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2008年07月05日

京都経済人、そのパワーの秘密

こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?


先日、京都で第7回産官学連携推進会議(主催:内閣府、経産省、日本経団連、日本学術会議など)に出席するために久しぶりに京都に行きました。2日間にわたる期間中、私が業務執行社員を務めるグローバル・イノベーターズ(GLIN)が展示会場に初めてブースを出したこともあり、GLINからは松田代表社員をはじめ、7人のメンバーが参加しました。

日本経済が衰退の様相を呈する中で、地方が活力を持つことが如何に重要であるか大勢の参加者との交流を通して強く感じました。同時に会場で接した京都経済人のエネルギーからは大いなる刺激を受けました。

■京都の空間が経済人へ与えるものは
いつの時代も京の町は人を魅了します。私も若い頃から京都が大好きで、大阪出張の際には時間をみては、京都駅で途中下車し、駅前や鴨川べりにあるお蕎麦屋さんや甘党屋さんに立ち寄り束の間の雅(みやび)の世界を楽しむようにしています。そこに身を置くことだけで心が癒される、京都は味わいの深い不思議な古都です。

そんな京都の魅力は、伝統工芸と多くの神社仏閣、緑の自然と水。時代とともに根付いているさまざまな文化、歴代天皇とあまたの権力者とのやりとりが詰め込まれた歴史など、実に多彩です。京都人の誇りの1つには、京都御所の紫宸殿に設置されている、天皇の正式な御座所である高御座(たかみくら)にあるといわれています。即位の際に天皇が着座する天皇の正式な御座所で、天皇の正式な所在地を示す特別な玉座がいまも京都に常設されていることです。

京の都は、桓武天皇が784年の長岡京に続いて、794年(延暦13年)平安京に遷都したことに始まる千年の都。政治の中心として常に日本史を創ってきた京都は、数多くの政治、経済、文化を抱合した歴史的情報の宝庫。征服者の成功や失敗、人生の教えや戒めなど、さまざまな事象から学ぶ環境が整っています。1つの大きな家族でたとえるなら、祖父母からの貴重な体験談、両親からの愛や躾け、教え、兄弟との関わりなど、成長する上で必要となる要素が詰まっているように、京都にはそのような要素が濃密度に空間を形作っているようです。京都に住むことは、人を賢くするということでしょうか。

このような空間を持つ京都から誕生した企業は、京セラ、オムロン、村田製作所、堀場製作所、任天堂、島津製作所、ローム、ワコールなど。数多くのグローバル企業が京都でうぶ声を上げ、現在も本拠地を他に移すことなくこの地に構えています。いずれの企業も他社を追いかけない、独創的でベンチャー精神に富んでいます。京都の経営者は稲盛さんや堀場さんに代表されるように、自らの言葉で自らの経営哲学を語ります。

梅棹忠夫さんが『京都の精神』(1987)の中で、「私ども京都市民は、ここが日本の中心である、日本文化の本物は全部ここにある、ほかのものは偽者とはいわないまでも、二流品だと考えてまいりました」と語った言葉には京都人の稟とした心意気が感じられます。

このように京都の空間が、京都経済人の思想、自主独立精神、プライド、社交的センス(コミュニケーション能力)を育んできたともいえます。稲盛さんや堀場さんには、さまざまな視点をもってリレーションズ活動を行うパブリック・リレーションズ(PR)が、先天的に身についているのかもしれません。

■「因果応報」は「縁」で結ばれている
京都の企業はいずれも、創業者が自力で大企業に育て上げた、いわゆるオーナー型。京都は以外にもシリコンバレーとも共通するものを持っています。それは産学連携が他の地域と比べて機能しているところにあります。

シリコンバレーにあるスタンフォード大学やサンノゼ大学などのように、京都の企業は、京都大学、同志社大学、立命館大学など地元の大学と積極的に連携プログラムを組み密接な関わりを持っています。その経営は、第2世代に引き継がれている企業もありますが、ベンチャー精神のDNAが受け継がれているといえます。

京都での会議中、堀場製作所を創業し、現在同社最高顧問でGLIN顧問でもある堀場雅夫さんやオムロン会長の立石義雄さん(京都商工会議所会頭)、村田製作所会長の村田泰隆さんなど、京都を代表する財界人にお会いする機会がありました。

その中で立石義雄さんから、次のような興味深いお話を伺いました。それは、京都の仁和寺の佐藤門跡が立石さんに話された「因果応報」に関するお話。ちなみに「徒然草」に登場するこの仁和寺の開基(創立者)は宇多天皇。

立石さんによると、仏教の教えにある「因果応報」について、「この言葉の『因』と『果』の2つの言葉の間には『縁』という見えない言葉が入っていて、2つをつないでいる。」ということでした。一般的に因果応報は、行動と結果の関係を表しますが、原因だけでは結果は生じないとし、直接的要因である「因」と間接的要因の「縁」の両方がそろった「因縁和合」のときに結果がもたらされるとしています。また縁起と呼ぶ法ですべての事象が生じており、「原因」も「結果」も、別の縁となり、現実はすべての事象が相依相関して成立しているとされています。

京都になぜ多くのベンチャーが誕生し、グローバル企業が輩出されてきたかについて、立石さんに質問したら、こんな答えが戻ってきました。「仏教を中心とした宗教的なものがバックグラウンドとして支えてきたのではないだろうか」。私はこの言葉に、「人の幸せをわが喜びとする」を人生訓に企業経営を行っておられる立石さんの、企業人としての揺るぎのない姿勢を見ることができました。

初日の会議の後、会場の国立京都国際会館で行われた懇親会には、全国から集まった関係者と、地元の経済界、アカデミア、自治体関係者など4千人を超える人たちで活況を呈していました。

パブリック・リレーションズ(PR)はさまざまな視点を持った、目的達成のための関係構築活動です。立石さんが語ってくれた佐藤門跡のお話は、パブリック・リレーションズの専門家としての私の心に深くしみ込みました。日本経済の再生のために、私たちは改めて、京都に注目する必要があるのかもしれません。

投稿者 Inoue: 2008年7月 5日 09:30

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