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2006年12月08日

真珠湾攻撃から65年。奇襲攻撃で日本が背負ったもの。

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

■内部ミスで「奇襲攻撃」となった
今から65年前の今日、1941年12月8日、真珠湾攻撃が行われました。この真珠湾攻撃開始に際し日本政府は、事前に宣戦布告書を米国政府に手交する予定でいました。しかし、実際に宣戦布告書となる「対米覚書」が野村吉三郎在米日本大使と来栖三郎特使によりハル国務長官に手渡されたのは真珠湾攻撃開始の一時間後のことでした。

私は1988年、メルボルンで行なわれた国際PR協会(IPRA)世界大会で講演する機会を得ました。テーマは「日本人から見た異文化コミュニケーション:Cross Cultural Communication--A Japanese Viewpoint」で、日本固有の文化的背景の説明をくわえて日本のコミュニケーション能力の脆弱さについて述べました。

80年代、経済超大国にのし上がった日本は一方で、農業問題、半導体摩擦など、国際社会における様々な問題を抱えていました。ジャパン・バッシングという言葉が世界中を駆け巡り、ひとり勝ちをする日本が一方的に悪者として扱われた時期でした。

前述の講演の中で私は、これらの問題は日本におけるパブリック・リレーションズが機能していないことに起因していると結論付けました。つまり、国際社会における日本を取り巻くパブリック(ターゲット)は、諸外国の政府機関であり産業界であり、国民・市民です。日本がパブリックの視点に立ち、双方向の対話(コミュニケーション)を通した相互理解による合意や譲歩を醸成できないことが問題の深刻化を招いていると考えたのです。

その事例として第二次世界大戦における真珠湾攻撃が、ワシントンの日本大使館の不手際によって奇襲攻撃となってしまったケースを挙げました。つまり事前に手渡すべき宣戦布告書が在米日本大使館の内部ミスによって遅れた事実を明らかにしたのです。真珠湾攻撃がなぜ奇襲攻撃となったのかに関しては、6年後朝日新聞がスクープ記事として大きく取り上げました。1994年11月20日、外務省による1946年調査の公文書、『「対米覚書」伝達遅延事情に関する記録』が公開されたのを受け、同紙が翌日11月21日付け朝刊の一面と社会面のトップで大々的に報じたのです。そして朝日新聞はこのような大失態のなかでも、誰も責任を取らなかったことを記述しています。

国際法(ハーグ条約)違反である予告なしの攻撃に、米国内はもとより国際社会からは日本政府に対して激しい非難が浴びせられました。しかしこのような重大な危機が発生した時点でも日本政府は、外務省内のミスを認め、国際社会にその事実を明らかにする行動をとりませんでした。まさに「オープン」「フェア」「スピード」といったパブリック・リレーションズにおける危機管理に求められる対応姿勢が、ことごとく欠如した結果となったのです。この失態は米国の憤りに油を注ぐ結果となりました。そして真珠湾攻撃は米国への宣戦布告なしの卑劣な奇襲攻撃(Sneak Attack)であるとされ、米国の参戦を決定付けたのです。

このような日本政府の稚拙な対応の背景には、当時の日本が軍国主義路線を歩んでいたこともさることながら、日本固有の文化的特性にあるといえます。失敗を犯した際に言い訳を潔しとしない文化。間違いを犯した時にその事実を外に知らしめることを是としない「恥」(人前で辱められること)の文化。また古来から息づいている「和」といった日本文化をベースにした、権威に服従しがちな組織内のヒエラルキー意識。そして国際的な利益より国内の利益あるいは仲間(身内)をかばい、自分の帰属する組織の利益を優先させる文化的価値観。これらの要素が大きく影響していたと考えられます。

■民主主義社会で活かされるパブリック・リレーションズ
太平洋戦争突入時の日本社会は自由主義体制になく、現在の民主主義国家とは異なる条件下で起きた戦争でしたが、内部的な不手際やその対応の誤りは、戦後50年以上にわたり「卑怯な日本人」というイメージが国際社会に根付き、日本国民に多大な損害を与えてきたといえます。

日本のその後の運命を決定付けたとも言える真珠湾攻撃から65年。朝日の記事が示しているように、問題発生に際し「誰も責任を取らない」状況は変わることなく、今も日本では、企業や官界、政界で不祥事がとどまることなく繰り返されています。まさに日本社会に、パブリック・リレーションズが機能していないことを示しています。

戦争が人類にもたらすものは、苦悩と悲しみだけです。このような過ちを二度と繰り返してはなりません。そのソリューションが「倫理観に支えられた自己修正能力を伴った双方向のコミュニケーション」で目的を達成するパブリック・リレーションズです。

相手の視点に立った絶え間ない双方向のコミュニケーションを通して、倫理観をベースとした自らの修正を可能にする手法が、多様性を抱合して幸福を追求する機会を平等に与え、人々が輝くことのできる社会の実現に求められているのだと思うのです。

投稿者 Inoue: 2006年12月 8日 20:22

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