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2009年11月30日

全9日間、「事業仕分け」が終了
 ?政府行政刷新会議

こんにちは、井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?


8月30日の衆議院総選挙で民主党が大勝し、政権交代が実現して今日で3カ月経ちました。11月11日に「事業仕分け」をスタートさせた、民主党行政刷新会議の一連の作業は27日に終了しました。目標は、過去最大規模の来年度予算概算要求額95兆円から3兆円削減すること。

447事業に対して、必要性に応じて「廃止」「予算削減」を求めた結果、概算要求から約7500億円が削減可能とされ、国庫返納などで捻出できる財源を加えると、その削減額は1兆9500億円に達した(朝日11/28朝刊)模様です。仕分け作業は一般公開で行われ、インターネットでも同時中継されるなど新政権による積極的な情報公開を印象付けたといえます。また仕分け人の判定基準が「あいまい」とする批判も出ましたが、総じて大多数の国民が今回の事業仕分けを歓迎しています。

■求められるプレゼン能力
仕分け人メンバーは、その人選に紆余曲折があったものの、民主党を中心とした国会議員と民間人により構成。TVを通して、今回の「事業仕分け」から見えてくるものは、質問される側に立つ各省庁代表の官僚の返答や説明が不明瞭であったり、その内容が明確性を欠いたものでした。

初めての経験とはいえ、相手に対する説明能力に欠けていたのは明白。民間では、顧客に売り込みをかけたり説明を行う場合、必要とされるのはプレゼンテーション能力です。説明する側に立つ官僚はこれまで、シビル・サーバントとして納税者へ対しどのようなプレゼンテーションを行ってきたのでしょうか?

相手を説得する気迫もさることながら、プレゼンテーション技術に長けていないと相手を理解させることは困難です。「なぜ」、「何の目的で」この事業を行っているのか、事業を通して国民(社会)に「どのような恩恵をもたらすのか」、その「ユニーク性」や(施設の場合)その利用頻度など、「数字に裏付けされた説明」が求められます。多くの天下りを受け入れ、受け入れが目的化している機関では、こうした説明は苦手ということなのでしょうか。

11月28日の主要各紙の朝刊は、トップで事業仕分けが当初の目標の3兆円に及ばなかったことを報じていますが、今回の数値目標に違和感を持っている人は私だけではありません。これまで野党で、行政の細部にわたってアクセスできなかった民主党が、数か月で完全な予算編成ができるはずはありません。まず新予算を組み、1年間走らせ、現場の実態を把握してから、埋蔵金の発掘や無駄な予算を削ってもいいのではないでしょうか。「一度組んだ予算は使い切る」これまでのやり方は、現在の財政状態では通用しないはずです。

■科学技術は日本の生命線
事業仕分けのなかでスーパー・コンピュータ研究など、科学技術予算の大幅削減提案が引き金となり、9つの大学の学長が24日、東京都内で緊急記者会見を行いました。日本の学術や大学の在り方に立って、これらの削減は世界の潮流に逆行する行為であると批判。将来の日本の科学技術への懸念を表しました。翌日のTV番組で、ノーベル賞学者の益川敏英さんが「科学技術分野でNO.2はNO.30を意味する」と語り、科学技術研究の重要性について強く訴えていたのが真に迫っていました。

いま日本から有為な人材が流出しつつあります。その流れ出る先は、これまでのような米国の研究機関ではなく、猛烈な人材引き抜きを国家戦略として行うアジアの新興国です。そうした国の政府からひとりの科学者(研究者)やチームが、数十億円の研究費で迎えられようとするケースが顕在化しています。その意味するところは、迎え入れられた研究者の成果が、相手国のものになってしまうということです。定年退職を迎える科学者は格好の標的になっています。

中国のGDPは今年中にも日本を上回るといわれています。中国をはじめ、多くの人口を抱えるインドなどの新興国が急速なスピードで追い上げをはかっています。これらの国に価格競争で勝てるはずはありません。日本が勝負できるのは、高付加価値製品ということになります。その基礎となるのが科学技術。

予算の問題とは別に、日本には助成金の利用法にも問題があるようです。とくに科学技術分野での問題は、有能なプロジェクト・マネージャーがいないといわれています。これまで日本では国の助成金で研究を行う際、報告書など超大な資料作成が要求されていました。研究者は時として本来の研究より、その作成に神経と時間を取られていることも耳にします。プロジェクト全体を管理できる人材養成も必要とされるところです。

鳩山内閣の予算編成作業はこれから本格化しますが、どのような結果になるのか関心が高まっています。国民への理解と協力を得るために、パブリック・リレーションズ(PR)はなくてはならないものといえます。

投稿者 Inoue: 09:16 | トラックバック

2009年11月23日

『体系パブリック・リレーションズ』を紐解く 19
 ?理論的基盤:調整と適応 その2

こんにちは、井之上喬です。
このところ朝夕めっきり冷え込んできました。
皆さん、いかがお過ごしですか。

今週は、昨秋発売された『体系パブリック・リレーションズ』( Effective Public Relations (EPR)第9版の邦訳:ピアソン・エデュケーション)をご紹介します。今回は、11月2日号に続いて第7章「理論的基盤:調整と適応」(井之上喬訳)その2です。

前回は、生態学的アプローチとはどのようなものなのか、生理学者ウオルター・キャノンのホメオスタシス(恒常性維持)の概念が初めてパブリック・リレーションズに適用されたことを紹介しました。また、外部環境を把握するために状況をどのように捉えるべきなのか、外部環境変化で生じた状況をさまざまな視点で捉え、それらを分析することの重要性について紹介しました。

■PRをシステムとして考える
カトリップらは、「組織体に及ぼす変化とその影響力について議論をすることは、パブリック・リレーションズをシステムとして捉えることを意味している。」とし、「システムの捉え方が適用できる理由は、相互依存の関係が組織とパブリックの間に確立され維持されているからである。」と解説しています。

ここでいうシステムとはどのようなものでしょうか?本書ではシステムについて、「最終目標を達成・維持するため、環境変化の圧力に自ら調整し適応することにより、確立された境界内と時間軸のなかで永続しようとする相互交流のある一連の単位である。」と定義づけています。

またカトリップらは、「調整」と「適応」の概念と我々のパブリック・リレーションズの定義は、システム理論からの概念と命題を借用しているとしています。そして大学を例にとり、「(大学は)校友会、篤志家、隣人、雇用主、高校のカウンセラーや先生、同エリアの他の大学など、多数のパブリックで構成されたシステムの一部である。」と論じています。

カトリップらは、「パブリック・リレーションズの場合、相互作用のある一連の単位に含まれるのは、組織体と、現在または将来関係のあるパブリックである。」とし、組織体とパブリックは相互に何らかの影響を与えるか、関係性を持つが、社会システムは、物理的、生物的システムとは異なり、物的に密接な要素に特に依存する訳ではないとしています。また上述の組織体とパブリックのシステムは、「組織、および、同組織と関係のある人々や組織体の影響を受ける人々で構成される。」と述べています。

そして目的達成は、「状況変化があっても、現在の関係を単に維持することで可能となるかもしれないが、組織体は、絶え間なく変化する社会環境に対応して、パブリックとの関係を継続的に順応させる必要がある。」と断じているのです。

■PRのオープン・システム・モデル
以前、「調整」と「適応」について本ブログ08年7月19日号で「組織体はどうすれば存続できるのか?調整・適応そして自己修正」の表題でお話ししたことがありますが、カトリップらによると、システムの究極の目的は生き残ることにあるとしています。

そして一般的に、システム(機械的、有機的、社会的)にはオープン・システムとクローズド・システムがあり、この二つはそれぞれの性質と環境間の相互作用の総量によって分類できるとしています。

またシステムの範囲は、それぞれ対極にある、環境変化に適応できないクローズド・システムからこのような変化に適応するオープン・システム領域に至るとし、オープン・システムは、自ら保有する通り抜け可能な境界を介して新しい事象やエネルギー、情報などを自由にやり取りでき、環境変化を和らげたり、受け入れたりするために調整と適応を行うと解説しています。

本書では、組織体による、プレス・リリースの配信に終始するアウトプットや、その他の古典的な消極的パブリック・リレーションズの対応は、クローズド・システムの思考。一方、「オープン・システムのアプローチは、パブリック・リレーションズの役割を環境上へのインプットの結果として環境と組織の双方に変化をもたらすものと」とパブリック・リレーションズにとってオープン・システム・モデルが有効であることを論じています。

カトリップらは、オープン・システム・アプローチは広く実践されている実務方法を劇的に変化させ、適切な対応として調整と適応を行うとしています。また「対称性双方向」のアプローチを用いることでコミュニケーションを双方向で行い、情報交換によって組織とパブリックの双方に変化を生み出すと語っています。

そしてオープン・システム・アプローチに従った場合、「パブリック・リレーションズは、組織体の方針や手続き、行動などによって相互に影響や関係性が生じる特定された対象パブリックに対し、選択的かつ細心の注意を払わなければならない。」とオープン・システム・モデルにおける、対象パブリックや他の環境の力、組織内の力をモニターするリサーチ・スキルの必要性を訴えています。

またオープン・システムのパブリック・リレーションズは、組織内で修正行動を開始し、内部と外部の対象パブリックの知識や傾向、言動などに影響を及ぼすために直接プログラムを開始・指揮する能力も持っているとしています。

カトリップはこれらにより必然的に、「双方向のパブリック・リレーションズ・モデルを実践するための知識やトレーニング、そして経験を積んだ実務家は、組織体の中枢となる経営層に組み込まれやすくなる。また、彼らはその中でも、助言役を演じるより、リーダーシップをとることが多い。」と論じています。

そしてこれらマネジャーが経営の中軸で権限を持つことで、組織体のイデオロギーや環境内での戦略的プログラムを計画する際の対象パブリックの選択・設定に影響を与えることができるとし、そのとき、実務家はコミュニケーション・カウンセリングとマネジメントの役割を担うことになると明言しています。

本書第7章の最後は以下の文章で終わっています。「組織体と社会の利益を代表して働くパブリック・リレーションズの専門家は、組織の内部と外部の双方で、変化の代理人でありマネジャー(管理者)である。彼らは基本的にコミュニケーションを駆使して、組織と社会に対する調整と適応を考え、これを促進する。」

環境の変化を予見し、課題や問題が顕在化する前に変化への対応を行う高度なオープン・システム。パブリック・リレーションズ(PR)のプラクティショナー(実務家)の皆さんはどのように受け止められたでしょうか?

投稿者 Inoue: 11:00 | トラックバック

2009年11月16日

オバマ大統領初来日
 ?パブリック・リレーションズの視点

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

オバマ米国大統領が11月13日、大統領就任後初のアジア歴訪の最初の国として日本を訪問しました。テキサス陸軍基地での銃乱射事件の追悼式出席で来日が遅れたことにより、14日から始まるシンガポールで開催のアジア太平洋経済協力会議(APEC)初日の首脳会議を欠席しての来日。日程は一週間で、日本の後はシンガポール、中国、韓国を訪問する予定です。

13日は鳩山首相との首脳会談。翌日の14日はサントリーホールで約1500名の出席者を前にアジア外交の基本政策について演説を行いました。世界で成長著しいアジア地域で中国の国際的影響力が増大する中、影響力低下がみられる米国は、オバマ大統領のアジア訪問の最初の地東京で「米国はアジア太平洋諸国の一つ」であることを内外に強く示しました。

■アジア外交の中核:日米関係
鳩山首相とオバマ大統領の会談は今回で2回目。9月に国連総会出席のために訪れたニューヨーク以来。予定より長い、約一時間半にわたった会談で両首脳は共同記者会見を行ないました。

この中で首相は日米同盟について、「日本外交にとってすべての礎。世界環境の変化によって、深化させ、建設的で未来志向の日米同盟を作りたい」と述べています。一方大統領は、「日米同盟は、アジア太平洋地域の安定と繁栄のための基軸。日米は対等なパートナー」であることを強調。民主主義を共有する両国の関係維持こそが地域の安定・繁栄にとって不可欠であることを宣言しています。

共同会見では主に次のことが確認されました。まず、2010年の日米安全保障条約改定50年に向け、同盟深化のための新たな協議を開始。また、米軍普天間飛行場移転問題では、鳩山首相は早期解決を表明。閣僚級作業部会を設け協議に入る。次に両首脳は「核兵器のない世界」を長期的視野にたって目指すことで一致。大統領は、広島、長崎両市への訪問について、将来訪問できたら「非常に名誉なことだ」と語っています。そして温室効果ガス問題については、2050年までに80%削減することで合意。

戦後60年以上経た日米関係。米ソ冷戦時代に締結された日米安保が、新しい21世紀のグローバル・ビレッジにふさわしい、世界平和に根差した地域の安全保障に変わることが期待されています。日米安保条約の見直しの必要性については、とくに政権交代後の米国でも論じられてきていること。

鳩山首相は就任後繰り返し、「対等な日米関係」を強調しています。日本の国益保持にとどまらず、世界平和と繁栄のためにどのような指導力を日本は発揮するのか、日米関係は時代の変化に合った同盟を強化する方向で一致しているものの、今後双方の新政権によるたゆまない対話と努力が求められるところです。

民主主義国家では、政権交代は重要な意味を持ちます。国民の支持を得た新政権が、新しい政策を打ち出すことに相手方は異論をはさむことはできません。それが民主主義のルールだと思うのです。民主主義は米国が世界に誇るもの。同じ民主主義を共有する、英国やフランス、ドイツは米国にどのように対応しているでしょうか。日本の政府には、惑わされることなく、自らの政策を明確に打ち出すことが求められています。

■東京でアジア政策演説
オバマ来日に先立つ9日(ワシントン時間)、アジア歴訪の最初の訪問国に日本を選んだオバマ大統領はAPEC初日を欠席し、東京でアジア政策演説を行うことを報じています(NIKKEI NET:11/12 23:45)。
来日翌14日、サントリーホールでの演説には、各方面から招待されたさまざまな顔が見られました。11月14日の朝日新聞夕刊には、これら招待客の一部が紹介されていましたが、被爆地長崎市長や沖縄宣野湾市長、福井県小浜市長、拉致被害者家族、俳優、学者そして学生や子供などその顔ぶれは多彩。多くの招待者がそのスピーチに感銘を受けたことを報じています。

大統領就任演説もそうであったように、パブリック・リレーションズ(PR)の視点でオバマ大統領のスピーチを分析すると、実に多くのパブリックに対してメッセージを送っていることが改めてわかります。そしてその後の報道内容を分析することで、双方向性を担保していることです。彼のスピーチに共通するものは、どのような民族や文化そして政治環境にあっても人間の尊厳を常に重視していることです。

オバマ大統領が日本との関係で触れたことの中で、とりわけ私に強いインパクトを与えたのは、環境問題解決のために、環境技術で世界の最先端を走る日本との協働を真剣に呼び掛けていたことです。日本はこの分野を成長戦略の主柱に据え、政府、産業界、国民が一丸となって、一日も早く戦略的な取り組みを行うことが明日の日本の確実な繁栄を保証するものであると私は考えています。今世界は技術開発に向かって一斉に走り出しています。時間的な猶予はないのです。

米国の力が相対的に弱体化する中で、一つ対応を間違えると世界は危険な方向へ進みかねません。その中でキーワードは「民主主義」であるといえます。双方向性を持つパブリック・リレーションズは民主主義社会の中でしか生きていけません。絶対主義のなかではプロパガンダになるからです。

投稿者 Inoue: 08:16 | トラックバック

2009年11月09日

「日本黒龍江省経済文化交流促進会」が設立
 ?日中の真の友好関係とは

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

先日、日中経済文化の発展と交流を促進するために設立された「日本黒龍江省経済文化交流促進会」の設立祝賀パーティーに招待されました。この団体は特定非営利活動法人で、在日黒竜江省人を主要メンバーとして組織され、黒竜江省と日本との文化、経済分野の交流を促進することを通じて、黒竜江省と日本の民間人の友好交流を目的に設立されたものです。

私と黒竜江省との関係は、大学の先輩でもあり、元NEC専務の島山博明さんの紹介で、島山さんの友人の何治濱(同交流促進会理事)さんと出会ったことに始まります。何さんは20年前に奥様と幼い娘さんの3人で来日し、東京大学大学院で経済学を学び、同大学から経済学博士号を授与され、日中間のビジネス発展のために東奔西走している方です。
このたび、何さんの強い要請もあり島山さんと一緒にこの交流促進会の顧問を引き受けることになりました。

■日本と関係が深い黒龍江省
黒龍江省は東北地区の最北部に位置する人口3800万人の省。旧満州国(黒竜江・熱河・吉林・遼寧・興安)の中でも北部はアムール川(黒竜江)をはさんでロシアと国境を接し、日本人には戦前からなじみ深いハルビンが省都です。

黒竜江省は日本の若者の間ではあまり知られていないようです。省都ハルビンは明治時代に伊藤博文が暗殺された(1909年ハルビン駅で)ところとして歴史に名を刻んでいますが、1300年前は当時の渤海国が日本と交流していました。日本の高齢者の間では、戦前日本の満州開拓団が切り開いた場所としても一定の知名度があるところです。

地理的にも日本に近いことと、旧満州国であったことが関係しているのか分かりませんが、黒竜江省からの日本滞在者は、お隣の遼寧省(大連のある)に次いで二番目に多く約6万人。日本黒龍江省経済文化交流促進会の理事長、陳立新さんは日本には20年近く滞在し、自ら日中間の医療機器の輸出入会社を経営する女性です。

会場には陳さんのように、日本でITソフトウエア会社や日本語学校などを経営する人など、さまざまな黒竜江省人が集まっていましたが、彼らは将来、同省と日本との間の広範な文化、教育、芸術、スポーツを通した交流や日本からの観光客の誘致促進、また同省にある豊富な天然資源の共同開発などで日本との強いパートナーシップを期待しています。

■良好な相互補完関係の構築・維持
日中関係の歴史は2千年に及びます。その間さまざまな形で交流関係を築いてきましたが、中国は漢字や仏教、儒教など日本社会の精神的インフラストラクチャーに多くの影響を与えてきた隣国といえます。

近年の中国の経済成長には目を見張るものがあり、先日発表された国内総生産(GDP)の成長率は、景気回復が遅れている日、米、欧など他の先進国の成長率をはるかに上回って世界の牽引車として注目を浴びています。中国国家統計局が10月22日発表した2009年第3四半期(7?9月)の国内総生産(GDP)の速報値によると、中国の実質成長率は前年同期比8.9%。また、中国のGDPは、2009年にも日本を上回り、世界第二の経済大国にとってかわることが予測されています。

かって世界の工場といわれた日本のものづくりの拠点は中国へ移転し、産業の空洞化が叫ばれて久しい日本にとって、今後成長著しい中国とどのように付き合っていけばよいのか総合的に考える時期に来ているといえます。

真の友人として中国と正面から向き合うためには、両国の歴史認識を共有し、未来に向かって両国が双方の国民および世界に対してどのような貢献ができるかを一緒に考えなければなりません。とりわけ13億人の国民を豊かにする目標を掲げる、中国の経済成長過程で発生するであろう環境問題は、両国間の枠組みを超えたグローバル・イッシュ。

両国が同じ土俵で競争することは、避けられないとしても、できる限り相互補完関係を作り出すことが必要と思われます。高度成長の下で置き去りにされがちな公害問題やCO2などの環境問題解決のための諸技術や自然災害への対応技術など、日本が中国にはない付加価値性の高い商品やサービスの提供と開発を行うことは極めて重要といえます。つまり日本がこれまで培ってきた一流の制度や技術そして人材を有効に使い相互の補完関係を構築・維持することが重要だと思うのです。

13億人の民を食させることは大変なことだと思います。20年前と比べても、中国の民主化が少しずつ進んでいることは感じ取れますが、中国が巨大な経済力を持ったいま、更なる民主化を推進することが世界の平和と繁栄につながることを世界の多くの人は知っています。

このブログの2009年9月7日号にも紹介しましたが、パブリック・リレーションズ(PR)は民主主義社会でのみ力を発揮します。それゆえ、中国でのパブリック・リレーションズの進展は、私たちプラクティショナー(実務家)にとって関心の高いテーマとなっているのです。

投稿者 Inoue: 08:39 | トラックバック

2009年11月02日

『体系パブリック・リレーションズ』を紐解く 19
 ?理論的基盤:調整と適応  その1

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

今週は、昨秋発売された『体系パブリック・リレーションズ』( Effective Public Relations (EPR)第9版の邦訳:ピアソン・エデュケーション)をご紹介します。EPRは米国で半世紀以上のロングセラーを記録するパブリック・リレーションズ(PR)のバイブル的な本で、日本語翻訳メンバーには私も加わりました。

今回は第7章「理論的基盤:調整と適応」(井之上喬訳)。2回にわたって紹介します。以前このブログで、「組織体はどうすれば存続できるのか?調整・適応そして自己修正」の表題で「調整」と「適応」についてお話ししたことがありますが、めまぐるしく外部環境が変化する現代にあって、PRパーソンにとって重要なテーマです。そんなこともあり『体系パブリック・リレーションズ』の第7章の翻訳担当にさせていただきました。

■生態学的アプローチ
第7章の冒頭では、「組織体とは、熾烈なグローバル競争や、技術革新、不安定な経済、そして多くを要求する高度に洗練された顧客などが渦巻く激動の環境の中で、常に生存能力を試されている生態システムのようなものである。」とキャロル・キンゼイ・ゴマンの言葉が引用され、「生態」がEPRの中で重要なキーワードとなっていることを示しています。

スコット・カトリップ、アラン・センターは、生理学者ウォルター・キャノンが唱える変化する外界に適応する、ホメオスタシス(恒常性維持)の概念を初めてパブリック・リレーションズに適用しています。生命科学の分野から借りた「生態学」という用語によって学生や実務家は、「パブリック・リレーションズが、それぞれの環境の中で、組織体と他者との相互依存関係に関わっていることを理解することができた。」とし、「パブリック・リレーションズの重要な役割は、組織体を取り巻く環境の変化に合わせて調整し適応できるように組織体を支援すること」と論じています。

本書(EPR)は、「1952年発行の初版でパブリック・リレーションズに生態学の概念を導入し、社会システムの見方を用いることを示唆した初めてのパブリック・リレーションズの書籍である」とし、調整、適応がEPRの基盤となっていることを強調しています。

本書第1章で定義されているように、パブリック・リレーションズは、「組織体とパブリックの間に構築・維持される関係性を取り扱う」ものであることを確認し、「このような関係性は、絶え間なく変化する環境で、政治的、社会的、経済的、そして技術的変革の圧力にさらされている。」と外部環境の変化を注視することの重要性を説き、さらに「組織体が、ますますグローバル化する社会における未知の領域を安全で着実に進むためには、このような圧力を慎重に評価することが不可欠になる」としています。

そして米国のデパート、シアーズやノードストロームが強力な組織で栄え、ワーズ百貨店やウールワースの400店舗の安売りチェーンが市場から姿を消した原因を、「ダーウィン流に説明すると、新しい時代を生き続けられるのは、力のある組織体ではなく、変化する世界に調整して適応する能力のある組織体ということになる。」と組織体の恒常維持にとって生態学的なアプローチが必要であることを論じているのです。

■状況を捉える
本書第7章では、「パブリック・リレーションズの役割は、個々の状況における、特定の動きや変化、そして作用するさまざまな力を捉え、分析することにある。」としています。パブリック・リレーションズにとって外部環境の変化により生じた状況をさまざまな視点で捉え、それらを分析することの重要性を説いています。

例えば、メリーランドを拠点に活動する動物愛護団体(PETA)の活動を挙げ、動物愛護運動が盛んになることで、化粧品メーカーや医学研究所、精肉業者、連邦政府機関などの組織体にとって、自らの使命達成にどのような影響を与えるのかを論じています。いうなれば新しい活動的な圧力団体の取り組みが、組織体の意思決定にインパクトを与えるようになるということです。

本書は、「動物愛護運動はエイボンやエスティーローダー、ベネトン、トンカトイ・カンパニーなどに対し、ウサギ、モルモットなどの動物を使用した製品テストを中止するよう圧力をかけた。」と化粧品会社や衣料会社などへの強力な働きかけを伝えています。

その一方で、「また同運動は、国立衛生研究所に対して、動物を使用して研究を行う研究クリニックの閉鎖を求め、ペンタゴンには動物の損傷テストの中止を迫った。」と外部からの強いアプローチにさらされている様子を記述しています。企業側が対応に苦慮しているのが目に見えるようです。

またこれらの運動により、「テキサス州の食肉処理場はPETAからの圧力の後で閉鎖を命じられた。さらに圧倒的多数が、動物愛護を支持して、毛皮や化粧品研究の使用目的で動物を殺すことを違法と考えるようになり、PETAは世論を勝ち取りつつある。」と組織体にとって、状況把握がいかに重要かが容易に理解できます。

本書では、「パブリック・リレーションズの業務は、端的にいえば組織体を取り巻く環境に合わせて調整・適応できるように組織体を支援することにある。」とし、「パブリック・リレーションズのカウンセラーは、世論や社会変化、政治運動、文化的変化、そして技術開発、自然環境をモニターしている。そして彼らは、これらの環境要素を解釈し、組織体の変化や対応策に関する戦略を策定するため経営層と協働するのである。」と論じています。

日本で繰り返される不祥事を見てみると、倫理観の欠如は言うまでもありませんが、組織体が変化する外部環境を読み切れず調整・適応することなく市場からの退場を余儀なくされるケースが後を絶ちません。本書にあるように、21世紀を生き抜くことのできる組織体とは、単に力のある組織ではなく、さまざまな視点で内外の環境変化を複合的に捉え、必要であればパブリックとの間で調整・適応を行い、自己修正のできる組織体ではないでしょうか。

投稿者 Inoue: 09:36 | トラックバック