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2007年12月28日

SONY盛田昭夫の薫陶を受けた、米ベンチャー経営者
 ?マーク・ブックマンCEOを授業に迎えて

こんにちは、井之上喬です。
みなさん、いかがお過ごしですか。

「SONYが世界を狙うためニューヨークに行ったように、私も東京に来ました」と語るマーク・ブックマン(Marc Bookman)さん。SONYが全盛の80年代後半に同社に入社し、7年間の在籍中に盛田会長の薫陶を受けた方です。

その後シリコンバレーでベンチャー企業を起業。携帯検索エンジンのプラットフォーム開発会社、Mobile Content Networks, Inc.(MCN)を設立しました。先日、同社の社長兼CEOであるブックマンさんを 早稲田大学の私の授業、「パブリックリレーションズ 概論」の講師にお迎えしました。テーマは「パブリック・リレーションズと組織体」。

■ リスクを取って夢を実現
MCNは私の経営する会社、井之上パブリックリレーションズのクライアントでもある企業。彼らの特徴は、携帯での検索結果が2?3回のクリックでスピーディに表示できる技術。今年10月、米国シリコンバレーから東京へと本社機能を移し日本から世界市場を見据えるユニークな企業です。

外国企業のジャパンパッシングが増大するなかで、彼らの心を動かしたのは世界最先端を行く日本の携帯電話のコンテンツ技術とユーザー数9000万を超える市場の大きさ。加えて中国やインドなどの高い潜在性を持つ巨大市場が存在するアジアに位置するという利点。日本からアジア、米国、欧州を攻略する大胆な戦略はいま業界の関心の的になっています。

講義では、まず「リスクをとってイノベーションに取り組むベンチャー・スピリット」の重要性を掲げました。そして日本ではまだ意識されていない、リスクを取りながら自分の夢を実現する素晴らしさを強調しました。 そのなかで、パブリック・リレーションズはブランディングや顧客創造など様々な角度からイノベーションを支える手法であるとし、企業経営におけるその有用性を語ってくれました。

ブックマンさんは2002年に携帯型通信機器上での情報検索に関する調査を開始。ノキアに努める旧友との話から、ノキアのプロジェクトを獲得し2005年にはMCNを設立。

彼はベンチャー企業の成長過程や資金調達のメカニズムなどについて、「アメリカでは、初期の投資にはより大きなリスクを伴うことを株価に反映させているため、早い段階での投資ほど安価な株を取得できるのが特徴」と、ベンチャー企業の成長過程や資金調達のメカニズムなどについて学生にわかりやすく語ってくれました。

一般的に、株式公開(IPO)に向けたベンチャー企業の成長過程には、アーリーステージ、ミッドステージ、レイトステージの3段階あります。また資金調達の段階では、シリーズ(ラウンドともいう)A(第1回目の資金調達の意味)、B(第2回目)、C(第3回目)以下必要に応じて調達。MCNは現在、ミッドステージの資金調達中。

また、ベイパーウェア(vaporware:競合への顧客シフトを抑制するため、完成の目処がないのにPR活動を展開する製品のことで、悪い意味を持つ)を例にとり、「歴史のないベンチャー企業にとって『信用』は財産」と、パブリックから信頼を得るためには誠実さをもって事業を行うべきであると、誠実であることの重要性にも触れました。

■ ターゲットの興味を連鎖的に引き出す
ブックマンさんは「パブリック・リレーションズには何よりも戦略が大切」であることを強調。その例としてMCNがBtoB(企業顧客)つまり携帯通信会社(キャリア)をビジネスターゲットとする企業であるにもかかわらず、同社携帯エンジンに関する記事が11月に一般紙である朝日新聞に紹介されました。

2?3回のクリックで好きな検索情報が得られることは携帯ユーザーにとっても朗報。この強みを生かしてパブリックへの認知度を高めることでドコモやソフトバンクなどのキャリアの注目を引くことも可能であると説明。パブリック・リレーションズでは、戦略を軸に様々な角度からターゲットの興味を連鎖的に引き出すことで大きな成果が得られると語りました。

講義の後に受講生から飛び出した、「日本の良い点、悪い点は」とする質問には、約束したことを守る日本人の文化的秀逸性について語り、日本での仕事はスムーズに展開できていると答えました。一方、難しい点は、社員の本音を把握すること。ブックマン社長は「日本は自己主張をしない文化。社員の本音を引き出し、不満が問題化する前に解決する努力をしている」と語っています。

教室には、マーケティング担当副社長のスティーブ・バークさんの姿も見えました。彼もSONYに11年間在籍し、海外のコミュニケーションの責任者をしていた方です。MCNは4億5000万人の携帯ユーザーを抱える中国での展開も視野に入れ精力的に活動中。

ブックマン社長の話に生徒も深く共感。東京から世界を見据えるベンチャー企業家として、かって尊敬するSONYの盛田さんが世界進出の際に、巨大マーケットである米国ニューヨークに本拠地を置き飛躍したように、東京から世界への躍進を夢見て事業に取り組む彼の姿に心打たれたようでした。ブックマンさん、本当に有難うございました。MCNの成功を心より願っています。

本号で今年最後のブログとなりました。この1年、井之上ブログをご愛読いただき誠にありがとうございました。また来年もよろしくお願い致します。

皆さんには良い新年をお迎えくださいますよう祈念いたします。

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2007年12月22日

心に残る本 12 『新約聖書』
 ?不安な現代人の心を癒す永遠のベストセラー

こんにちは。井之上喬です。
今年もクリスマスの時期が到来しました。皆さん、いかがお過ごしですか。

クリスマスはイエス・キリストの誕生日。その前夜をお祝いする日(24日)がクリスマス・イヴです。キリスト者にとっては、新しい一年の始まりを意味するお祝いの日。今日は、その誕生以来多くの人の心を癒し続ける、『新約聖書』をご紹介します。

■ 聖書の教えはPRの原点
聖書に示されているのは、「どう生きるべきか」という人間の在り方に関する本質的な問題に対するソリューション。この世界で最も多くの人に読まれている聖書は、旧約聖書と新約聖書からなり、旧約つまり「旧い契約」とは、イスラエルの民がヤーウェ(神)と結ぶ契約を意味し、新約つまり「新しい契約」はイエスの誕生によるイエスを通して神と結ばれる契約を意味します。

新約聖書は1世紀に27巻がそれぞれ別に記述され、後に編纂されて誕生。その構成は、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる4つの福音書、イエスの昇天後、イエスの使徒による福音宣教を書き記した使徒言行録。これらの歴史的な記述に加え、使徒たちの書簡集とヨハネの黙示録から成ります。

その根底を貫くのは、神による深く果てしない愛とその神への完全な愛。そして「隣人を自分のように愛しなさい(ルカ10章11節)」という隣人愛。

意外なことに、聖書の世界とパブリック・リレーションズはとても深いところでつながっています。というのも、米国で登場・発展したパブリック・リレーションズの思想的な原点は、新約聖書の聖パウロの書簡集にあるともいわれているからです。

またPRの倫理をいち早く記述した米国のPR専任研究者レックス・ハーロウ(Rex Harlow)は、 倫理の重要性と有効性について、黄金律とも呼ばれる「人にしてもらいたいことは何でも、あなたがたも人にしなさい(マタイ7章12節)」を引用して記述しています。

そして現在は大衆扇動という悪い意味で使われるプロパガンダという言葉も、神様が与えてくださる奇跡を伝え歩く福音宣教を意味するプロパーゲートという言葉が語源にあります。

■ 御言葉はあなたの近くに
「御言葉はあなたの近くにあり、あなたの口、あなたの心にある(ローマ 10章5-10節)」

私達は自分の力ではうまくいかないとか、自信をもてないなどと思うことがたくさんあります。しかし、ヨハネが書簡の中で「神は愛です(ヨハネの手紙4章6節)」と宣言しているように、私たちの中に愛の種が一粒でもあれば、自分の力を超えた愛の力が自分に働いていることがわかります。

普段私たちは、大きな存在からどれほど多くの恵みを戴いているのか気づいていません。聖書を紐くとき私たちは、「私は世の終わりまで、いつもあなた方と共にいる(マタイ28章20節)」といわれたイエスに触れ、その豊かな恵みを目の当たりにします。またその愛の深さを知った人の心の中には命の尊さや感謝の気持ちが芽生えてきます。

日々の暮らしの中のつらい思いやネガティブな思いを全て捨て去り、澄み切った青空のような気持ちを運んでくれる聖書。オリジナル版であるギリシア語からラテン語を経て今日では日本語の口語訳を初め、実に世界で370を超える言語で出版されています。ちなみにドイツのグーテンベルグが1456年、世界初の活版印刷機械で最初に印刷したのは聖書。
興味のある方は、『新約聖書』(新共同訳)を是非一度手にとってみてください。

現在難民と呼ばれる人たちの数は世界で3800万人(国連難民高等弁務官事務所/UNHCR「世界の難民状況 2006 年」より)を超えています。北半球の冬を耐え忍ぶ貧しい人々に思いを馳せ、私たちがいつも多くの恵みを戴いていることに感謝し、静かに聖なる夜、クリスマスを過ごすのもいいかもしれません。

皆さんのクリスマスが、恵み深いものとなりますように。
メリー・クリスマス!

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投稿者 Inoue: 17:49 | トラックバック

2007年12月16日

資生堂相談役、池田守男さんを授業に迎えて

こんにちは、井之上喬です。
みなさん、いかがお過ごしですか。

先日、資生堂の相談役の池田守男さんを早稲田大学の私の「パブリック・リレーションズ 概論」の授業にお迎えしました。テーマは「パブリック・リレーションズと組織体?資生堂にみる経営の真髄」で、ご本人のビジネス哲学ともいえる「サーバントリーダーシップ」を中心にご講義頂きました。

■「PRは隣人愛そのもの」
講義の冒頭、組織体経営にとって「倫理観」が何よりも重要であると語りました。次に自ら進んで他者に手を差し伸べる精神である「隣人愛」について触れ、「パブリック・リレーションズは隣人愛そのもの」として、あらゆる関係性を充実させるパブリック・リレーションズの重要性を語ってくれました。

池田さんは、香川県高松高校を卒業後上京し、牧師を目指し神学校を卒業します。しかし、もう一度社会に戻り社会の役に立ちたいと資生堂に入社し秘書室に配属。その後、取締役秘書室長、代表取締役副社長、代表取締役執行役員社長、会長を歴任。現在は同社の相談役として、数々の団体や政府委員会などの要職に就き、講演活動など広く活躍されています。

池田さんとの最初の出会いは1990年代初め、池田さんが秘書室長時代。中曽根政権で外務大臣をしていた倉成正さんの定例早朝勉強会に当時の資生堂福原社長の代理として出席されていたときでした。私とは精神性で共有するものがあったこともあり、以来時折、食事をご一緒したり、出版パーティにお越しいただくなど交流をさせていただいていました。

講義の中で池田さんは、今日の物質主義の行き過ぎを危惧し、薬師寺の元管主高田好胤の言葉「物で栄えて、心で滅びる」や同郷の大平正芳総理(当時)が施政方針演説で発した、「経済の時代から文化の時代へ真の生きがいを追求する社会を」などを引用し、経済性の追求に加え人間性・社会性・文化性を追求する精神性の充足こそ21世紀の取り組むべきテーマであることを明示しました。

池田さんは企業の取り組みとして日本経団連が2002年と2004年に行なった企業行動憲章の改正に触れ、コンプライアンスの強化や企業の社会的責任(CSR)を推進する取り組みを紹介。一方で、いまだ企業不祥事が頻発している現状を憂慮し、コンセプトの具体化が急務であると強調しました。

また池田さんは、教育再生会議委員(座長代理)を務め、昨年60年ぶりに改正された教育基本法の改正に中心的な役割を果たしています。池田さんは人づくりの基本となる教育の重要性にも触れ、日本児童の世界における学力水準低下を憂慮しつつ、戦後教育における個人の過度な自己主義偏重の弊害を一掃し、他者の存在を尊重する精神に支えられた公共の精神を人々の中に育てなければならないと説きました。

池田さんは、2007年4月発足の公益認定等委員会の委員長。そこでは「公は官が担う」とする考え方から脱却し、「民間が公共を担う」ことで民と官の橋渡しが可能となり、社会全体が厚みをまし真の豊かさが感じられる社会の実現が可能となるのではないかと語っています。

■ 1つのビジョンの下に仕える
「仕える」「支える」を生活信条とする池田さん。秘書を天職とし、「秘書はまさにサーバントである」を会得。しかし「仕える」とは、闇雲に仕えることでなく、1つのビジョンの下に仕えることを意味すると強調。このコンセプトについては、池田さんの著書『サーバントリーダーシップ』(2007年 かんき出版)に細述されているので、興味のある方は是非、ご一読をお勧めします。

池田さんは2001年資生堂の社長に就任した際、お客様の視点に立った徹底的な改革を提案。戦略的には、創業の精神に回帰し、新しい視点で解釈。組織的には「社長は全社員のサーバントに徹する」と宣言。その斬新な経営理念のもと見事に資生堂を復活へと導きました。

池田さんはその大改革をリレーションシップを良好にする改革と位置づけ、パブリック・リレーションズの本質を体現するケースだと振り返りました。

具体的には、資生堂の名前の由来である易経の一節「至哉坤元、万物資生( 天地のあらゆるものを融合し、新しい価値を創り、その価値をお客様や社会にお役立てする)」とする創業の精神を、各部署の視点で具体化し、全社に浸透させたこと。そして「信頼」こそ経営の原点としパブリックから信頼を獲得するため、お客様、小売店、資生堂の3者の接点である「店頭」から商品群や流通の見直しなど全ての仕組みを改変した経緯を説明してくれました。

また、その精神を反映する逆ピラミッドの組織図について、理念・信条・方針はトップダウンで行なうが、それを具体化する際には改革の中心となる「店頭」をトップや逆ピラミッド組織の下であるトップが支える、サーバントリーダーシップ型が有効であるとしました。

時間は瞬く間に過ぎ、講義の後には受講生から質問が活発に飛び出しました。

講義後、ある受講生から「経済性が追求される企業経営で大切にすべきことは何か?」との質問に対し、池田さんは、企業の永続性を担保する経済性と社会性の両立が大切であり、競争の中にも多様性の尊重や互助・互恵の精神が必要。これらを醸成する関係性の構築が企業の取り組みに求められると述べました。

続いて「サーバントリーダーシップの原点は何か?」の質問に対し、池田さんは幼少体験を取り上げました。故郷の高松に訪れる四国八十八箇所を托鉢して巡るお遍路さんとの交流を通して、差し上げて食べて戴くという気持ちで接していたであろう祖父母の思いを回想。そしてその思いが「自ら生きているのではなく多くの恩恵の中で生かされている」「人のお役に立つ存在になりたい」とする考え方へと発展し自らの原点を築いたと語ってくれました。

最後に池田さんは受講生に、「知をもって社会全体へ役立たせて頂くという気持ちを強く持ち続けて欲しい。そうすれば社会は厚みのある豊かで素晴らしいものになっていく」と力強いメッセージを送り授業は終了しました。

池田さんの抑制のきいた熱い言葉は、パブリック・リレーションズを深く理解し、隣人愛の精神をビジネス現場で実践してきたひとりの経営者からの受講生への熱きエールとして、一人ひとりの胸に深く刻まれたことでしょう。
池田さん貴重なお話し本当にありがとうございました。


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2007年12月07日

PRパーソンの心得18 きびしさ

こんにちは、井之上喬です。
今年もいよいよ師走を迎えましたが、皆さん、いかがお過ごしですか。

どんな分野で活躍している人でもスペシャリストといわれる人は、厳しい鍛錬の時期を経ているものです。その境地は、基礎となる理論や技術を自分のものにするために最善を尽くし、自分を厳しく律した結果得られるものだからです。

■ 鍛錬で己を知る
無双の剣客といわれた二刀流創始者、宮本武蔵の言葉に「千日の稽古を鍛として万日の稽古を練とす」という名言があります。

この言葉から、武蔵自身が剣の道を究めたいと厳しい鍛錬を課し一心に突き進む凄みと、全人生を投入し剣の技の研鑽にとどまらず、心と身体をも修養し続けた彼の真摯で一途な気持ちを感じとることができます。

鍛錬というと少し古いと思われる人もいるかもしれません。しかし、ある時期自分をストイックな極限状態に置き何かに挑戦する経験は、その後の人生を開花させる準備段階として必要なことだと思います。自分を極限状態に追い込むことで自分と対峙し己を知る。これが後に自分の心を自由に解き放つ礎となるからです。

しかし、ここでいう「ストイック」は自分の夢を追いかけるためのものであり、自虐的なストイックとは一線を画すものです。

私は高校時代を水泳に捧げました。ひたすら泳ぎに明け暮れた日々を振り返ると、そこに苦労の感はひとつもありません。むしろ周りの心配をよそに、自分の記録に挑む日々を充実感と刺激に溢れる時間として楽しんでいたように思います。

幼少のころから私が水泳が大好きで、自分の得心する練習を情熱をもって行なっていたからだと思います。

しかし状況は一転し、高校2年も終りの3月、先輩の紹介で東伏見にある早大水泳部〈稲泳会〉の合宿所に通い始めると、自分に合わない泳法に変えられてしまいます。そのような時の練習は私にとって地獄のようでした。そこには楽しさはなく、あったのは苦痛だけでした。自分の納得のいかない泳法は、もはや自分の泳ぎではありません。そして自分の泳法が葬り去られた時、私は自分さえも見失ってしまったのです。

与えられた練習内容はこなすものの、内心は、やらされ感でいっぱいでした。心を失うと身体もついていきません。私はしばらくすると体調不良を起こし、志半ばで練習続行を諦めざるを得ない状況にまで至ってしまいました。

■ 意に反して頑張らない
この経験から学んだことは、自分を厳しく律することは、自分の意志に反してまで頑張ることでは決してないこと。どちらかといえば、苦しさをも吹き飛ばす程の強い信念から湧き出てくるエネルギーで、自ら目標に対しポジティブに取り組むことです。

それを支えるのは高い志。そして自分の本当に欲する目標を掲げ、目標を達成すると決意すること。人は、自ら納得している目標に対しては主体的に取り組めるものです。その過程において心を自由に保ちながら、追い風にも逆風にも臨機応変に対処していくこと。日々の行動の中で意識的に、全てが目標達成に向かう状態を作り出すことです。

自分の目標が明確であり、決意に基づく目標意識と情熱があれば、厳しくあらねばならないとする義務感は喜びに変わります。

リーダーにカウンセリングを提供するパブリック・リレーションズの実務家や広報(PR)担当者は、時として、自分に対してだけでなく、クライアントに対してもそのようなきびしさを示さなくてはなりません。各人が経験を積む中で自己鍛錬によってきびしさを養っていかなくてはならないのです。

そしてきびしさの中からその人の力強さや安定感がうまれ、周囲から信頼されるカウンセラーとなることができると思うのです。

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