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2006年04月28日

実務家に求められる10の能力
5.フレキシブルで明るくオープンなマインド

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。早いもので、もうゴールデン・ウィークです。

以前、実務家に求められる10の能力として「統合力」 「判断力」 「文章力を伴ったコミュニケーション能力」 「マーケティングに関する知識」を紹介しました。今回は、自己修正を伴った戦略的なパブリックリレーションズ・プログラムを可能にする「フレキシブルで明るくオープンなマインド」についてお話します。

フレキシブルで明るくオープンなマインドは、まず自分が確固たるアイデンティティを持ち、自己や他者に対して正直であることから生まれます。このマインドは他者(相手のアイデンティティ)を受け入れ尊重する態度や柔軟性のある行動を促します。したがってこのマインドは、さまざまなターゲットとの信頼関係の維持をとおして目標達成の努力をする、広報担当者やパブリック・リレーションズの実務家に真っ先に求められているといえます。

フレキシブルで明るくオープンなマインド環境では、ごく自然に双方向性コミュニケーションの関係が生まれます。自分の心を開いて包み隠さず真実を語ることは、相手の心を開き、前向きで建設的な議論を可能にするからです。そして双方向性コミュニケーションを通して互いを知ることは、目の前に横たわるさまざまな問題の把握を容易にし、問題解決の糸口を見出す土台となります。


■ゴーンさんが強調した透明性
ここで重要なことは「透明性」です。一般的に紛争や戦争は、相手を知らないことからくる懐疑心や恐怖心から引き起こされます。透明性のある双方向性コミュニケーションには、互いを知るプロセスを加速させ不安感を取り除く効果があります。その結果として信頼関係が醸成され、不要な紛争や摩擦を避けることできるのです。国際紛争の場ではこうしたオープンな姿勢が重要となります。

日産のカルロス・ゴーン氏は、日産ブランドへの信頼回復に大きく貢献した要素として徹底した「透明性」のあるコミュニケーションを挙げています。1999年、瀕死の状態にあった日産のトップに就任したゴーン氏は、初期の段階から「透明性」をアピール。積極的なコミュニケーションを内外で展開し、日産の業績回復プロセスをすべてオープンにしました。トップ自ら困難に前向きに取り組むことの大切さを示し、見事に従業員や取引先などさまざまなパブリックの信頼を獲得しました。

また、フレキシブルで明るくオープンなマインドは自己修正をも容易にします。パブリック・リレーションズのプログラムが実施される過程においては常に状況は変化しており、フィード・バックにより、自らの誤りの発見やより有効な施策の構築など、時として自己修正が求められる局面があります。そのような場合にも柔軟性のあるオープンなマインドで臨むことで、個人や組織体の置かれている状況を素直に受け入れ、スピーディに自己修正を行うことができるのです。

■「恥の文化」と「罪の文化」
日本人のなかには、先天的にフレキシブルで明るくオープンなマインドを持ち合わせている人もいますが、多くの場合必ずしもそうではありません。日本文化は「恥」の文化ともいわれ、過ちを犯した場合においても、西欧のようにその「罪」を考えるより、相手がどのように自分を見ているかに重点が置かれるようです。自分の心の中をできるだけ相手にのぞかれないように、家屋を塀で囲むように、心も壁で覆ってしまうケースが多く見られる気がします。

これらの壁を取り除くためには、先ず自己を知り、アイデンティティをしっかりと持つことです。そして現状を前向きに捉えて本当の自分を受け入れること。また常に自分の心に正直であることを心がけなければなりません。自分の軸が確立されてはじめて他者を受け入れる心のゆとりが生まれます。この心のゆとりが明るくオープンなマインドを生み出し、フレキシブルな態度にもつながっていくのです。

PRの先進国で最大の移民国家である米国では、オープン・マインドが非常に発達しています。米国にはさまざまなバック・グラウンドを持つ移民たちが、自分は何者であるかを周囲にオープンに示すことで無用な摩擦を回避してきた歴史があるからです。このようにオープン・マインドは、多くの違いを乗り越えて共生するための知恵でもあるのです。

急速なグローバル化の流れを受けて、私たちを取り巻く生活やビジネス環境は、いまや日本国内だけで完結させることが不可能な時代となりました。異なる文化や社会制度などさまざまな違いを受け入れ、それらを長所として活かしていく思想がなければ、政府や組織体が国際社会で自らの価値やプレゼンスを高めていくことはできません。

したがって、その一端を担う広報担当者やパブリック・リレーションズの実務家は、フレキシブルで明るくオープンなマインドを日ごろから意識的に身につける努力が求められています。それによりパブリック・リレーションズを成功させることはもとより、高い人間性と人々の信頼を集める、次世代のリーダーにふさわしい人格を形成することが可能となるのです。

投稿者 Inoue: 21:00 | トラックバック

2006年04月21日

?第5の経営資源?
「パブリック・リレーションズ」出版記念パーティ開催!

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか?

4月17日、日本プレスセンターで「パブリック・リレーションズ」の出版記念パーティを開催しました。

当日、出版元の日本評論社から、発売の第1週に丸善本店でビジネス書部門第8位、続いて神田の旭屋で同じく第5位にランクインされたとの報告を受け、順調な滑り出しに勇気づけられオープニングを迎えました。


■小川さんのジャズピアノで
会場となったレストラン・アラスカでは、大きな窓から日比谷公園の緑を満喫することができます。演奏に駆けつけていただいたピアノの小川理子さんとベースの小林真人さんのデュオによるジャス演奏は、さながらニューヨークを想いおこさせてくれました。

発起人代表である片方善治(情報文化学会会長)さん、石村和清(ヤマハ相談役)さんの挨拶を皮切りに、早稲田大学大学院教授の北川正恭さん、アメリカンファミリー生命保険の創業者兼最高顧問の大竹美喜さん、作家の猪瀬直樹さんなどからのご祝辞をいただきました。いずれも日本が必要としているパブリック・リレーションズの将来への期待と暖かい励ましのお言葉でした。

皆さんのスピーチのなかには、第5の経営資源ともいえるパブリック・リレーションズの機能と役割、そしてその学問的な位置づけなどが触れられていました。この本で私の意図するものへの理解と、パブリック・リレーションズの可能性に多大な期待をお寄せいただいていることを改めて知らされ、深い感銘を受けました。

■200名の人達に囲まれて
会場には、日頃から個人的にお世話になっている方々、高校時代や大学時代の友人、早稲田大学や、PR業界関係者、取引先の皆様など、財界、政界、官界、学会などさまざまな分野から200名近くの方々にお越しいただきました。なかにはニューヨーク、ワシントンDC、ソウルなど海外から遠路お祝いに駆けつけてくださった方もいらっしゃいました。

出席されなかった方で、IPRA会長のチャールズ・ヴァン・デル・ストラッテン男爵や映画監督の大林宣彦さんなどからも祝電をいただくなど、多くの方々から心強いメッセージをいただきました

なかでも、とりわけ嬉しかったことがありました。それは私の長年の友人で、2年前に亡くなった高崎望さんの奥様の絢子夫人が出席してくれたことです。私をアカデミックな世界に導いてくれた高崎さんの存在を近くに感じながら、夫人と共に喜びを分かち合えたことを心より感謝しています。

このブログを読まれている皆さんと何よりも喜びを共有したかったことは、当日会場で感じられた「パブリック・リレーションズに対する大きな期待とある種のエネルギー」でした。会場は、さながら「パブリック・リレーションズに満ちあふれた空間」が出現したような、そんな独特の雰囲気に包まれていたような気がします。

翌朝、前の日にわざわざ駆けつけ祝辞をくださった大学時代のナレオハワイアンズの先輩、浅井愼平さんから電話がありました。そのなかで、「日本ではこれまでパブリック・リレーションズが学問として研究されてこなかった」ことや「日本導入の際に、パブリックを『公共』と訳したのが間違いだった」こと、そして「パブリック・リレーションズという、日本社会にない概念を導入することの難しさ」など、日本のパブリック・リレーションズについてご自身の考えを真剣に語ってくれました。慎平さんと音楽以外の話でこんなに盛り上がったのは初めてだったかもしれません。

その後、嬉しいニュースが飛び込んできました。パーティ参加をきっかけに、ある外資系企業の社長が「パブリック・リレーションズは企業経営に役立つ」と理解して、幹部研修用に「パブリック・リレーションズ」の本をマネージャー・レベル以上に支給すると決定したという知らせでした。

まさに、ひとつの「集い」が新しい何かを生み出すきっかけとなることを実感した瞬間でもありました。日ごろ北川さんがおっしゃるバタフライ効果のように、パブリック・リレーションズに対するエネルギーがじわじわと日本列島に広がっていくことを願っております。

そして何よりも発起人の方々やお忙しいなか会場までお越しくださった多くの方々に支えられ、素晴らしいパーティを開催して頂いたことを心より感謝します。当日、十分なおもてなしができなかったことをお詫びすると共に、これからも何卒ご支援賜りますようお願い申し上げます。

投稿者 Inoue: 18:52 | トラックバック

2006年04月14日

おかげさまで「井之上ブログ」が1周年を迎えました

昨年の4月4日にこのブログがスタートしてから、早いもので一年が過ぎました。パブリック・リレーションズの実務家として本業を続けながらの執筆は想像以上にエネルギーを必要としましたが、皆さんの応援もあり無事に1周年を迎えることができました。ありがとうございました。

■さまざまな出会い
このブログを通して、多くの方と知り合うことができたことをとても嬉しく思います。とりわけ深く感銘をうけたのは、滋賀県在住のあるブログ愛読者の方が3月末に東京で開催された出版記念セミナーに、遠路わざわざ足を運んでくださったことです。新刊本『パブリック・リレーションズ』を一気に読んでいただいたようで、翌々日の早朝にいただいた感動とエネルギー溢れる感想文に、こちらも感動してしまいました。

また、海外の大学や大学院でパブリック・リレーションズを学ぶための留学に関する問い合わせや、私の志向するパブリック・リレーションズの世界観に共感してくださるトラックバックやコメントもいただきました。

なかでも「倫理観」 「自己修正」といったパブリック・リレーションズの成功を支えるキーワードに共鳴してくださる方が非常に多く、若い世代の人たちの「日本社会におけるパブリック・リレーションズの必要性」を確信する声が想像以上に多かったことに驚いています。次世代を担う若い人たちが、不祥事や人災事故などが頻発する日本の行末に不安を感じ、明るい未来を築くことのできる確かなソリューションを渇望している姿を垣間見た気がしています。

■井之上ブログの特長
今や世界規模でブログブームとなり、さまざまなテーマやスタイルで情報が発信されています。このブログは、幅広く奥行きの深いパブリック・リレーションズの世界に触れ、理解していただくことを主眼としています。また、ひとつのテーマを丁寧に掘り下げたいとの想いから、文章も他のブログと比較すると非常に長いのが特長です。

この三月から蓮香尚文さんのメールマガジンに参加させていただいたり、新刊本が発行されたこともあり、アクセス数やトラックバックも格段に増えています。このブログを通してパブリック・リレーションズへの理解の輪が一層広がっていくことを心から願っています。

これからもこのブログが、パブリック・リレーションズのハブ的な存在となることができるよう、パブリック・リレーションズに関するさまざまな情報や私自身の体験したことなど「なるほど!」と思える情報を皆さんに発信していきたいと思います。今後とも進化する井之上ブログにご期待ください。

投稿者 Inoue: 15:21 | トラックバック

2006年04月07日

実務家に求められる10の能力
4.マーケティングに関する知識

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

以前、実務家に求められる10の能力として「統合力」 「判断力」 「文章力を伴ったコミュニケーション能力」 を紹介しました。今回はパブリック・リレーションズの戦略的プラン構築にとって不可欠の「マーケティングに関する知識」についてお話します。

優れたパブリック・リレーションズは包括的で戦略性に富んでいます。その鍵を握るのがマーケティングの知識といえます。製品やサービスを戦略的に市場投入するマーケティングへのかかわりは、経営に直結したパブリック・リレーションズを可能にします。特に画期的な製品・サービスの発表や社運をかけた開発商品の発表などはコーポレート・レベル(経営トップ)での介在なしにはスムースに運びません。

マーケティングとは、広義な意味で「財(製品やサービス)の誕生からその消滅にいたるまでのすべてのプロセスにかかわる活動である」とされ、狭義な意味においては製品やサービスの販売促進活動と認識されています。

一方、パブリック・リレーションズにはマーケティングPRとコーポレートPRがあります。マーケティングPRは販売促進を成功させるリレーションズ活動です。そしてコーポレートPRは企業への良好なイメージを構築するリレーションズ活動です。優れた製品やサービスにより企業イメージが高まることもありますし、良好な企業イメージにより製品やサービスの販売が促進される場合もあります。したがって両者はプラスにもマイナスにも連動しかつ影響しあう密接な関係にあるといえます。

特にマーケティングPRには新製品の販売促進を強力にサポートする上で、マーケティングの知識が必須となります。またコーポレートPRを行う際にも市場構造やポジショングの調査・分析のための知識をベースに持つことで、市場動向を把握した統合的なパブリック・リレーションズが可能となるのです。

頻繁に用いられるものとして、業界動向や製品・サービスの構造を時間軸で分析して競争メカニズムや市場特性を知るプロダクト・ライフサイクルや強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)から競合相手との差別化・優位性を導き出しマーケットでのポジショニングを決定するSWOT分析などが挙げられます。

■広告主導からPR主導へ
マーケティングにおける広告一辺倒の時代は長く続きましたが、近年、様相は一変しています。デジタル・メディアの発達により、消費者にはこれまで以上に双方向型コミュニケーションを希求する傾向がみられます。製品・サービスごとにチャンネル選択をおこない、直接ターゲットの心にとどくきめ細かな販促活動なしには市場での優位性の確保は困難になってきています。

この傾向について、マーケティングの第一人者フィリップ・コトラーはその著“Principles of Marketing”(1999)のなかで、「パブリック・リレーションズは一般社会における認知度獲得に大きなインパクトがあり」「製品、人、場所、アイディア、活動、組織、国家まで、さまざまなものを広くプロモートするのに使用されている」と記述し、この大きな可能性を活かすために近年、「マーケティング・パブリック・リレーションズという部署を設置し製品やサービスの販売促進と企業イメージの向上を包括的に取り組む企業もある」とマーケティングにおけるパブリック・リレーションズの重要性を示すと共に、その潜在的な効果に高い期待を寄せています。

こうした背景から、数年前に米国で “The Fall of Advertising and the Rise of Pr(ブランドは広告でつくれない)”, Al Ries and Laura Ries(2002)が大ヒットし、販売促進の軸足を広告からパブリック・リレーションズへとシフトするトレンドが生まれました。近年この傾向は日本にも波及し、パブリック・リレーションズへの期待が高まっています。


■インテル会長ロバート・ノイスから学んだこと
私が79年後半、半導体メーカーIntel社(インテル)と取引をしていたときにマーケティングの重要性について開眼するきっかけとなったある体験があります。

それは当時のインテル会長、ロバート・ノイスと会った時のこと。ICの発明者でもある彼は、「トランジスタの父」といわれるウイリアム・ショックレイのもとで半導体研究をしたあと、フェアチャイルドを設立し、その後ゴードン・ムーアとシリコンバレーでインテル社を設立し今日のインテルの基礎を築いた人です。そんなノイスさんとあることから社員の報酬の話となり、彼は「誰が社内で一番高い給料をとっていると思うか?」と私に尋ねました。私は「貴方ですか?」と答えたら、首を横に振り、「何人かの副社長のなかにいる」といいました。インテル社は技術志向が極めて強い会社なので、私は「当然、研究開発部門の担当副社長なのでは?」と答えたら、また首を横に振り、その場にいたある人物を指差しました。その人物は当時マーケティング担当副社長で40歳そこそこのジャック・カースティンだったのです。

ノイス会長の言ったことを裏付けるかのように、その後のインテルのマーケティング・ドリブンの日本市場攻略には目を見張るものがありました。このことは、インテルが将来を見通した研究開発や製品の市場投入時の政策決定や正しい販売活動をおこなうために、戦略機能を有するマーケティング部門を組織内の最重要セクションとして十二分に認識していたことを意味していました。日本では精神的な営業論がまだ一般的であった当時、米国の経営者が社会科学的な手法を用いたマーケティングの重要性を深く認識し、実践していた事実に強い衝撃を受けたものです。

あれから20数年、マーケティングの戦略的な機能を重要視し活動する企業も多く現れました。しかし未だ市場調査という狭い意味でマーケティングを捉えている向きも否定できません。広報担当者やパブリック・リレーションズの実務家は、マーケティングの機能と戦略性を如何にパブリック・リレーションズ活動に活かすべきか、それぞれの活動のなかで考えていかなければなりません。それが所属する組織やクライアントの掲げた目的をスムースに達成する条件でもあるからです。

投稿者 Inoue: 16:25 | トラックバック