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2012年07月16日

「災害ではなく人災」の福島原発事故
?国民の関心を高めた徹底した情報公開

こんにちは井之上 喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

7月に入って日本の将来を左右しかねない重要な発表が相次いで2つありました。ひとつは東電福島第一原発事故の原因究明に関する国会事故調査委員会(黒川清委員長、以下国会事故調)からの最終報告書で、5日に衆参両院議長に提出されました。もうひとつは、2020年までの政府の成長戦略を盛り込んだ「日本再生戦略」で、その原案が11日に公表されています。

国会事故調は、昨年3月11日に起きた福島第一原発事故の原因究明のための調査・提言を行うために日本の憲政史上初めて国会に設置された、政府から独立した国民のための調査機関。

一方「日本再生戦略」は、昨年10月、閣僚や経済界の代表で構成する野田首相直轄の「国家戦略会議」を設置して議論を開始。菅前内閣による「新成長戦略」をさらに発展させた内容となっています。今後、この原案を国家戦略会議で煮詰め、月内の閣議決定を目指しています。

■政府・東電の責任を強調
事故調の報告書は641ページ( http://naiic.go.jp/ )。調査は延べ1167人の関係者に900時間を超えるヒアリングを行うとともに、東電福島第一原発をはじめ第二原発、東北電力女川原発、日本原電東海第二発電所に対する9回に及ぶ視察の結果をまとめたものです。

報告書では、根源的な原因は「自然災害」ではなく明らかに「人災」であると断定し、地震・津波対策を立てる機会が過去、何度もあったのに、政府の規制当局と東電が先送りしてきたと政府、東電の事故対策の甘さや対応の不備を厳しく批判。

また、報告書には政府の危機管理体制の抜本的見直しとして、政府の指揮命令系統を一本化。政治家の場当たり的な介入を防ぐしくみを求めるなど7つの提言も盛り込まれました。

細野原発事故担当相は6日の閣議後の記者会見で、この東電福島第1原発事故に関する最終報告書について、「東電と政府双方に責任があるとした事故調の指摘は妥当だと思う」と述べています。

報告書の内容は翌6日の各紙紙面のトップ記事として大きく採り上げられました。皆さんもテレビで見たり記事を読まれたことと思いますが、どのような感想を持たれたでしょうか。

黒川清委員長が主宰する国会事故調には文字通り政府から独立したニュートラルな印象を受けます。

私自身今年の1月、ベラルーシのチェルノブイリ事故担当副大臣が来日した際、黒川委員長をはじめとする事故調メンバーにお会いしたことがあります。日曜日にオフィスに出勤しベラルーシの経験を真剣にヒアリングされた黒川さんをはじめとするメンバーの方々の真摯な姿が深く印象に残っています。

この事故調報告書にかかわる報道に接して、官邸側と東電側との齟齬や安全対策の遅れの背景など、これまで腑に落ちなかった点に関し「やはり、そういうことだったのだ」と納得する内容がいくつもありました。

パブリック・リレーションズ(PR)の専門家の視点からは、国会事故調のすべての委員会や記者会見などをインターネットでの動画中継やソーシャルメディアで国民向けに情報発信するなど、前例のないほどの情報公開を行ったことを高く評価しています。

動画中継は合計60 時間に及び、延べ視聴者数は約80 万人に達したといわれます。Facebookやtwitter といったソーシャルメディアでは17 万件以上の書き込みがあったようです。報告書も日本語と同時に英語の要約版を公表し、海外に向けても情報を発信しています。

今回、国会事故調が行った国民への情報提供の在り方は、同様な問題に対する国による情報公開のモデルになって欲しいものです。

■11の戦略分野で600万人超の雇用創出
2020年までの政府の成長戦略を盛り込んだ、「日本再生戦略」では、環境や医療、観光など11の戦略分野で38の重点施策を掲げ、約630万人の雇用を創出するとしています。

プランに書かれているものは野心的で大いに期待できるものですが、目標実現に向けた具体策が乏しく、少子高齢化や新興国との競争といった課題を克服する道筋が不透明で、戦略実現のための実行力が試されそうです。

その「日本再生戦略」の一端を紹介します。

医療・介護・健康関連分野は医薬品や医療機器の開発、再生医療などで成長が見込めるとし、成長戦略の柱に据えています。20年までに革新的な医薬品や医療機器、再生医療、個別化医療などの分野で1.7兆円、新規雇用3万人。

健康関連サービス産業で約25兆円。海外での医療機器やヘルスケア関連産業への参入により約20兆円の市場を創設し、全体で50兆円規模を見込んでいます。

アジア経済戦略では日本が経済連携協定(EPA)を結んだ国との貿易割合を現在の2割未満から20年には8割に高める目標を設定するとしています。

観光立国では格安航空会社(LCC)の割合を欧米並みの2?3割に高める目標を掲げています。首都圏空港の発着枠の確保が不可欠となりますが、原案では「国管理空港などの経営改革を進める」といった漠然とした記述となっています。

食農戦略では農林漁業者が生産にとどまらず、食品加工や販売まで手掛ける「6次産業化」の市場規模を10倍に拡大。

国際的に活躍できる「グローバル人材」の育成に力を入れる。大学の秋入学・卒業への移行をにらみ、秋卒業者に対応した国家資格試験の実施など、政府の基本的な対応方針を14年度に決めるとしています。

私の所属する学術団体「グローバルビジネス学会」( http://s-gb.net )は、世界経済の発展に寄与する人材の育成を目的に今年4月設立されました。

「日本再生戦略」のグローバル人材の育成については、当学会のプログラムを有効活用できるのではないかと思っています。「日本再生戦略」の実現にはあらゆるリソースの活用が求められますが、関連学会や団体などとの積極的な協力関係の構築が急がれます。

「日本再生戦略」の実効には必要な予算確保や制度改正などクリアーしなければならない課題があります。「看板倒れ」にならないよう、政府の独り相撲ではなく民間との連携強化を通してその活力や優れた知見を大いに活用すべきだと考えます。


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井之上喬著「パブリックリレーションズ」(2006年3月、日本評論社刊)は、おかげさまで5月30日付で第6刷が発刊されました。ご愛読ありがとうございます。

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投稿者 Inoue: 2012年7月16日 15:15

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