな講師を外部からお迎えしています。

今回はその中で、政府の中枢で日本国の運営にあたった元内閣府官房副長官の古川貞二郎(東京都社会福祉協議会会長)さんをゲストにお迎えし、「リーダーのあり方と政府広報について」というテーマでお話しいただきました。

■在任8年7ヵ月の軌跡を語る
古川さんについては、これまでこのブログでもたびたび紹介しましたが、私との出会いは、4年前の「東京都社会福祉協議会プロジェクト」への関わりがきっかけ。

古川さんはその経歴から異色な官僚といえます。九大法学部を1958年に卒業し、長崎県庁を経て1960年に厚生省へ入省。厚生省保険局長、厚生事務次官などを歴任の後、1995 年からは、前任者の石原信雄氏を引き継ぎ行政出身の内閣官房副長官に就任。

8年7ヵ月にわたり村山富市、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎の5 人の総理に仕えるなど、在任期間は歴代最長記録の持ち主で、官僚トップとして内外の数々の政策づくりに関ってきた方です。

古川さんの首相官邸での勤務は、74年の内閣参事官時代の田中内閣を皮切りに、三木内閣、福田内閣、その後首席内閣参事官として中曽根内閣、竹下内閣、宇野内閣などで計6年強。官房副長官時代も入れると都合15年以上もの長きにわたって、11人の総理大臣と関わりを持った人としても知られています。
古川さんは授業の中で、8年以上にわたって官僚トップである官房副長官として、どのように国家や国民のことを考え行動をとってきたか、また政府における専門家不在の広報活動の問題点や今の日本人に欠けているものは何なのか、そして、これからのリーダーの果たすべき役割と心構えはどうあるべきか、といった話をしてくださいました。

■リーダーたる者の心構え
そのなかで、首相や官房長官を支える官僚トップとして、中立公正で国家国民のために仕事をする上で次の3つの重要な事柄について話をされました。

1つ目は、「大義とは何か」についてでした。総理大臣を擁する政府の仕事はいってみれば、社会保障から教育、防衛・安全保障まで広範にわたり森羅万象にまで関わり重責を担う仕事。古川さんはさまざまな問題に直面した際、それらの問題を解決する上で、まずそこに「大義」があるのかどうかを考えなければならないと語っています。そして、即座に判断をしなければならないときに持たなければならないのは、「判断の物差し」であるとしています。

次に「時代の流れを読む」ことの重要性を挙げました。常に先を読んで政策立案することで政策の選択の幅を広げ、最終的に政治による判断に委ねるとしています。

3つ目は、「知恵を出す」ことの重要性。小泉政権時代のハンセン病訴訟を例に挙げ、ハンセン病患者に対する国の不当な扱いが地裁判決で政府敗訴となった時に、その問題についての、道理や道筋がどのように立つのか熟慮し、知恵を出し合い最終的に控訴を断念したことについて話されました。

最後に、混乱する日本の政治やさまざまな分野でリーダー不在が叫ばれている中、「これからのリーダーが果たすべき役割と心構え」について受講生に熱く語りかけました。

古川さんは8つの心構えを挙げました。ここでそれらを箇条書きに紹介すると次のようになります。

1)時代の変化・洞察力を読む目
2)国際的視野と中長期的視点
3)信念を持つ?逃げない、諦めない、道は開ける、ぶれない
4)決断と実行、責任
5)受信力と発信力、戦略的広報
6)公平公正と信頼
7)人知の及ばないものがあることを知る
8)悲観主義からの脱却?小渕総理のコップ半分の水を例に(コップの水がもう半分しかないとみるのか、まだ半分あるとみるのかで生き方ややり方が変わる)

これらの話を聞いて、感じたことは、古川さんの話には、パブリック・リレーションズ(PR)の3原則ともいえる、「倫理観」「双方向コミュニケーション」「自己修正」が無意識のうちに組み込まれており、日々それらが実践されているように感じられたことです。また講義の中でご自身の内に、ものを見る際にPR的な視点も含め、さまざまなものの見方が働いていることが感じられ、私にとっては嬉しいことでした。

最後に次世代を担う若者への期待として、「挑戦的な気持ちを持て」と常に物事にチャレンジする精神と、「大河の一滴」であることを意識することで、自分の行動が最初はとるに足らないものであっても、やがて大河のように大きな流れをつくりだすことができると考え行動することが大切であると説きました。

「マネジメント」の著者である、ピーター・ドラッカーはマネジャーの資質の中に、「学ぶことができない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、1つだけある。才能ではない。真摯さである。」と語っています。つまり人間にはいかに努力しても後天的に身につけ得ないものがあり、それは「真摯」な取り組み姿勢。

私は古川さんとお会いするたびに、どのようなときにも誠実さを失わず、目標に向けて忠実にまた情熱的に取り組むその真摯な姿勢に心を打たれます。古川さんどうもありがとうございました。

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2010年10月07日

早稲田大学、後期授業スタート
?これまで1000名の学生が受講、社会で活躍

こんにちは、井之上喬です。

先週、早稲田大学で私が教べんを執る二つの授業がスタートしました。

一つは2004年にスタートした、学部間の垣根を越えたオープン教育センターの「パブリック・リレーションズ概論?次世代のリーダーのために」、もうひとつは大学院公共経営研究科で昨年から始まったパブリック・リレーションズ(PR)講座(春学期/秋学期)です。

写真左「PR概論を教えている法学部校舎(8号館)」 写真右「パブリック・リレーションズBを教えている公共経営研究科校舎(26号館)」

PRの基本を教える学際授業「パブリック・リレーションズ概論」は、パブリック・リレーションズの理論を中心とした授業で、ケース・スタディも交え、幅広く奥行きの深いパブリック・リレーションズを包括的に学ぶことができます。

パブリック・リレーションズとは何か、なぜ今必要とされているのか、また米国で誕生したその発展史や戦後GHQにより導入されたパブリック・リレーションズがなぜ日本で育たなかったのかなどの歴史的考察も加えた授業です。

ちなみに前期は、実践寄りの「パブリック・リレーションズ特論」をゼミ形式で教えていますが、この「特論」は「概論」受講者が履修できます。

■これまで1000人を輩出
「概論」のゲスト講師は毎回多彩で、企業経営者(国内/外資系)、企業の広報責任者、政府高官など各方面で活躍されているかたがた。

総合大学では初の講座としてスタートしたこの授業は、04年のスタート時は定員94名のクラスでしたが、現在は200名を超える受講生が参加。今年は235名のクラスになりました(2008年は休講)。

大教室ですが、できるだけ多くの人に参加してもらいたいと考え、思い切って応募者全員を受け入れるようにしています。

毎回、受講生の熱気を感じさせる授業で使用する教室は、数年前に新築した法学部の校舎。扇型の教室は全体が見渡せ広さを感じさせない快適な教室。

一人でも多くの学生を世に送り出したいとの思いで始めたこの授業も、これまで1000名を超える学生がこの授業を受け社会で活躍しています。

■ウオートン・スクールとのビデオ授業も
一方、大学院公共経営研究科でのPR講座は少人数のゼミ形式。同研究科科長の縣公一郎と授業内容を相談させていただき本年から始めています。

春学期と秋学期の2つのコースで、春学期は理論中心の授業に対し秋学期は事例・実践中心の授業。

実務上直面している課題や成果をもとにディスカッションを行い、個々の受講生によるライフサイクル・モデルをベースにしたプレゼンテーションも計画されています。

また特別授業として、米国ペンシルバニア大学ウオートン・スクール(MBA)の学生とのビデオ・カンファレンスによるケース研究も行う予定です。

厳しさを増す組織体経営にあって、間口が広く奥行きの深いリレーションシップ・マネジメントであるパブリック・リレーションズが、如何に経営の中枢に組み込まれるべきかを理解できるような授業にしたいと考えています。

このブログでも繰り返し述べていることですが、グローバル社会で、日本が安定的発展を遂げるには「次世代リーダー」の育成が不可欠。

パブリック・リレーションズの理論と技術を習得し実践することは「自立した強い個」を育み、リーダーとしての素地を築くことを可能とします。

アメリカでパブリック・リレーションズの実務家は現在20万人を超えています。日本で広報に携わる人の数は1万数千人と極端に少なく、そのほとんどは大学で正規の教育を受けていないのが現状。

また多くは組織体のジョブ・ローテーションに組み込まれ、一部を除いて広報の仕事に腰掛的に携わっているのが現状。これでは世界と戦えるはずはありません。

この授業を通して、パブリック・リレーションズの持つダイナミズムを学び、しっかりしたカリキュラムに基づき専門教育を受けたパブリック・リレーションズの実務家が一人でも多く誕生することを期待しています。

「パブリック・リレーションズ(PR)とは、個人や組織体が最短距離で目的を達成
する、『倫理観』に支えられた『自己修正』と『双方向性コミュニケーション』をベースとしたリレーションズ(関係構築)活動である」

これから受講生たちがどのように成長していくのか楽しみにしています。この授業で学んだことが将来それぞれの人生で生かされ、役立つものとなっていくことを願ってやみません。

受講生の皆さん、そしてTAの三加茂くん佐藤さん、これからよろしく!

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投稿者 Inoue: 09:11 | トラックバック

2010年01月11日

北川正恭さんを授業に迎えて
〜マニフェストの勝利

こんにちは井之上喬です。
今日1月11日は「成人の日」。皆さんいかがお過ごしですか?

先日、2004年4月にスタートした早稲田大学での私の授業「パブリック・リレーションズ概論」のゲスト・スピーカーに、同大学院公共経営研究科の北川正恭教授(前三重県知事)をお招きしました。北川先生は私の授業には2005年から登壇してくださっています。

北川さんはマニフェスト選挙の立役者。2003年の選挙から日本に導入したマニフェスト選挙は昨年7月の都議選に続き8月の衆議院議員選挙が総仕上げとなりました。1955年以来の自民党の長期政権を倒し、選挙によって初めて民主党政権を誕生させました。今回の講義では、マニフェスト選挙が果たした役割や民主主義社会を完成させるために何をなすべきなのか。これから社会人となっていく、若者への強いメッセージが込められていました。

■結実したマニフェスト選挙
昨年8月の衆議院議員選挙はマニフェスト選挙として各党が政権公約を掲げました。メディアも各党のマニフェストを紹介し国民への投票行動を促しました。その結果選挙民は、マニフェストがより明確で国民目線をもった民主党を、次の政権党として希望を託す相手として選択したといえます。

北川教授は、「これまで日本の選挙は政策で争われることなく、お願いや陳情に訴えてきた」とし、選挙は「地盤」「看板」「鞄」の「ドブ板的なキャンペーンにしがみついてきた結果が860兆円の借金をつくった」。そして一票による投票で55年体制を壊し、政権交代で国民主権を実現したとしています。「マニフェストはお願いから、約束に変えるために提唱されたもの」とし、マニフェストが国民への約束事のために使われだしたと語りました。

北川さんはまた、気象学者エドワード・ローレンツの「北京の蝶々」のたとえ話を引き出し、「北京で一羽の蝶々が羽ばたくとニューヨークでハリケーンが生じる」とバタフライ効果について話をし、江戸末期に、坂本竜馬が羽ばたくと共鳴して、西郷隆盛、勝海舟らが羽ばたき、次から次へ共鳴者による羽ばたきで明治維新が実現したと語っています。マニフェストで一羽の蝶々を羽ばたかせ、他の知事が共鳴しマニフェストが鳴り全国へ伝播されたと語っています。

また、「戦後、世界で50年以上も政権が変わっていない国は、日本以外にキューバと北朝鮮だけ」と断じ、日本は「世界第二の経済大国とはいわれても、民主国家といわれたことはなかった」と日本の未成熟な民主主義を指摘。しかし、権力の交代は通常武力戦争によってなされ、「一票による革命で政権交代できる国は世界200カ国のうちわずかしかない。今回の日本の歴史的な政権交代は、『一票による革命』で実現した」と、先達が54年間、営々と積み重ねてきたものが初めて実現したことは、世界に誇りうることで大いに情報発信が可能としました。

北川さんは、「民主主義は民が主力の制度、民が主権者だからこそツー・ウエイ性を有するパブリック・リレーションズ(PR)が機能し、新しい時代にあった政治行政が行われなければならない」と情報公開が進むことで、政治のありようも変わり、パブリック・リレーションズがより求められることを強調。

しかし「マニフェストは特定の政党を応援するものではない」とも説いています。むしろ真の民主主義国家において、「政権党がマニフェストを思うように具体化できないときは、国民は次の選挙で政権交代させることができる。」とし、今回の選挙同様、国民の一票で政権交代を実現させ新しい政党を選択することができるとしました。私たちはあまり自覚していないことかもしれませんが、今回の選挙を通して国民有権者が「一票の重み」について身をもって体験したといえます。

一票で、民意が権力者を交代させた。国民の民意で政治が変わるようにしなければならない。民主党への期待は高いが、今回4年に1回で枠組みが変わるとは思えません。北川さんは「10-15年に1回政権交代させる文化をつくることが大切。なぜなら長期政権は権力を腐敗させる」と自身の三重県知事時代の経験を語り、「失政すれば政権は崩壊することを3?4回行えば日本は真の民主国家になる」と将来起こるべきイメージを話してくれました。

■若者へのメッセージ
北川教授は、日本の財政の現状に触れ、「国の860兆円の借金は私たちの世代がしでかしたこと。我々国民が政治家や官僚に白紙委任状を出し続けてきた結果」であることを反省。お任せ政治を許し、甘えたい放題甘えた結果、借金を作ってしまったと新しい世代の人に向かって謝罪。

また、民主主義は生活者・国民の視点が必要であるとし、日本の「納税者」はアメリカでは「タックス・ペイヤー(tax payer)」と表現。両者の違いは、日本では国家の立場から見て、「税金を納める人」、反対に米国では支払う人の立場でタックス・ペイヤー。この逆は「タックス・イーター(tax eater)」つまり政治家や役人を指し、これまで国の説明責任はタックス・イーターに行われていたとし、タックス・ペイヤーとしての自覚をもち説明責任を求めるべきことを強調。

以前福田赳夫首相(1976-1978)は日本の政治レベルの低さを憂いて国民のガバナビリティ(被統治者能力)について語っていましたが、北川さんは、「政治家のレベルはその市民のレベル」。権力を持っているのは国民であることを自覚し、「特定の権力者をつくろうとせず、民主主義政治の質を高めなければならない」。そして、「将来前世代が贅沢三昧をし、抱え込んだ借金を皆さんが返さなければならなくなる、ゆえに投票に行ってもらいたい」と強く訴えたのです。

北川教授は、地元三重にもつながる近江商人の「三方よし」、つまり「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」の考え方を英語に言い換えるとCSRになるとしています。「法律」だけにとらわれず、また売り上げも利益も大切であるが、「浮いた利益」だけを求めず、「道義的にお天道様に恥じないような生き方をこそ再認識しなければならない」と訴えました。

そして「お天道様に説明責任のつくビジネスができなければならない」とし、企業が永続的にサスティナブルであるためには、コミュニティに対しきちっと責任を取っていなければだめだとしています。そのためには基本に倫理観と責任感が確保される必要性を説いています。

北川さんは、人間は固定概念に縛られやすい。その場を支配する空気(ドミナント・ロジック)に流されやすいとし、物事の変化はそんな自分に「気づく」ことから始まると語っています。「改革」も最初はまず「気づき」から始まり、「共鳴」、「誘発」、「相互作用」、「爆発」の過程を踏むことで物事が成就するとし、最初に気づいたことを行動に起こさなければ何も始まらないと指摘しています。

講義の後に学生の質問にも答え、民主主義の思想を高めるためには、マニフェストは一つの道具。お天道様に誓うことは「神に誓う」ことで、まさにマニフェストは「神に誓う」ものである。これを持っているかどうかで人生は決まる。そして常に新しさを求めて変化し続けることこそ松尾芭蕉の「不易流行(変化こそ普遍)」の精神であるとしました。

人があっての自分。素晴らしい家族、みんなそろって正月が迎えられ、人として堂々と誇れる人生をおくり、組織、地域をつくり上げてもらいたい。いくつになっても、「万年青年のようなみずみずしさが大切」と説いています。新しい世代への反省と愛情のこもったメッセージでした。北川さん、ありがとうございました。

投稿者 Inoue: 09:57 | トラックバック

2009年10月05日

後期授業スタート
 ?早稲田大学「パブリック・リレーションズ概論」

こんにちは、井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

以前このブログで、今春から、昨年一年間休講していた大学での授業再開についてお話ししました。「覚醒した次世代リーダーのために」の副題のもとに、私は2004年から早稲田大学で、パブリック・リレーションズ(PR)の理論を中心とした「パブリック・リレーションズ概論」と実践中心の「パブリック・リレーションズ特論」の二つの授業で講義を行っています。

学際授業を推進するオープン教育センターで今月から始まった後期授業は、「パブリック・リレーションズ概論」。先週、一年ぶりの授業を行いました。受講生の数は200名を超えますが、新しい受講生と90分の初授業を楽しみました。

■パブリック・リレーションズの実務家を育成したい
私のライフワークであり願いは、健全で持続的な社会の発展と繁栄に貢献できる包括的なパブリック・リレーションズを、日本社会のシステムに組み込み広めていくことです。

日本社会は1990年代以降、経済、政治、社会が混迷し出口の見えない、ダッチロール状態が長く続いていました。不祥事をはじめとするさまざまな問題の噴出は多くの場合、倫理観や双方向性を持った自己修正力のあるパブリック・リレーションズ(PR=戦略広報)の欠如からきていることも明白になってきました。

パブリック・リレーションズの実務家の数は、米国では二十数万人を超えるのに対し、日本で広報・PRに携わっている人は多く見積もっても推定2.5万人-3万人と極めて少なく、そのほとんどが大学・大学院で正式な理論を学習したことのない未経験者がこの職に就いているのが現状です。

日本がグローバル社会で役割を果たしていくためには、政治・行政・経済・地域社会など各方面でパブリック・リレーションズの専門家を擁し効果的な問題解決をはかっていくことが求められています。学問的にも実践的にも幅広く、奥行きの深い守備範囲を持つ、日本で圧倒的に不足しているパブリック・リレーションズの実務家育成は喫緊の課題となっているのです。

個人や組織体が最短距離でその目標や目的を達成するパブリック・リレーションズ(PR)とはどのようなものなのか、今なぜ必要とされているのか、早稲田での授業は文系、理系の垣根のない学際的視点に立った、本格的なパブリック・リレーションズの授業です。

■真のリーダーとは
混迷するグローバル社会にあって、今世界は真のリーダーを求めています。リーダーに強く求められるものは、目的達成意欲や確固とした志と共に、倫理をベースにした多様なパブリックへの視点を持つことです。複雑多様化するグローバル社会においては、他者への利益を考えて行動する視点を持つことが重要とされるからです。

最近日本で起こった新しい潮流があります。8月30日の総選挙で民主党が歴史的大勝利を収め、日本でも新しいリーダーが登場したことです。新政権は政権交代早々マニフェストを実行するための新しい政策を打ち出しています。鳩山首相の国連総会での環境スピーチに見られるように、日本の新リーダーは閉塞状態にある日本を革新するための抜本的な転換をさまざまな視点に立ってはかろうとしています。

グローバルの視点で見ると、地球規模で変化が進む中、経済大国日本への世界の期待と関心は相変わらず高いものがあります。これまでの日本は、国の体格に見合った役割と貢献が果たされているとは言いがたい状況にありましたが、鳩山首相の多様な視点に立った数々の政策提言は、いまのところ国民や世界の指導者の信頼を勝ち得ているようです。

以前にもこのブログで紹介しましたが、40年に及ぶパブリック・リレーションズの実践と研究を通して、私は21世紀型の新しいパブリック・リレーションズの形である「自己修正モデル(self-correction model:SCM)」を示しました。「自己修正モデル」は、いままで追い求めた物質的豊かさをベースにした経済至上主義が破綻をきたし、新しい概念が模索される中で提示される21世紀のパブリック・リレーションズの新しいモデルです。

「修正行為に人間が介在し、人間の意思を反映させた、倫理観と、双方向性コミュニケーションの統合された3つの要素により初めて機能する」パブリック・リレーションズにおける新しい概念であり、覚醒された高い精神性を重視しています。また「人間の行動規範」としての適用も可能とし、多様性を抱合した世界平和と繁栄を実現する共生型のモデルとして位置づけています。

理論、知識、実践(技術)力に加えそのスピリットが修得できるこの授業のゴールは、次世代を担う、21世紀のリーダーとしての資質を高め、「自己修正モデル」の3つの原則である、「倫理」「双方向性コミュニケーション」そして「自己修正能力」を体得させることにあります。

一年間の授業を通して、自立した、戦略性を保有する、知的かつ行動的な人間力ある日本人として自覚する、リーダーを育成したいと考えています。受講生のみなさんの成長を楽しみにしています。

投稿者 Inoue: 08:55 | トラックバック

2009年04月13日

一年ぶりの授業再開
〜「パブリック・リレーションズ特論」

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

「覚醒した次世代リーダーのために」。私は2004年から早稲田大学で、パブリック・リレーションズの理論を中心とした「パブリック・リレーションズ概論」と実践中心の「パブリック・リレーションズ特論」の二つの授業を行っています。この春から、一年間休校させていただいたこれらの授業が一年ぶりに再開しました。今月から始まった前期授業は、「パブリック・リレーションズ特論」でゼミ形式の授業。先日一年ぶりに教室で受講生と再会し、楽しい90分を過ごすことができました。

■半年の授業に2年分のエネルギーを注ぐ若者達
学部間の垣根を越えた「オープン教育センター」で行なわれるこの授業は受講者の所属学部も理工学部から文学部までさまざま。前期の「特論」はパブリック・リレーションズ(PR)の理論を学ぶ「概論」の実践編。

ほぼ隔週に行う半年間の変則授業の理由は、授業外でグループ分けされた受講生がそれぞれのテーマで企画を立案し、プレゼンテーションの準備をするからです。毎年この授業を受講する学生は、授業のない日もグループで教室や学校近くの仲間の下宿先に集まり、徹夜も含め50-60時間をプラン作成のために費やします。だから特論には本当にスキルを習得する明確な意思を持った人たちが集まっています。

この授業で学生たちは、半年間の授業(2クレジット)に対し2年分(8クレジット)相当の時間を費やします。毎年、眠たい目をこすりながら、時間に遅れないように授業に参加する受講生の姿勢には心を打たれます。パブリック・リレーションズのプランニング経験がない学生の目が回を重ねるごとに輝きを増し、グループの結束力が強まっていく姿は感動的でさえあります。

■ 講師は第一線のジャーナリスト
「特論」では授業の中で、現役で活躍するジャーナリストを講師にお招きしています。今年は、朝日新聞の山田厚史さん(アエラ・シニアライター・元編集委員)とNHKの高木徹さん(スペシャル番組部ディレクター)です。

山田さんは朝日を代表する正統派ジャーナリスト。問題の本質に迫るその鋭い切り口と筆力には定評があります。新聞、雑誌にとどまらずTVにも顔を出しています。また高木さんは、ボスニア戦争を題材にした『戦争広告代理店』著者。最近放送された「沸騰都市」の制作担当ディレクターで、シリーズの一つ「シンガポール編」はまさに圧巻。

豊富な経験を持つお二人の授業で、直接指導を受けることに学生たちは大きな期待で胸を膨らませています。

この授業には、他大学の学生も受け入れており、立教大学や日本女子大などの学生も受講しています。激動の社会にあって、次世代を担う確かなバックボーンと強い個をもったリーダーの育成が急がれています。今年もこの授業を通して、受講生の皆さんがどのように成長していくのか今から楽しみです。

投稿者 Inoue: 09:23 | トラックバック

2008年04月26日

地球温暖化へエコ・イノベーションで立ち向かう
 ?SPEEED箱根研究会

こんにちは井之上喬です。
ゴールデンウイークに入り、皆さんいかがお過ごしですか?

いま地球が壊れかかっています。特にこの数年世界中で、さまざまな異常気象による災害が発生しています。過去半世紀に及ぶ世界における平均気温の上昇の大半は、人的起源の温室効果ガスによるところが大きいとされ、地球温暖化への対応は喫急の課題となっています。

先日地球温暖化をテーマにした特別研究会(SPEEED箱根研究会)が箱根で開催されました。主催者で中心的な役割を果たしているのは東京大学生産技術研究所の山本良一教授。その山本教授のお招きで、週末を利用したこの研究会に長年の友人である元共同通信の橋本明さんと共に参加しました。

■1000年以上も大気を漂うCO2
山本さんは地球温暖化により、地球が危機的状態にあることを長年警鐘し続けているこの分野の第一人者で、SPEEED(Special Project on Eco-Efficiency and Eco-Design)の代表幹事。また環境経営学会や国際グリーン購入学会などの会長も勤め、講演などで東奔西走。福田首相にもさまざまな助言を与えています。昨年秋には自著『温暖化地獄』(ダイヤモンド社)を出版。その内容は多くの関係者を震撼させるもので、「トルコ一国に相当する面積の北極海氷が半年で消滅」するなど、暴走する地球温暖化を告発しています。

この箱根研修会の参加者は、60社を超える電力、電気、自動車、運輸、建設、金融などの日本を代表する企業から送り込まれた精鋭。今年のテーマは「地球温暖化へエコイノベーションで立ち向かうグリーンティピングポイントを越えよう」。2泊3日のプログラム内容も朝8時から、夜9時過ぎまでという過密スケジュールの中、6つのセッションで26の発表と一つのパネル・ディスカッションが行われました。

山本さんは初日のセッションで危機的な地球温暖化の状態を、地球温暖化地獄の1丁目から8丁目に例え、夏期の北極海氷の消滅により1丁目はすでに越えたとしています。ちなみに地獄の2丁目は、2016年頃が予測されているグリーンランド氷床の全面融解。3丁目は、同じく2050年の寒帯における森林の枯死やアマゾン熱帯雨林の枯死と砂漠化などなど。しかし山本さんは最近の気象状況をみていると、これらが早まるかもしれないと警告。

皆さんは私たちが日々の生活や産業活動で排出する二酸化炭素(CO2)が大気中でどのくらい残存しているとお考えですか?シカゴ大学のアーチャー教授によると、大気中に排出された化石燃料起源の二酸化炭素の平均寿命は長く尾を引き、3万年から3.5万年もの間空気中にとどまるとされています。1000年後でも排出量の17-33%が漂い、実に10万年後でも7%が残存するとされています。

山本さんはNASAのハンセン博士の主張を紹介し、このまま何も対策を取らなければ今世紀中に海面の水位の上昇は、5メートル達する可能性があり、東京、ニューヨーク、ロンドン、上海、ムンバイなど世界の主要都市は海面下に水没するとしています。

専門家によると、地球温暖化を放置すれば世界GDPの20%が失われるが、逆に温暖化対策を直ちに行なえば、そのコストはGDPの1%、つまり20分の1ですむと計算されています。

■環境技術とデカプリングで世界をリード
パブリック・リレーションズの専門家の視点で特に興味深かったのは、工藤拓毅さん(日本エネルギー経済研究所)の発表。工藤さんは、日本のエコ・イノベーション戦略をテーマに地球温暖化とエネルギー安全保障について触れ、低炭素化が叫ばれるエネルギー政策では、先進国と発展途上国との立場の違いを乗り越えたバランスのとれた枠組みの構築の必要性を強調。また世界共通の問題として考えた時に、科学者が政府と連携しつついかに社会との対話を深めていくべきかについて語っていたことです。

山本教授が言うように、これまで経済活動では資源エネルギーの消費による二酸化炭素排出が前提。このような構造ではサステナブルつまり持続可能な社会を実現することはできません。そこで新たに経済発展を維持し、資源エネルギーの使用量と二酸化炭素の排出量を減らす処方箋が必要となります。山本さんはこのような考え方をデカップリングとし、これまで同じ方向を向いていたベクトルを分離(デカプリング)させ、異なった方向を向くようにすべきだと訴えています。その実現のためには、革新的な技術革新と新たなビジネスモデルの開発が急がれているといえます。

今年の7月に開催されるG8洞爺湖サミットでは、地球温暖化危機を回避するために必要な低炭素、循環型共生社会の実現のために、新たな思想と枠組みが必要とされています。日本が国際的なリーダーシップがとれるかどうか注目が集まっています。

太古の昔から人類は大自然の脅威に対しては無力な存在でした。しかし石油文明を手にした人類は、成長という飽くなき欲望の果てに自然の秩序を破壊しつくそうとしています。

江戸時代、循環型社会を実践してきた日本には、世界をリードするさまざまな環境技術が蓄積されています。しかしながら、1992年のリオデジャネイロで開かれた「国連環境会議」をスタートとし、日本主導で進められた京都議定書の発効(2005年2月)から3年の年月が経ったいま、米国や日本の対応はEUなどと比べ大きく遅れをとり、いま世界はさまざまな試練に直面しています。

地球的規模の新しい変革をスムーズに行なうには、多様な視点を持ったパブリックとの関係構築を行なうパブリック・リレーションズが不可欠となります。危機的な状態の中で、実務家に寄せられる期待と課せられた責任は大きいのです

投稿者 Inoue: 23:32 | トラックバック

2008年04月19日

人間教育を軸に世界をリードするビジネススクール、
IESE(イエセ) ?MBAの新しい潮流

こんにちは、井之上喬です。
みなさん、いかがお過ごしですか。

いま世界のさまざまな事象に変化が起きています。長期化するイラク戦争、米国のサブプライムローン問題に端を発した世界金融不安を見ても分かるように、いまやこれまで機能してきた米国のシステムが世界全体をリードすることは困難になってきています。

さまざまな分野で新しいシステムが模索される中、50年間にわたり世界の経済界に大きく貢献してきた、スペイン発のビジネススクールがあります。それはIESE(イエセ)経営大学院。1958年創立の同校は、1964年にハーバード大学と提携。ヨーロッパでは初の2年制MBAコースを創設しました。

■ 物事の裏には必ず人間がいる
IESE(イエセ)経営大学院の本拠地はスペインのバルセロナ。ナバラ大学に設置された経営大学院です。その拠点は世界各地にあり、マドリード、ニューヨーク、ベルリンなどにはキャンパスを有しています。

イエセ経営大学院の評価は高く、エコノミスト誌のMBA世界ランキングでは2年続けて(2005年、2006年)1位を獲得しているのをはじめとし、欧米の経済・経営誌のランキングでは、常に上位に位置。特にビジネスケース作成において定評があり、その実績はアメリカでも広く知られています。先日そのイエセ経営大学院のメンバーが来日。日本工業倶楽部で同校創設50周年を記念するセミナーが開かれました。私も長年の友人でイエセと関わりの深い、地球ボランティア協会専務理事の稲畑誠三さんから誘われ参加。

なぜスペインから世界的なビジネススクールが生まれたのか不思議に感じるかもしれません。講演会でまだ40代後半のエネルギーに満ち溢れたカナルス学長は、「世界で一番の影響力を持つ学校となる」ことを目標に事業を展開してきたと述べました。

なんといってもこのビジネススクールで特徴的なのは、人間に焦点を当てた教育姿勢です。IESE(イエセ)が掲げるミッションは、「教育を通じで社会の発展に貢献する」ことです。そのミッションの軸にあるのは、世界で展開されている物事の裏には人間がいるという思想。どのような時にもぶれない規準を与えてくれる、あらゆる経営判断にもその背後にある基準に倫理的判断を加える。それがイエセの教育哲学といえます。

その高い評価は、人を軸に、特に人格や倫理的な側面を重んじてカリキュラムを作成し、ビジネス上の問題の分析能力と意思決定のスキルの向上は無論、人格的に覚醒されたリーダー育成に成功していることからきているのだと思います。

■ 成功に必要な3つの要素
グローバル化の中で大きな問題となるのは地域ごとの多様性。IESE(イエセ)ではプログラムの中で、地域ごとにおける文化的社会的な差異を学習できるよう、 教授陣を23カ国から迎えています。また、ビジネスとの直接的なつながりを重視した同校のインターナショナル・アドバイザリー・ボードは、ボーイングやエリクソン、マイクロソフトといった世界的な企業のCEOや最高経営幹部で構成されています。

今回来日したメンバーのひとりゲマワット(Pankaj Ghemawat)教授は、ハーバード・ビジネススクール時代、最年少教授として若干31才で就任(1991年)した俊英。同教授は、2007年に自著 Redefining Global Strategy を発表(邦訳書は2009年2月発売予定)。グローバル化する世界に必要な枠組みと実践に必要な取り組みを紹介しています。彼は同書で、これからのビジネスの成功は、「多様性への適用と多様性の抱合、そして多様性の活用」というグローバル時代に重要な3つの要素のバランスからもたらされると述べています。

まさにこれまでの経済的成長を基盤としたビジネス・モデルから、新しい価値観を持ち合わせたグローバルビジネスの成功モデルに必要とされる概念を提示しているといえます。

1学年210名を受け入れるイエセ経営大学院は、毎年日本から十数人が企業から派遣され学んでいるようです。

急速にグローバル化する21世紀。これらの新しい取り組みは、組織体が目標達成のために機能することを求められるパブリック・リレーションズの取り組み姿勢でもあるともいえます。深刻化する環境破壊、食糧危機、民族紛争などその解決には多様性の抱合なしで世界は立ち行きません。それを可能とするのは人間の意志です。人間の意志を有効に機能させ世界をリードできるシステムが今求められています。
IESEの試みもそのひとつ。セミナーに参加してヨーロッパ型の成功を目の当たりにし、脱アメリカ型の潮流がビジネスの世界でも確実に始まっていることを再認識した気がします。

投稿者 Inoue: 21:52 | トラックバック

2007年12月28日

SONY盛田昭夫の薫陶を受けた、米ベンチャー経営者
 ?マーク・ブックマンCEOを授業に迎えて

こんにちは、井之上喬です。
みなさん、いかがお過ごしですか。

「SONYが世界を狙うためニューヨークに行ったように、私も東京に来ました」と語るマーク・ブックマン(Marc Bookman)さん。SONYが全盛の80年代後半に同社に入社し、7年間の在籍中に盛田会長の薫陶を受けた方です。

その後シリコンバレーでベンチャー企業を起業。携帯検索エンジンのプラットフォーム開発会社、Mobile Content Networks, Inc.(MCN)を設立しました。先日、同社の社長兼CEOであるブックマンさんを 早稲田大学の私の授業、「パブリックリレーションズ 概論」の講師にお迎えしました。テーマは「パブリック・リレーションズと組織体」。

■ リスクを取って夢を実現
MCNは私の経営する会社、井之上パブリックリレーションズのクライアントでもある企業。彼らの特徴は、携帯での検索結果が2?3回のクリックでスピーディに表示できる技術。今年10月、米国シリコンバレーから東京へと本社機能を移し日本から世界市場を見据えるユニークな企業です。

外国企業のジャパンパッシングが増大するなかで、彼らの心を動かしたのは世界最先端を行く日本の携帯電話のコンテンツ技術とユーザー数9000万を超える市場の大きさ。加えて中国やインドなどの高い潜在性を持つ巨大市場が存在するアジアに位置するという利点。日本からアジア、米国、欧州を攻略する大胆な戦略はいま業界の関心の的になっています。

講義では、まず「リスクをとってイノベーションに取り組むベンチャー・スピリット」の重要性を掲げました。そして日本ではまだ意識されていない、リスクを取りながら自分の夢を実現する素晴らしさを強調しました。 そのなかで、パブリック・リレーションズはブランディングや顧客創造など様々な角度からイノベーションを支える手法であるとし、企業経営におけるその有用性を語ってくれました。

ブックマンさんは2002年に携帯型通信機器上での情報検索に関する調査を開始。ノキアに努める旧友との話から、ノキアのプロジェクトを獲得し2005年にはMCNを設立。

彼はベンチャー企業の成長過程や資金調達のメカニズムなどについて、「アメリカでは、初期の投資にはより大きなリスクを伴うことを株価に反映させているため、早い段階での投資ほど安価な株を取得できるのが特徴」と、ベンチャー企業の成長過程や資金調達のメカニズムなどについて学生にわかりやすく語ってくれました。

一般的に、株式公開(IPO)に向けたベンチャー企業の成長過程には、アーリーステージ、ミッドステージ、レイトステージの3段階あります。また資金調達の段階では、シリーズ(ラウンドともいう)A(第1回目の資金調達の意味)、B(第2回目)、C(第3回目)以下必要に応じて調達。MCNは現在、ミッドステージの資金調達中。

また、ベイパーウェア(vaporware:競合への顧客シフトを抑制するため、完成の目処がないのにPR活動を展開する製品のことで、悪い意味を持つ)を例にとり、「歴史のないベンチャー企業にとって『信用』は財産」と、パブリックから信頼を得るためには誠実さをもって事業を行うべきであると、誠実であることの重要性にも触れました。

■ ターゲットの興味を連鎖的に引き出す
ブックマンさんは「パブリック・リレーションズには何よりも戦略が大切」であることを強調。その例としてMCNがBtoB(企業顧客)つまり携帯通信会社(キャリア)をビジネスターゲットとする企業であるにもかかわらず、同社携帯エンジンに関する記事が11月に一般紙である朝日新聞に紹介されました。

2?3回のクリックで好きな検索情報が得られることは携帯ユーザーにとっても朗報。この強みを生かしてパブリックへの認知度を高めることでドコモやソフトバンクなどのキャリアの注目を引くことも可能であると説明。パブリック・リレーションズでは、戦略を軸に様々な角度からターゲットの興味を連鎖的に引き出すことで大きな成果が得られると語りました。

講義の後に受講生から飛び出した、「日本の良い点、悪い点は」とする質問には、約束したことを守る日本人の文化的秀逸性について語り、日本での仕事はスムーズに展開できていると答えました。一方、難しい点は、社員の本音を把握すること。ブックマン社長は「日本は自己主張をしない文化。社員の本音を引き出し、不満が問題化する前に解決する努力をしている」と語っています。

教室には、マーケティング担当副社長のスティーブ・バークさんの姿も見えました。彼もSONYに11年間在籍し、海外のコミュニケーションの責任者をしていた方です。MCNは4億5000万人の携帯ユーザーを抱える中国での展開も視野に入れ精力的に活動中。

ブックマン社長の話に生徒も深く共感。東京から世界を見据えるベンチャー企業家として、かって尊敬するSONYの盛田さんが世界進出の際に、巨大マーケットである米国ニューヨークに本拠地を置き飛躍したように、東京から世界への躍進を夢見て事業に取り組む彼の姿に心打たれたようでした。ブックマンさん、本当に有難うございました。MCNの成功を心より願っています。

本号で今年最後のブログとなりました。この1年、井之上ブログをご愛読いただき誠にありがとうございました。また来年もよろしくお願い致します。

皆さんには良い新年をお迎えくださいますよう祈念いたします。

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2007年12月16日

資生堂相談役、池田守男さんを授業に迎えて

こんにちは、井之上喬です。
みなさん、いかがお過ごしですか。

先日、資生堂の相談役の池田守男さんを早稲田大学の私の「パブリック・リレーションズ 概論」の授業にお迎えしました。テーマは「パブリック・リレーションズと組織体?資生堂にみる経営の真髄」で、ご本人のビジネス哲学ともいえる「サーバントリーダーシップ」を中心にご講義頂きました。

■「PRは隣人愛そのもの」
講義の冒頭、組織体経営にとって「倫理観」が何よりも重要であると語りました。次に自ら進んで他者に手を差し伸べる精神である「隣人愛」について触れ、「パブリック・リレーションズは隣人愛そのもの」として、あらゆる関係性を充実させるパブリック・リレーションズの重要性を語ってくれました。

池田さんは、香川県高松高校を卒業後上京し、牧師を目指し神学校を卒業します。しかし、もう一度社会に戻り社会の役に立ちたいと資生堂に入社し秘書室に配属。その後、取締役秘書室長、代表取締役副社長、代表取締役執行役員社長、会長を歴任。現在は同社の相談役として、数々の団体や政府委員会などの要職に就き、講演活動など広く活躍されています。

池田さんとの最初の出会いは1990年代初め、池田さんが秘書室長時代。中曽根政権で外務大臣をしていた倉成正さんの定例早朝勉強会に当時の資生堂福原社長の代理として出席されていたときでした。私とは精神性で共有するものがあったこともあり、以来時折、食事をご一緒したり、出版パーティにお越しいただくなど交流をさせていただいていました。

講義の中で池田さんは、今日の物質主義の行き過ぎを危惧し、薬師寺の元管主高田好胤の言葉「物で栄えて、心で滅びる」や同郷の大平正芳総理(当時)が施政方針演説で発した、「経済の時代から文化の時代へ真の生きがいを追求する社会を」などを引用し、経済性の追求に加え人間性・社会性・文化性を追求する精神性の充足こそ21世紀の取り組むべきテーマであることを明示しました。

池田さんは企業の取り組みとして日本経団連が2002年と2004年に行なった企業行動憲章の改正に触れ、コンプライアンスの強化や企業の社会的責任(CSR)を推進する取り組みを紹介。一方で、いまだ企業不祥事が頻発している現状を憂慮し、コンセプトの具体化が急務であると強調しました。

また池田さんは、教育再生会議委員(座長代理)を務め、昨年60年ぶりに改正された教育基本法の改正に中心的な役割を果たしています。池田さんは人づくりの基本となる教育の重要性にも触れ、日本児童の世界における学力水準低下を憂慮しつつ、戦後教育における個人の過度な自己主義偏重の弊害を一掃し、他者の存在を尊重する精神に支えられた公共の精神を人々の中に育てなければならないと説きました。

池田さんは、2007年4月発足の公益認定等委員会の委員長。そこでは「公は官が担う」とする考え方から脱却し、「民間が公共を担う」ことで民と官の橋渡しが可能となり、社会全体が厚みをまし真の豊かさが感じられる社会の実現が可能となるのではないかと語っています。

■ 1つのビジョンの下に仕える
「仕える」「支える」を生活信条とする池田さん。秘書を天職とし、「秘書はまさにサーバントである」を会得。しかし「仕える」とは、闇雲に仕えることでなく、1つのビジョンの下に仕えることを意味すると強調。このコンセプトについては、池田さんの著書『サーバントリーダーシップ』(2007年 かんき出版)に細述されているので、興味のある方は是非、ご一読をお勧めします。

池田さんは2001年資生堂の社長に就任した際、お客様の視点に立った徹底的な改革を提案。戦略的には、創業の精神に回帰し、新しい視点で解釈。組織的には「社長は全社員のサーバントに徹する」と宣言。その斬新な経営理念のもと見事に資生堂を復活へと導きました。

池田さんはその大改革をリレーションシップを良好にする改革と位置づけ、パブリック・リレーションズの本質を体現するケースだと振り返りました。

具体的には、資生堂の名前の由来である易経の一節「至哉坤元、万物資生( 天地のあらゆるものを融合し、新しい価値を創り、その価値をお客様や社会にお役立てする)」とする創業の精神を、各部署の視点で具体化し、全社に浸透させたこと。そして「信頼」こそ経営の原点としパブリックから信頼を獲得するため、お客様、小売店、資生堂の3者の接点である「店頭」から商品群や流通の見直しなど全ての仕組みを改変した経緯を説明してくれました。

また、その精神を反映する逆ピラミッドの組織図について、理念・信条・方針はトップダウンで行なうが、それを具体化する際には改革の中心となる「店頭」をトップや逆ピラミッド組織の下であるトップが支える、サーバントリーダーシップ型が有効であるとしました。

時間は瞬く間に過ぎ、講義の後には受講生から質問が活発に飛び出しました。

講義後、ある受講生から「経済性が追求される企業経営で大切にすべきことは何か?」との質問に対し、池田さんは、企業の永続性を担保する経済性と社会性の両立が大切であり、競争の中にも多様性の尊重や互助・互恵の精神が必要。これらを醸成する関係性の構築が企業の取り組みに求められると述べました。

続いて「サーバントリーダーシップの原点は何か?」の質問に対し、池田さんは幼少体験を取り上げました。故郷の高松に訪れる四国八十八箇所を托鉢して巡るお遍路さんとの交流を通して、差し上げて食べて戴くという気持ちで接していたであろう祖父母の思いを回想。そしてその思いが「自ら生きているのではなく多くの恩恵の中で生かされている」「人のお役に立つ存在になりたい」とする考え方へと発展し自らの原点を築いたと語ってくれました。

最後に池田さんは受講生に、「知をもって社会全体へ役立たせて頂くという気持ちを強く持ち続けて欲しい。そうすれば社会は厚みのある豊かで素晴らしいものになっていく」と力強いメッセージを送り授業は終了しました。

池田さんの抑制のきいた熱い言葉は、パブリック・リレーションズを深く理解し、隣人愛の精神をビジネス現場で実践してきたひとりの経営者からの受講生への熱きエールとして、一人ひとりの胸に深く刻まれたことでしょう。
池田さん貴重なお話し本当にありがとうございました。


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2007年10月05日

後期の「パブリック・リレーションズ概論」の授業開始
 ?覚醒した次世代リーダーのために

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

私は早稲田大学で、パブリック・リレーションズの理論を中心とした「概論」と実践中心の「特論」の二つの授業を行っています。前期授業の特論は、7月下旬に実施した「パブリック・リレーションズ特論」の伊豆・川奈での合宿を最後に修了しました。それから2ヵ月あまり。今月から、後期授業の「パブリック・リレーションズ概論?次世代のリーダーのために」が始まりました。

■ 知識は経験の礎
後期の概論の授業は、パブリック・リレーションズの理論習得がテーマ。ユニークなゲストによる講義を交えながら、パブリック・リレーションズとは何かに始まり、何故いま日本が必要としているのか、パブリック・リレーションズの歴史や組織・社会におけるその機能と役割を概観していきます。

今回定員230名のクラス(第4期生)には250人を越える生徒さんが集まってくれました。学部間の垣根を越えたオープン教育センターで行なわれるこの授業。受講者の所属学部も理工学部から文学部までさまざま。前期の特論を修了した生徒や以前の受講者で、海外留学した生徒なども帰国し、久しぶりに元気な顔を見せてくれました。

経験は年月をかけなければ体得できないもの。しかしパブリック・リレーションズの理論は、その場で体系的に把握し自分の知識として習得することができます。ここに理論を学ぶ素晴らしさがあります。そしてこの知識は、様々なキャリアパスを築いていく上で確固たる礎(ベース)として機能し、経験と共にさらに自己の中に深く根付いていきます。

特にパブリック・リレーションズの分野で活躍したいと思っている人にとっては、スタート地点から、自ら関わる活動がパブリック・リレーションズのどの部分に位置するのかを把握できるため、一つひとつの経験を取りこぼすことなく、自分の中に蓄積することができます。

■ PRの真髄には人生のヒントがある
概論の授業では、「パブリック・リレーションズとは何か」について理論とは異なった実践的な角度からも見つめることができるよう、今回も多彩なゲスト講師を迎える予定です。

資生堂の社長時代、不振にあえぐ同社で「逆ピラミッド型組織」を提唱し社内改革を成功させ、現在政府の教育再生会議で教育改革にも取り組む、池田守男(同社相談役)さん。そして、中央と地方で豊富な政治経験を持ち、マニュフェスト選挙の導入に力を入れる早稲田大学院公共経営研究科教授の北川正恭さん。サントリー元広報部長(早稲田大学参与)で、『洋酒天国とその時代』(2007、筑摩書房)の著者小玉武さん。いつもこの授業をサポートしてくださっている亀井昭宏商学部教授にはマーケティング・コミュニケーションについてご講義いただきます。

また海外からは、故盛田昭夫氏が会長時代にSONYに在籍し、携帯検索エンジンのプラットフォーム開発会社をシリコンバレーのベンチャー企業として立ち上げた、Mobile Content Networks, Inc.(MCN)社長兼CEOのマーク・ブックマン(Marc Bookman)さんなどユニークな個性や豊富な経験を持つ方ばかり。

今年4年目に突入するパブリック・リレーションズの講義。その成果はこの授業から巣立った生徒さんが、メディア、商社、金融、自動車、行政などあらゆる分野に巣立っていったことです。そして学問だけでなく、将来パブリック・リレーションズ(広報)の実践を極めたいと、PR業界に進路を選択する受講者も年々増えています。

この講義が契機となり大学でPR研究会が設立されたことも大きな変化です。今年早稲田大学は125周年を迎え、その記念事業として様々な活動を展開しています。学生グループで、その渉外を担当するのは、この授業から巣立った生徒さん。パブリック・リレーションズの精神を理解する人たちがさまざまな場面で活躍しはじめていることを大変嬉しく思います。

先行きが不透明で不安定なこの世の中にあって、次世代を担う確かなバックボーンと強い個をもったリーダーが一層求められています。講義の中で受講生の皆さんが、パブリック・リレーションズの真髄に触れることで、その重要性に目覚め、自立した個を確立するきっかけや自分なりの道を発見するヒントを見つけてくだされば幸いです。そして、今年もこの授業から覚醒した次世代を担うリーダーが多く誕生することを願っています。

投稿者 Inoue: 17:48 | トラックバック

2006年09月29日

光り輝くサンディエゴ:
名著エフェクティブ・パブリックリレーションズの著者を訪ねて

■最後の著者、グレン・ブルーム
ワシントンDCから飛行機で半日、アメリカ西海岸の南に位置するサンディゴに入りました。スコット・カトリップ(Scott Cutlip)とアラン・センター(allen Center)により1952年に初版が発行され、現在第9版まで半世紀以上にわたって出版を続けるパブリック・リレーションズの名著、Effective Public Relationsの3人目の著者、グレン・ブルーム(Dr. Glen Broom)を訪ねるためです。

彼は、1885年に発刊された第6版から執筆に参加。カトリップ(2000年没)とセンター(2005年没)亡き後、最後に残された著者として2人の遺志を引き継ぎPRの研究に取り組んでいるリサーチャーです。

ブルームはジェームス・グルーニッグと同様、カトリップの指導の下ウィスコンシン大学でマスコミュニケーションのPh.D.を取得。長年サンディエゴ州立大学で教授としてコミュニケーションを教え、現在は同大学の名誉教授で、3年前からオーストラリア、ブリスベンにあるクィーンズランド工科大学の客員教授も務めています。今回は、前日にオーストラリアからの長旅で、帰国したばかりであったにもかかわらず、時差ぼけをよそに真剣に議論してくれました。

一方、ブルームと共に会ってくれたデービッド・ドージア(Dr. David Dozier)は、グルーニッグ夫妻他の共著による3部作、Excellence in Public Relations( 1992、1995、2002 )の著者の一人。ブルームとも共著本の執筆や共同研究を行うなど、企業におけるパブリック・リレーションズの研究に積極的に取り組んでいるリサーチャーです。彼は、スタンフォード大学でジャーナリズムのPh.D.を取得。現在はサンディゴ州立大学の教授として、ジャーナリズムやパブリック・リレーションズを教えています。

今回はサンディゴの海沿いにある街、ラホーヤで心地よい海風に吹かれながらの会合。3人でパブリック・リレーションズに関する様々な話題を語りあい、瞬く間に時間が過ぎていきました。

■米国におけるPRのスタンスと問題点
米国では80年代くらいから、PR実践の場でもパブリックと同様に組織体も変容していく対称性の双方向コミュニケーションが主流になってきています。しかし、これまでのPR教育はジャーナリズムに偏った傾向があり、パブリックへメッセージを伝える訓練をしてきた人々が実務家やリサーチャーにも多いとのこと。したがって、フィードバックを通して組織体が変容する必要性を認識していても、行動が伴わないという問題が起きているということでした。

私の自己修正論に話が及ぶと、2人とも、「自己修正(Self-Correction)」という言葉は他の分野で耳にしたことがあるものの、自己修正が パブリック・リレーションズにおけるモデルとして統合的に言及されているものには出会ったことはないとのことでした。 最近の米国での研究は、組織体でのPR導入が進んでいることも影響し、 組織体における活動の効果測定に関するものが主流であるとのことでした。

彼らが自己修正論に関心を持ったのは、オットー・ラビンジャーやジェームス・グルーニッグと同様、このモデルが倫理観をベースにした自己修正の概念である点と個人や組織体にも対応できる自己修正モデルのもつ普遍性でした。

ブルームさんからは、2007年発行予定のエフェクティブ・パブリック・リレーションズ第10版に、私の自己修正論を紹介したいと執筆の依頼を受けました。

サンディエゴ滞在中に、カルフォルニア大学サンディエゴ校の図書館を訪れ、関連資料を調査。外部の人でも自由に入館し書籍を閲覧できる、開放的な雰囲気と、全ての書籍をコンピューター検索できる効率性や宇宙ステーションを思わせる斬新なデザインとそのビルの巨大さが何よりも印象的でした。

今回、ボストンワシントンDC、サンディエゴの3都市を訪れ、6人の学者にお会いしました。彼らとの意見交換を通して、長年PRの研究に取り組んできたそれぞれの想いや、彼らの研究に対する真摯な姿勢に深く感銘を受けました。

そして、心強く感じたことは、各人が私の提唱する自己修正モデルに学問的な関心を寄せてくれたことです。このモデルが、アメリカでも通用する理論であるとの感触を得られたのも大きな収穫だったと思います。

プライベートで嬉しかったことは、ワシントンDCで早稲田大学から交換留学生としてこの9月から、アメリカン大学に1年間滞在している、私の教え子第2期生、藤牧君に会ったことです。米国でPRをしっかり学びたいと、希望に燃える彼の元気な顔を見ることができました。

それにしても最近の米国は随分変わったように感じます。携帯電話の普及やテロの影響でしょうか、人々の表情に余裕がなく、他人への気使いがなくなってきたようにみえます。

こうして2週間にわたる、パブリック・リレーションズ登場・発展の地、米国でのフィールドサーベイは終了。

世界はますます複雑・多様化の方向へ向かっています。今回の旅で、従来型の経済発展モデルとは異なる新しい、多様性を抱合できる共生型のモデルが求められている――そんな感触を得ました。

ここで得た成果をもとに、一日も早く論文を完成させなければと高ぶる気持ちを抑えながら、米国を後にしました。

投稿者 Inoue: 20:25 | トラックバック

2006年09月22日

米国9・11の5周年の日に ジェームズ・グルーニッグと初会合
 ?PRで世界平和が実現できる日を夢見て

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

論文のフィールド・サーベイを行うため渡米した私は、ボストンを後にしてワシントンDCに入りました。ワシントンはペンタゴン(国防総省)が攻撃され、ニューヨークと並んで2001年の米国同時多発テロの被害にあった都市。街全体には心なしか緊張感が漂っていました。この地で奇しくも9月11日、パブリック・リレーションズの4つのモデルを提唱するジェームス・グルーニッグ(Dr. James E. Grunig)に会いました。

今回は、学者としてまた研究者としてパブリック・リレーションズに情熱を傾ける、グルーニッグ博士との10時間にわたる会合についてのお話をお届けします。

■グルーニッグの4つのモデルの提唱者
ジェームズ・グルーニッグは、現在メリーランド大学の名誉教授。2000年にエフェクティブ・パブリックリレーションズ( Effective Public Relations )の著者の一人、スコット・カトリップが他界した後、文字どおりアメリカを代表するPRリサーチャー。私の本にも「グルーニッグのPRの4つのモデル」として紹介している人です。

1968年、彼は米国の偉大なPRの学者といわれた、スコット・カトリップを師に仰ぎ、ウィスコンシン大学でマス・コミュニケーションの博士号(Ph.D.)を取得。84年にトッド・ハントと共著の Managing Public Relations で、PRが発展してきたコミュニケーションの特性を4つに分類しモデルとして提唱しています。

彼の研究室は郊外にあるメリーランド大学にあり、ワシントンDCから車で30分程。同大学は今年で創設150周年。緑の中で広大な敷地を持つ大学キャンパスは、落ち着いて勉学に励む環境が整っています。ここでPRを専攻する学生数は約150人。他を専攻している学生とPRコースを取っている学生で合わせると1000人程度だそうです。

朝9時過ぎに彼のオフィスを訪ねると、大きな体で両手をあげて迎えてくれました。前の週にボストン大学のオットー・ラービンジャー教授を訪問した際もそうでしたが、会っていきなりパブリック・リレーションズについてのさまざまな話。時間が瞬く間に過ぎてしまいました。もうランチタイム。窓越しに6万人収容の、巨大なフットボール場が見える教職員専用の洒落たレストランでも、日米のPR事情や大学での教育のあり方などについて話がはずみました。

グルーニッグさんによると、現在、米国でのパブリック・リレーションズの状況は二極分化しているようです。
つまり、マーケティングにフォーカスしたマーケティングPRと、コーポレートにフォーカスしたコーポレートPRです。前者は企業の業績を支えるマーケティングへの圧力が強まる中でのPRへの期待とニーズの高まりからきており、後者は、効果的なM&AやIRCSR実現のために不可欠な企業のレピュテーション高揚を目的としてCEOにフォーカスしたPR活動に主軸をおいているようです。

彼の著書を読んでも感じることですが、ニーズの高まるマーケティングPRとは距離を置き、「組織体が長期的に繁栄するためにはマネジメント機能全体にパブリック・リレーションズが必須」とコーポレートPRの重要性を強く主張しています。

彼との様々な話の中で感じた、最近の米国におけるパブリック・リレーションズの問題点は、「PR=民衆の意見を操作しようとする悪」と誤解され、メディアから批判される傾向にあるということです。パブリック・リレーションズに対してこのような誤解が生じているのは、ウォーターゲート事件や最近では湾岸戦争やイラク戦争など、政府のパブリック・リレーションズにおける対応の不手際なども拍車をかけているようです。

パブリック・リレーションズがプロパガンダと、時に誤解されるようになったのは米国の第一次世界大戦参戦時、政府が国民の戦意高揚にパブリック・リレーションズの手法を用いてプロパガンダ的な活動を展開したことに起因しています。

重要なことは一方的に相手に情報、しかも時々誤った情報を流し込む手法はプロパガンダそのものであってパブリック・リレーションズではないということです。このことをパブリック・リレーションズの実務家は心にしっかりと刻み込まねばなりません。このような場合、私たちは「それはあくまでプロパガンダ、パブリック・リレーションズではない」ことを主張しなければなりません。それを支えるのは倫理観です。

グルーニッグさんと一致したことは、我々PRの実務家はいつでもその危険な落とし穴に落ちる可能性があるということです。

パブリック・リレーションズは、個人や組織体が最短距離で目的を達成する、「倫理観」に支えられた「双方向性コミュニケーション」「自己修正」をベースとしたリレーションズ活動であり、鍵括弧で示した3つの要素が揃って初めてパブリック・リレーションズと呼ぶことができるといえます。

私はこれを「自己修正モデル」と名づけていますが、この定義に関してグルーニッグは、この理論はシンプルに言いえており、とても面白いとその概念に興味をもってくれました。また私のPRに対する考え方である、「パブリック・リレーションズは個人であれ組織体であれ、全ての状況に適用できる手法でなければならない」にも大きくうなずいて理解を示してくれました。そして次回チャンスがあれば、彼の授業で講義をするよう依頼を受けました。

■夫婦で、おしどり学者
あっという間にその日も終わり、夕食には、奥様で彼の学者仲間でもあるラリッサさんも交えてワシントンに戻り、日本食をご一緒しました。グルーニッグの教え子であったラリッサさんもまたメリーランド大学でPh.D.としてパブリック・リレーションズを教授。多くの著書を残し講演も多数。彼らはご夫婦でイランや中国、台湾、東欧など世界中で精力的に講演を行なっています。

グルーニッグは、落ち着いてとてもゆっくりと話します。パブリック・リレーションズへの愛情や情熱が感じられ、PRに対する考え方も私と近く、様々なことをシェアすることができました。彼はコミュニケーションを双方向性だけで片付けることなく、その構造を、パブリックとの関係において、非対称性(アンバランスな)と対称性(バランスの取れた)の双方向コミュニケーションときめ細かい区分けをして解説する緻密さも持ち合わせている学者でした。

彼らとのミーティングを終え、次の目的地カルフォルニアのサンディエゴに出発する日の朝、空港へ向かう途中の陽光のなか、車窓の左手にペンタゴンが見えてきました。

5年前の2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロのちょうど2日前の日曜の朝、ワシントンDCにいた私は同じように空港へ向かっていました。多くの緑と水辺に囲まれ、のどかに佇むペンタゴンは二日後に攻撃されるのが嘘のように、穏やかで平和な雰囲気をかもしだしていました。

あれから5年、9月11日にワシントンDCでグルーニッグさんとお会いしたのも何かの縁かもしれません。

私は、平和への想いを胸に抱きながらワシントンDCを後にして、いよいよ最終目的地、サンディエゴに向けて旅立ちました。


次回はスコット・カトリップ、アラン・センター亡き後、名著、Effective Public Relationsの著者グレン・ブルーム博士をサンディエゴ大学へ訪ねます。ご期待ください。

投稿者 Inoue: 18:15 | トラックバック

2006年09月15日

伝統あるボストン大学で2人の教授とミーティング

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

ホノルルを後にして学術の都、ボストンへと飛びました。私が今取り組んでいる論文のフィールド・サーベイを行うためです。今回はパブリック・リレーションズの学部が米国ではじめて設置されたボストン大学で2人の教授にお会いしたお話をお届けします。

1839年に創立されたボストン大学は、全米で4番目に大きな私立大学として多くの著名人を輩出しています。

1947年ボストン大学は、いち早くパブリック・リレーションズの重要性を認識し、School of Public Relationsとして全米で初めてパブリック・リレーションズの専門教育を行う学部を創設しました。今では、College of Communicationと名前を変え、ジャーナリズム、パブリック・リレーションズ、広告の三つの分野にわたって専門教育を提供しています。

■気さくで品格のあるオットー・ラビンジャー
そんな伝統あるボストン大学でパブリック・リレーションズを教えるオットー・ラビンジャー(Dr. Otto Lerbinger)とその後継者ドン・ライト(Dr. Donald Write)に会いました。

ラビンジャー教授のその気さくで品格のあるお人柄は、初対面とは思えない友達との間で交わすような会話を楽しませてくれました。

ラビンジャーさんは50年以上にわたる教育や研究活動を通して、米国で著名なパブリック・リレーションズの学者です。もともと経済学者であった彼は、MITで博士号を取得。後にパブリック・リレーションズの学者となりました。特に企業経営にパブリック・リレーションズがいかに重要かを説き、組織体におけるパブリック・リレーションズつまり、コーポレート・パブリックリレーションズやコミュニケーション論を専門とし、危機管理やマネジメントにおけるパブリック・リレーションズに関する本や研究論文を数多く執筆しています。

ボストン大学では1954年に教鞭をとり初め、以来50年以上にわたり同大学でPRを教え、何度も学部長もつとめるなどパブリック・リレーションズを心から愛する教育者。これまで日本、韓国、中国、台湾、タイ、中東などアジアからの学生や、欧州をはじめ世界各国からPRを学びにやってくる学生を教えてきました。2年前には同大学の名誉教授となっていますが、現在も現役でいくつかの授業を持ち精力的に活動しています。

彼は、「パブリック・リレーションズはマネジメント機能の一部」だとして、パブリック・リレーションズが経営中枢において機能することではじめて組織体の経営や運営が良好に機能すると話していました。

彼の身のこなしはとても軽く、年齢を聞いてびっくりしたのですが、81歳とは思えない足取りで、キャンパス内をいろいろと親切に案内してくれました。

一方、ドン・ライト教授は、1990年代に私がIPRA(国際PR協会:本部ロンドン)の役員(Board Member)をつとめていたときの仲間。とても爽やかな人柄で、1997年に私が議長をつとめた、パブリック・リレーションズの専門性を高めるための啓蒙書「IPRA Gold Paper」(3年に一回発行)へ寄稿してもらうなど、アカデミックな領域でも交流があった人です。

彼はその後IPRAの会長を務め、2000年にシカゴで開催されたIPRAとPRSA(米国PR協会)のジョイント世界大会の開催に共同議長として大きく貢献しました。彼はこれまで南アラバマ大学でパブリック・リレーションズを教えていましたが、この9月からボストン大学で教鞭を執っています。

彼のボストン大への赴任は、同大学でPRを学んだ関西学院大学助教授の北村秀美さんから渡米前に偶然聞き、ドンとボストン大での6年ぶりの再会をはたすことになったのです。ドンの招待で、ラビンジャーさんともども中華レストランでランチをはさんで大学の授業のことや、米国のPRの現状などについて楽しく語らいました。

ラビンジャーさんに案内してもらったボストン大学の図書館を訪れて気づいたことは、外国新聞のセクションに日本の新聞がひとつも置かれていなかったことです。欧州系が中心でしたが日本のプレゼンスの低さにがっかりさせられたと同時に、日本からの働きかけ不足を痛感しました。他の大学でも同じような状況にあることが推察されますが、次世代を担う世界の若者に日本を理解してもらういい機会として、将来への投資と考え、新聞や書籍を寄贈する動きがあってもいいのではないかと思います。特に知的好奇心をさそうこれらの媒体は、日本を知ってもらう格好のPR素材です。


■私の共著本が授業の教科書に
ラビンジャー教授は、私の提唱する自己修正論にも大変興味を示してくださいました。特に倫理観に支えられた自己修正(Self-Correction)の概念に関心があったようです。私の著書『パブリック・リレーションズ』をお読みになった方はよくご存知だと思いますが、自己修正論は、「パブリック・リレーションズには倫理観と双方向性コミュニケーションを伴った自己修正が必要」とし、従来の経済効率重視型モデルから、21世紀の複雑化する多文化・グローバル社会の中での共生型モデルの根底となる理論です。

ラビンジャー氏は、以前、訪問前のやり取りのなかで、私が共著の本(Global Public Relations Handbook、このブログの右下にある最後の本をご覧ください)を読んだといってくださっていましたが、実は、彼が学生に教えている「International Public Relations」の授業のなかでこの本が、テキストブックとして使用されていることが分かり、とても嬉しくまた光栄に思いました。ちなみに、私の自己修正モデルは、英訳で、「Self-Correction Model」としてその本の中にも紹介されています。

その日の別れ際に彼が、「今度授業で、その著者に会ったと学生に言っておくよ」とウィンクしながらチャーミングに微笑んでくれました。

忙しい中、貴重な時間を割いてくれた、オットー・ラビンジャーさん、ドン・ライトさん、ありがとうございました。


次週は米国の首都ワシントンDCに飛び、PRの4つのモデルを提唱する、現在のパブリック・リレーションズにおける最も著名な学者であり研究者、ジェームズ・グルーニッグをメリーランド大学に訪問します。お楽しみに。

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2006年08月25日

パブリック・リレーションズとの出会いを通して、
〜前期の授業終了

こんにちは、井之上喬です。
厳しい残暑が続きますが、皆さん、いかがお過ごしですか。

7月末に、早稲田大学大学院商学研究科MBAコースの授業と同大学学際授業「パブリック・リレーションズ特論」の授業を終えました。


■上司と部下が同じ授業に
MBAでのプロフェッショナル・コースの授業は、ケーススタディを通して理論を踏まえた実践を学ぶ授業でした。社会人である院生の探究心や向上心の強さには目を見張るものがあり、より深く踏み込んだ授業を行うことができました。

少人数での授業は家族的で、日ごろ抱えている問題を皆で考えたり解決法を論じたり充実したものでした。嬉しい出来事は、受講生の一人が所属する会社の上司である部長さんが、2回に1回のペースで聴講生として参加し真剣に学んでいったことです。とてもほほえましい光景でした。
忙しい中一度も休まず、一日平均5?6時間の睡眠で授業に出席し熱心に取り組んでくださった皆さんありがとうございました。

一方「パブリック・リレーションズ特論」は2005年の後期の授業「パブリック・リレーションズ 概論」で教えた理論に基づいて実践を学ぶクラス。5?6名編成の5つのチームが、設定されたテーマに対して、パブリック・リレーションズライフサイクル・モデルに沿って作成したプランをグループごとに発表するゼミ形式の授業です。

ちなみに、「パブリック・リレーションズ概論・特論」は、今年4月に「オープン教育センター」(学部生間の学際授業)で「学生主役の動く授業」として1200ある科目のなかの6科目の一つに選ばれる栄誉を得ています。


■半年の授業に2年分のエネルギーを注いだ若者達
「特論」は隔週に行う半年間の変則授業でしたが、各グループは授業のない日もグループで教室や学校近くの仲間の下宿先に集まり、授業以外で徹夜も含め延べ50?60時間もの時間をプラン作成のために精力的に取り組んだのでした。つまり学生たちは、半年間の授業(2クレジット)に対し2年分(8クレジット)相当の時間を費やしたのです。眠たい目をこすりながら、時間に遅れないように授業に参加した受講生の姿勢には心を打たれました。パブリック・リレーションズのプランニングを知らなかった学生の目が回を重ねるごとに輝きを増し、グループの結束力が強まっていく姿は感動的でさえありました。

7月最後の週末には、総仕上げとして、一泊二日の合宿形式による授業と試験。千葉県鴨川市の山あいにある素晴らしい眺めの早稲田大学のセミナーハウスは、クリエイティブな授業には格好の場所でした。

試験内容は、通常の倍の制限時間180分(3時間)で提示された条件のなかでPRのライフサイクル・モデルに基づいてプランを作成し論述を展開するというもの。翌日に行われた最終授業では、一人ひとりの解答案へ対して良い点、改善すべき点などのコメントをつけた講評を行いました。

最後の夜は、バーベキュー・パーティ。その後、打ち上げを兼ねた飲み会を開き、時間がたつのを忘れて夜中まで様々なことを語り合いました。

授業の最後に感想レポートも提出してもいました。そこには、受講生がパブリック・リレーションズとの出会いを通して初めて味わった想いや体験などが生き生きと描かれていました。レポートを読みながら、学生の皆さんが他者と協力して何かを成し遂げる場所をこんなに強く求めていたのかという事実に驚きと感動を覚えずにはいられませんでした。

日々のビジネスに携わりながらの講義は思いのほか大変です。しかし、パブリック・リレーションズのもつ可能性や素晴らしさを全身で受け止め、自分の持てる力を最大限に発揮しようと挑戦する学生たちの姿を見て、この授業を続けて本当に良かったと思うのです。

将来彼らがバックボーンを持って、自立した個を確立させた次世代のリーダーとして、日本や世界のために役立つ人間に成長していくことを心より楽しみにしています。

学生の皆さんそしてTAの守田哲君、ありがとう!

■情熱と好奇心に溢れた受講生のレポート
今回提出していただいた受講生の感想レポートは、どれもが豊かな個性とエネルギーに満ちた素晴らしいものでした。その中で今回は授業の様子がみずみずしく描かれている、法学部3年生横澤俊之君のレポートをご紹介します。


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PR特論レポート  早稲田大学法学部3年 横澤俊之

この授業、とにかくアツかった。お酒も飲まず、朝まで発表の為に語りあかす。漫画の中でしか有り得ないだろうなって思っていたことが普通に現実で起こる。
中途半端な気持ちで終わらせたくない。そんな思いがみんなの中で凄く強かったのだろう。それ程この授業にのめり込んでいたのだ。

今まで企画というのは一人が奇抜なアイディアを出して、それに基づいて意見を出し合って修正していく形が一番なのだと思っていた。だからうちの班では企画会議から始まったし、その形式は各自が自分の早稲田をPRするのに面白そうなプログラムを持ちより、そこから厳選していくという形だった。今までの僕だったら実際最後までそのままそう進行していただろう。

しかし、それではおそらく「オーダーメイド授業」というプログラムは世に存在していなかった、もしくは存在していたとしても、今ほど重層的ではなかっただろうと思う。

数回の会議を重ねるうちに、PRプログラムを厳選していく企画ありきの姿勢ではなく、ライフサイクル・モデルに基づいて一から、やっていこうという方向性が生まれた。確認はしたものの、僕自身なかなかそのやり方を肯定しきれなかった。企画は一人で作れるものだと思っていたから。

全てのきっかけはあの日だった。そんな考えが崩れ去っていったのは。
最初のプレゼン前夜。詳細が煮詰まらない現状を打破するため、僕らは夜通し会議をすることを決めた。冒頭でも述べた“漫画みたいな世界の話”が現実となった瞬間だった。
どんな些細な考えでも共有しあった。どんな細かいところでも確認しあった。
『ここが一番の根底であり、僕らにとって一番大事なところだから』
9時間に及ぶ会議が終わり、朝を迎えたその時。

部屋一面に張られた模造紙を見た。

アイディアが膨らんでいく様子が鮮やかに表現されている。僕らが共有している全てがここにある。その瞬間痛感した。

写真は社会科学部4年 杉崎豪紀(たけのり)君


一人だけで作る企画じゃ、こんなものには到底勝てない。と。

答えのある課題じゃないだけに、自分達の力でいくらでも発展させられる。無限の可能性が広がっているのだ。そしてそれに立ち向かうのは刺激し合えるメンバー。最高に面白いと思った。

このメンバーとだったら、何だってやってやれる。
「オレたちには限界なんてない」なんてウソだって分かってるけど 、それでも「限界なんてねぇぜ」って胸張って強がる僕がいる。それくらい奮い立った。

PPTやビデオに関してもほぼ無知な状態からのスタートだったけど、それでも挑戦してやろうと思えた。それはみんなで一つのものを作っているという思いがあったから。絶対に逃げないと決めていたから。先生のPRに対する熱い想いを感じたから。他の班の頑張りも凄かったから。全てが刺激となり、僕らの力になった。

そこから先も様々なことを感じた。
ライフサイクル・モデルに対する絶対的な信頼。会議を通して知る、教科書の大事さ。会議の進行の難しさetc…

それらの全てを発揮した、最後のプレゼンを終えた時、僕は不思議なことに全く達成感がなかった。頭に浮かぶのは、もうしなくてもいいのに、次の会議いつやろう、とか、もっとここをこうしたらとか、PRのことばかり。その度に、あっもう終わったんだったと気づく。そう、最初に襲ってきた感覚は寂しさだった。

授業が終わって寂しい。そんな感覚を持てる授業が他にあっただろうか?そして今後、そんな授業に出会えるだろうか?

この授業は受講して本当によかったと心から思える講座だった。

この講座を開講してくださった井之上先生を始め、全体をサポートしていただいた守田さん(TA)、そしてPR特論の受講生のみんな。全ての人に心から感謝しています!

本当にありがとうございました!!


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2006年05月05日

早稲田大学で新学期がスタート
?メディアから二人の講師を迎えて

こんにちは。井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか?今日は5月5日、端午の節句です。田園の陽光のもとで輝き泳ぐ、こいのぼりを見て、子供の頃を懐かしく想い出しました。

さて4月から早稲田大学での学際授業、「パブリック・リレーションズ特論」と、大学院ではMBAのクラスが始まりました。今年私が担当する3つの講座の2つのクラスは少人数のゼミ形式の授業です。

今年で2年目となる大学院商学研究科MBAコースでは、社会人の院生にパブリック・リレーションズの基本的な知識と、ケース・スタディを中心にした授業を進めています。大学生と違い、社会経験も豊富で目的意識が明確なこともあり、別の意味で教えがいのある生徒さんたちです。これからよろしくお願いします。

■朝日新聞の矢田Be副編集長
先春早稲田大学で新しく始まった、「パブリック・リレーションズ特論」は、実践に重点をおいた授業ですが、限られた授業時間のなかでパブリック・リレーションズ(PR)のコア・コンピタンス(中核競争力)であるメディア・リレーションズを中心に授業内容が組み立てられています。そこで先週、NHKと朝日新聞からお二人の講師をお招きし、メディアの特性と役割について語っていただきました。

朝日新聞からは、昨年に引き続き長年経済記者をしておられた、前AERA副編集長で現在同新聞の週末版Beの副編集長として活躍されている矢田義一さんのご協力を得ました。日刊紙や雑誌について、情報発信側である広報担当者との立場の違いを踏まえながら、実際の出版物を手にし、その違いや特長などきめ細かな解説をしていただきました。

■NHKの高木ディレクター
またテレビ界からは、NHK放送局報道部のディレクターであり、「戦争広告代理店」(講談社)の著者である高木徹さんをお迎えしました。驚いたことに、「戦争広告代理店」は特論の受講者の半数以上が読んでおり、PRに興味を持つきっかけを作ってくれた本だったようです。今年は学生の強い要望もあり高木講師が実現しました。高木さんとは6年前、ボスニア戦争をテーマにしたNHKのドキュメンタリー番組の担当ディレクター時代に初めてお目にかかってからのお付き合いで、パブリック・リレーションズの普及に多大な貢献をしていただいている方です。

お二人の、第一線で活躍するジャーナリストの講義はとても刺激的で、90分の授業が瞬く間に過ぎてしまいました。授業後の質疑応答も盛んで、すでに幾つかのメディアに就職活動で内定をもらっている学生も加わり熱気に満ちたものとなりました。超多忙な中お越しいただいた矢田さん、高木さん、本当にありがとうございました。次回の授業も楽しみにしています。

今回嬉しかったことは、2年前に概論を受講した2名の一期生が海外留学から帰国し、聴講生として元気な姿を見せてくれたことです。二人に再会できとても幸せに感じました。この授業を受けた人たちが、社会でパブリック・リレーションズを実践し、それぞれの人生に活かしていくことができるよう心より願っています。





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パブリックリレーションズ<お知らせ>

『パブリック・リレーションズ?最短距離で目標を達成する戦略広報』(日本評論社、税込2520円)好評発売中!

「人」「モノ」「金」「情報」のすべてを統合する「第5の経営資源」

これまで長年にわたって誤解されてきた「PR」を「パブリック・リレーションズ」として正しく捉えなおすことにより、パブリック・リレーションズの本質とダイナミズムを分かりやすく解説している。広報の実務に携わる人はもちろん、経営者から学生まで幅広い人たちが戦略的広報を理解することのできる待望の入門書。


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2006年02月10日

どんなときにでも輝く存在でいてほしい
 ?後期の授業を終えて

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか?

先週の節分の日に、ある取引先の社長から赤坂日枝神社の節分の豆と枡をいただきました。その白木の枡の匂いは遠い昔を想い起させてくれるのに十分でした。幼少時代、家族の恒例行事であったこの古きよき風習と10年以上も無縁であった自分に気がつきつつ、現在多くの問題を抱えながらも、決して希望を失うことなく、いつも平常心を保っておられるその社長のお人柄や経営者としての深さに心を打たれました。

さて、先々週から先週にかけて、昨年10月から始まった早稲田大学の学際授業「パブリックリレーションズ概論」大学院商学研究科のMBAコースの授業が終了しました。

概論の授業では、受講生からの2回にわたるリポート提出により、授業を受ける前と受けた後、自分がどのように変わったのか、さまざまな感想を書いてもらいました。受講前には、広告宣伝として認識していたパブリック・リレーションズが、「組織体をとりまく様々なリレーションズを統合し取り組むことで経営に直結した機能を果たすことが可能であること」、そして「各々の人生の中で目的達成の手法として活用できる」などの認識に変化したとの声を多く聞きました。

またパブリック・リレーションズを支える「倫理観」「自己修正」そして「相手の視点」などのテーマも、義務教育や高等教育の中ではあまり取り上げられていないようで、学生の目にはとても新鮮だったようです。

これらの視点で日本社会を改めて俯瞰したときに、多くの受講生の認識は、国際社会の中でリーダーシップを発揮できずにいる現状や頻発する不祥事の根底には、パブリック・リレーションズ的な要素が日本社会に欠落していることにあるのではないかと理解できたようです。

さらに社会経験豊富なゲストスピーカーを迎えた授業では、彼らのリーダーとしての「大局的な物の見方」「物事を肯定的に捉えてあきらめずに行動する姿勢」そして「自らアクションを起こし素早く変化に対応するフレキシビリティ」などの共通した素養を講師の方々から直接学べ、強い刺激を受けたのではないでしょうか。  

レポートの中でとても嬉しかったのは、「人生の方向性が変わった」「新しいものの見方ができるようになった」「パブリック・リレーションズをこれからの人生に活かしてしていきたい」など各々の内面に大きな変化がみられたことです。

私は、彼らの鋭い観察力と、大いなる好奇心と意欲に満ち溢れたリポートを、一枚一枚感動しながら夜通し読み明かしました。忙しい仕事をやりくりして教鞭をとらせていただいて本当に良かったと思いました。

一方、MBAコースは社会人向けで、受講生の皆さんにとって仕事と両立させながらの授業は大変だったと思います。そんな中、全員ほとんど休むことなく授業に出席してくださったことを大変うれしく思います。受講生の夜遅くまでの授業参加への熱意には頭が下がりました。

授業内容もそれぞれのバック・グラウンドをなるべく活かし、少人数のグループ・ディスカッションによるケース主体にしました。社会人受講生のひたむきな学習態度をみて、改めて向上心を持つことの大切さを感じさせてくれた授業でした。それぞれ現在の職場でのポジションや、携わっている仕事の内容は異なっていても、是非リーダーシップを発揮して、このコースで学んだパブリック・リレーションズを各々の組織体で活かしていただきたいと思います。

皆さんはこれからの人生で、さまざまな成功や失敗を経験することと思います。しかしどのような時も目的意識をしっかり持ち、その目的に向かってまい進してください(修正を恐れず)。組織の中でどのようなポジションにあっても、いつも「輝く存在」になってほしいと思うのです。

そして、将来どのような分野に進もうとも、皆さんのなかでひとりでも多く、パブリック・リレーションズをとおして、日本社会を平和で実りある発展に導くことのできる次世代のリーダーが生まれることを願っています。受講生の皆さん、この半年間ありがとうございました。

この4月から「パブリック・リレーションズ概論」を踏まえて、パブリック・リレーションズの実践を学ぶ「パブリック・リレーションズ特論」がはじまります。この授業では、実際にPRプログラムを作成しながら知識として得た理論を実践に活用する手法を学びます。学生の皆さん、また特論の授業でお会いできる日を楽しみにしています。

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2006年02月03日

世界最大級のリスク・コンサルティング会社、
 エーオン・ジャパンの会長、ランディ・和田さんを講師に迎えて
  ?「成功するも失敗するもPR次第」

先週、早稲田大学の「パブリック・リレーションズ 概論」の授業に、米エーオン社(Aon Corporation)の日本法人会長のランディ和田さんをお招きしました。そして「ビジネスの成功に不可欠なパブリック・リレーションズの重要性」についてお話しいただきました。

シカゴに本拠地を置くエーオン社は、保険・再保険仲介、リスクマネジメント・コンサルティング、人事コンサルティング、保険引受などの分野でソリューションを提供するグローバル企業です。その売上高は約1兆円。世界に4万7千人余りの従業員を擁し、120カ国の500を超える拠点をネットワークし、主にB to B(企業間取引)向けビジネスを展開しています。

特にリスク・マネジメント分野ではリーディング・カンパニーで、世界中にスタッフ7,000人を擁しています。一般企業へのリスク管理支援や、ロンドンのオフィスでは政・財界の要人の誘拐事件に対応するため、世界中どの地域にも即座に専門家を派遣できるシステムを整えるなど、ユニークで専門性の高いサービスを提供しています。

ランディ和田さんは米国カルフォルニア出身の日系3世で、1973年、学生時代に交換留学生として早稲田大学で一年間学んだ経験のある方です。ですから33年ぶりに訪れた早稲田の杜はランディさんにとってノスタルジックだったようで、キャンパスを歩きながら往時の校舎や、オイルショック時の暖房のきかない寒い教室で震えながら授業を受けたことなどを懐かしそうに想い起していました。

講義の中でランディさんは、企業経営、特に外資系企業が日本市場に進出する際に、パブリック・リレーションズが如何に有効であったかを自身の体験をとおして語られました。

日本でのビジネスは1999年、エーオンリスクサービス・ジャパン社長として派遣されたことに始まります。社長就任後のランディさんは、日本でのエーオンのビジネスの実情を知って愕然としたそうです。当時の日本法人のスタッフは50人あまりでしたが、顧客の8割は外資系企業。そして新規顧客の全てがエーオン・グループの紹介。日本の顧客が殆んどなく、実質的なビジネスが展開されていない現実を突きつけられたのです。

現状打破のために日本企業を新規顧客として獲得するためにはどのようなアクションをとるべきかを考えました。当時日本では無名であったエーオン・ジャパンを「リスクマネジメント・コンサルティングのエーオン」として法人担当者に認知してもらうには、最優先の課題として、費用がかかっても外部PR専門家のアドバイスが必要と考え、PR会社からコンサルティング・サービスを受けることを決断したそうです。

はじめの作業は、明確なゴール(最終目標)やビジョンを明らかにし、その実現のための戦略を構築することでした。そして「B to Bマーケットでの認知度向上」をゴールに掲げ、メディア・リレーションズ、つまりメディアとの関係構築を積極的におこなうことを戦略の中心とするプログラムを立案し実行しました。

メディアの中でさえ社名はもとより、リスク・マネジメントについての認知がない状況で、エーオンがどんな企業なのか、リスク・マネジメントとはどのようなものなのか、理解を深めてもらうためにプレス・ブリーフィングやプレス・リリースの配信のほかにメディア(プレス)・ランチョンやワークショップを積極的に催しました。そしてメディアでの認知度が高まった頃から、メディアからリスク・マネジメントについてのコメントやインタビューを逆に求められるようになり、双方向のコミュニケーションが機能するようになったといいます。

また当時、フィーを払ってリスク管理する習慣のない日本企業に対して、「外部専門家からのアドバイスを受けることが経営資源の保全には必定」との概念を定着させるための啓発活動なども行いました。こうして専門家として質の高いサービスが提供できる企業であることをアピールしていきました。

これらの活動の結果、メディアに一度も掲載されなかった2001年と比べ、2002年9月から約16ヶ月間の活動で新聞やネット上での露出頻度が格段に高まり、当初ゴールとして掲げていた「B to Bでの認知度の向上」を達成することができました。メディアへの露出で得られた認知度の向上は、日本国内でのビジネス拡大に大きく貢献しました。その後関係省庁とのガバメント・リレーションズやアソシエーション・リレーションズなど活動領域を広げていきました。

5年間で売上高は11倍を記録。顧客の中で日本企業の占める割合も2割から8割へと飛躍的に拡大し、スタッフも50人から400人に増員されました。パブリック・リレーションズのゴール達成がこの数字に大いに寄与したことをことは言うまでもありません。エーオンが契約したPR会社は井之上パブリックリレーションズでした。

米国のエーオン本社でもパブリック・リレーションズの重要性を認識しており、独自の定義を掲げているそうです。ちなみにその定義は「パブリック・リレーションズとは、企業とパブリック(一般社会)とが互いに利益ある関係を確立させるための管理機能であり、成功するも失敗するもPR次第である」となっています。

以前も述べたとおり、パブリック・リレーションズの定義は何百とあり、これはその中のひとつです。そしてこの例から、アメリカでは企業が独自のPR定義を持つほどパブリック・リレーションズが経営戦略の主軸に位置づけられていることが確認できます。

ランディ和田さんは講義終了後、受講生の質問に答えて「パブリック・リレーションズにはコストがかかり、一見、売上げに直結しているようにはみえにくい。しかし、パブリック・リレーションズが事業のみならず企業全体のブランド・イメージや評価に与える影響は大きく、やるだけの価値は大いにある。そして、継続的に行うことが肝要である。継続性をもたせることで常に変化する企業内外の環境に対応できるようになる」とコメントしてくれました。

この授業で、パブリック・リレーションズを導入することにより日本での事業を成功させた実例を披露して頂いたことは、パブリック・リレーションズを学ぶ学生諸君にとっては説得性があり、学ぶところが多かったのではないかと思います。

ランディさんは去年4月、エーオンの日本の事業を統合するエーオン・ジャパンの会長に就任されました。多くのリスク要因を抱える日本企業のサポートのためにエーオン・グループのトップとしてますますご活躍されることをお祈りしています。ランディ和田さん、ありがとうございました。

投稿者 Inoue: 17:49 | トラックバック

2006年01月13日

マーコムの専門家、早稲田大学亀井昭宏教授と
元サントリー広報部長、小玉武さんを授業に迎えて。

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

これまで「パブリック・リレーションズ 概論」の授業では、パブリック・リレーションズの幅広さや奥深さを実感してもらうため、社会の各方面で活躍するゲスト・スピーカーをお招きして、学生の立場では普段触れることのできないお話しを直接語りかけていただきました。

今日は、私のこの授業の立ち上げにもご協力いただいた二人の先生をご紹介したいと思います。早稲田大学商学部教授の亀井昭宏さんと早稲田大学教育学部講師(同大学参与)の小玉武さんです。

特に亀井教授には、2004年度からスタートした二つの授業、「パブリック・リレーションズ概論」「パブリック・リレーションズ特論」の実現に当授業の担当教授として多大なご支援をいただきました。スタート以来、毎セメスターに亀井教授に「マーケティング・コミュニケーション」について講義いただいています。亀井先生は広告論、マーケティング・コミュニケーション(マーコム)の専門家であり、日本広告学会の会長を務められたこともあるアカデミック界の重鎮といえる方です。

授業の中では、「インターネットの普及により誰もが情報発信者になり得る時代が到来しており、双方向性コミュニケーションによるターゲットとの相互理解の重要性が一層高まっている。その実践には、常に相手の視点を押さえた行動が求められる」と語ってくれました。

また、ネット社会において、組織体におけるパブリック・リレーションズ部門の役割として、ブランド構築による企業価値向上の重視性を採り上げ、そのためには組織体の経営理念やビジョンを明確に掲げ、ターゲット(一般社会・パブリック)に浸透させていく活動に力を注ぐべきであり、その有効な手段として、影響力のある人たちとの対話(インフルエンサー・リレーションズ)の重要性を指摘されました。

二人目は、元サントリー広報部長の小玉武さんを講師にお招きしました。小玉さんとは、私が(社)日本パブリックリレーションズ協会で国際委員長を務めていた時期に一緒に活動させていただきました。1964年にサントリーがはじめて広報部門(広報室)を設置したときから足掛け20数年にわたって広報畑を歩まれた方です。またTBSブリタニカの取締役出版局長として「ニューズウイークジャパン(日本語版)」の立ち上げに関わったり、文化事業部長としてサントリーホールを中核とした文化活動を統括するなど、広報エキスパートとして当時サントリーの社長・会長であった佐治敬三さんを幅広くサポートし、サントリー広報の黄金時代を築かれた方です。

今回は「組織と広報」と題して企業広報の現状についてお話しいただきました。講義では、情報技術の発達に伴い組織体と個人、情報の発信者と受け手の関係がますます複雑・多様化しており、改めて広報部門の位置づけが問われている現状を語ってくれました。そして企業広報の存在意義として、企業の広報部門が経営に直結した広報を担うべきであると話してくれました。

また危機発生時の対応が結果を左右するクライシス・コミュニケーションにおいて、スペシャリストが対応すべきであり、社内での有能な人材育成と外部専門家からのアドバイスを採り入れる体制づくりが急務であるとお話しされていたのがとても印象的でした。

パブリック・リレーションズを成功に導くには理論と実践の両輪が必要です。マーケティング・コミュニケーションの分野で長年にわたり活躍される専門家や日本の企業広報の現場での豊富な経験を持つ方からのお話しは、学際(学部間の垣根を越えた)授業に参加した学生にとって得がたいものであったと思います。

パブリック・リレーションズを実践する現場では、目標を見失わない一貫性とリアルタイム性をもって状況変化に対応できる柔軟性が同時に必要となることを改めて確認する貴重な授業であったと思います。

亀井先生、小玉さん、ありがとうございました。今後のますますのご活躍を心よりお祈りしています。

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2006年01月06日

明けましておめでとうございます。
 ?この春に新しい本を出版します

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
皆さん、お正月をどう過ごされましたか?
私は正月休みを利用して、この3月に発刊する本の執筆をしていました。仕事に追われてやっと脱稿、ほっとしているところです。

昨年は、続発する不祥事から身を守るための危機管理意識や株価の回復、日常化する企業買収(M&A)の影響を受けたIRへの関心の高まりなどがみられました。また9月の衆議院選挙で脚光を浴びたPR(会社)が注目され、PR・広報業界にとって躍動的な一年でした。

2001年には30年に及ぶ実践をとおして得た知識や経験の集大成として、『入門 パブリックリレーションズ』をPHP研究所より出版(編著)しましたが、今回の本のタイトルは『パブリック・リレーションズ』で、内容も大幅に改訂しました。出版社は、「できれば20?30年と愛読される息の長い本にしたい」と考え、日本評論社にお願いすることになりました。

この本は、最短距離で目標を達成する手法であるパブリック・リレーションズの幅広さや奥行きの深さとその概念を解かりやすく解説しています。日本の現状認識を深めるため、パブリック・リレーションズが登場・発展したアメリカにおける歴史や概念を紹介するとともに、GHQによる戦後の日本への導入の経緯やその後日本でなぜ普及が遅れたかを解説し、パブリック・リレーションズを概観します。

また米国企業のCEOが如何にパブリック・リレーションズを重要視しているか、そして日本を代表する企業経営者がどのような企業広報の現状認識や将来展望を抱いているのか、アンケート調査をとおして紹介しています。

この本はあらゆる問題に対して、確かな技法で戦略的なソリューションを提供できるパブリック・リレーションズの基本概念を丁寧に紹介したうえで、現場に応用できるよう、危機管理やIR、CSR、報道分析など、実践に必要となる技術や分析手法を明らかにすると共に具体的なケースも紹介。

日本は2005年、景気の回復基調を維持したものの、政治・経済・社会が抱える未解決の問題は山積しており、今後もどのような問題が噴出するのか予測困難な不安定な状態にあります。また急速に進むグローバル化の中で世界は激しく変化しており、組織体には常にスピーディな対応が求められています。

『パブリック・リレーションズ』は、PR後発国である韓国や中国が急速にキャッチ・アップしつつある現状にあって、今後日本がどのような総合的な対応をなすべきかについても提示しています。

この本が、企業や公共団体など組織体のトップや広報部門、教育現場に携わる方々そしてパブリック・リレーションズを現在勉強している学生、パブリック・リレーションズに興味のある皆さんなど、一人でも多くの方の手にとっていただくことによってパブリック・リレーションズが広く認知され、日本の社会システムに導入されていくことを強く願っています。

今年も皆さんにとって良い一年となりますように。

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2005年12月30日

テヘランでの国際シンポジウムに参加して
?驚異のパブリック・リレーションズ熱

こんにちは。井之上喬です。
明日は大晦日、2005年もあと数十時間で終わりを告げますが、皆さんいかがお過ごしですか。

先日、12月中旬に訪問したイランの出張報告を予告しましたが、今年最後のブログはそのお話しをしたいと思います。

イラン(正式名称:イラン・イスラム共和国)は西アジアに位置しトルコ、イラク、パキスタンなどに隣接する中東の国です。人口は約6900万人で宗教上の最高指導者が国の最高権力を持つユニークな共和制国家です。1979年ホメイニ師によるイラン革命により、当時パーレヴィー王朝のシャー(国王)、モハンマド・レザー・パーレヴィー国王がエジプト亡命を余儀なくされたことで王朝は終焉を迎え現在の体制に移行されました。国名イランは「アーリア人の国」という意味で、言語はアラビア語ではなくペルシア語が公用語として使用されています。

今回のシンポジウムは、イランにあるパブリック・リレーションズ・リサーチ研究所が私の所属する国際PR協会(IPRA 本部:ロンドン)の協力のもとで、12月11、12日の2日間にわたり開催されました。とくに開催直前、アハマディネジャド大統領による二度目のイスラエルへの問題発言(「イスラエルは欧州へ引っ越せ…」)が世界的に大きく報道されるなかで、初めてのイラン訪問に少なからず不安感を抱きながら現地入りしました。

今年4月にオープンしたばかりの近代的なイマーム・ホメイニ空港に到着すると、世話役のイラン厚生省の役人で大会事務局次長を務めるアミール・ラステガル氏が空港まで出迎えてくれました。郊外にある空港から首都テヘランへの道のりは車で約1時間半(道路は大混雑)。人口1,000万人を超える首都テヘランはイランにおける政治、経済、文化の中心地で、イラン高原の北西部に位置する周囲を山で囲まれた谷の町です。空気の流れが悪いせいか、市内の工場からの煙や車の排気ガスがスモッグとして滞留し、地元の学校が頻繁に臨時休校するほどです。

それでも意外なことは、イラン国内には4,000メートル級の山があり、その山麗から湧き出るミネラル・ウォーターはフランス産のエビアンを彷彿とさせるマイルドな味わいで、ホテルの水が美味しかったのもうなずけました。

パブリック・リレーションズの新しい理論研究をテーマにしたこのシンポジウムでは、国際PR協会の会長で長年の友人であるチャールズ・ヴァン・デル・ストラッテン(ベルギー)を含め、イギリス、ドイツ、アイルランド、エストニア、オランダ、ノルウェイ、日本など8カ国9人の学者や実務家がスピーカーとして招待されましたが、先の大統領発言もあり全員緊張して大会に臨みました。

地元の参加者は、イラン国内の政府機関や民間企業、教育機関などのPR担当者、そしてパブリック・リレーションズを専攻している学生などで、1000人を超え、大統領の問題発言もあり会場全体は熱気に包まれていました。

私のスピーチ・テーマは“Advanced Research of Self-correction in Public Relations( パブリック・リレーションズにおける自己修正に関する研究についての最新報告)” というテーマで、目的達成のためのパブリック・リレーションズ活動における「倫理」 「双方向性コミュニケーション」 「自己修正」の3つを重要な要素とし、とりわけ「メタ認知」の概念を適用した「自己修正」の有効性について語りました。メタ認知とは、一般的に自分の思考を思考することで、自分自身(行動や考え方、知識量・特性・欠点など)を別の次元から眺め認識することです。

講演前は「必要に応じて自己の深い部分で自らを修正する」といったテーマにどこまで聴衆の理解を得られるか心配しましたが、聴衆からは強い共鳴を得られたことに嬉しい驚きを覚えました。彼らがイスラム教を信仰に持ち、会議や集会の始まりには必ず短いお祈りをして一体感を持って物事に臨むなど、神の存在を理解しているからこそ共鳴してくれたのかもしれません。そして、聴衆からパブリック・リレーションズをより掘り下げて学びたいとの熱意が伝わってきたことも新鮮でした。

講演を終えて、外国からの訪問者へ興味を持った沢山の若者たちからデジカメでの記念撮影や、サイン攻めに会いました。なかでもとても面白かったのは、サインというよりEメール・アドレスを求められたことです。また、ブルカ(女性が被るスカーフとコート)を身に纏い一見か弱そうに見える女性たちが、それぞれしっかりしていて個性豊かであったことが印象的でした。

月曜日の午前中に講演を終えた私は、英国人のスピーカーと2人で、午後からのイラン国内で活動する金融機関のPR部門で働く管理職約40人が参加するフォーラムに参加しました。イランのファイナンシャル・セクターは一昔前の日本のそれに似ており、国の強い規制下で如何に他の国とりわけ湾岸諸国の金融機関との競争で差別化を図るべきかに神経を尖らせていました。そして、こうした状況の中ではどのようなパブリック・リレーションズが展開されるべきかが真剣に議論されました。

私の彼らへのアドバイスのなかで特に強調したことは、グローバル競争に打ち勝つ前提となる政府の規制緩和実現のための、パブリック・リレーションズの積極的活用の必要性でした。

その晩には、シンポジウムのスポンサーでもあるイラン最大の乳製品メーカー、イラン・デイリー・インダストリーズ社からプレゼンテーションを受けました(祈りで始まる)。考えられるPR手法を最大限使ったプログラムの紹介の後、驚きと共に知らされたことは、この会社のPR体制がトップに直結した実に強固なもので、PR責任者が経営コミッティ(委員会)、研究開発委員会、マーケティング委員会など、社内にある全ての委員会にメンバーとして加わり細部にわたって関わっていたことでした。

先入観を持って言うならば、イランのような国でパブリック・リレーションズが、完全な形ではないにせよ組織体に導入され、機能しているとは夢にも思いませんでした。まさに衝撃的な体験でした。

驚いたことにこのシンポジウム開催のつい1カ月前に、同じくテヘランで別のPR団体主催による国際会議(1000人規模)が開催されていたのです。ちなみに関係者の話によるとイランのパブリック・リレーションズに従事している実務家は6万人、そのうち約5千人は大学・大学院でパブリック・リレーションズの専門教育を受けているそうです。

ひるがえって日本では、私の個人的な調査によると、パブリック・リレーションズ(広報・広聴など)に従事する人の数は3万人弱。しかもそのほとんどが未経験者で、専門教育も受けていません。政府関連機関について言えば、広報担当者は2年から3年で他部門への異動のため離れてしまうのが実情です。このような構造的問題も日本におけるPRの発展の障害になっています。

また高等教育でのPR教育導入の必要性はもとより、日本のパブリック・リレーションズ普及の普及が遅れている要因のひとつには、PRやパブリシティ、広報など、パブリック・リレーションズを意味する言葉の乱立があるのではないかということです。パブリック・リレーションズが登場・発展したアメリカ以外の国々でも、パブリック・リレーションズが社会に浸透する上で何が源流(つまりPR)であるかが学問的に明確に理解されており、このような混乱はほとんど見られません。

いつの時代も、政治的に形成される国のイメージと、その国に住む人々の暮らしや生の声をとおして抱くイメージとは必ずしも同一ではないことを過去の歴史は証明しています。しかし今回の出張では、訪問前に抱いていたイランのイメージと実際の姿との乖離の大きさに驚くばかりでした。双方が偏りなく対等に情報流通を行う、対称性の双方向コミュニケーションの必要性も痛感することになりました。

イランでのPRの定着のための取り組みやその熱意を目の当たりにして、改めて日本における真のパブリック・リレーションズ普及へのシステム作りが急務であると痛感し帰国したのでした。


さて、本号は今年最後のブログとなりました。来年もパブリック・リレーションズの実務家、研究者としてさまざまな事柄を皆さんと共に見つめていきたいと考えております。ありがとうございました。

それでは皆さん、良い年をお迎えくださいますよう。

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2005年12月16日

「マニフェスト」を推進する北川正恭さんを講師に迎えて

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか?先週末から今週半ばまでイランのテヘランに行ってきました。テヘランにあるパブリック・リレーションズ・リサーチ研究所主催のシンポジウムのスピーカーとして招かれたものです。近々にその体験をこのブログでご報告しますので楽しみにしてください。

さて、12月の第一週目の「パブリック・リレーションズ概論」の授業には、前三重県知事、現早稲田大学大学院教授の北川正恭さんをゲストスピーカーにお迎えして、「パブリック・リレーションズと政府・自治体」についてお話していただきました。北川さんとは、三重県知事時代の2001年に私の編著の『入門・パブリックリレーションズ』をお贈りしてからのお付き合いですが、その際立ったご活躍にはいつも目を見張っていました。また同じ商学部の卒業生で、私の学生時代、演奏旅行で三重県四日市を訪問したときに会場に偶然演奏を聞きにきてくださっていたようで、歩んできた道は異なっていても、同じ時代を生きてきた仲間として身近に感じさせてくれる方です。

北川さんは、三重県県議会議員、衆議院議員を歴任後、95年4月から2期8年にわたり三重県知事を務められ、真の住民のための地方行政を目指し数々の革新的な改革を実現されました。私の知る限り、国内で始めて政治行政に経営手法を採り入れた方です。2003年に知事職を退任されてからは日本の政治を変えるため、選挙の公約「マニフェスト」(1834年に英国で登場したとされている)導入による政治・行政改革を推進し、9月の衆議院選挙でもマニフェストを公約に掲げ政党や多くの候補者が選挙戦に挑みました。

「北京で一羽の蝶々がはばたくと、ニューヨークでハリケーンが生じる」というカオス理論、複雑系の理論があります。これは、イリヤ・プリゴジン(Ilya Prigogine 1917~, 77年ノーベル化学賞受賞)が唱えた理論で、「一羽の蝶々の小さな羽ばたきでも連鎖反応を起こして世界を席巻する大きなうねりになり得る」という意味で、いわゆる化学の世界でいうバタフライ・エフェクト(蝶の効果)を示す例え話です。

講義のなかでは、北川さんが三重県知事在任中、この「ミクロの“ゆらぎ”がマクロを制する」との共鳴理論を一歩進めた「情報共有が共鳴を生み、その揺らぎが大きな変革をもたらす」という理論を用いて、いかに自己責任に基づく内発的な行政改革を実現していったかを話されました。ひとり一人の力は小さいけれど、お互いが共鳴しあって大きな渦になれば、途方もない力を発揮できるとしています。そして、この共鳴の理論をマネジメントするシステムこそがパブリック・リレーションズであるとその重要性を語られました。

具体的には、知事としての職務時間の80%を費やし、職員とのダイアログ(対話・双方向性コミュニケーション)を徹底して行い情報や問題を共有し、お互いの「納得」をベースに諸改革を実施したこと。また、明確な理念と目標(ゴール)を掲げ、トップ自らにその達成責任を課し、責任の所在を明確にすることで、かかわる人々の自己責任における自発的な取り組みを促したこと。

そして、説明責任の対象(ターゲット)を「国」から「県民」に移し『生活者起点』をキー・コンセプト(理念)に統治主体である県民の参加を促したこと。さらには既存の広報課を「政策広聴広報課」と改め、広聴→政策立案→広報の順で、県民の声を聴き、それをもとに政策立案をおこない、内外に広報をおこなったのでした。つまり県民との対話を促し、そこから得られたフィードバックでより良い政策づくりをおこない、積極的に情報提供をおこなうといった、行政運営にパブリック・リレーションズの手法を見事に採り入れたといえます。ここではご紹介し切れないほど数々の改革の成果を披瀝されました。

また「自己修正」の大切さにも触れて、同郷の松尾芭蕉による「不易流行(変化こそ普遍)」という言葉を引用して、常に自らを変化させられるもの、つまり自己修正を行えるものだけが生き残れると語ってくれました。そのためにはパブリック・リレーションズの手法である双方向性コミュニケーションによる情報収集をとおして全体を俯瞰し、自ら気づき修正させることで常に変化に対応できる「学習する個人や組織体」を育てることが重要であり、そうすれば変化の激しいこのIT社会を乗り切っていけるのではないかと示してくれました。

最後に、ITの発達により、1989年まで東西を分断していたベルリンの壁を突き抜けた情報が民衆を動かし、その力が鉄の壁を崩壊させたように、ひとり一人の気づきが大きな変革を起こせると自覚して「気づいたら飛べや」つまり「いいと思ったら先ずは一匹目の羽ばたく蝶々に自らなってみることが大切」と個人単位での行動力に期待するメッセージをいただきました。

質疑応答の中で、いまや伝統化しつつある政治腐敗に関する質問に対しては、「議員は立法という尊い仕事に携われる素晴らしい職務なので、信頼回復のためにも明確な『マニフェスト』に基づく政策実施を推進し、日本の政治の向上をはかっていきたい」。そして、将来を担っていく学生に対して、「主権在民における統治主体である市民が、政治への自己責任を果たしていくことで政治改革が実現するよう協力してほしい」と呼びかけました。学生にとってとても刺激的な授業だったと思います。

北川教授のお話を伺って、「マニフェスト」導入がカオス理論によって政治行政に変革をもたらし最終的に日本全体が変わっていくのではないかとの期待感を強く持ちました。パブリック・リレーションズも、一羽の蝶々から連鎖反応で日本の国中に広がってくれたらと願わずにはおられません。

北川さんの今後のますますのご活躍をお祈りしています。どうもありがとうございました。

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2005年11月25日

前NTTドコモ会長、大星公二さんを講師に迎えて。

こんにちは。井之上喬です。

皆さんいかがお過ごしですか?

先週、早稲田大学の私の授業「パブリック・リレーションズ概論」に去年に引き続いて前NTTドコモ会長の大星公二さん(現NTTドコモ、シニア・アドバイザー)を講師としてお招きしました。副題を「次世代のリーダーのために」とするこの授業で、「パブリック・リレーションズと企業」をテーマに、ドコモの成功を例にとり企業の社会的役割とリーダーシップについてお話しいただきました。

大星公二さんは、当ブログ8月1日号で取りあげた、私の長年の友人であった高崎望さんの学生時代からの友人で、高崎さんの紹介で10数年前に初めて出会い、今では親しくさせていただいている方です。

大星さんは、92年にNTTからエヌ・ティ・ティ移動通信網(現NTTドコモ)を創業し社長・会長として、その売上げを7年間で約4倍、時価総額において世界3位にまで引き上げた稀代の経営者です。在任中の大星さんは、持ち前の壮大なスケール感と常識にとらわれない発想力、そして素早い決断力と実行力で、リスクをとらない経営者が多い日本のビジネス界で際立った光を放っていました。

当日の講義のなかで大星さんは、自ら育て作り上げたドコモの成功について、将来の市場変化を適切に予測し、必要と感じたときにはスピーディに戦略転換をはかり、つねに差別化を意識し実行したことにあったとしています。

また、人事面における新規採用試験に際して書類なしの面接中心の試験を行った結果、採用された女子学生の比率が47%にまでのぼり、入社後の女子社員の役職昇進が同期中一番早かったことなど、既成概念を打破した大星さんの経営手法が披瀝されました。

そして企業の役割については「企業は社会の公器である」との言葉に集約されるように、企業にとって一番大切なのは消費者、従業員とその家族などのステークホールダーであり、よりよい商品やサービスの提供をとおし社会に貢献することで、結果的に企業の利益は後からついてくると語り、これからの企業活動にとってのパブリック・リレーションズの重要性について語りました。

またリーダーシップについて「知識と情報から問題を抽出し、解決法を導き出し、それを実行すること」と語り、大学では「知識と情報から問題を掘り起こし、自分で考えて答えを導き出す訓練を重ねることが後の宝となる」と自分で思考し、行動することが真の成長を促してくれると説きました。

大星さんは「ノブレス・オブリージュ」(高貴な身分に生まれたものとして自覚すべき責務=選ばれた人の責務)の精神についても語り、第一次世界大戦中の英国で、多くの貴族が国と正義を守るため率先して出征し戦場に散ったことを例にあげ、「選ばれた人は他人に対し、より多くの責任を持っている」ことを強調しました。

そして企業経営において「iモード」を例に、「社運をかけた大きな決断をしなければならない場面もある。しかし失敗を恐れていては前に進めない。しり込みしていてはスピードが要求されるこのグローバル社会の波についていくことはできない」として、ここ一番というときはトップが直接かかわり、必要とあればどこにでも自ら足を運ぶ徹底した現場主義が大切であることも語ってくれました。

また、情報技術(IT)の発達とインフラが整備されたことで、これまでの特権階層による情報や知識の独占から、誰もが情報へアクセスできるいわゆる「ユビキタス社会」の到来によるチャンスの拡大についても語りました。

講義後の質疑応答では学生からの質問が相次ぎ、競争が激化するグローバル社会を乗り切るファクターとしてハングリー精神の大切さにも触れました。物質的に豊かな日本社会で成長の起爆剤となるハングリー精神を育てるには、「知る喜びを知ること」、つまり知的欲求を刺激することで、物事を追及するハングリー精神を養うことができるのではないかという自身の見方を示しました。

90分にわたる講義は、熱気溢れる中で予定時間を大幅に超えて終了しましが、大星さんの自由な発想とダイナミズムとをふんだんに感じさせてくれる、学生にとって有益で印象深いものとなりました。

大星さんをみていつも思うことがあります。それは、彼のような人物が経済産業省の大臣となり、日本の産業の将来の舵取りをおこなえば、確実にしかも速いテンポで日本がより良い方向に変わっていくのではないかということです。

大星さん、どうもありがとうございました。今後のご活躍をお祈りします。

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2005年10月10日

後期の授業がいよいよスタート!受講生の成長を楽しみにしています。

こんにちは、井之上喬です。

今日は三連休の最後の祭日となる「体育の日」です。東京はあいにく雨模様ですが皆さんいかがお過ごしですか?

先週、早稲田大学で二つの私の授業がスタートしました。

一つは昨年から始めた学部間の垣根を越えたオープン教育センターの「パブリック・リレーションズ概論?次世代のリーダーのために」、もうひとつは大学院商学研究科(MBA)で今年から新たに始まったPR講座です。

「パブリック・リレーションズ概論」では、パブリック・リレーションズとは何か、なぜ今必要とされているのか、また米国で誕生したその発展史や戦後GHQにより導入されたパブリック・リレーションズがなぜ日本で育たなかったのかなどの歴史的考察も加えた、PRの理論と実践を教えます。

ゲスト講師には早稲田大学院教授で前三重県知事の北川正恭さんやNTTドコモ前会長の大星公二さん、米国多国籍企業日本法人トップなど各方面で活躍されているかたがたです。ケーススタディも交えながら、幅広く奥行きの深いパブリック・リレーションズを包括的に学ぶことができる講座にしたいと思っています。

総合大学では初めての講座としてスタートした昨年は、抽選による定員94名のクラスでしたが、今年はできるだけ多くの人に参加してもらいたいと考え、思い切って応募者全員を受け入れることにしました。その結果、倍以上の237名のクラスとなり、今年新築したばかりの法学部の教室での快適な授業は以前にも増して力の入ったものになりそうです。

これに対し、社会人を対象にした大学院商学研究科(MBA)でのPR講座は少人数のゼミ形式です。パブリック・リレーションズの理論に加え、実践では実務上直面している課題や成果をもとにディスカッションを行い、個々の受講生によるライフサイクル・モデルをベースにしたプレゼンテーションも計画されています。

また特別授業として、米国ペンシルバニア大学ウオートン・スクール(MBA)の学生とビデオ・カンファレンスによるケース研究を行う予定です。厳しさを増す組織体のグローバルな経営環境の中で、間口と奥行きの深いパブリック・リレーションズが、如何にマネジメントの中枢に組み込まれるべきかを理解できるような授業にしたいと考えています。

このブログでも繰り返し述べていることですが、グローバル社会で、日本が安定的発展を遂げるには「次世代リーダー」の育成が不可欠です。パブリック・リレーションズの理論と技術を習得し実践することは「自立した強い個」を育み、リーダーとしての素地を築くことを可能とします。

また、アメリカでは現在20万人を超えるパブリック・リレーションズの実務家が活動していますが、日本で広報に携わる人の数は一万数千人と極端に少なく、その殆んどは大学で正規の教育を受けていません。そして多くは組織体のジョブ・ローテーションに組み込まれ、一部を除いて広報の仕事に腰掛的に携わっているのが現状です。

パブリック・リレーションズの持つダイナミックな概念と技法を、ビジネス・政治・行政の各分野で取り入れるには、しっかりしたカリキュラムに基づき専門教育を受けたパブリック・リレーションズの実務家の養成が急務です。

これから受講生たちがどのように成長していくのか楽しみにしています。この授業で学んだことがそれぞれの人生で活かされ、役立つものとなることを心から願っています。

受講生の皆さんこれからよろしく!

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2005年09月26日

「パブリック・リレーションズ 特論」の授業を終えて。
 ?次世代を担うリーダーとしての活躍を期待

先週の月曜日(9/19)と火曜日(9/20)は千葉県鴨川市の山あいにある眺望の素晴らしい早稲田大学のセミナーハウスで合宿形式による「パブリック・リレーションズ特論」の最後の授業と試験を行いました。この講座は、2004年の前期の授業「パブリック・リレーションズ 概論」で教えた理論に基づいた実践学習授業です。

この春に始まった授業は、「早稲田大学が大学国際化のなかで如何に他大学と差別化をはかるべきか」といったことを最終目標(大きなゴール)に掲げ、パブリック・リレーションズライフサイクル・モデルに沿ったプランを作成し発表するといった内容のものです。グループ別に提出されたプランの中には興味深いアイディアが数多くありました。自分の帰属する大学を客観的に俯瞰し作成された各々のプランはよく練られており、若い人たちの柔軟性ある、シャープで新鮮な発想には感心させられました。また、隔週に行う変則授業でしたが、学生たちが授業のない日もグループで教室に集まり各々のプラン作りに励む姿を見て心を打たれました。

夏休み前には、朝日新聞の矢田義一さんとNHKの板垣信行さんに講師をお願いし、各チームによるメディアへのプレゼンテーションを行いました。プロの目からみると改善の余地が多くあり正鵠を得た厳しい指摘もありましたが、授業をのぞきにこられた「PRIR」(宣伝会議)の田上編集長も学生の熱意とレベルの高さに驚嘆されるほど、社会経験のない大学生のプランとしては高いレベルの内容だったと思います。

彼らのプランは将来大学側へも提案される予定です。このうち一つでも大学が新しい企画として採用し、新事業として実現すれば彼らはどんなに喜ぶことでしょうか。

先週の試験は、通常の倍の制限時間180分(3時間)をフルに使い、あらかじめ提示された条件に沿ってPRのライフサイクル・モデルに基づいたプランを作成し、それぞれのスタイルで論述を展開するといった内容でした。

翌日の最終授業では、一つの課題に対し様々なプランが立案されることを知ってもらいたいと思い、一人ひとりの解答に対し良い点、改善すべき点などコメント付の講評を行いました。短い時間で練られたプラン内容はいずれも授業での進歩が窺えるものでした。

最後の夜は、夕食後に打ち上げを兼ねた飲み会を開き夜中まで様々なことを語り合い、とても有意義な時間を過すごしました。一人ひとりがとても個性豊かで瞬く間に時間が過ぎてしまいました。

私にとって講義はいつも真剣勝負です。学生たちの純粋な探究心に応えるには、不用意な教育は許されないと考えているからです。ですから、いつも授業の後は全エネルギーを使い果たしたようにクタクタになってしまいます。特に今回の鴨川での集中講義が終了した時は、終わった後の充実感と共に「持てるエネルギーを放出しきった」これまであまり体験したことのない感じを味あわせてもらいました。

「パブリック・リレーションズ 概論」「パブリック・リレーションズ 特論」の副題は「次世代のリーダーのために」です。彼らの提出した感想レポートには、この授業で初めて出会ったパブリック・リレーションズが自分達の人生のなかで今後どのように関わり、活かされていくのか、それぞれの思いがみずみずしく述べられており、学生達が巣立ち将来社会で活躍するようになれば、日本も必ずや変わっていくだろうことを予感させてくれました。

これらの授業の第一期生となる受講生諸君が、将来まさに次世代を担うリーダーに成長し、社会に役立つ人間として力強く生き抜いてくれることを心より願わずにはいられません。

受講生の皆さんありがとう!

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2005年05月16日

大学の授業に2人のジャーナリストが登場し、メディアの特性と役割について語りました。

こんにちは。井之上喬です。
今春、早稲田大学で始まった「パブリック・リレーションズ特論」は、実践に重点をおいています。効果的なパブリック・リレーションズ(PR)活動には、PRのコアコンピタンス(中核競争力)となるメディアとの関わりが非常に重要になります。

5月12日の授業では、NHKと朝日新聞からお二人を講師としてお招きしました。現場の第一線で活躍中のジャーナリストに接してもらい、情報の出し手(組織体)とは異なる、情報の受け手として、文字どおりパブリック(オーディエンス)との間を取り持つ媒体としての役割やそれぞれの媒体(新聞、雑誌、TV)特性について、臨場感を味わいながら体感してもらいました。

新聞社からは、朝日新聞で経済記者をしておられ、前AERA副編集長で現在同新聞の週末版Beの副編集長として活躍されている矢田義一さんにお越しいただき、日刊紙や雑誌について、情報発信側である広報担当者との立場の違いを踏まえながら、実際の出版物を手にし、きめ細かな解説をしていただきました。

また、テレビ界からは、NHK放送局解説委員の板垣信幸さんのご協力をいただきました。ワシントン支局時代の大和銀行NY支店事件や山一證券の倒産、みずほ経営統合などご本人が現場で関わっておられたお話の中で、事件発生の際TVメディアと広報担当者との緊迫感あるやり取りなどを解説していただきました。

講義後の質疑応答も盛んで、90分の授業が瞬く間に過ぎてしまいました。授業後の懇親会で、居合わせた生徒2人が、この授業を受講したことがきっかけで、PR業界への就職を考えていることを知りました。その一人が、「この授業を受けなかったら、PR業界に入ることは考えませんでした…」と語ってくれました。ほとんどの学生が授業で初めてパブリック・リレーションズに接するわけですが、その素晴らしさを、一人でも多くの人に知ってもらいたいと願っている私にとっては、こういう言葉を聞けたときが、一番うれしい瞬間です。

パブリック・リレーションズの実務家を養成するには、パブリック・リレーションズの持つ広がりや、奥行きの深さとその重要性を伝え、認識してもらうことの必要性を改めて感じました。こういう人たちが、毎年巣立ってくれることにより、日本のPR事情が確実に変わっていくことを確信しています。

眼をキラキラさせながら真剣に取り組む学生たちを見ながら、将来この子達が育ち、そのなかから日本の明日を担う新しいリーダーが生まれるのではないかと、期待に胸を膨らませるのでありました。

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2005年04月18日

パブリック・リレーションズ(PR)の実務家を育成したい

こんにちは。井之上喬です。

4月14日は、早稲田大学で新しく始まった「パブリック・リレーションズ特論」の授業で、久しぶりに元気な皆さんと再会でき大変うれしく思いました。

社会の健全な発展と繁栄に貢献できる包括的なパブリック・リレーションズを、日本社会に広めていくことが、私のライフワークであり願いです。その実現には、現在日本で圧倒的に不足しているパブリック・リレーションの実務家を養成することが急務であると常々考えていました。その思いがかない、昨年4月から早稲田大学でパブリック・リレーションズの教鞭をとることになりました。

2年目となる今年は、昨年から始まった学部間の垣根を越えた、次世代リーダー育成のための理論中心の講座「パブリックリ・レーションズ概論」に加え、今月から始まった、実践に重点を置いた「パブリックリ・リレーションズ特論」そして、商学部商学科大学院(MBA)でのPR講座、あわせて3つの授業で教える予定です。

「パブリック・リレーションズ特論」の授業では、早速、早稲田大学の広報室長である八巻和彦商学部教授から快諾を頂き、広報室のご協力を得て、学生自身が自分の大学のPRを各々の視点で考え、企画立案し、そのシミュレーションを行うことを考えています。受講される皆さんがどのように学習し成長していくのか今から楽しみです。

米国では現在20万人を超えるパブリック・リレーションズの実務家が活動しているのに対し、日本で広報に携わっている人は推定約8,000人と極めて少なく、量的にも質的にも圧倒的に不足しているのが現状です。グローバル社会で日本が再生を果たすためには、政治・行政・経済の各方面でパブリック・リレーションズの手法を効果的に導入することが必要です。その意味でも、学問的にも実践的にも幅広く、奥行きの深い守備範囲を持つパブリック・リレーションズの専門教育を受けた実務家の育成が急がれます。

早稲田大学の授業を通して、将来、実務家育成への動きが全国へと拡大し、日本社会へのパブリック・リレーションズの導入がいっそう活発になることを願っています。

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