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2009年11月23日

『体系パブリック・リレーションズ』を紐解く 19
 ?理論的基盤:調整と適応 その2

こんにちは、井之上喬です。
このところ朝夕めっきり冷え込んできました。
皆さん、いかがお過ごしですか。

今週は、昨秋発売された『体系パブリック・リレーションズ』( Effective Public Relations (EPR)第9版の邦訳:ピアソン・エデュケーション)をご紹介します。今回は、11月2日号に続いて第7章「理論的基盤:調整と適応」(井之上喬訳)その2です。

前回は、生態学的アプローチとはどのようなものなのか、生理学者ウオルター・キャノンのホメオスタシス(恒常性維持)の概念が初めてパブリック・リレーションズに適用されたことを紹介しました。また、外部環境を把握するために状況をどのように捉えるべきなのか、外部環境変化で生じた状況をさまざまな視点で捉え、それらを分析することの重要性について紹介しました。

■PRをシステムとして考える
カトリップらは、「組織体に及ぼす変化とその影響力について議論をすることは、パブリック・リレーションズをシステムとして捉えることを意味している。」とし、「システムの捉え方が適用できる理由は、相互依存の関係が組織とパブリックの間に確立され維持されているからである。」と解説しています。

ここでいうシステムとはどのようなものでしょうか?本書ではシステムについて、「最終目標を達成・維持するため、環境変化の圧力に自ら調整し適応することにより、確立された境界内と時間軸のなかで永続しようとする相互交流のある一連の単位である。」と定義づけています。

またカトリップらは、「調整」と「適応」の概念と我々のパブリック・リレーションズの定義は、システム理論からの概念と命題を借用しているとしています。そして大学を例にとり、「(大学は)校友会、篤志家、隣人、雇用主、高校のカウンセラーや先生、同エリアの他の大学など、多数のパブリックで構成されたシステムの一部である。」と論じています。

カトリップらは、「パブリック・リレーションズの場合、相互作用のある一連の単位に含まれるのは、組織体と、現在または将来関係のあるパブリックである。」とし、組織体とパブリックは相互に何らかの影響を与えるか、関係性を持つが、社会システムは、物理的、生物的システムとは異なり、物的に密接な要素に特に依存する訳ではないとしています。また上述の組織体とパブリックのシステムは、「組織、および、同組織と関係のある人々や組織体の影響を受ける人々で構成される。」と述べています。

そして目的達成は、「状況変化があっても、現在の関係を単に維持することで可能となるかもしれないが、組織体は、絶え間なく変化する社会環境に対応して、パブリックとの関係を継続的に順応させる必要がある。」と断じているのです。

■PRのオープン・システム・モデル
以前、「調整」と「適応」について本ブログ08年7月19日号で「組織体はどうすれば存続できるのか?調整・適応そして自己修正」の表題でお話ししたことがありますが、カトリップらによると、システムの究極の目的は生き残ることにあるとしています。

そして一般的に、システム(機械的、有機的、社会的)にはオープン・システムとクローズド・システムがあり、この二つはそれぞれの性質と環境間の相互作用の総量によって分類できるとしています。

またシステムの範囲は、それぞれ対極にある、環境変化に適応できないクローズド・システムからこのような変化に適応するオープン・システム領域に至るとし、オープン・システムは、自ら保有する通り抜け可能な境界を介して新しい事象やエネルギー、情報などを自由にやり取りでき、環境変化を和らげたり、受け入れたりするために調整と適応を行うと解説しています。

本書では、組織体による、プレス・リリースの配信に終始するアウトプットや、その他の古典的な消極的パブリック・リレーションズの対応は、クローズド・システムの思考。一方、「オープン・システムのアプローチは、パブリック・リレーションズの役割を環境上へのインプットの結果として環境と組織の双方に変化をもたらすものと」とパブリック・リレーションズにとってオープン・システム・モデルが有効であることを論じています。

カトリップらは、オープン・システム・アプローチは広く実践されている実務方法を劇的に変化させ、適切な対応として調整と適応を行うとしています。また「対称性双方向」のアプローチを用いることでコミュニケーションを双方向で行い、情報交換によって組織とパブリックの双方に変化を生み出すと語っています。

そしてオープン・システム・アプローチに従った場合、「パブリック・リレーションズは、組織体の方針や手続き、行動などによって相互に影響や関係性が生じる特定された対象パブリックに対し、選択的かつ細心の注意を払わなければならない。」とオープン・システム・モデルにおける、対象パブリックや他の環境の力、組織内の力をモニターするリサーチ・スキルの必要性を訴えています。

またオープン・システムのパブリック・リレーションズは、組織内で修正行動を開始し、内部と外部の対象パブリックの知識や傾向、言動などに影響を及ぼすために直接プログラムを開始・指揮する能力も持っているとしています。

カトリップはこれらにより必然的に、「双方向のパブリック・リレーションズ・モデルを実践するための知識やトレーニング、そして経験を積んだ実務家は、組織体の中枢となる経営層に組み込まれやすくなる。また、彼らはその中でも、助言役を演じるより、リーダーシップをとることが多い。」と論じています。

そしてこれらマネジャーが経営の中軸で権限を持つことで、組織体のイデオロギーや環境内での戦略的プログラムを計画する際の対象パブリックの選択・設定に影響を与えることができるとし、そのとき、実務家はコミュニケーション・カウンセリングとマネジメントの役割を担うことになると明言しています。

本書第7章の最後は以下の文章で終わっています。「組織体と社会の利益を代表して働くパブリック・リレーションズの専門家は、組織の内部と外部の双方で、変化の代理人でありマネジャー(管理者)である。彼らは基本的にコミュニケーションを駆使して、組織と社会に対する調整と適応を考え、これを促進する。」

環境の変化を予見し、課題や問題が顕在化する前に変化への対応を行う高度なオープン・システム。パブリック・リレーションズ(PR)のプラクティショナー(実務家)の皆さんはどのように受け止められたでしょうか?

投稿者 Inoue: 2009年11月23日 11:00

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