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2008年11月29日

『体系パブリック・リレーションズ』を紐解く 6
〜良好なメディア・リレーションズのためのガイドライン

こんにちは井之上喬です。
だんだん寒さが増すなか、皆さんいかがお過ごしですか?
今週も、『体系パブリック・リレーションズ』Effective Public Relations (EPR)第9版の邦訳:ピアソン・エデュケーション)をご紹介します。EPRは米国で半世紀以上のロングセラーを記録するパブリック・リレーションズ(PR)のバイブル的な本。皆さんにお伝えしたいエッセンスがまだまだ沢山詰まっています。

今回は、第10章の「メディアとメディア・リレーションズ」(井上邦夫訳)の中から「良好なメディア・リレーションズのためのガイドライン」(324-329ページ)についてお話します。

■メディア・リレーションズはコア・コンピタンス
私の著書『パブリック・リレーションズ』(2006、日本評論社)のなかで、「メディア・リレーションズは、他のビジネスコンサルティング会社と比べ特異な活動で、パブリック・リレーションズのコア・コンピタンス(中核的競争力)ともいえる。メディア・リレーションズは、さまざまなリレーションズのターゲットに対してアクセスするコミュニケーション・チャネルとしてのメディアとのリレーションズ活動である。」と記しています。

『体系パブリック・リレーションズ』では、パブリック・リレーションズの実務家とジャーナリストとの関係は、底流にある利害やミッションが対立しているため必然的に対立的なものであり、実務家が次のような5つの基本的ルールに従うことで、両者の関係を最適なものにできると述べられています。

いかにメディアとの良好な関係性を構築するか、これはパブリック・リレーションズの実務家にとって世界共通のテーマであり、この点に関しても本書は大いに示唆を与えてくれています。それでは5つのルールについて簡単に紹介しましょう。


■最適な関係を構築するための5つのルール
1) フェアな取引をする
速報性の高いニュースは、メディアが発表サイクルを決定できるように可能な限り迅速にあらゆる関連メディアへフェア伝えることである。速報性が薄い特集材料についても競合メディア間に平等に伝える必要がある。しかし、記者がヒントを掴んで情報を要求した場合、その内容は当該ジャーナリストのものであり、同じ情報は、他のジャーナリストが追随して要求しない限り与えてはならない。

2) サービスを提供する
ジャーナリストの協力を得る最も速く確実な方法は、彼らが希望するときに、すぐに使用可能な形式で彼らが求める、ニュース価値があり、興味を引くタイムリーな内容と映像を提供することである。ジャーナリストは、定められた、時には厳しすぎる締め切りに追われて働いている。ニュースメディアに記事を報道して欲しいと思う実務家は、メディアの準備期間を熟知して順守する必要がある。

3) 懇願したり文句を言ったりしない
ジャーナリストにとって、ストーリーの使用を頼みこむ実務家や記事の扱いに文句を言う実務家ほどイライラさせるものはない。ジャーナリストにとって、その情報が十分に興味を引くだけのニュース価値がなければ、どんなに懇願され文句を言われても採りあげることはない。

4) ボツにすることを求めない
実務家は報道機関に対して、記事を差し止めたり、ボツにするように頼んだりする権利はない。それはめったに機能しないし、プロフェッショナルの行為でもなく、反感を生むだけである。このことはジャーナリストにとって露骨な侮辱であり、米国憲法修正第1条の侵害である。それはジャーナリストにパブリックの信頼を裏切るように頼むことである。好ましくないネタを報道機関から遠ざけておく最良の方法は、そのような話が発生する状況を避けることである。

5) メディアを氾濫させない
仮に金融担当の編集者に、スポーツや不動産情報を送るようなことがあれば、その実務家に対する敬意は損なわれることになる。最善のアドバイスは、どんなジャーナリストがニュースを考慮するかよく考えることであり、メディアのメーリングリストを最新に保ち、各ニュースメディアの最適な一人にのみ送ることである。

この点について本書では、当時『ウォールストリート・ジャーナル』のニューヨーク編集長であったポール・スタイガーさんの面白い試みを紹介しています。それは、記者やエディターが1日にどの位の数量の情報を選別しなければならないかを記録するため、17の地方支局長に対し、彼らが1日に受け取るニュース資料を保管するように頼みました(インターネット経由のニュースは含まず)。支局から送られたプレスリリース、パブリック・リレーションズのワイヤー記事、ファックス、手紙を集めたところスタイガーさんのオフィスに積み上げられた箱は、高さ60センチ以上、長さ約3メートル以上にもなったということです。

米国のメディア情報のおよそ70%は、PR会社や関連組織などから配信されたものをベースにしているといわれています。このスタイガーさんの試みからもPR会社や関連組織がメディアに対して積極的に情報発信している様子が窺えます。
私たちパブリック・リレーションズの実務家は、時として情報発信することに夢中になるあまり、情報の受け手であるジャーナリストの立場を忘れてしまうことがあります。彼らが情報の洪水の中で溺れることの無いように配慮しなければなりません。

投稿者 Inoue: 09:40 | トラックバック

2008年11月22日

『体系パブリック・リレーションズ』を紐解く 5
〜戦略立案における調査の役割

こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
今週は、『体系パブリック・リレーションズ』Effective Public Relations (EPR)第9版の邦訳:ピアソン・エデュケーション)をご紹介します。EPRは米国で半世紀以上のロングセラーを記録するパブリック・リレーションズ(PR)のバイブル的な本。

今回は、第11章の「ステップ1:パブリック・リレーションズの問題点の明確化」(北村秀実訳)の中から「戦略立案における調査の役割」(339ページ)についてお話します。
パブリック・リレーションズの実務家を対象としたアンケート調査では、パブリック・リレーションズの専門職に必要な継続教育として、調査手法のトレーニングが、常に上位を占めているといわれています。その理由として、ほとんどの実務家は大学時代に調査手法を学習しなかったか、あるいは調査はPR専門職の仕事の一部とは予想していなかったことが挙げられています。

■目の不自由な6人のインド人と象
「戦略立案における調査の役割」の項の冒頭で、日本でもよく知られている「目の不自由な6人のインド人と象」の寓話が紹介されています。目が不自由な6人が象の一部を触っただけで、各人が触ったところだけの印象を手がかりにして象の全体像を描写したという話です。

例えば、鼻を触った人は「象はヘビのようだ」と結論づける。膝を触った人は「象は確かに木のようだ」と言う。このように各人は象の一部だけを触って経験します。最終的には、各人は部分的には正しいが、象の本質についてはほぼ誤ったままで、各自が象との遭遇に基づいて喧々諤々と議論したにすぎなかったということになります。

つまり、パッブリック・リレーションズの実務家に対して、課題となっている状況をしっかり調査しなければ「目の不自由な6人のインド人」と同じ轍を踏む恐れがあると警鐘を鳴らしています。

また、調査の重要性とその目的について「いくら実務家が、調査なしで状況を把握し、解決策を提案できると主張しても、そこには限界がある。実務家は、調査と分析を行ってはじめて、証拠と理論に裏づけられた計画案を提案して主張することができる。この文脈における調査とは、状況を説明して理解するため、そして、対象となるパブリックスが抱いている考えと、パブリック・リレーションズの活動がもたらす結果を確認するための、系統だった情報収集である。それは、執着心、権威、直観にとって代わる科学的根拠となる。そして、その主な目的は、意思決定する際の不確実性を排除することにある。全ての疑問に答え、すべての決定に影響することができないにしても、論理的に系統立った調査は効果的なパブリック・リレーションズの基盤となる。」と論じています。

■インフォーマルな調査とフォーマルな調査
パブリック・リレーションズの調査には、高度に発達した社会科学の手法を利用することもできるが、依然としてインフォーマルな手法が支配的であり、実務家がサンプル(調査標本)の代表性が不明であるといった弱点を理解していれば、その手法は有用であると述べられています。インフォーマル手法として、情報提供者の聴取やフォーカス・グループ・インタビュー、オンブズマンの意見、フリーダイヤル、投書やオンライン情報などが挙げられています。

この場合、実務家がサンプル(調査標本)の代表性が不明であるといった弱点を理解していれば、その手法は有用であると述べられています。インフォーマル手法として、情報提供者の聴取やフォーカス・グループ・インタビュー、オンブズマンの意見、フリーダイヤル、投書やオンライン情報などが挙げられています。

一方、フォーマルな調査手法は、科学的に代表性を持つサンプルからデータを収集するよう設計されており、この調査手法は、インフォーマルな方法では適切に回答できない状況についても、回答することができます。但し、フォーマルな調査手法が有用となるのは、調査の全体デザインの選択以前に、調査の質問項目や目的が明確になっている場合に限られ、こうした条件が満たされることによって初めて、確定された精度と許容誤差の予定範囲内で現象や状況を説明する情報をもたらすことができると強調されています。

「成功しているパブリック・リレーションズのマネジャーは、フォーマルな調査手法と統計学に精通している。今では、多くの大学のパブリック・リレーションズ教育で、調査手法の科目がカリキュラムに組み込まれている。実務家向けの継続教育プログラムでも、プログラムの立案、管理、効果測定の際にどのように調査を活用するかの講義が提供されている。」と述べられています。またこの章の文末は、「つまり調査は、パブリック・リレーションズがマネジメント機能を果たすために、また同時に、統制の効いた機能を果たすために不可欠な要素である。」と結ばれています。

20世紀を生きたエドワード・バーネイズは、パブリック・リレーションズにおけるプロジェクト成功の要因は、社会科学に裏打ちされた綿密な調査・分析にあると説いています。まさに調査は目的達成を確実にするための不可欠な手法といえます。

投稿者 Inoue: 09:31 | トラックバック

2008年11月15日

私の心に残る本20 『アホは神の望み』
 ?遺伝子工学第一人者からのメッセージ

アホは神の望み


こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

今日ご紹介する本『アホは神の望み』(2008、サンマーク出版)の著者、村上和雄(1936-)さんはDNA解明の世界的権威で現在、筑波大学名誉教授です。村上さんの主張は、「(中略)『苦しいときこそ笑っていられる』ようなアホや馬鹿がいまこそ必要だ・・・」ということ。

村上さんは本書の冒頭で、最近の街や電車の中で無表情な顔や不機嫌そうな顔は見ても、ニコニコと明るい笑顔を見ることがめっきり少なくなったことを憂いています。そして、心の状態が良い遺伝子をONにする話や科学者の逸話、そして悲劇を経験しても希望の光を忘れず取り組む人々の話を例に挙げ、 ほんとうに豊かで幸せな「神の望むアホな生き方」とは何かを語ります。

■ 器の大きいアホになれ
村上さんの意味するアホとは、「損得には疎いが、自分の信じる道を地道に歩み(中略)頭のよさより心の豊かさを重んじる。人間本来の、神の望みにも沿った生き方や考え方」のことです。

村上さんはアメリカ留学時、英語の読み書きはできても会話ができないことに落ち込んだといいます。けれども彼は夢実現のために諦めず研究を続けました。しかし暫くすると英語にも慣れ、留学を終えるころには英語で講義するまでに上達したそうです。村上さんはその経験を振り返り、「能力は環境によって刺激を受け、経験によって培われるものだ」といっています。

村上さんが帰国した60年代、大学には改革の嵐が吹き荒れました。村上さんは古い体質のアカデミズムを批判するうち、ある自己矛盾に突き当たります。このまま行けば自分も今まで批判の対象にしてきた人と同じようにこの世界で「出世」していくのではないかという疑問です。

村上さんは心機一転をはかり2度目の渡米を決めました。その結果、彼は米国滞在中に「レニン」を牛の脳下垂体から純粋な形で取り出すことに成功。そして世界に先駆け、83年には高血圧の黒幕である「ヒト・レニン」という酵素の遺伝子解読を果たしたのです。

アカデミズムの王道からすれば回り道に見えた村上さんの行動。しかし、それがもたらしたのは、バイオテクノロジーの世界的権威という研究者としての開花でした。村上さんは、マイナスに思える出来事がプラスに転じる体験を重ねていくと、「神様は見てくれている」と思い、安心して自分の道を進むことができる「器の大きいアホ」になれるといいます。

■ 心のあり方と強さが結果をつくる
私たちの生命は絶え間ない遺伝子の働きで営まれていて、健康に暮らすにはいい働きの遺伝子が活発であることが必要です。村上さんは、いい遺伝子の働きを活発にするのが心の方向であると説いています。

彼は、大いに笑った後の癌患者の免疫力は上昇する、プラシーボ(偽薬)で病状が好転するなどの例を挙げて、心のポジティブな状態が遺伝子に作用して効果を発揮しているのではないかと説明しています。

「人は、いい結果を得ようとしたら、いいプロセスを経るしかない。逆に言えば、いいプロセスさえ経ていれば、おのずと結果はついてくる。」

このように村上さんは述べ、目標の達成にも心定めか必要で、一度心定めをしたら天に委ねる気持ちで楽天的に取り組み、よいプロセスを積み上げていることに力を注ぐべきだといいます。

科学の世界に身をおく村上さんは、「神を研究する神学をルーツとして真理を探求する科学は生まれた」として、真理を信奉する点で、宗教を信仰する人と科学者には共通点があるといいます。そして、真理は人知や論理を越えていて、真理を呈するモノは人間の直感に訴えると述べています。

村上さんはアンシュタインの「解決策がシンプルなものだったら、それは神の答えである」のことばを紹介し、平易なものの中にこそ本当に深いものが存在し、深いことはやさしく伝えられるべきとし、やさしくかみ砕いていえない心理は本物ではないと説いています。

村上さんは初めてDNAの2重螺旋を目にしたとき、その精緻な美しさに息を呑み、人の論理を超える何かが存在しているはずだと思いたくなったそうです。現在、地球上の生命体は4色の遺伝子の組み合わせで構成されているといわれていますが、村上さんはその重要性を、直感的に感じたというわけです。

「人間の頭で『こうしたい』『ああいうことができればいいな』と想像できる範囲のことなら、私たちはそれをすべてできる可能性を持っている。」

これが、科学者として40年のあいだ世界の第一線で活躍してきた村上さんがたどり着いた真理です。そしてこの真理は「節度」と「調和」の上に成り立っているといいます。インターメディエータとして常にバランスが求められるパブリック・リレーションズ(PR)。ちょっと時間の空いたときにパラパラとページをめくるだけでも元気が出てくる本です。一度手にとって見てはいかがでしょう。

投稿者 Inoue: 09:26 | トラックバック

2008年11月08日

オバマの新しいアメリカ
 ?新世界秩序へ向けて

米国の大統領選挙で民主党のバラク・オバマ上院議員が共和党のジョン・マケイン候補を大勝で打ち破り、来年1月米国大統領に就任することが決定しました。

オバマ氏については以前このブログでも紹介していますが、私が最初に彼を知ったのは昨年2月、ワシントンDC滞在中に偶然ホテルのTVで放映されていた彼の大統領選出馬表明でした。2007年2月10日、地元イリノイ州のスプリングフィールドでの支持者集会で米大統領選への出馬宣言を行ったときでした。オバマ氏のメッセージは、その2日前にワシントンの大統領朝食会でブッシュ大統領のスピーチを聞いた私に、計り知れない衝撃を与えました。

■ 主要国首脳のメッセージにみる違い
故ケネディ元米大統領(JFK)の再来ともいわれるオバマ氏は、就任すれば建国以来初の黒人大統領。ハワイで生まれ、インドネシアでの生活体験を持ち、米国や世界を人種、宗教、文化など多様な視点で見ることのできる逸材ともいえます。国際協調を訴え、これまで敵対してきた諸国との対話姿勢も明確に打ち出しています。11月4日深夜(現地時間)、12万人を超える支持者の前で行ったシカゴでの歴史的な勝利演説の内容は米国民と世界を感動に包みこみました

各国首脳もこの米国新大統領の誕生に熱いメッセージを送っています。11月6日付朝日新聞(朝刊)には以下のようなメッセージが紹介されています。まず欧州連合(EU)議長国・仏 サルコジ大統領は、「あなたの当選は仏、欧州、全世界に大きな希望を呼び起こす。米国と一緒に世界の平和と繁栄を守るための新たな活力が得られる」と表明し、英国ブラウン首相は、「オバマ氏と私は多くの価値観を共有している。緊密に連携して働けることを期待している」。

一方、中国の胡錦濤国家主席は、「中国政府と私は一貫して中米関係をたいへん重視している。両国の対話と交流をさらに強めたい」とそれぞれ熱いメッセージを送っています。

そして日本の麻生首相は、「どなたが大統領になられようとも、日本にとりまして日米というものが基軸というのは終始一貫、変っていない。民主党政権の時であろうと、共和党政権の時であろうと、日本政府としてきちんとした対応を米国とやってこれた。そういった努力を引き続きオバマという人とやっていかねばならぬ。…」(衆院財務金融委員会での答弁)。

麻生さんの同様なコメントはその後TVでも繰り返し流されましたが、皆さんは何を感じましたか?翌日11月7日付の同紙の社説では、麻生首相の感想がのんきすぎると批評し、「『ブッシュ後』の米国が、そして世界が大きく変わろうとしているという鋭敏な時代認識が感じられない。」と論じています。無味乾燥なコメントの中には、世界を良い方向に向かわせようとする情熱が感じられませんでした。麻生さんは米国はじめ、世界が極めて不安定の中にある最中の米国大統領誕生の意味をどの程度哲学的に捉えていたのでしょうか?少なくとも有能なスピーチライターは用意されていたのでしょうか。この問題は、個人の資質に帰すことは当然のこととして、パブリック・リレーションズ(PR)力の問題でもあるといえます。

■ オバマ勝利を日米関係刷新の機会に
ハワイで生まれ、インドネシアでの生活体験など多様な人種、文化のもとで育ったオバマ次期大統領はある意味で米国にとどまらず特異な存在感を持った政治家。イラク戦争、アフガン紛争、イラン問題、北朝鮮問題など解決すべき国際問題が山積する中で、武力と経済力にだけ頼らず、対話を重視し世界のリーダーと関係構築できるオバマ氏の資質に世界の期待は高まっています。

今回の選挙結果は日本にとっても、戦後長きにわたって続いたこれまでの日米関係を再構築する絶好のチャンスといえます。

こうした中、オバマ氏を取り巻くブレーンやジャパノロジストへの日本からのラブコールは高まっています。しかし政権交代のたびに、単にこれらジャパノロジストとのパイプを太くする目的だけで関係性を深めることは彼らの負担を大きくするだけです。

このところ、TV番組で様々な米国のジャパノロジストによる日米関係の今後の在り方についてのコメントが紹介されていますが、全体的に米国側が日本のどこ(誰)とどのように関わればいいのか判らず戸惑っているような印象を受けました。特に東アジアにおける中国の台頭が目覚ましい中、日本はこれまでのように、米国とのチャンネルを築くためのみに、ジャパノロジストに頼るのではなく、彼らを支援することが重要となります。

日本のよき理解者としての彼らを強力にバックアップすることで、彼らの発言力が米国内で増してくるはずです。そのためにはこれまでのアプローチだけではなく、日本が政治改革、金融改革、地方分権、教育改革、環境問題・脱石油エネルギーなど、今後の日本の新しい取り組みを提示し、これらジャパノロジストと情報共有することが重要になってくるものと思われます。

アジアにおけるパワーバランスが変化する中にあっても、日本が新の自立国家として世界に貢献できることは山ほどあるはずです。新しい日本を指し示すことにより、ジャパノロジストの立場が米国で強化され、結果として日本の立場が強まることになるはずです。

内外からの日本の政治家への期待は、今まで以上に高まっています。オバマ氏の勝利は、これまで幾度となく叫ばれてきた日本のリーダーシップの実現に、パブリック・リレーションズ力が不可欠なものであることを私たちに教えています。

投稿者 Inoue: 09:01 | トラックバック

2008年11月01日

『体系パブリック・リレーションズ』を紐解く 4
 ?政府とメディア・リレーションズ

こんにちは井之上喬です。
もう11月に入りました。皆さんいかがお過ごしですか?

今週も、『体系パブリック・リレーションズ』Effective Public Relations (EPR)第9版の邦訳:ピアソン・エデュケーション)をご紹介します。EPRは米国で半世紀以上の-ロングセラーを記録するパブリック・リレーションズ(PR)のバイブル的本です。

「新聞の存在しない政府を持つか、あるいは政府の存在しない新聞を持つかその決断が私に残されたとすれば、私はためらうことなく後者を選択する」。これは新国家創設にとって不可欠の報道の自由を保障した米国第3代大統領トーマス・ジェファーソンの言葉です。今回は、第16章の「政府とパブリック・アフェアーズ」(井之上喬訳)について、主要な活動である「政府とメディア・リレーションズ」をお話します。

■「政府のパブリック・アフェアーズの目的」
この本ではまず、政府のパブリック・アフェアーズ(以下PA)の目的として、一般的に以下の7項目を挙げています。
1)有権者に政府機関の活動を伝える 2)国家プログラム(投票、舗道整備など)への積極的な協力や規制プログラムの順守の確実化。3)制定した政策やプログラムをパブリックが支援(国勢調査への協力、災害救援活動など)するよう育成する。4)政府閣僚に対してパブリックの主張を伝える。5)内部のための情報管理(職員むけのニュースレター、電子掲示板、インターネット・サイトのコンテンツ) 6)メディア・リレーションズを円滑にする 7)コミュニティと国家の建設(国民健康キャンペーン、国民の安全保障プログラムを利用した様々な社会プログラムなど)。

同書はまた、「政府のパブリック・アフェアーズ実務家の基本的な仕事は、情報を伝えることにある。」と明示。政府内外の人々への継続的で確実な情報フローを最優先事項としています。「重点項目は規模に関係なく、各組織が行う行政サービスについて、一般と特別なオーディエンス(情報受信者)に情報を準備して伝えることにある。」とし、その活動は通常、内外への一般情報サービスを通じて遂行すると記しています。

これら情報の通達は、望ましい成果を得るロビー活動の一環ではなく、国民に情報を伝えて周知徹底することであるとし、連邦政府より下位レベル(州、市町村)の場合のPA活動は、地域や予算を組み合わせて調整されることが多いと論じています。

いずれの場合も、重点項目は同じで、「パブリックに政府活動や行政サービスについて情報を伝えることにある。」と述べています。しかし、「情報サービスが海外のオーディエンスを意図して、情報発信される場合は、それが単なる情報伝達か、あるいは人々への影響を与えるためのものかで対立することもある。」とも論じています。つまり、単なるお知らせか、そうではなく、政府の政策を受容させることで影響を与えたいと考え情報発信することなのか、異なったアプローチがあることを述べています。

■「政府におけるメディア・リレーションズ」
冒頭のトーマス・ジェファーソンの言葉にみられるように、米国は政府発足以来憲法修正第1条で報道の自由を保障しています。『体系パブリック・リレーションズ』では最近になって憲法で保障された報道の自由は拡大され明確になったとし、「情報公開法や『サンシャイン法、(議事公開法)』には政府についての自由な発言や論評ができる言論の自由に加えて、政府の情報にアクセスする権利なども文書化されている。」とメディアの政府へのアクセスの自由度について論じています。

「例えば、国家安全保障、訴訟、特定の個人記録など、明らかに不適当な分野を除き、政府が保持するほぼすべての情報は、報道機関が閲覧することも、調査目的で一般人が閲覧することも可能である。」また、「その多くにおいて、未完成の報告草案や手書きの記録でも、記者がこれらに特別な知識を持っている場合は、それらを特定項目に絞って請求し、閲覧することもできる。」と政府情報のオープン性も強調しています。

著者のカトリップ、センター&ブルームは、政府とメディアとの間には立場の違いと共に情報の有効性についての認識の差があると論じています。そして、政府メディア双方に困難な問題があるにもかかわらず、政府は依然として重要な情報を伝える手段としてニュースメディアに大きく依存しているとしています。またメディアの影響力について、マイケル・グロスマンとマーサ・クマールの言葉を引用し、「報道機関について、『国家の政治シーンにおいて、大統領をはじめ、議会や官僚、政党、圧力団体などの主要な権力に影響を及ぼし、同時に、それらの権力から影響を受ける主要な権力の一つになった』」と述べています。

しかし一方では、「メディアが彼らの本来の仕事の基準に達しているとは考えていない。」と政府部内の一部の見方を示しています。つまりクリントン大統領の一連のスキャンダルが表面化した際に、多くの主要報道機関が、大統領の外国首脳との関係を報道する代わりに、ポーラ・ジョーンズやモニカ・ルインスキーとの関係についての過剰報道に対する国民のメディアへの疑問について明らかにしています。

また政府報道については、「政府の森羅万象を解釈するには訓練を積んだ専門家が必要であり、(中略)政府のパブリック・アフェアーズ専門家は国民とコミュニケーションを図るため、ジャーナリストと協働して重要な役割を演じる…」と高度な専門家の介在の必要性を説いています。

政府とメディアとの関係性については日本においても、首相やその周辺のスキャンダルにフォーカスされるあまり、本来の国民が必要とする報道が十分になされなかったり、重要な法案の審議中に別の問題でメディアの関心がこの問題に向けられ過剰報道するなど、同じようなことが言えます。

戦後長きにわたって日本の政府からの情報発信は、そのシステムにおいても極めて脆弱なものでした。サブプライム問題で世界が不安定な中にある今こそ、日本の過去の教訓を内外に向けて強力に情報発信しなければなりません。ぜひ一度『体系パブリック・リレーションズ』を手に取ってください。新しい施策が浮かんでくるはずです。

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